「ふー....」
簡単なストレッチをしながら、小さく息を吐く。
自分の中のスイッチを切り替えながらハイハットの
開き幅を調節して、スネアのスナッピーを入れ、
タムのチューニング、シンバルの位置、ペダルの調子を
確認していく。
今居るのはライブハウス「CiRCLE」のAスタジオ、
ここでアルバイトをさせてもらっている俺は、
実質代表をしている先輩スタッフの月島まりなさんの
計らいでバイト終わりにスタジオが空いていれば
使わせてもらっている。
まりなさんマジ天使、異論は認めない。
考えてみると、CiRCLEのオーナーさんって
採用面接でしか見たことないなぁ...
まあそんなことは置いといて、今日は1時間しか
空き時間がないし、バイト終わりの楽しみを
存分に楽しむためにも早速叩き始めますかね。
ウォーミングアップだし、久々にASIAN KUNG-FUGENERATIONの「リライト」でいいかな。
曲を決めたので早速流し始め、インパクトが強烈なリードギターのリフを聞きながら、感情に赴くままに
身を任せていく...
「思ったより、早く着いてしまったわね...」
予定よりも早く目的地に着いてしまったRoseliaの
ボーカル、湊友希那はそっと呟いた。
予約した時間の10分前にはスタジオに着くようにしている友希那だが、散歩がてら早めに家を出たのはいいものの、特に遠回りや寄り道をすることもなくCiRCLEに
着いてしまった。
近くで時間を潰そうにも外にあるカフェテリアが
臨時休業していて、今からどこかへ行くのも
時間が足りない。
今から行けそうな場所はどこかあったかしら?
「仕方ないわね...」
今日の練習する曲の確認、次の曲の構想など
出来るものね、と考え直してホールで時間を
潰すことにした。
ホールに入ってみるとカウンターにはスタッフが
誰もおらず、とても静かだった。
メンバーが来るまで座って待とうと思った矢先、スタジオからドラムの音が聞こえてきた。
最初は個人練習をしているかしら?、程度にしか
思わなかったが聴けば聴くほど、何故かその演奏に
魅了された。
正確なリズム、グルーブの作り方など、
ただただその演奏に圧倒された。
荒々しく叩く時もあれば、その場を包み込むように
叩く時もあり、見た者の心を掴む演奏している、
直感でそう思う演奏だった。
気がつけば私は、スタジオの扉前まで来ていた。
あまりよろしくない行為だとは分かっていたが、
扉のガラスの部分から中を覗いていた。
中では1人の男性がひたすらにドラムを叩いていた。
音楽を体全体で表現しているとすら思う光景で、
周りに一切意識を向けずに叩いてる様はドラムと
対話しているかのようだった。
ドラムしか聞こえてないのに、私たちが演奏には無い
”何か”を感じる、そんな気がした。
その”何か”を見つける為にも、気がつけばもっと見たい、
もっと聴きたいと思うようになっていた。
Roseliaとして、高みを目指すためにも...
「友希那〜?そんな所で何してるの〜?」
Roseliaのベースであり、幼馴染の今井リサに声を
掛けられてハッと我に返る。
スマホで時間を確認すると、もう予約した時間の
5分前であった。
時間に厳しいと自覚があるが、時間を忘れて演奏を
聴いていたらしい。
「こんな所でどうしたの?友希那?」
確かに、スタジオの扉の前で中を覗き込んでいるなんて
傍から見ればおかしな人と思われない。
「スタッフの人を探していただけよ」
そう苦し紛れに言い訳をして、ホールへ足早に向かう。
「早速、今日の練習メニューを考えましょう」
「ちょ、ちょっと待ってよ友希那!」
リサもこんな所で何をしていたのか気になっていたが、
特には聞かずにそのまま友希那を追っていった。
シャーン
最後にクラッシュシンバルとチャイナシンバルを
締めに叩く。
あぁ^~たまらねぇぜ。
本日ラストの曲、ヒトリエの「リトルクライベイビー」を
叩き終えるとそんな感想を抱く。
やっぱドラムを叩いてる時が1番楽しいね、普段
さらけ出せないような自分を表に出せるし。
時間を確認するためにスマホの電源を押すと、
予約が入っている時間まで5分を切っていた。
「やっべ」
内心焦りながらも、自前のチャイナシンバルを
仕舞ってそそくさとスタジオを出ていく。
さあ我が家に帰ろうかなぁと思っていると、
スタッフ用の休憩室に家の鍵を置いたままだったのを
思い出す。
取りに行くかぁ...そんなことを思いながらスタジオを
出て休憩室に向かう。
「Aスタジオを16時から18時の2時間だね、頑張ってね」
「ありがとうございます☆まりなさん」
リサがまりなさんにスタジオを料金を払い、
こちらに駆け寄ってくる。
「お金、払ってきたよ〜」
「それでは、行きましょうか」
「ええ」
Roseliaのギター氷川紗夜がそう言うと各自の機材を
運び始める。
「あれ?優真くん、まだ帰ってなかったの?」
「休憩室に忘れ物したんで、取りに来ました」
偶然、声の主が気になってカウンターに視線を向けると
先程、ドラムを叩いてた人物がまりなさんと話していた。
ここのスタッフさんだったのね...
覗いている時は顔が見えなかったから分からなかったが、ここのスタッフであることは間違いない。
何回か受付も受けてもらったので覚えている。
そんなことを考える内に、ユーマと呼ばれていた
男性は消えていた。
「友希那先輩、どうしたんですか?」
ドラムの宇田川あこが私の様子が気になったのか
聞いてくる。
「体調が悪いのですか...?」
キーボードの白金燐子も心配した様子できいてくる。
「いいえ、何でもないわ」
気になるのもいいが、練習があるのだから
切り替えなければ、そう思い気持ちを切り替える。
「さあ、早く練習しましょう」
この練習が終わったら、まりなさんにあの人について
聞いてみよう、そんなことを思いながら練習に向かう。
初めて小説を書いてみて抱いた感想が、自分で何書いてるかよくわかんね、そんな感じですね。小説を初めて書く人はこんな感じなんですかね?