トラブルホイホイな男が、ガラル地方に行くようですよ   作:サンダー@雷

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 っポッポ


遺跡破壊事件(後編)

「たしかこの辺りだと思うのですが......」

 

 オレンジが探しているのは六番道路。ビートの走って行った方向から、彼がこの辺りにいる可能性が高いと予測したのだ。

 そしてできれば早く保護したい。

 なぜなら、ここは赤い土がむき出しになった高低差の激しい山岳地帯。故に落ちればひとたまりもない崖が至る所にある。ビートの今の精神状態を考えると、最悪の事態が頭を過ってしまうからだ。

 きょろきょろとどこから探そうかと迷っていると。

 

「ユニラ! ユニラ!」

「ゴチ!」

「ミプ!」

 

 上からユニラン、ゴチミル、ミブリムが涙目になりながらオレンジに駆け寄ってきた。かなり焦燥しているようだ。

 オレンジは一瞬困惑したが、ユニランにだけ見覚えがあった。

 

「もしや、あなた方はビートの手持ちですか?」

「ユニラ!」

「ゴチ!」

「ミプ!」

 

 そうだと三体は肯定する。

 しかし、違和感もある。なぜなら、三体とも逃がされた状態だったからだ。

 

「なぜビートはポケモンを逃がしたのでしょうか......まさか!」

 

 オレンジは危惧していた最悪の事態が頭を過る。

 

「ユニラン、今すぐビートの場所に連れて行ってください!」

「ユニラ!」

 

 

 □

 

 

 ユニランに連れてこられたのは、道の先が崖になっている行き止まりの道だった。

 そして、その道の先にビートは立っていた。その背中は子供とは思えないほど弱弱しく、崖に今にも身を投げ出してしまいそうな雰囲気を漂わせていた。

 

「ビート!」

 

 オレンジが声をかけるとビートは振り向いた。

 その顔には生気が感じられず、まるで廃人のように無機質だった。

 

「オレンジさん......そうか、ローズ委員長ではないんですか。僕は完全に見捨てられたんだ......」

「早くこちらに来なさい! そんなところに立っていたら崖に落ちてしまいます!」

「構わないですよ。ローズ委員長に見捨てられた僕に存在価値なんてない」

 

 ーーーいっそのことこのまま崖に落ちて死んでしまったほうが楽になれる。

 そんなビートの心が透けて見えるような投げやりな口調だった。

 

「ダメですビート!」

「決めてたんです。ローズ委員長が来てくれなかったら、このまま落ちようって」

「そちらに行ってはいけません!」

「......さよなら」

 

 ---最後にお別れが言えて嬉しかったです。

 満足したように笑ったビートは、そのまま崖に身を投げ出した。

 刹那、オレンジは駆け出していた。そして一切躊躇せずに崖に飛び込んだ。

 

「ビートおおおおおおお!」

 

 ビートを何とか捕まえようと手を伸ばすが距離があったせいか間に合いそうにない。オレンジはとっさにボールを取り出し。

 

「ダーテング、エアスラッシュで私を加速させてください! エーフィ、サイコキネシスでビートの落下速度を遅くしてください」

 

 ガブリアスは加速まで時間がかかり、ダーテングとエーフィも落下する人間を受け止めるには距離がありすぎる。そこでエーフィとダーテングの技を協力させて何とか追いつかせるつもりだ。

 二体の必死な行動のおかげで、距離はだんだんと縮んて行く。

 

「あと少しっっっっ!」

 

 オレンジはめいいっぱい手を伸ばした。

 風圧に視界を遮られる中、なんとかビートを掴んだ。オレンジはビートを抱きしめるように抱え込む。

 

「まずい!?」

 

 ビートを助けるのに夢中で自分が落下していることを計算していなかったのだ。

 エーフィとダーテングもそれを察して、何とかしようと必死に技を繰り出すのだが、人間二人分の落下速度を相殺させるにはほんの少し足りない。

 オレンジは何とかビートだけ助けようと、地面を背中にするように体勢を変える。

 そして受ける衝撃に少しでも耐えようと目をつむった時......。

 

「ユニラァァァァァ!」

「ゴチムゥゥゥゥゥ!」

「ミプゥゥゥゥゥゥ!」

 

 ポケモンの鳴き声とともに、身体が浮遊する感覚を覚えた。

 ゆっくりと地面に下ろされたオレンジは周りを確認すると、嬉しそうな顔をしたユニラン、ゴチミル、ミプリムがぴょんぴょんと跳ねていた。

 

「あなた方はビートの? ......なるほど助けられましたね」

 

 最悪の事態は避けられたことにオレンジはほっと息をなでおろす。

 

「生き......てる......?」

 

 目を覚ましたビートは信じられないと言いたげにつぶやいた。

 

「起きましたか?」

「......何で僕を助けたんですか? 今の僕に助けるような価値なんてないのに」

「人の命に差なんてありませんよ。みな等しくその命に価値があるものです。そして命をなくすことは、悲しいものです」

「綺麗ごとです。ローズ委員長に見捨てられた今の僕に悲しむ人など......」

「おや、あなたのポケモンはあなたのことをとっても心配していましたよ」

「ユニラ」

「ゴチ」

「ミプ」

 

 オレンジが視線を向けるとポケモンたちは元気に返事した。

 逃がした手前気まずいのか、ビートは苦い顔をしていた。

 

「それにあなたが死んでしまったら私は泣きたくなるくらい悲しいですよ」

「何で......何で......僕なんかのために死ぬかもしれないのに......本当にバカですあなたは......」

 

 ぽたりぽたりと涙が地面に落ちていく。

 オレンジは泣きじゃくるビートをそっと胸に抱きよせた。

 

 

 

 

 一頻り泣いたビートは、落ち着いたら恥ずかしくなったのか顔を赤くしながら、そっぽを向いていた。

 対するオレンジはようやくデレたビートに最高にニヤニヤしていた。そんな顔もビートの神経を逆なでする。

 

「くっ! 取り乱していたとはいえ、泣いてしまうなんて。不覚だ......」

「ほらほらビート~。もっとお兄さんの胸で泣いていいんですよ~?」

「ええいうるさいですよ!」

「せっかくデレてくれたのに、連れないですね~。しかし、一筋縄ではいかない人を攻略するのも一つの楽しみですよ」

「何を言っているんですかあなたは!?」

 

 ぎゃいぎゃいとすっかりいつもの調子に戻ったビート。

 

 ---やはり、壁画を壊した時のビートは精神的なものが原因だったのか?

 

 考えていると、くいくいと服を引っ張られた。引っ張ってたのはエーフィだった。

 

「どうしましたエーフィ?」

「フィーア」

 

 どうやらビートのことで伝えたいことがあるようだ。エーフィは額の水晶を光らせると、次に瞳のハイライトを消す。

 そのジェスチャーを見て、オレンジは何かを察したようだ。

 

「ビート、あなた壁画を壊す前にエスパータイプに出会いませんでしたか?」

「いいえ、覚えがはありませんがどうしてそんなことを聞くんですか?」

「あなたに催眠術をかけられた痕跡があるとエーフィが教えてくれました」

「催眠術......? でも、僕には自我もありますし、あの時の記憶も残っていますよ?」

「そうでしょうね。おそらくあなたにかけられていた催眠は意識を支配する類のものではなく、理性を縛る類のものです。その催眠を受けたものは、例えばダイエットの時に食事を我慢できなくなったりなど、いわゆるやってはいけないという感情が機能しなくなります」

「そんな催眠が......」

「何かしら心当たりはありませんか?」

 

 かなり巧妙に隠されていた。オレンジすら、エーフィに指摘されるまで気が付かなかったほどだ。かなり手練れの犯行であることがうかがえる。

 ビートは記憶をたどっているのか、顔に手をあてながら考えこむ。

 

「そういえば、ローズ委員長の部下に呼び出しを受けたのですが、その時一瞬少しぐらりと視界が歪みました」

「おそらくその時ですね。あなたは嵌められたんです」

「そうですか。まあ、あの男ならやりかねないですね、僕のことを目の敵にしていますから。多分、僕に問題を起こさせて、ローズ委員長の失脚を狙ったんだと思います」

「......意外に落ち着いているのですね。もっと怒ってもいいと思いますよ。なんなら、警察に届けていい案件かと」

「あの男が証拠を残すようなへまはしないでしょう。ほいほい利用された僕にも原因がありますから」

 

 たしかに犯行を見る限りではかなり用心深い性格なのは見て取れる。しかし、泣き寝入りというのは正直納得できない。

 オレンジが険しい顔をしていると、ビートは少し目を伏せながら。

 

「......それに今の僕にはローズ委員長がすべてというわけではありませんし」

 

 その言葉を聞いたオレンジは一瞬目が点になったが、すぐに頬を緩める。

 

「嬉しいこと言ってくれますね~。このこの~」

「頭を撫でないでください......ちょ、やめ、やめろー!」

 

 

 □

 

 

 一頻りビートのことをかわいがった後のこと。

 

「これからどうするのですか? ジムチャレンジにはもう参加できないのでしょう?」

「......そうですね。築き上げてきたものはすべて失たので、もう一度旅をしながら自分を見つめ直してみようと思います」

「そうですか、茨の道だと思いますが頑張ってください。嫌なことされたらちゃんと連絡するんですよ? 危ない場所にはいかないようにしてくださいね? 変なひとには近づかないようにするんですよ?」

「親ですか、あなたは!? まったく......」

 

 ビートは呆れたようにため息をつく。しかし、その表情は前よりも柔らかだった。

 

「それではまた会いましょうオレンジさん」

「ええ。その時はまたバトルしましょう」

 

 ビートは去る直前何かを思い出したのか、はっと息をのむ。

 

「僕に催眠術をかけた男はユウリのことをかなり気に入っていました。奴はローズ委員長と正反対の考えを持っていて、ユウリを自分の野望のために利用しようとしてくるかもしれません。気を付けてください」

「......なるほど、ありがとうございます」

 

 オレンジは真面目なトーンでお礼を言った。

 

「それではこれで」

「ベストウイッシュ。よい旅を」

 

 オレンジは手を振ってビートを見送った。

 

 

 □

 

 

 オレンジと分かれたビートは次にどこに行くかタウンマップを開きながら思案していた。

 

「そういえばアラベスクタウンはまだ行ったことなかったな......」

 

 この時の選択が自分の人生の分岐点になることなど、ビートはまだ知らない。

 

 

 





 Q.ビート好きすぎません?

橙「生意気なツンデレっていじりたくなりません?(超いい笑顔)」

見たいのは?

  • オレンジがアニメ世界に迷い込んだら
  • オレンジがポケスペ世界に迷い込んだら
  • オレンジが女の子だったら
  • オレンジの日常
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