トラブルホイホイな男が、ガラル地方に行くようですよ   作:サンダー@雷

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 タイトルそのまんま。


急転

 メイに呼び出された場所は、人通りの少ない裏通りだった。すっかり陽が落ちたおかげで道はすっかり暗闇になっている。

 こつりと足音が聞こえた。振り向くとマスクとメガネをしているが、たしかにメイがそこに立っていた。

 

「来てくれてありがとうございます」

 

 ニコリと笑って言う。ただ、こんなところに呼び出されているのに、最初とまったく変わらない雰囲気にむしろ恐怖を感じる。

 

「何の用?」

「そんなこと言って、何となく察してるんじゃないですか? 何の質問もなくここにきてますし」

「......オレンジのこと?」

「はい」

 

 やはりそうかとソニアは予測を確信に変える。

 メイはかなりオレンジに心酔している印象があった。それ以外には全てに興味がないように見えるのに、オレンジのことになれば目の色を変えて食いついていた。

 そんな彼女が自分を呼び出すような用事など、オレンジのことくらいしか思い当たらない。

 

「分かってくれてるなら話が早いですね。じゃあ、建前はなしに言いますけど、オレンジさんから離れてくれませんか?」

「勝手な要求ね。私とオレンジは仕事の関係で旅をしているのよ? あなたの我儘で離れられるわけないでしょ?」

「でも、その仕事ってソニアさんは必要ありませんよね? むしろオレンジさん一人の方が効率的だと思いますけど?」

 

 ソニアは顔をしかめる。

 たしかに自分は道案内と細かいサポートくらいしか役にたっていない。調査もほとんどオレンジがやっていることを考えれば、彼女の言うことはあながち間違いではない。

 

「たしかにあなたの言う通り、私がやっていることなんて大したことじゃないかもしれない。それでも私はこの旅で成長してる。その内オレンジの横に立てるくらいになって見せるんだから」

 

 それもソニアの目標だった。オレンジの横に立てるくらい優秀な研究者になってみせるという目標。嘘はない。

 

「だからその要求は受け入れられない」

 

 それはたしかなソニアの本心だった。

 しかし、メイは冷たい瞳を向けて。

 

「成長のため......ね。そうやって逃げるんだ」

「に、逃げる!? 私は逃げてなんて......」

「逃げてますよ。結局自分の役割を言い訳にして、自分の気持ちを誤魔化してるんです。否定されて傷つきたくないから。そういうあなたの調子のいいところ嫌いです」

 

 メイの言葉に熱が入る。

 

「あの人が抱えてるものはあなたの想像してる100倍重いです! あなたはそれを全て受け止め切れない! そんな中途半端な気持ちであの人の隣に立とうとしないで! ……じゃないと、傷つくのはオレンジさんなんだから」

 

 普段メイは自分を完全に隠している。それはあらゆる必要性から、女優メイを演じているからだ。

 しかし、今の言葉の一言一句はメイという一人の少女の本心だった。

 少なくともソニアはそう感じた。思わぬ顔を見せられ、若干動揺してしまう。

 

「傷つくのはオレンジってどういうこと?」

「……それくらい自分で聞いたら? まあ、仕事の関係のあなたが知るメリットはないでしょ」

「なあ……」

「じゃあね」

 

 スタスタとメイは去って行った。

 

 □

 

「何なのあの人……! カマトトぶってる確信犯だと思ったら本当に鈍い人じゃない! しかも心折ってやろうと思ったら、あんな強い目してくるし……ああ、もうわけわかんない!」

 

 当てが外れたメイは地団駄を踏んでいた。

 

 □

 

 一方的に呼び出し、一方的に帰る。あまりに身勝手な振る舞いにもはやソニアは怒りすら湧いてこなかった。

 代わり印象に残っているのはメイが言っていた言葉。

 

『そうやって逃げるんだ?』

 

 その言葉にソニアは敏感だ。

 今までずっと逃げてきた。幼馴染から、友人から、祖母から、役に立てば居場所があるという優しさに甘えて、みんなと向き合うことをしなかった。

 そんな弱い自分を叩き直すために旅に出た。しかし、

 

(私はまた逃げてる?)

 

 ならば何から逃げているのか。次にメイの言葉を思い出した。

 

『役割を言い訳にして、自分の気持ちを誤魔化してるんです。否定されて傷つきたくないから』

 

 同時にキバナの言葉を思い出した。

 

『好きなんだろ? オレンジのこと』

 

 正直ソニアは異性を好きになるということが分からない。自分に自信が持てない子供時代とアホ2人に囲まれていたことが原因だ。普通にしていれば万人にモテそうだが、いまいち気持ちが向かないのだ。

 それでもソニアは精一杯考えた。

 

(そういえば、私いつの間にバトルに抵抗なくなってたんだろ)

 

 ソニアはバトルすることが嫌いだった。幼馴染に才能の差を見せつけられたトラウマであるし、自分のコンプレックスを晒されているようで嫌だったからだ。

 しかし、それも今日のバトルを見れば分かるように、普通にバトルしていた。

 いつの間にかトラウマを克服していたのだ。

 

(デザートのため?)

 

 いくらデザートが食べたいからといって、プロ相手にまったく臆せず戦えるほどソニアは肝は据わっていない。

 

 それでも出来た理由。オレンジが隣にいたからだ。

 

 今思えば、ユウリたちが遭難した時もオレンジが隣にいた。

 自分が旅をしたいと思ったのもオレンジの影響を受けたからだ。

 メイにオレンジと離れろと言われた時、嫌だという感情だった。

 

 なぜか

 

 なぜか……

 

「そっか、私オレンジと離れたくないんだ」

 

 呟いた。顔が熱くなるのを感じた。

 

「わあー……いつの間にかあいつのことそんな風に見てたんだろう?」

 

 顔を覆いしゃがみ込む。

 いつだろう。しかし、自分の心に問うてみても分からないと返される。

 ただ、一つだけ分かっていることがある。

 

「私オレンジのこと好きなんだ」

 

 その呟きは闇に溶け込んだ。

 

 

 □

 

 

 一方、当の本人はナックルシティの高級レストランの個室で、ナツメと対面していた。

 見るからに高そうな料理が運ばれてくるのに、貧乏なオレンジは落ち着かない。

 

「……いつも思うのですが、食事をするのに高級店にくる必要があるんですか?」

「あるわよ。こういう店は情報のガードも固いし、個室も用意できるもの。私のような有名人が静かに食事をするには必須ね」

「なら、静かでガードの固く、なおかつ安いお店を知っているので、そちらでもいいのでは?」

「嫌よ。高級店じゃないと、高級料理に怯えるあなたを見られないじゃない」

 

 ナツメは嗜虐的な笑みを浮かべる。

 反論したかったが、実際怯えているので受け入れることにした。

 

「本当に性格悪いですね。そんなんじゃ、嫁の貰い手もありませんよ」

「心配しなくても私は結婚願望はないから、問題ないわ」

「そういう人って、アラサーになると焦って誰か捕まえようとするらしいですね」

「それは困ったわ。じゃあ、そうならないためにあなたを巻き添えにしておこうかしら」

「やめておきなさい。どっちにとっても地獄ですよ」

「本当ね」

 

 ナツメはくすりと笑う。

 

「今日はどうして呼び出したんですか?」

「あら、幼馴染が食事に誘うっておかしいことかしら?」

「そんないい関係でもないでしょうに……」

「カントーに帰ってくる時も毎回誘ってるじゃない」

「そうですね。そしてその度に、変な予知を伝えてくる」

 

 オレンジの雰囲気が変わる。

 

「グリーンから聞きましたよ。今度カントーのジムリーダーは会議があるようですね」

「ああ、そんなこと言ってたわね。仕事が忙しくて忘れてたわ」

「1年に1回の重要な会議をあなたが忘れていたと?」

 

 言外にあり得ないことだと言っていた。ナツメは事務関係はきっちりとしていなくてはならない性格だ。それこそ終わりそうもない時は、嫌いなオレンジに頼んででも終わらせるほどだ。

 そんな彼女が重要な会議をうっかり忘れていたと言うのは想像し難い。

 

「いいえ、忘れていないわ」

「ということはやはりすっぽかしたのですね。では、改めてあなたが大事な会議をすっぽかさなければならないような用事と言うのは何でしょうか?」

「……あれは不意によぎった予知だったわ」

 

 ちなみにナツメは予知をすることが出来るが、恣意的にやる場合には範囲がかなり狭い上に内容が曖昧だ。

 しかし、自分でなく自然に降りてきて予知は範囲が広い上に、内容もかなり具体的になる。

 そして今回は後者である。

 

「オレンジ。あなたこの旅で死ぬわ」

 

 

 □

 

 

  死の宣告。そんなものは遊戯王かテレビぐらいでしか見たことがない。

 

「驚いた?」

「まあ、ガチの超能力者に死の宣告をされれば驚きますよ」

 

 信憑性が半端ない。

 

「期間は大体半年後、巨大な何かにあなたは身体を貫かれて死ぬ情景が浮かんだわ」

「巨大な何かねぇ……」

 

 いままでの経験から言うと、何かしら地方を揺るがす災害だろうな。

 

「たしか、あなたの予知の的中率は90%でしたっけ?」

「ええ。ただし、私が伝えたことで80%まで落ちたわ。よかったじゃない」

「誤差の範囲ですね〜」

「そう。だから、0%にする提案をしてあげるわ。あなた、すぐにカントーに帰りなさい」

 

 たしかに、私が死ぬ原因がガラルで発生する何かしらの事件であるなら、ガラルから離れてしまえばいい。

 簡単な話だ。

 

「お断りですね。まだポケモンの調査は終わっていません。あなたは知らないでしょうが、他地方で調査をするのはいつもチャンスがあるわけじゃないんですよ? その地方のポケモン協会に許可を得たりしなければなりませんし」

「死ぬと分かっていても?」

「はい。それに、私が帰れば死なないと言うことは、この地方で何かしら起こるのは確定なのでしょう? ならば、それを放って逃げ帰るなどあり得ませんね」

 

 私が死ぬということは、シンオウの時のように地方消滅レベルの大災害が起きるということだ。

 

「死ぬのが怖くないの?」

「特に恐怖心はないですね。毎回死線を潜り抜けてきたせいか、慣れてしまったのかもしれません」

「そう……相変わらず、自分は後回しなのね」

 

 最後の呟きはよく聞こえなかった。

 

「なら勝手に死になさい。私は役目は果たしたから」

「ええ。その情報だけでも十分です。感謝しますよナツメ」

 

 何かが起きる日が決まっているなら、準備もしやすい。とてもいい情報だ。

 

 その後は、美味しい料理をたっぷり楽しんだ。

 

 

 





橙「第5回弟子トーク」

ユ「あれ!? そのコールって、質問者さんが言うんじゃないんですか?」

橙「彼は死にました」

ユ「死んだの!?」

 正確には死んでいない。ちょっと再起不能にされただけだ(ギャグ時空だから、普通に治るよ)。

橙「というわけでトークしていくわけですが、ユウリとの話なんて本編にすべて載ってますしね。特に話すこと思いつかないのですが……」

ユ「私は色々聞きたいです!」

橙「何をですが?」

ユ「師匠の中で一番可愛い弟子は誰ですか?」

橙「ヒカリですけど?」

 ユウリが掴みかかってきたが、あっさりといなした。

ユ「何でですか!?」

橙「むしろあなたは自分が1番だと思ってたんですか? ホラー映画見て夜中トイレに行けずおねしょしてたあなたが?」

ユ「わあああああ、それバラさないでほしいです!」

見たいのは?

  • オレンジがアニメ世界に迷い込んだら
  • オレンジがポケスペ世界に迷い込んだら
  • オレンジが女の子だったら
  • オレンジの日常
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