トラブルホイホイな男が、ガラル地方に行くようですよ   作:サンダー@雷

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 これ前後編分ける必要ある?と思ったあなた。勘のいいガキはきらいだよ?


ビート再会(後編)

 流れるように二人きりにされたユウリは困惑していた。 

 元々、人見知りである程度心を許した人間以外には話すことも苦手な子だ。ビートは知り合いではあるものの、改めて仲良く話したことはない。対するビートも社交的な性格ではないので、何となく気まずい空気が流れる。

 とはいえ、オレンジに言われた通り、意思を伝えなければ始まらない。

 ユウリは何となく気まずい空気の中、切り出す。

 

「その......最近どうですか?」

「はい?」

 

 違う違う違うとユウリは頭を抱えた。

 まるで長い間疎遠だった親父のような言葉に自分でもひどいと思ったのだ。ユウリからいきなりそんなことを聞かれて、ビートも困惑気味だ。

 ユウリは焦ったように。

 

「ま、間違えたです! そうじゃなくて、あのあの......」

 

 混乱して思考がまとまらない。

 しかし、その様子を見たビートは驚いたような顔をして。

 

「意外ですね。僕はてっきり、あなたに怒られると思っていました」

「怒る? 何でです?」

「僕はあなたと決着をつけるという約束を破りました。それも自らの愚かさが原因でね。怒られても仕方ないと思います」

 

 ユウリももちろんビートがジムチャレンジを失権になったことは聞いていた。

 もちろん、その時はショックだった。でも怒りという感情は一切なかった。オレンジからそれとなく話を聞いていて、ビートにも擁護する事情があることを知っているからだ。

 だが、ユウリはたしかにイライラしていた。その時から、今も。その気持ちがなんだか分からなかった。

 しかし、今理解した。

 

「怒ってないです......怒ってねえですけど、たぶん私はビートと公式戦でバトルしたかったです」

 

 ユウリにとって、ビートは唯一の同等の実力者。

 ここまで実力を磨いてきた中のモチベーションの一つにビートというライバルがいたことがある。

 ポケモンバトルとは相手があって成り立つものだ。対等なライバルがいないポケモンバトルなど、敵のいないRPGのようなものだ。

 メディアはユウリをもてはやすが、ユウリにとってビートの存在はそれだけ大きいものだったのだ。

 

「自分で言うのもうぬぼれてると思うかもしれねえですけど、今のジムチャレンジャーで私に勝てる可能性があるのはビートくらいしかいねえです」

 

 ユウリは何百ものジムチャレンジャーとバトルしてきたが、やはりどこか物足りなさを覚える。最近では、オレンジもそれを理解したのか、バトル相手はオレンジが主体である。

 だからこそ、バッチバチにやりあえるビートがいなくなり、ユウリはイラついていたのだ。

 そんなことを言われるとはビートも予想外だったのか、目を見開かせる。そしてビートとしては怒られるよりも、罪悪感を刺激される分つらい反応である。

 

「それは本当に申し訳ないとしか言いようがないです。しかし......」

 

 ユウリもビートもならば今すぐバトルしようとは言わない。

 なぜなら、それはビートがジムトレーナーになってしまったからだ。

 委員会規則12 ジムリーダー又はジム所属のトレーナーは、協会の許可なしにポケモンバトルをすることができない。

 以前、ジムトレーナーが野良バトルでトレーナーをカモにして問題になってからできたルールだ。

 その規則が今は二人の間を隔てる壁となっているのだ。

 

「分かってるです。わがままは言えねえですから」

 

 ユウリは諦めたように力なく笑った。

 

 

 □

 

 

 2人がそんな会話をしている頃、オレンジとポプラもシリアスな雰囲気を漂わせていた。

 

「それでお話とはなんでしょうか?」

「そう急がせるんじゃないよ。話は一つじゃないんだからね」

「なるほど。それは長そうですね」

 

 別に困った様子もなくオレンジは笑う。

 ポプラは我関せず。

 

「一つ目、あんたはこの地方のトレーナーをどう思う?」

「それは強さという意味でよろしいですか?」

「そうだね」

「強さですか......誤解を恐れずに言うと、思っていたよりも強いですかね」

 

 その言い方は反すると、ガラルのトレーナーのことを下に見ていたという意味である。

 

「そうかい。あんたが言うなら光栄ととらえていいんだろうね」

「過大評価はよしてください。私はただの研究者ですよ」

「バカ言うんじゃないよ。あたしだって何十年もジムリーダーやってるんだ。バトルしなくたって、実力くらい見抜けるよ」

 

 さすがは世界最高齢のジムリーダーとオレンジは感心する。

 

「だからこそ、あたしは今のガラルのトレーナーが物足りないんだ。興行を気にして派手な大技しか使わない大味なバトル、それを見た子供もまたそれが正しいと勘違いして大味なバトルを目指す。はっきり言ってつまらないね」

「......まあたしかに、ガラルのバトルは他地方に比べると大味なことは否めません。カントーでは妨害技は必須ですが、こちらでは快く思われませんからね」

 

 例えば、ちょうはつ、アンコール、いちゃもん等の技だ。

 その技を使えばブーイングされても文句は言えない。とはいえ、それは文化の違いもあるので一概に馬鹿らしいと一蹴できない。

 ポプラは呆れたようにため息をついて。

 

「あたしが若い時は普通に使われてたんだけどね。ローズのやつがポケモン協会の実権を握ってから変わっちまったよ。まあ、結果が出てるから誰も文句言わないけどね」

「地方を大きくするのに、興行することは大切ですから。まあ、そんな風潮が強いからこそ、ユウリを嫌う人間も多いのでしょうがね」

「あたしは好きだけどね。攻めの中に見える受けのうまさ、技のコンビネーションも見てて楽しいよ」

「そこは特に意識したところです。攻めの強さはユウリがもともともっていたものです。それを活かすなら、変に形式的な防御を教えるのは悪手ですから」

「そう。久方ぶりにチャンピオンを超える可能性があるトレーナーが現れたと思ったね」

 

 べた褒めだ。気難しい雰囲気のあるポプラの言葉にオレンジも鼻高々だ。

 

「だけど、それはうちのビートも同じさ」

「ええ、理解しています。ビートの才能はユウリに引けをとらないでしょう。そして、彼の強さもまた、この地方では受け入られにくいもの。だからこそ、ポプラさんも気に入ったのでしょうが」

「その通りだよ。それとあたしが好きなパープルの服に、ひねくれた性格もね」

「分かります。すぐにむきになるから、からかうといい反応をするんですよ」

「いいじゃないか。あたしは倒れたふりをしてからかってる。慌てて面白いよ」

「いいですね。次合ったら使おう」

 

 ビートはなぜか寒気を感じた。

 

「そしてもう一つの話ってのがビートのことさ」

「ほう」

「あたしも将来的にはジムリーダーを退かなくちゃならないからね、どこかでジムリーダーの後釜を見つけなくちゃならないんだよ」

「将来的......?」

「何だい、何か言いたいことでもあるのかい?」

「いえ、何も」

 

 オレンジは目をそらす。

 ナニモカンガエテナイ。ホントウニ。

 

「あたしはビートにジムリーダーを譲りたいと考えてるんだけどね。多分今のあの子の評価を考えると協会が認めないだろうね」

 

 前にも言ったが、ビートの世間的評価はかなり悪い。今なら、苺に練乳をつけただけでも炎上するだろう。そんな彼を興行優先の協会がやすやす認めるはずがない。

 

「あんたは頭が回りそうだからね。その悪知恵を貸しな」

「悪知恵って......まあ、いいですけど。要するに、世間的評価の悪い人間の評価を一変させる方法ですよね?」

「そうだよ」

 

 オレンジは顎に手をあてて考える。

 ......少し間を開けて。

 

「そうですね、ビートを嫌う人々の心を変えることは正直不可能でしょう......が、それよりもいい結果にする考えが一つあります。相当無茶な方法ですが」

「ほう、おもしろいじゃないか。嫌いじゃないよ、そういうの」

 

 ポプラは悪い笑みを浮かべる。

 

「でしょう?」

 

 オレンジも悪い笑みを浮かべる。

 そんな二人が話し合う姿は、まるで悪代官と越後屋のようだった。

 

 

 

 





 Q.今までで一番おいしかったスイーツは?

橙「個人的には森の羊羹が最高でした」

見たいのは?

  • オレンジがアニメ世界に迷い込んだら
  • オレンジがポケスペ世界に迷い込んだら
  • オレンジが女の子だったら
  • オレンジの日常
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