トラブルホイホイな男が、ガラル地方に行くようですよ   作:サンダー@雷

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 ここでバトルさせるか、原作通り乱入させるか迷ったんですけど、盛り上がり的にここがベストだと考えました。
 トーナメントはホップに期待します(他力本願)


開戦! アラベスクジム!

 ダンデのテーマが朝の兆しを伝えると、ユウリがベッドからもそもそと起きてくる。

 眠そうなトロンとした瞳で目覚ましを止めると、ふあと大きなあくびをした。

 よく寝れた。体調も悪くない。ジムリーダーの対策も昨日オレンジと何度もしたので、ばっちりだ。

 しかし、どこか気分が乗らない。わかっている。昨日のことがまだ引っかかっているのだ。

 

「甘いこと言ってらんないです」

 

 わがままな自分に言い聞かせるように言う。

 

「さあ、今日もしっかり勝って、師匠とソニアさんにおいしいものご馳走してもらうです!」

 

 がんばるぞいとこぶしを握って、そう自分に喝を入れた。

 

 

 □

 

 

 ユウリがそんな決意をしている頃、ビートはポプラの自宅に呼び出されていた。

 こんな朝早くに何の用だと、眠い身体を引きずりながら階段を上っていく。するとポプラは広間の椅子に座りながら、優雅に紅茶をすすっていた。

 

「よく来たね」

「今日はどんな要件ですか? またナックルシティのスイーツを買ってこいみたいなくだらない頼みなら、僕はすぐに帰りますからね」

「頼んでないよ。お願いしただけさ」

「実質命令みたいなものだろうが......」

 

 聞こえると面倒なのでぼそりという。

 

「何か言ったかい?」

「何も言ってません」

 

 目をそらす。

 

「まあ、いいよ。あんた、今日あたしがユウリとジム戦することはもちろん知ってるね?」

「はい」

 

 同年代で唯一といっていいほどつながりのあるトレーナーだ。意識しないはずがない。

 

「その相手、あんたがやりな」

「......は?」

 

 ポプラの言葉が理解できずぽかんと口を開ける。

 はっと我に返ると、すぐにテーブルを壊す勢いで迫る。

 

「どういうことですか!?」

「そんな驚くことかい。あたしだってもういい歳さ。そろそろ後任に任せるのことを考えてもおかしくないだろう?」

「それはそうですが、僕に任せるのはおかしいでしょう! どう考えても務まるはずがない!」

 

 ビートは頭がいい。それゆえに自分にジムリーダーを継がせればどうなるかわかっているのだ。

 もっとも、そんなことはポプラも理解している。

 

「今すぐ譲り渡すわけじゃないよ。今回は私の体調不良を理由にして、代理ジムリーダーとして出るのさ」

「......なぜ僕なんですか。ジムにはずっとジムに貢献してきたトレーナーがほかにもいるじゃないですか。いくら僕が好みに合ったからって、そこまで贔屓にする必要は」

「馬鹿だね。なんであたしが今までジムリーダーを誰にも譲らなかったのか分からないのかい?」

 

 暗に在籍するトレーナーではジムリーダーを務める度量はないと言っているのだ。

 

「それに、あたしがそんな露骨な贔屓をすると思うかい?」

 

 性格的にしそうではある。しかし、よく考えれば露骨に扱いが悪い良い人間がいる記憶はない。

 

「そもそもあたしだって聖人じゃないんだ。何の打算もなくあんたを拾うわけないじゃないか。初めから、あたしはあんたをジムリーダーにするつもりだったんだからね」

 

 ポプラの言葉に嘘はない。しかし、すべてが真実でもない。ビートもそれは分かっている。

 

「とはいえ、あんたの意思をすべて無視して試合をさせるつもりはない。ジムリーダーなんていつでもなれるしね。あんたの覚悟が決まるまで待つまでさ。どうする?」

「......考えさせてください」

「試合は12時から。もし、試合をする覚悟があるんなら、ユニフォームに着替えて、スタジアムに来な」

「......」

 

 ビートは何も言わずに、険しい顔をしながらとぼとぼと出て行った。

 

 

 □

 

 

 ジム戦1時間前、ビートは容赦なく進んでいく時間を呪いながらジムの関係者口の前に立っていた。

 正直、まだ迷っている。自分がジムリーダーなどという大役を任せられていのだろうか、と。その気持ちがビートの足を重くしている。

 そんな時、肩に手をのせられた。

 

「こんなところで立って何をしているんですかビート?」

「オレンジさん......」

 

 話しかけてきたのはオレンジだった。

 こんな時にジム関係者以外で唯一心を許している人間の登場にビートは無意識の内にホッとする。

 だか、ここで違和感を覚えた。

 タイミングが良すぎる。そして、ここは関係者入り口、オレンジは普通ならくる理由はない。

 そこでビートは違和感を一つの説に昇華させた。

 

「もしや、今回の件はあなたの差し金ですか?」

「さすがはビート。よく勘付きました。正確には私がしたのは提案まで、実行はポプラさんがしました」

「なぜ、と聞くまでもないですね。ポプラさんから聞いたんでしょうから」

 

 ビートは察したように笑う。ただ、その笑みは心の憂いを滲み出していた。

 

「迷っているんですか?」

「当たり前だ! 僕をジムリーダー代理にしたりすれば、ジムにかなりの苦情が殺到するんですよ! 下手をすれば責任問題になりかねない! そんなことになれば、他のジムトレーナーやポプラさんに申し訳がたちません!」

 

 ビートへの風当たりは実生活に被害が及ぶほど酷かった。

 そんな彼を救ったのはポプラだ。そして、ジムトレーナーたちもビートを暖かく迎えてくれた。

 普段はポプラの厳しい指導に文句を垂れているが、それでもここで静かに暮らせることに、ビートはたしかな恩義を感じているのだ。

 

「たしかにあなたの言うようなことが起こる可能性は高いでしょう。実際、苦情を入れる輩は山ほどいると思います」

「なら、なぜそんな方法を提案したんですか! あなたらしくもない!」

「落ち着きなさい。こんなジムの進退を決めるような話を私やポプラさんだけで決めたと思いますか?」

 

 ビートは虚をつかれたように言葉を止める。

 

「ポプラさんは、あなたに話をする前に他のジムトレーナー一同に対してこう言いました。あたしはジムリーダーの座をビートに譲ろうと思ってる。反対の奴は今すぐ手を挙げなってね。もちろん、誰もあなたがジムリーダーになることに異論を唱える人間はいませんでした」

「そんな、何で……何でみんなは僕にこんなに優しくするんですか。僕には分かりません……分からない、分からない」

 

 ビートは顔を押さえながら壊れたラジオのように同じ言葉を呟く。

 オレンジはまだ分からないのかと焦ったそうに。

 

「人間はナマケロのような人には集いません、タツベイのように毎日努力を重ねる人に集います。それが答えではないでしょうか?」

 

 ビートは天才であると同時に努力家だ。

 ローズというモチベーションがあったにせよ、勉強もバトルも優秀な成績を納めるにはそれなりの努力が不可欠である。

 ジムトレーナーの中で一番厳しい指導を強いられ、一番努力してきたビートにジムリーダーが務まらないなどと考える人間はいないということだ。 

 

「そして、私も信じています。大きな失敗を経験したあなたは、絶対にいいジムリーダーになるとね」

 

 悪事から更生した人間を何度も見てきたオレンジだからこそ保障できることだった。

 

 ーー馬鹿だ、馬鹿ばかりだ。

 

 ーーみんなお人好しなんだ。

 

 ーーだけど……

 

「……分かりました。あなたの策に乗ってあげます。まあ、エリートである僕にあなたの弟子が勝てるとは思えませんが」

 

 ーー応えたい! その期待に、思いに!

 

 その憎たらしい表情から繰り出される不遜な言葉、まさしくオレンジがよく知るビートだ。しかし、その瞳は濁りの一切ない澄み切った清流のようだった。

 

 

 □

 

 

 ーー遂にジム戦の時間になった。

 

『さあ、本日のアラベスクジム戦。やはり注目は今季No. 1チャレンジャーと名高いユウリ選手でしょう! 今最も勢いに乗っているチャレンジャーに、ガラル最古参ジムリーダーポプラさんがどのような戦いを見せるかが注目です!』

 

 ポプラが登場しないとは知らない実況がペラペラと今対戦の注目ポイントを話していく。

 観客もユウリの登場を今か今かと待っている。

 そして会場の照明が落ちると、観客が一斉に湧き上がる。そして、チャレンジャーが出てくる入り口にスポットライトが当てられた。

 真剣な表情のユウリがゆっくりと歩いてくると、会場は声援で埋め尽くされた。

 

『大声援です! ユウリ選手の登場にお客さんは全力の声援で応えます!』

 

 そんな声もユウリにはまったく耳に入っていなかった。

 今、彼女の頭の中にあるのは相手をどう破るかだけ。いつもより集中しているのは気のせいではない。昨日の雑念を払うために一層集中力を高めているのだ。

 

『そして、次は我がアラベスクタウンが誇るジムリーダーポプラさんの登……ん?』

 

 ポプラの登場を盛り上げようとする実況に慌てたスタッフから紙が差し出された。

 

『し、失礼しました! えー、ポプラさんは体調を崩さてしまい、今バトルは代理ジムリーダーとしてジムトレーナーが代わりを務めるそうです!』

 

 とっさに紙だけ渡されたものの、そのトレーナーの名前は書かれていない。どうするんだと実況は困惑している。

 観客もジムリーダーとの熱いバトルを期待していただけに、落胆の空気がスタジアムに漂い始める。

 ユウリも唖然としている。

 つらい状況だが、実況の役割はしっかりと果たさなくてはならない。

 

『それでは代理ジムリーダーの登場です!』

 

 出てきた人間の顔がスタジアムの液晶に映されると、スタジアムの空気が一瞬の内に凍りついた。

 それは衝撃か、驚きか……しかし、そんなことはどうでもいい。少なくともユウリにとっては。

 

「嘘……」

「嘘じゃないです」

「何で? 夢?」

「夢でもありませんよ」

 

 混乱しているユウリに、ビートは言う。

 そしてようやくこれが現実だと気がつく。いや、もはや夢でもいいのかもしれない。

 ビートはボールを見せつけて。

 

 ーー約束を果たしに来ました。

 

 ユウリにとっては唯一勝てなかった同年代のトレーナーであり、ビートにとっては唯一認めた同年代のトレーナー。

 互いのプライドをかけたバトルが今ーー開戦する。

 

 

 





 Q.ビートとユウリどっちが好き?

橙「どちらも好きですよ。ビートは弄った時の反応が面白いですし、ユウリは素直なので冗談を吹き込むと簡単に信じるところが面白いです」

ビ「……」
ユ「……」

見たいのは?

  • オレンジがアニメ世界に迷い込んだら
  • オレンジがポケスペ世界に迷い込んだら
  • オレンジが女の子だったら
  • オレンジの日常
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