トラブルホイホイな男が、ガラル地方に行くようですよ   作:サンダー@雷

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 めちゃんこひさびさ! 


決戦! vsビート

『ふざけんな、お前なんておよびじゃねえぞ!』

 

 静寂に包まれていた会場は、その一言を皮切りに、一斉にスイッチが入る。

 

『そうだー! 俺たちはポプラさんとユウリのバトルを見に来たんだ!』

『失格野郎なんて出てくんな! ひっこめ!』

 

 次々とビートに向かって罵声を叫ぶ。

 子供に対しても容赦なく中傷していく姿に、ポプラの自宅のテレビで見ていたソニアは唖然としてしまう。

 

「ひどい。そこまで言う必要ないじゃない」

「まあ、観客からすればジムリーダーとの熱いバトルを気にしてプレミアレベルのチケットを入手したのに、実際出てきたのは今世間の嫌われ者ですから。落差で言えば詐欺レベルのショックでしょう」

 

 ちなみにソニアは今回の流れをオレンジから説明を受けている。

 呆れ顔をされたが、理解は得られた。

 

「ふん。あんな雑音、ビートには屁でもないよ」

「ビートは選手の時から敵が多いタイプでしたからね~」

 

 それに育った環境が環境だ。本当の敵意を向けられたビートに、有象無象の中途半端な敵意など虫の羽音に等しい。

 

「それにビートの顔を見てください」

 

 画面に映るビートは罵詈雑言に顔をしかめることなく凛とした表情でユウリを見ている。

 

「今のビートにはユウリしか見えていませんから」

「......そうね」

 

 ソニアも安心したようだ。

 そして画面の中では会場が色々な意味で盛り上がる中、審判は戸惑いの表情で試合を開始させる。

 

『そ、それではただいまより、アラベスクジム、ジム戦を開始いたします......これ開始して大丈夫か?』

 

 つい本音が漏れ出るほど会場の状況はひどい。しかし、テレビ放送の兼ね合いも考えれば、遅延させるわけにはいかない。

 審判は騒ぎを無視して、旗を上げる。

 

『ルールは3対3のシングルバトル! それではバトル開始!』

『行きなさい、ゴチミル!』

『行けです、アオガラス!』

 

 ビートはゴチミル、ユウリはアオガラス。タイプ相性は互角だ。

 

『先手必勝です! アオガラス、スピードスター!』

『ゴチミル、めざめるパワーで相殺しなさい!』

『アオガァ!』

『ゴチミィ!』

 

 威力は互角のようだ。爆発から互いの視界がふさがれる。

 

『今ですよアオガラス、つばめがえし!』

『アオガァ』

 

 アオガラスは煙を突き破りゴチミルを捉えた......かと思ったが、ゴチミルの姿はふわりと消えてしまった。

 それどころか、四方八方にゴチミルの姿が現れた。

 

『かげぶんしんですか......』

 

 奇襲に失敗したユウリは悔しそうにつぶやく。

 ユウリは技の煙を利用して死角からの奇襲を狙っていたが、ビートもそれをよんでかげぶんしんを指示していたのだ。

 

『ゴチミル、サイコショック!』

『ゴチミ!』

『ど、どれが本物です?』

 

 分身もそろえてエネルギーを貯めているため、視覚ではどれが本物か識別できない。

 

『アオガッッ』

『アオガラス!』

 

 背後からサイコショックが直撃すると、分身はすべて消えて後ろのゴチミルだけが残った。

 

『後ろです! スピードスター!』

『サイコショックで相殺しろ!』

 

 とっさに反撃を指示するが、あっさりと相殺された。

 ユウリもそれは予想通りなのか、大して気にしていない。次の反撃の手を考える。

 しかし、一連の流れるような攻防にブーイングを送っていた観客たちも黙ってしまう。

 その光景にテレビで見ていたオレンジはほくそ笑む。それを見たソニアは

 

「悪い顔してるじゃない」

「人聞きが悪いですね~。私は愚かな観客が、ようやく今見ているバトルの価値に気が付いたことを喜んでいるんですよ」

 

 どこかとげとげしい言葉。表情を変えていないもののオレンジも観客の言葉に憤りを感じていたようだ。

 

「磨かれた宝石に原石が挑戦する図も面白いですが、ダイヤの原石同士のぶつかり合いも心震わせるものです」

 

 そう評されたダイヤの原石のバトルはさらに激化していく。

 

『アオガラス、でんこうせっかでつっこむです!』

『かげぶんしんで躱せ!』

 

 アオガラスが貫いた影はふわりと消えた。

 しかし、そんなことはユウリも計算している。

 

『急上昇して、スピードスター!』

『アオガァァ!』

『ゴチッッ!?』

 

 無造作に上から降ってきた星は、的確にゴチミルを直撃した。

 

『うまいですね。的を増やすかげぶんしんに対して必中技のスピードスターを上空から撃つとは』

 

 上空ならば平面よりも幅が広がる分、偽物を関係なく追尾してくれる。技を使う隙を与えにくい分、こちらの方が的確なのだ。

 

『しかし、この程度のダメージ何でもありません』

『ゴッチ!』

 

 まだまだ余力はあるとアピールするようにゴチミルは胸を張る。

 ユウリもこれが決定打になるなど思っていない。どこかで大ダメージを与えなければ、ずるずるとビートのペースになってしまう。

 しかし、ビートも馬鹿じゃない。そこには最大限の警戒をしている。ならどうすればいいか?

 

『ゴチミル、めざめるパワー』

『ゴチミ!』

『構わずつっこめです!』

『アオガァ!』

『なあ!?』

 

 G☆O☆R☆I☆O☆S☆I

 めざめるパワーを受けながらも、アオガラスは速度を落とすことなく突っ込んでいく。もはや戦略も何もない。

 

『そのままつばめがえし!』

『アオガァ!』

『ゴチミッッッ!?』

 

 会心の一撃。ゴチミルは後方に吹っ飛ばされ壁に激突した。審判が確認しに行くと。

 

『ゴチミル戦闘不能! アオガラスの勝ち!』

『よしっ!』

 

 ガッツポーズをすると、客席は一斉に湧き出す。やはり、観客の中ではユウリが主人公なのだ。

 しかし、その歓声を消し去るように、エネルギー波がアオガラスを直撃した。

 

『アオガッッッ!?』

 

 アオガラスは地に落ちた。

 

『ア、アオガラス戦闘不能!』

『なぁ......』

 

 ユウリ、審判、観客すべてが何が起こったか理解できない中、ビートだけは不敵な笑みを浮かべていた。

 テレビで見ていたソニアも何が起こったか理解できていないのか戸惑いを浮かべている。

 

「何があったの? ゴチミルは戦闘不能になってたよね?」

「みらいよちですね。時間差で攻撃を与える技です。みらいよちは技を使ったポケモンが戦闘不能になろうとも関係なく発動しますから、それがアオガラスを襲ったのでしょう」

「いつ使ったの?」

「おそらく煙で視界がふさがれていた時でしょうね。ユウリは死角をチャンスだと考えたでしょうが、裏返せばビートにとってもチャンスだったことを考慮するべきでしたね」

「そうなんだ......。せっかくユウリが先制したのに」

「悲観することはないよ。あそこでゴチミルを戦闘不能にしなかったら、ビートが先制することになってただろうからね。互角に持ち込んだだけ、状況的にはマシさ」

 

 そう状況だけ考えれば互角だ。

 しかし、ユウリは強引な攻めでなんとかもぎ取ったものの、ビートは戦略通り進めてとっている。さらに言えば、会場の空気はユウリの勝ちだと決め込んでいた。だが、今の攻防で実力はまったくの互角だと認識させられたのだ。

 あらゆる面で有利な状況が少しづつ崩されていく。

 

『戻るですアオガラス』

『戻ってください、ゴチミル』

 

 2人はポケモンを戻すと、すぐに第二ラウンドが始まる。

 

『行くです、ホルビー!』

『ホルッビ!』

『行きなさい、ダブラン!』

『ダブ!』

 

 ユウリはノーマルタイプのホルビー、ビートはエスパータイプのダブランだ。タイプ相性は互角だ。

 しかし、ダブランはビートにとってフェーバリットポケモンだ。一筋縄ではいかない。

 少なくとも、先程のような力ずくの戦法は通用しない。

 

『ホルビー、マッドショット!』

『ホルビ!』

『ダブラン、まもる』

『ダブ』

 

 ホルビーの放った泥玉は、緑色の壁にあっさり阻まれた。

 

『エナジーボール!』

『ダブラァ!』

『かわらわりで打ち返せです!』

『ホルビィィ!』

 

 緑色のエネルギー玉を、ホルビーは綺麗に打ち返した。

 それを見て2人は通じ合うように口元を緩める。

 マッドショットは目眩しにならぬようにまもるで捌き、エナジーボールはかわらわりで打ち返せる威力なので打ち返す。

 互いが互いの戦法を経験しているからこその対処だ。2人共それを自覚しているからこそ、ここからは新たな領域になる。

 

『そのホルビーの機動力はやっかいですからね、封じさせてもらいます。ダブラン、でんじは!』

『ダブラァァ!』

『ホルビッ!』

 

 まひ状態になるとすばやさが落ち、一定確率で行動が止まる。

 機動力が売りであるホルビーにとっては最悪の効果だ。

 

「やっぱり前回戦っただけあってビート君もしっかり対策してきてる......」

「ビートにとって、ユウリは絶対負けたくない相手だからね。このくらい当然さ」

 

 弟子が状況を有利に進めていることがうれしいのか、感情がにじみ出ていた。

 

「おや? 対策をしているのはビートだけではありませんよ」

 

 オレンジはそう言って画面に目線を戻した。

 不利な状況にユウリは苦い顔をする。移動力を封じられたことで、作戦がすべて考え直しになってしまったのだ。

 だが、相手は考えるのを待ってはくれない。

 

『ダブラン、エナジーボール』

『ダブラァ!』

『ホルビー、かわらわりで弾けです!』

『ホル......ホルッ!? ホルビッッ!?』

 

 体が痺れたせいで、エナジーボールが直撃する。これは大きなダメージだ。

 

『まだです! ダブラン、追撃のエナジーボール!』

『お願いホルビー、かわして!』

『ホルビ!』

 

 痺れる体を引きずって何とか躱した。もはや意地だ。

 だが、ホルビーは肩で息をしている。さらにまひ状態で状況は最悪だ。しかし、勝機が全くないわけじゃない。

 

『ホルビー、あなをほるです』

『ホルッビ!』

 

 ホルビーは穴の中に消えていく。

 

『ダブラン、警戒してください』

『ダブ』

 

 機動力を封じたとはいえ、油断はしない。

ユウリが何の策も考えていないはずがない。あらゆる可能性を想定しながら、ホルビーが穴から出てくるのを待つ。

 後ろの土が隆起した。

 

『ホルっビ!』

『後ろだ! ダブラン、まもる!』

 

 ビートがそう指示した途端。

 

『来た』

 

 そうつぶやいた。

 

『そこです! まもるの薄い部分を狙うです! かわらわり!』

『ホルッビ!』

 

 まもるはひび割れ四散した。

 

『ダブッッ!?』

『なあ!?』

 

 まもるがフェイント以外の技で破壊されたことにビートは驚きを隠せない。

 ユウリはその動揺につけこむ。

 

『ホルビー、からげんき!』

『ホルッビィィィ!』

『ダブッッッ!?』

 

 からげんきが直撃したダブランは壁に激突し、そのまま静かに倒れこんだ。

 

『ダブラン戦闘不能! ホルビーの勝ち!』

『よし!』

 

 ユウリはガッツポーズをして喜びを表す。負けそうな状況を逆転しただけあって、喜びも倍増だ。

 一方で有利な場面を逆転されたビートは追い詰められてしまった。しかし、表情に憂いはない。まだまだ油断できない。

 

「……ずいぶんデタラメな技術を教え込んでるじゃないか。オレンジ、あんたプロのコーチが聞いたら頭を抱えるよ」

「ははは、そんな難しいことは教えていませんよ」

「よく言うね」

「え? どういうこと?」

 

 2人の会話の意味が分からないソニアは、何となくピリついた空気について行けていないでいた。

 そこにオレンジが解説する。

 

「今ユウリが行ったのはまもる破りという技術で、まもるの膜が薄い部分に強い攻撃を当てることでまもるが破壊できるんです」

「へぇー」

「簡単そうに言ってるけど、まもるの薄い部分を見極めるなんてトップトレーナーですら簡単じゃない。ましてやバトル中にやるなんて、至難の技さ。少なくとも、ジムチャレンジャーレベルのトレーナーに教えるなんて、前代未聞だよ」

 

 要はジュニアレベルのアイススケート選手に4回転アクセルをやらせるようなものである。

 明らかに行きすぎた技術だ。

 それを聞いたソニアも若干引いている。

 

「私はユウリがまもるの対策を教えて欲しいと言うから教えただけなんですがね〜……まあ、こんなにも早く実戦で使えるレベルまで仕上げるのは私も想定外でしたがね」

「もはや天才の一言ですませられなくなってきたね」

 

 ポプラは底が見えないユウリの才能に末恐ろしさを感じていた。

 

「ええ。しかし、どんなに大きな才能を持っていても一人では伸びません。競い合う人間がいてこそです。それこそユウリはビートという存在がいるからあの技術を手にしたのですから」

 

 人は競い合い強くなる。ユウリがビートに勝つために強くなった。そして、それはビートにも当てはまることだ。

 

『戻ってください、ダブラン。よく頑張りました』

 

 笑ってダブランの労をねぎらう。実際、ユウリの常識外れの攻撃がなければ、勝っていたのはダブランだった。圧倒的有利から負ける。以前のビートならば、ここで言葉などかける余裕はなかっただろうが、今の彼は違う。

 次のポケモンが戦闘不能になれば敗北が決まるというのにどこか余裕がある。

 

『行きなさい、ブリムオン!』

『ブリム!』

 

 ビートの最後のポケモンはブリムオン。ミプリムの最終進化系だ。

 

『ブリムオン、これが最後です。今まであの婆さんに仕込まれたすべてを出し切りますよ! ブリムオン、キョダイマックスです!』

『ブリム!』

 

 ビートはブリムオンをキョダイマックスさせた。

 

『キョダイマックスですか......』

 

 予想外の状況にユウリは警戒する。

 ダイマックスと違いキョダイマックスはオンリーワンの技がある。その効果がわからない以上、そうするのは当然だ。

 少しでも体力を削ってから、エースバーンに交代させようと考えていたが、ダイジェットのように能力向上系の効果があれば、その間は相手に有利に作用しかねない。

 ここは早めに攻めるべきとユウリは判断した

 

『ホルビー、戻るです。ここで決めるですよ、エースバーン!』

『エスバァ!』

『エースバーン、ダイマックスタイムです!』

 

 ユウリがエースバーンをダイマックスさせると、会場は熱狂に包まれる。

 あれだけブーイングをしていた人たちとは思えない。それほどまでに会場は盛り上がっていた。

 もっとも、2人にはそんな観客の掌返しなど耳に入っていないが。

 

『ブリムオン、ダイホロウ!』

ブリムゥゥ

 

 巨大な椅子や机を象ったエネルギー体が、四方八方からエースバーンに向かっていく。

 

『ダイバーンで弾き飛ばすです!』

エスバァァァ!

 

 巨大な火炎がのみこむと、その火炎はにほんばれのように会場を照らし出した。

 ダイバーンは使用すると天候を日差しが強い状態にする追加効果がある。この天候は炎技の威力を上げることから、ユウリに有利に働く。

 

『続けてダイバーン!』

『ダイサイコで軌道を変えなさい!』

 

 炎は上空に逸れた。

 

『隙ができたところにダイホロウ!』

『ダイナックルを地面に打ち付けて防ぐです!』

 

 砂嵐がダイホロウを飲み込んだ。

 

『すばやさじゃ、こっちが上です! 接近してダイナックル!』

『ブリムオンのタフさを舐めないでください。受けて、ダイサイコ!』

 

 ブリムオンは拳をまともに受け、エースバーンは紫色のエネルギー体をまともに受けた。

 両者譲るつもりなど一ミリもない。意地と意地がぶつかり合うフィールド。

 

『はぁ、はぁ、はぁ……』

『はぁ、はぁ……』

 

 息もつかせぬ攻防に2人は息を切らせている。

 しかし、その顔には辛さなど一切感じさせない。むしろ、心底楽しそうに笑っていた。

 

『さすが、エリートである僕が唯一認めたトレーナーです』

『そっちこそ』

『僕はこのバトルが始まるまで、こう思っていました。僕が表に出るだけで批判は免れない。ならば、ジムのメンツにかけても勝利をもぎ取るとね。……しかし、今はそんなものどうでもいい』

 

 ビートは言葉を続ける。

 

『僕は自分のトレーナーとしてのプライドにかけて、あなたに負けたくないようです』

 

 ビートは悟ったような穏やかな笑みを浮かべ。

 

『ふふ、ジムリーダー失格ですね』

『そんなことないです。だって、私も同じ気持ちですから』

『そうですか。なら、なおさら負けられません! ブリムオン、キョダイテンバツ!』

ブリムォォォォ!

 

 ブリムオンが天井を見上げると、天から3つの星が落ちてくる。その星はトライアングルとなってエースバーンを囲むと、爆発した。

 

エスバッッッ!?

『大丈夫ですかエースバーン!?』

『無駄ですよ。キョダイテンバツの追加効果はこんらん状態にすることです。今のエースバーンにあなたの声は届いていません』

『ッ! そんな効果があるなんて……』

『楽しいショーもこれで幕引きとしましょう! ブリムオン、ダイサイコ!』

ブリムォォ!

 

 ダイサイコが無情にもエースバーンに向かって行く。

 いつもならば避けられる速度なのだが、こんらん状態では通常通りの判断ができないため難しい。

 万事休すかと誰もが思った。

 

『エースバーン! 避けろです!』

エスバァ!

『何だと!?』

 

 予想に反しエースバーンは回避した。

 それもやけくそのラッキーパンチではなく、しっかりとこんらんを克服して避けているのだ。

 不意な出来事に混乱したビートは、追撃の判断が遅れてしまう。

 

『ブリムオン、キョダイテンバ……』

『遅いですよ! エースバーン、最大火力でダイバーン!』

エスバァァァァァァァ!

ブリムッッッ!?

 

 巨大な火炎は渦状になってブリムオンを飲み込んだ。

 そして炎が四散すると、小さくなったブリムオンが目を回して倒れていた。

 

『ブリムオン、戦闘不能! エースバーンの勝ち! よって、勝者ユウリ!』

 

 審判のコールは、観客の拍手にかき消された。

 

 

 □

 

 

 会場がわれんばかりの歓声に包まれる中、ビートはユウリに歩み寄る。

 

「いいバトルでした。最後のあれはラムの実ですか?」

「ご名答です!」

「なるほど、まさか状態異常まで対策しているとは、これは一本取られましたね」

「いやぁ……」

 

 ユウリは目をそらす。

 実は状態異常でめちゃくちゃ苛めてくるドS野郎対策に持たせていたのを忘れていた、というのが真実なのだが。素直に称賛されて少し気まずい。

 ビートはユウリの態度に疑問を覚えるが、大したことはないと飲み込むことにした。

 

「これがアラベスクジムのジムバッチです」

「やった! ありがとうです!」

「ジムリーダーの務めですから。……それよりもユウリ、気が付いていますか? 僕がジムリーダーに就任すれば、少なくとも1年間はあなたと公式戦で戦うことはできません」

 

 ガラルリーグは超実力社会。ジムリーダーを継いだ人間は、1年間メジャーリーグで生き残らなければ、チャンピオントーナメントに参加することができない規則がある。

 よって、ビートは今年のチャンピオントーナメントには参加できないのだ。

 それを聞いたユウリは悲しそうに顔を歪める。

 だが、ビートは穏やかな表情で。

 

「ですので、次は、チャンピオンになったあなたに僕がリベンジします」

「……ビート」

「途中で躓かないでくださいね、あなたはあまり頭が良くありませんから」

「一言余計です」

 

 ユウリは口を窄める。だが、すぐに笑い。

 

「分かったです! 次も絶対に負けないですよ!」

 

 次もある。その事実がユウリにとって何よりも嬉しかった。

 

 

 

 





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