トラブルホイホイな男が、ガラル地方に行くようですよ 作:サンダー@雷
シールド面白かった。だから書いた。
呼び出し
シロガネ山の山頂は、いつにも増して猛吹雪だった。
ふり殴る雪に視界は遮られ、ルギアのエアロブラスト並みの突風が身体にぶつかる。
確実に気温はマイナス。こんな中、人が生きていられるはずがない。
と考えつつ自分が現在その人が生きていられるはずがない場所にいて、なおかつポケモンバトルしていることを再認識した。
「ラプラス、ふぶき!」
すでに猛吹雪の中、さらにふぶきを仕掛けてくる鬼畜トレーナー。
こちらは完全防寒してもギリギリなのに、彼は半袖でも平気でいる。一度寒くないのか? と聞いたことがあるが、『袖があれば十分』と狂人もびっくりの格言を賜った。
彼は本当に人間なのか、ポケモンよりも彼を研究対象にした方が大発見がありそうだ。
向かってくる『ふぶき』は氷タイプの技。私が使っているガブリアスには4倍のダメージを与える天敵だ。
まともに受ければ瀕死は免れないだろう。
「ガブリアス、あなたは寒さになど負けないと信じていますよ。ギガインパクトで突撃しなさい」
「ガブァ!?」
ガブリアスはマジで!? と言いたげな悲鳴を上げた。
いや無理無理! とばかりに必死に首を振る。そんなガブリアスに。
「逃げたら、わかってますよね?」
私は笑顔で言う。
自分に逃げることは許されないことを悟ったガブリアスは、泣きそうになりながら螺旋のエネルギー体をまとってふぶきの中突っ込んだ。
ガブリアスは、ふぶきを正面から受け苦悶の表情を浮かべる。
しかし、ここで倒れれば、後日地獄の寒さ対策トレーニングが待っている。負けるたびに受けてきたあの地獄をもう二度と味わいたくないからか、ガブリアスは歯を食いしばってふぶきを突破した。
そしてギガインパクトをラプラスに叩き込んだ。
ドドン! とあまりの衝撃に山が揺れた。
「ラプラ〜……」
ラプラスは大きな身体を静かに倒して目を回した。
「ガ、ガーガブ……」
それと同時にガブリアスも倒れた。
「どうやら引き分けのようですね。お疲れ様ですガブリアス」
「……うん。そうだね。お疲れ、ラプラス」
私は無事に激闘を終えたことにホッと息を吐きながら、ガブリアスをボールに戻す。
対する人間離れした鬼畜ことレッドは満足そうにしながら、ラプラスをボールに戻した。
「……やっぱりオレンジとのバトルは楽しい」
ちなみにオレンジとは、私の名前だ。
「それはどうも。元チャンピオンに褒められるとは光栄です」
「毎日バトルしたい。……そうだ。オレンジもここに住まない?」
「殺す気ですか。私はあなたみたいに超人ではありませんよ。見てください、この防寒着」
「暑そうだね。我慢大会?」
「超人の理論を私に当てはめないでください。常人からすればあなたの方が我慢大会ですよ。それに私はただの研究者、バトルは専門じゃありません」
「僕と互角の時点で『ただの』研究者ではないと思うけど」
「では訂正します。『少し』バトルもできる研究者です」
「それでいいや」
どうやら納得したようだ。と言うよりも会話が面倒になったのだろう。彼は会話が得意ではないから、よくこうやって投げやりに話を打ち切る。
「というか、この山から下りれば私とも暇な時にバトルできると思いますが?」
「それは無理」
「そうですか」
拒絶にも近い言葉に彼の決心はかなり固いのだと理解する。
まあ、ダメで元々程度の言葉だったのでさほど気にしてない。
会話が切れた。そんなところを狙っていたかのように私のポケギアが鳴った。
私は掛けてきた相手を確認するまでもなく電話に出た。なぜなら、私にわざわざ電話をかけてくる人など数えるくらいしかいないからだ。
『よう、オレンジ。今電話大丈夫か?』
「こんにちはトンガリコーンさん。お久しぶりです」
『誰がトンガリコーンだ、てめぇ!』
「失礼だよオレンジ……トンガリコーンに」
『おい聞こえてんぞ、レッド!』
トンガリコーンには、私がレッドに会いに行っていることは伝えてある。
「失礼しました。サイ……グリーン」
『おい今サイフって言いかけただろ!?』
「それでぎんこ……グリーン。どうしたの?」
『てめぇら、今度覚えてろよ……。じいさんがオレンジに頼み事があるんだとよ。だから、出来るだけ早く研究所に来いってよ』
彼が言っているじいさんとはポケモン博士のオーキド博士のことだ。オーキド博士はポケモン研究の第一人者であり、私の師匠でもある。
私は普段オーキド博士の助手を務めていることから、こう言った呼び出しはよくあることだ。
そしてシロガネ山など一般の電波が届きにくい場所にもよく行くので、連絡役としてグリーンがかけてくることが多い。
「なるほど、わざわざありがとうございます、パシリグリーン。このお礼は今度おまもりこばん持ってジムに行った時にします」
『ふざけんな!? 搾取する気満々じゃねえか!?』
「じゃあ僕もこううんのおこう持ってるから。ちゃんとお金持って来てね、グリーン」
『お前はまず山から下りろよ!』
「だが断る」
『てめぇ!』
グリーンは声を荒げるが電話越しなので全く怖くない。
むしろからかう方からすれば反応があればあるほど面白いから、その対応は逆効果だ。
ただ、そろそろグリーンがかわいそうになってきたので、話を終わらせよう。
「では、そろそろ切りますね。お話はたしかに聞きました。オーキド博士には、研究所に明日向かうと伝えてください」
『了解。……はぁ、お前らとは話すのはジム戦より疲れるぜ』
露骨にため息をつくグリーン。
そう言う後ろでレッドが私の肩をポンポンと叩いた。そして例のポーズのサインを出していた。
「あ、忘れてました。グリーン、バイビー♪」
「バイビー」
『俺は今から怒るぜ!』
グリーンは、以前にプラズマ団と共に戦ったヒュウのような言葉を叫んでいた。
□
翌日、私はマサラタウンの地を踏んでいた。
気持ちのいい風が吹き抜け、草原を子供たちが駆け回って笑いあっている。のどかな雰囲気に昨日の八寒地獄のような光景が本物の地獄だったかのように思えてしまう。
第2の故郷と言ってもいいこの地に無事帰ってこれたことに安心感を覚える。できればあんな危険な山には二度と行きたくはないのだが、高レベル引きこもり《レッド》の食料補給もかねているので行かないわけにはいかないのだ。
ほっこりするのも程々にし、私はマサラタウンのはずれにあるオーキド研究所に歩を進めた。
しばらく歩くと、なかなか大きな建物が見えてきた。あれがオーキド研究所だ。
そしてその玄関先で掃き掃除をしている女性がいた。
彼女はナナミ。私と同じオーキド研究所の職員であり、オーキド博士の孫に当たり、グリーンの姉でもある。
「う、うそ……」
ナナミは私の顔を見るなり、驚いて固まってしまった。カランカランと箒が地面に落ちる音が辺りに響く。
まるで幽霊でも見たかのような反応に私も少し困惑してしまう。
「こんにちはナナミさん。何か驚くことでもありましたか?」
私の言葉にナナミはハッと我に返り、慌てて箒を拾い直す。
「い、いいえ。オレンジくんは3日ほど休みだって聞いてたから、急に帰って来てちょっとびっくりしただけよ!」
「私も休暇を満喫するつもりでしたが、オーキド博士から呼び戻されたので帰って来たんです。というか、ナナミさんは私が呼び戻されたわけを聞いてないんですか?」
「聞いてるような、聞きたくないようなぁ……」
「はぁ」
なんともはっきりしない答えに私も反応に困ってしまう。
まあ、報連相は大事だが、博士もわざわざ全ての事を職員に話しておく必要もない。中には他言無用の機密情報だってあるのだから。
今回もそんな話の可能性があるが、ナナミさんの反応を見ていると何となく違う話のような気がする。
ごちゃごちゃ考えても仕方がない。この際本人に聞いてしまうのが1番早い。
「オーキド博士は中にいらっしゃいますよね?」
「ええ。今の時間なら多分書斎にいると思うわ」
「ありがとうございます」
そう言って会釈してから、私は研究所に入った。
書斎は奥の方にある。そのため入口からしばらく歩く。その間に研究に精を出す同僚たちに挨拶しておいたが、その度に驚いているのはどう言う事だろう。私が休みの日に研究所にいるのがそんなに意外なのだろうか?
たしかに私は休みの日はシロガネ山に行ってレッドとバトルしたり、グリーンからお小遣いをもぎ取ったりと研究所には行かない。しかし、私は自分の事を真面目に勤めてきたと自負しているから、そういった反応をされると少々傷つく。
しばらく歩くと書斎と掘られたドアが見えてきた。そして書斎のドアをノックすると、中から「どうぞ」という老人の声が聞こえてきた。
「失礼します」
ドアを開けると、眼鏡をかけて書類とにらめっこしているオーキド博士がいた。
博士は私の顔を見ると頬を緩ませ。
「おー、休暇中なのに呼び出してすまんのオレンジ」
「いいえ気にしてません。休暇中といってもやっていることはレッドの憂さ晴らし相手か、グリーンとバトルするくらいですから」
「はっはっは、まったく研究者らしくない休日じゃのう」
「同感です」
博士の笑い声に釣られて、こちらも笑みが溢れてしまう。相変わらず愉快な人である。
「それで博士。今回はどういった要件で呼ばれたのですか?」
「うむ。そうじゃの、その話をせねばな。お主は以前学会で会ったマグノリア博士を覚えてあるか?」
「ええ、勿論です」
マグノリア博士。博士としてはオーキド博士と並ぶキャリアを持ち、女性ながら男社会の傾向が強い学会でもかなりの発言力を持つ人物だ。専門はたしかガラル地方特有の現象、ダイマックスの源に関すること全般。
歳が近いからかオーキド博士とは昔からの友人のようで、私も学会で一度挨拶したことがある。
「わしは以前からガラル地方の独自の生態系を作り上げているポケモンたちに興味があってな。その事をマグノリア博士に話したら、共同研究という形で調査を許されたのじゃ」
「それはすごいですね。……はて? たしかその件は一度お断りされたはずでは? リーグ協会側の許可が難しいからと消極的な姿勢でしたよね? なぜマグノリア博士は翻意されたのでしょう?」
「うむ。代わりにあちらからも、わしに対して色々と条件を出してきておる」
「要は交換条件というわけですか。なるほど」
最近ガラル地方はダイマックス現象をリーグに利用して興行を図っていると聞いているが、その辺りと関係がありそうだ。
もしも新たな試みをしようとしているのなら、オーキド博士という協力者がいることは心強いだろうし。
「そしてその条件の1つに、こちらに送る調査員は身元がはっきりとし、ポケモンの知識もたしかであり、なおかつバトルの腕に優れている人物であるようにと言われておるのじゃ」
「前二者は理解できますが、バトルの腕ですか?」
「ガラル地方の野生のポケモンは、他の地方に比べて強い。生態系の調査をするとなれば、生半可なトレーナーでは危険だということじゃろう」
「なるほど」
たしかに、調査するとなれば野生のポケモンの生息地を歩くのだから、自衛手段がなければ命がいくつあっても足りないだろう。
「そしてうちの研究者で1番強いのはオレンジ、お主じゃ。そこで、お主には明後日にでもガラル地方に向かってほしい」
新たな土地、新たなポケモンたちとの出会い。その権利を与えてもらうのだ、研究者からすればこんな名誉な話はない。
断る理由は1つもなかった。
「はい。その役目喜んで承ります」
□
「本当にオレンジくんに行かせて大丈夫なの?」
そう言いながらナナミは、オーキド博士の前に茹だったお茶を差し出した。
表情には心配の二文字がしっかりと浮かんでいる。
そんな孫娘の心を知ってか知らずか、博士は柔らかな表情のままお茶を啜っていた。
「何を心配する必要がある。あやつは多少抜けているところはあるが、仕事はしっかりこなすやつじゃ。それにバトルの実力だって相当なもの。あやつに勝てるトレーナーなど、それこそレッドぐらいのもんじゃからの。はっはっは」
呑気に笑う祖父にナナミは胸ポケットからメモ帳を取り出して。
「カントー地方を旅していた時、ロケット団のシルフカンパニー襲撃事件。
ジョウト地方を旅していた時、復活したロケット団の起こしたラジオ塔乗っ取り事件。
ホウエン地方を旅していた時は、伝説の古代ポケモンが暴れまわり地方が滅びそうになった事件。
シンオウ地方を旅していた時は、ギンガ団の起こした事件。
他にもイッシュ、カロス、アローラと行く先々でその地方を脅かすような大事件に巻き込まれ続けてるのに心配しない人がいる!?」
「うーむ。改めて聞くと壮大な記録じゃな」
「呑気すぎるでしょ! 彼が強いのは知ってるけど、こんなにトラブルに巻き込まれてるのよ!? 万が一何かあったらどうするのよ!」
「あちゃー!?」
ナナミが力いっぱい机を叩くと、なみなみに入っていた熱いお茶が博士の手にかかった。
手に息をかけて冷まそうとする。そんな博士など気にせずに、ナナミはしかめっ面のまま博士を睨んでいる。
ナナミの自分譲りの頑固さに博士は眉を下げながら。
「あ、安心せいナナミ。ガラル地方では怪しげな組織が動いているという情報はない。特に何も事件など起こらんじゃろう」
「似たようなこと言ってた2回目のイッシュ旅だって、結局復活したプラズマ団の事件に巻き込まれたじゃない」
「はっはっは、そうじゃったかのぉ〜」
博士はバツが悪そうに視線を逸らした。
そんな情けない祖父の姿にナナミは冷たい視線を送る。
しかし、すでに博士間で決まったしまった話を一職員でしかない自分が文句を言ったところで覆るはずがない。そんなことは分かっているので、ナナミは諦めたようにため息をつく。
「はぁ。ちゃんと帰ってきてくれるかしらオレンジくん……」
「なぁに。数々の修羅場をかいくぐってきたあやつなら、何か起こってもどうにかするじゃろう。はっはっは!」
「はぁ……」
呑気に笑っている祖父に、ナナミはもう一度深いため息をついた。
簡単キャラ紹介
オレンジ……本作の主人公。丁寧口調だが、わりとS。時々天然。
レッド……原点にして頂点。オレンジとバトルするのが楽しみ。超人。
グリーン……サイフ。不憫。
オーキド博士……なんか愉快なおじいさんになったけど、すごい人。オレンジをかなり信頼している。
ナナミ……1番常識人。ヒロインではない。ジャンプで例えるなら、まもり姉ちゃん。
見たいのは?
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オレンジがアニメ世界に迷い込んだら
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オレンジがポケスペ世界に迷い込んだら
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オレンジが女の子だったら
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オレンジの日常