七星の悪夢 作:クソ雑魚ナメクジ
精霊達が満足に食事を終えた頃、俺は例の生徒をブルー寮の裏へとコッソリ連れ出した。
今頃寮の中では俺がそそのかしてやり始めた歓待デュエルで盛り上がってることだろう。最も、あの程度のお遊びを眺める程出来た人間でもないため、さっさと面倒ごとを解消してしまいたい。
何よりも。
「……おい。さっきから何をビクビクしている」
「ひうっ!?な、なななんでもないんです!」
さっきから後ろで無駄にビクついているこれが五月蝿すぎる。今も恐る恐るといった顔で俺の様子をうかがっている事が丸分かりだ。
ウザい。本当にウザったい。そもそもなんだこの女は?
本筋にこんな女がいた記憶など全く無ければ、漫画番やゲームですら見たことがない。
十中八九、本筋とは全く関係のないモブ。いてもいなくても運命には差し支えのない存在。
つまり、俺にとって利用価値すら見出だせない石ころ同然の人間だということだ。
なぜ、俺がそんな無価値な存在に時間を割かねばならない?……はぁ。馬鹿らしい。
「この前の事は忘れろ。俺はお前を助けてもいないし、出会ってもいない。お前の中で勝手に感謝するのはどうでもいいが、それを俺にまで押し付けるな」
「えぅ……でも、お父様やお母様には感謝はきちんと言葉にしないといけないと……それに助けてもらって嬉しかったし…その…」
「何を勘違いしている?これはお願いでも交渉でもない。命令だ」
「へ……?ひゃっ!?」
小声でぶつぶつと呟く女にイライラし、力強く突き飛ばして壁に押し付け、逃げられないように両手を女の顔の両側に叩きつける。
「へぅ……へぇぇぇぇ!!?」
「もう一度だけ言う。あの事は忘れろ。俺とお前は出会ったことも無ければ話したこともなかった赤の他人。いいな?」
「ま、まっひぇ……近い……近い……でしゅ……」
「もしこれを破れば……お前の身は保証しない。分かったか」
「ひぅ……わ、わかりましたぁ……わかりましたからぁ……許してぇ……これ以上はホントにダメェ…」
「ふん。分かればいい」
顔を赤くし、ガタガタと震えながら首を縦に振るのを確認し両手を離すと、女は目尻に涙を浮かべながらその場にへたりこんだ。だいぶ圧をかけられたようだ。これならば他に口外することもないだろう。
それにいざという時は処理した後にバラバラにして海に流せばいい。それくらいの手間ならコイツらに任せれば一瞬で事は済む。
へたれこんだ女をそのままに踵を返す。まだあのくだらないお遊びが続いているようなら、体調不良を訴えて部屋に戻ることにしよう。
あぁ……本当にうんざりする所だな。直接三幻魔を盗れるならどれほど楽だったか。
本当に邪魔だな……鮫島、影丸。
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結局あの後も歓待デュエルで盛り上がっていた為、白塗りと保険医に具合が悪いから休むと偽り部屋に戻ると、鍵をかけてベッドに転がった。
すると精霊達が様子を伺うように姿を見せると、和気藹々とはしゃぎ始めた。
それを横目で眺めつつ、仰向けになって天井を仰ぎ、瞳を閉じる。
今晩から本格的に物語が進んでいく。遊城十代と奴のライバルの一人となる万城目準とのデュエルだ。
別にターニングポイントでも何でもないが、影丸からの指令もあるし、見に行く必要はあるか。
何よりも俺という異物の混入によって物語が歪んでしまっている可能性もある。
「……ん?」
『っ?っ!』
そんな考え事をしていた時、ふと腹の上に違和感を感じて瞳を開ければ、見慣れた精霊の顔が俺の顔を覗き込んでいた。何かを話しているみたいだが、あいにくと俺は精霊の姿が見えても声までは聞こえない。
だが、心配そうにこちらを伺いながらペチペチと頬を叩いてきている姿を見れば、多少なりとも何を言いたいのかはわかる。
「……分かってる。お前らには世話になりっぱなしだからな。まだ時間はかかるが、全部終わったらちゃんと自由にしてやるから……今は少し眠らせてくれ……」
『っ!っ……』
精霊達だって不甲斐ない俺を見捨てずに協力してくれているんだ。失敗することは許されない。俺は三幻魔の力を持って生きながらえてみせる。
そして俺のせいで自由を失ったこいつらを解き放つ。
それが俺のやるべきことの一つでもあるのだから。
俺は数分の仮眠の為に瞳を再び閉じた。
閉じる前に見えた彼女の泣きそうな顔を見なかったことにして。