「まりなさん、ちょっといいかしら?」
カウンターで事務作業をしていたまりなさんに
声を掛ける。
「どうしたの?友希那ちゃん」
まりなさんがこちらに顔を向ける。
「ユーマさん?というのはここのスタッフなのかしら?」
そう聞くと、まりなさんは不思議そうに首を傾げる。
「優真くんはうちのスタッフだけど、どうかしたの?」
あの人はここのスタッフで合っていたらしい。
ユーマさんについてもう少し聞いてみよう。
「ユーマさんはバンドなどやってるのかしら?」
まりなさんは急にカウンターから身を乗り出す勢いで、
「優真くんは凄いよ!バンドは組んでいないみたいだけど、ギターとベース、キーボードも人並み以上には弾けるし、ドラムの腕は1級品だよ!
音響機器とかの知識も沢山あるし、作曲と作詞も出来るし歌も上手だよ!」
急に早口になったので少し顔を引きつらせながら、
さらに質問してみる。
「ユーマさんは今日、来てるかしら?」
そう言うと、まりなさんはなんでそんなことを
聞くのだろう?そんな顔をしながらも、答えてくれる。
「来てるけど、さっきスタジオの清掃とか頼んじゃったから戻ってくるのにもうちょっと掛かっちゃうかな」
練習まで時間がまだあるので、ユーマさんについて
もう少し聞いてみよう。
「それで、ユーマさんは………
んにゃぴ...ちょっとよくわかんなかったです。
んにゃぴ警察が出動してきそうなことを考えてると、
やっと脳が落ち着いてきた。
俺がRoseliaのアドバイザー?どゆこと?
ヤバイ、また脳が処理落ちしそうになってくる。
まず第一に、Roseliaと俺って接点があったっけな。
スタジオの貸す時や予約の時に話すことはあったから、
接点はあるにはあるけど、そこからアドバイザーに
なってくれってのはおかしい。
取り敢えず、聞き間違いかもしれないし、
聞きなおしてみる。
「えっと...俺にRoseliaのアドバイザーをしてほしいって言いました?」
そう聞くと、銀髪の子が間髪入れずに答える。
「ええ、そうよ」
Oh...
頭を抱えたくなるが、聞き間違えじゃないらしい。
なんでこんな事になっているのか、まりなさんに
聞いてみる。
「まりなさん、なんでこんな事になってるんですか?
そもそも、俺ってお客さんと店員ってことしか
Roseliaと接点が無いんですが...」
そう聞くとまりなさんは笑顔で、
「友希那ちゃんに色々聞かれたから優真くんのこと、
色々と答えておいたよ!」
サムズアップしそうな勢いで、そんなことを言ってくる。
「はぁ...例えばどんなことを言いました?」
「優真くんが色々と楽器が弾けることと音響機器とかに
詳しいこととか、後は作詞作曲出来ることとかかな?」
俺のプライバシーは何処へ行ってしまったのだろうか...
「後、前にサポートで演奏していた時の映像とかも
見せたよ!」
今日だけはまりなさんが悪魔に思える。
鬼!悪魔!まりなさん!
そんなことを思いながら、それだけで何故、
俺にアドバイザーを頼もうとしているのかを聞いてみる。
「なんで俺にアドバイザーを?さっきの情報だけじゃ、
アルバイトしてるだけの人に頼まないと思うけど」
「この前、スタジオで練習していたのを見て、あなたなら
大丈夫だと判断したまでよ」
この前の練習...1時間くらいやってた時のか!
確かにやっていたけど、見られていたのかあれ...
「優真くんも暇な時間が多いでしょ?手が空いてる時だけでいいみたいだし、やってあげなよ!」
うーん、趣味で楽器を触ってるだけの人がやっても
いいのだろうか...
「本当に俺でもいいの?ちゃんとしたアドバイスとか
出来るとは限らないよ?」
「客観的意見だけでも大丈夫よ」
ほんまにええのかそれ
「じゃあ決定だね!それなら友希那ちゃん、
この後の練習から早速入ってもらう?」
「ええ、そうしてもらおうかしら」
脳が情報を処理しきる前に、まりなさんたちが
どんどん決めていく。
「ちょっと待って、この後の練習って何時から?」
「30分後ね」
おい、まじか
「まりなさん、何か仕事とかあるんじゃ...」
「掃除と点検が終わったなら特にないよ!」
ああもう逃れられない!
あかん、脳がそろそろ死ぬ気がする。
そんなことを思いながら、こうなったら何言っても
ダメだろうと半ば諦めてる自分がいた。
ラウクレがあるので、次も遅くなるかも…