オラリオに不動卿がいるのは間違っているだろうか   作:荊軻

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オラリオ帰還

「ねぇねぇジャガ丸くん!ジャガ丸くん!一個だけにするからお願いだよオーゼン!」

「ああ一個だ。ギルドに預けてる本拠(ホーム)の鍵を取って本拠地の掃除をしたら一個だけ買ってやるよ」

「ぶー!ぶー!」

 全く、この神は子供か?

 あまりにもぐずるものだから猫のように首根っこ掴んでオラリオの中心、ギルドに向かっている。私達オーディンファミリアの本拠(ホーム)の鍵を昔の私の担当アドバイザーに預けている。

 そのため担当アドバイザー(そいつ)から鍵を返して貰わなければならない。その後に掃除だ。十何年も居なかったから相当汚れているだろうね。

 そろそろオーディンが拗ねてきたから早くギルドに向かうとしよう。

 

 

=== エイナ side ===

 

 

「エイナー!カウンター人来てるから行ってくれる?私すぐに終わらせないといけない書類あるから」

「分かった、行ってくる」

 あ~もう!どうして急に忙しくなったのよ!

 いつも忙しいけど、今日は何故か朝から急にギルドの上層部が慌ただしくなって、出さなきゃいけない書類の期限が早まって余計忙しくなってる。

 そしてこんな時に限って人が来る。

 全く、またどこかの白兎君じゃないでしょうね。

「すみません、お待たせしました。今回はどのようなご用件でしょうか?」

「預けたものを取りに来ただけだよ」

 お、大きい。

 でも背中が頭の上にある。物凄い猫背。

 ヒューマンなのかな?まっすぐ伸びたら多分2M以上あるよね。

 てっ、それよりも仕事仕事。

「お預けものですね。どのような物をいつお預けになりましたか?」

「十数年前に本拠(ホーム)の鍵を預けたよ」

「本拠地の鍵をですか。預けた職員の名前とファミリアを教えて下されば確認を取ってきますよ」

「ロイマンにオーディンファミリアって言えば分かるよ」

「ギルド長!?わ、分かりました。直ぐに確認を取ってきます」

 ロイマンギルド長に鍵を預けた?

 十何年前だとしても、一冒険者がギルド長に物を預けられる立場だとは思えないし。もしかしてかなり昔からの付き合い?でもあの人二十半ばのヒューマンにしか見えないし。

 でもとりあえず確認を急がなきゃ。

 それにしてもギルド長はどこにいるのかしら。いつもならその辺ウロウロしているのに、こんな時に限って姿が全然見えないし。

「エイナ・チュール!」

「ギルド長!ちょうど今ギルド長を探していて…」

本拠(ホーム)の鍵だろ」

「知っているですか!?」

「そんな事はどうでもいい。早く行くぞ」

 いつも威張り散らしているロイマンギルド長がこんなに慌てているなんて、あのヒューマンの女性って一体何者なの?

「おや、思ったより早かったね」

「朝にガネーシャファミリアからオーディンファミリアのオラリオ入りが報告されたから、あらかじめ準備していたのだよ。ほら鍵だ、しっかり確認しろ」

 そう言ってギルド長が(ふところ)から木箱を取り出し、開けて出てきたのはとても鍵には見えない四角柱状の石の棒?

 あの人は鍵って言っていたのに、石の棒?いくら性格が良くないノイマンギルド長でも仕事はちゃんとこなす人だから、預かりものを無くすことなんて無いと思うのだけど。

「確認も何も私以外には起動出来ないけどね」

「ギルドには手順というのがあるんだ。それに従え」

「分かったよ」

 あの人以外に起動出来ない?

 使用とかなら少しはわかるけど起動ってどういう意味なんだろ?

 そして女性は首に提げているミノタウロスの頭みたいな笛?を吹き始めた。

 

  フオオォォン

 

 すると石の棒が生き物のように動きだし、その形を棒から徐々に鍵にへと変えていった。

「え!?い、石の棒が鍵に!?」

「まぁ当然オーディンファミリア(うち)の鍵だよね」

「ならさっさっと帰れ、こっちはお前のお陰でやる事が増えてるんだ」

「言われなくても帰るよ」

 私が驚いてるのを尻目(しりめ)に、今の光景を二人は当たり前のように流し、ギルド長は女性を帰そうとして、女性は帰ろうとしている。

「えっちょ、ちょっと今のは!?」

「特別な素材なだけさ、ほら行くぞオーディン」

「ぶー、ジャガ丸くん!ジャガ丸くん!」

「掃除が終わったらな」

 女性は私の問に流すように答え、床に(いつから分からないが)拗ねた子供のように寝転がる女神の首根っこを猫のよに持ち上げギルドを後にした。

「ギルド長、あの女性は一体…」

「全ての冒険者の頂点だ」

「え?」

 それだけを言い残し、ギルド長は自分の執務室へと戻っていった。

「全てのってどういう」

「言葉のままだよ」

 私の疑問に答えるように語りかけてきたのは、ギルド職員の中でも古株のアドルフ・ベイレル。ギルド務めになる前は冒険者だったそうだ。

「言葉のままだとしてもオラリオの頂点はフレイヤファミリアの《猛者(おうじゃ)》オッタルですよね」

「今まではそうだけど、あの人が戻ってきた以上、それは覆る」

 覆るってことはLv7の《猛者(オッタル)》以上の存在?

 ということは少なくともLv7以上という事?

「でも今までそんなの聞いた事ありません!」

「あーそっか、エイナは十九だったな。なら知らなくて当然だ」

「どういう意味ですか?」

「《不動卿》聞いた事あるか?」

 《不動卿》?

 人からあまり聞いた事は無いけど、時々資料整理の時にその二つ名が載っているのを数度見かけただけれど、特に気にしたことはない。

 冒険者なのは分かるけど、知名度までは全然知らない。

「その《不動卿》ってどんな存在なんですか?」

「少なくても五十年以上前から存在が確認されているヒューマンの冒険者だ」

「五十年!?でもいくら冒険者でもそんなに時間が経っているならもう引退しているはずじゃ」

「冒険者はLvによって寿命がのびたり、外見の老化が遅くなる。第一級冒険者が顕著だな」

「それは知っていますけど、だとしても限度があるんじゃ…って、まさか、《不動卿》のLvはいくつですか!?」

 五十年以上前から存在していて、その外見は《恩恵(ファルナ)》によって老化は著しく停滞して若いままでいるのなら、その《不動卿》のLvは少なくても8といった今までは聞いた事がない数だとしか考えられない!

「最終報告でLv10。それがさっき出ていった女性、《不動卿》またの名を《動かざるオーゼン》だ」

 それは私の想像を遥かに上回るものだった。

 

 

=== エイナ side out ===

 

 

 ギルドから鍵を返してもらい、本拠(ホーム)の掃除を始め、今ようやく主要な所は終らせる事ができた。

 他所やギルドに見せられない場所はまた今度やる事にしよう。

「うー、お掃除ようやく終わったよ」

「あぁお疲れ様、約束通りジャガ丸くん買ってやる」

「やったー!あっでも、もうお夕飯の時間…」

「なら明日何個か買うさ」

「ありがとうオーゼン!」

 そう言って私に抱きついてくる我が神オーディン。

 行動が一々子供じみているが、これでも立派な女神だ。五十年来の付き合いの私でも少し扱いに困る事がちょくちょくある。

 昼間も揚げ物くらいで、売り物の玩具(おもちゃ)を前にした子供のようになるとはね。

 本当に(ただ)の子供だよ。

「オーゼン、お夕飯はどうする?戻ってきたばかりだから何も無いよ」

「あぁ、それなら大丈夫。街を移動する途中、面白い店を見つけてね」

 時間はもう夜。

 ちょうど飯を食うついでに、会いに行くのも良いかもしれないね。

「お店?」

「《豊穣の女主人》何でもミアが店主をしてるらしい」

 久しぶりに昔の冒険者仲間に会ってみとするか。

 




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