魔法少女リリカルなのは〜暁の軌跡〜   作:komokuro

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第2話 はやて

海鳴市第一図書館

 

イタチの家から歩いて30分ほどの場所にあり、イタチの暮らす海鳴市で最も大きな図書館だ。

設計を当時の有名な現代建築家に頼んだらしく、図書館というよりは美術館に近いモダンな建物になっている。

一応、個展を開催できるスペースもあり、今日も新進気鋭の画家の個展を開催していた。

図書館に入ると、平日の朝のせいかほぼ無人だった。

イタチは目的の欄で数冊の本を手に取り、いつも座っている席へと向かう。

手にした本は古事記や民族衣装などに関する資料で、普通の子供ならまず手には取らないものだった。

席に着くと手にした数冊の本を読み始めた。

 

 

 

どのくらい時間がたっただろう。いつの間にか閑散としていた図書館にも人が集まっていた。

ふと、イタチが時計を見るとすでに昼をとうに過ぎていた。

 

(いくら調べても未だに確信に至る物はないか。キーワードから古事記が関係していると思ったが、これも勘違いか)

 

夢で聴いた単語には、「天照」や「須佐能乎」など日本神話に関係する物が混じっていたことから、それが何か関係しているのではないかと踏んだのだが、今回も特によい結果は得られなかったようだ。

イタチが最初に調べ始めたものは忍者に関係するものだった。

夢の死体達が、手裏剣やクナイを手にしていたことから、彼らは忍者もしくはそれに類する物だと考えたのだ。

しかし、さまざまな過去の資料を見ても彼らのような衣装を着た忍者は存在していなかった。

故に、そのことを調べるのをいったん止めあの男から毎度つぶやかれる単語に対象を切り替えた。

 

(焦りすぎか、また母さん達に心配されるな。……とりあえず、いったん切り上げるか)

 

イタチは内心焦っていた。

いったん作業を止め、昼食をとるために別室へと移動する。

この図書館には飲食をとるためのスペースがある。一応、簡易的な売店もあり、市営にしてはなかなか至れり尽くせりだ。

昼食を食べ終え、戻る途中にイタチは見知った少女いることに気づいた。

相手もイタチの存在に気づいたのか、満面の笑みを浮かべながらこちらに歩いてくる。どうやら、右足が悪いのか少し引きずっている。

 

「おお、イタチくんやないか、久し振りやなぁ」

 

「数日前にも会った気がするが?」

 

イタチはジト目で少女を見る。

 

「まあまあ、男の子が細かいこと気にしてたらあかんで」

 

イタチと同い年の栗色の髪の少女・・・八神はやてだった。

 

 

 

はやてと出会いは一ヶ月ほど前になる。

 

「えらい難しそうな本やけど読めるん?」

 

イタチが本を読んでいると突然後ろから声がした。

振り返ると、イタチと同い年位の栗色の髪の少女が立っていた。

 

「ああ」

 

そう呟くと、すぐに視線を戻した。

イタチは内心少し驚いた。同じくらいの子供が話しかけてくる事など今までなかったからだ。

早熟の天才故に、なかなか同年代とかみ合わずさらにイタチがまとう奇異な雰囲気が他者を遠ざけていたためだ。

 

「ちょ……、そっけないなぁ~。あ……私の名前は八神はやてや。」

 

「……うちはイタチだ」

 

本から目線を外さずに答える。

イタチ的には関わらないでほしいと思ったが、なんとなく自己紹介を返してしまった。これが悪手だった。

 

「イタチ………イタチって…くく。変わった名前やなぁ」

 

「く、名前のことは僕も気にしてるんだ、ふれないでくれ!」

 

はやての言葉に珍しく感情を表に出したイタチは内心しまったと思ったが、これではやても離れ集中出来ると考えた。今のイタチには初対面の相手にかまっていられるほど心の余裕がなかった。

余談だが、イタチは名前に少しコンプレックスを持っている。イタチは自分の名前が世間的に見てちょっとずれていることに気はわかっていた。

このことを、何度か聞こうとしたことがあったが未だ聞けていない。さすがに、そんなことを聞かれたら両親は気まずくなるだろうとイタチは考えていた。

 

「あ~もうそんなに怒らんといてよ。短気やなぁ」

 

「別に怒ってる訳じゃない。それで、何?今忙しいんだけど」

 

はやてはイタチをたしなめる。少しは驚いたようだが、離れる気はないようだ。

 

「あ~えっと。なんやったけな?忘れたわ」

 

「はあ~~」

 

ため息をつきつつ再び、目線を本に戻そうとする。

 

「あ~もう。無視せんといて、ちょっとくらいおしゃべりしてもええやないか」

 

「はぁ~図書館では静かにと教わらなかったのか」

 

いつのまにか、周りの視線がこちらに集まっていた。

 

「……そうやな……静かにせんとな」

 

その後、はやてから一方的に話題を振られ続けたが、イタチは素っ気なく返すだけだった。ある程度するとはやては諦めたのか帰って行った。

こんな態度とったのだ、もう会うことはないと考えていたが、

 

「イタチくん、またおおたな」

 

すぐに期待は裏切られこの図書館来るたびにはやてに会うようになった。そして、執拗に話しかけてきた。

理由はわからないが、はやてはイタチの事を気に入ったらしい。最初のころは素っ気ない態度をとっていたイタチだったが、少しずつはやての話に耳を貸すようになっていった。

ついには、イタチにとって初めての友達と呼べる位置にまではやてはなっていた。

 

 

 

イタチは先ほどの席に戻ると再び本を読み始めた。

はやてもいつの定位置のごとくイタチの隣に座る。

 

「で、今日は何の本読んどるん?」

 

「日本神話に関する本だ」

 

はやてがイタチの読んでいる本をのぞき込んだ。そこには、はやての知らない未知の言語が広がっていた。漢字が書いてあるため日本語のようだが、どれも見たこともないものだった。

絵本程度しか読んだことのないはやてにはさっぱり理解出来なかった。はやてはそっと目をそらす。

 

「は・はは・・・また今回もえらい難しいもん読んどるなあ。私にはさっぱりわからんは、とかこれ何語の本や日本語やないで」

 

「これは、れっきとした日本語の本だぞ。ただ、戦前の本だから言い回しが古かったりもう使われてない漢字が会ったりするだけだ」

 

「前からずっと思うとったけど、イタチくんはいったい何に関して調べてるん?」

 

「いろいろだよ。いろいろ」

 

イタチは素っ気に態度でかえす。

 

(相変わらず、教えてくれへんなぁ。友達なんやから教えてくれてもええのに)

 

イタチはまだはやてに夢の事を話してはいなかった。初めての友達を失うのが怖かったのかもしれない。

まあ、はやてがこの程度の事では離れては行いかないだろうが。

 

「ま~ええわ。でも、いつかは教えてな」

 

「ああ………」

 

そういうと、はやては持っていた本を読み始めた。

それから、いつものように時より談笑したりして時間は過ぎて行った。

 

 

 

はやての携帯が鳴る。どうやらいつもの家政婦が来たようだ。はやての両親はすでに他界していた。近しい親戚も居ずどうしようかというとき、聞いたことも見たこともない父親の友人が支援に名乗り出たそうだ。医者から家政婦の手配までしてくれたらしい。毎月、きちんと手紙もくるそうだ。お礼の言うためにせめて一目会いたいと思っているらしいが、相手方が多忙なのかまだあった事もないらしい。

 

「お、お手伝いさんからメールや。しゃあないなぁ~私先に帰るんけど、イタチくんはまだいるん?」

 

空はまだ明るかったが、後一時間もすれば日は落ちるだろう。

 

「もうすぐ帰るよ。また、母さんたちに心配かけると嫌だし」

 

「そうやな。最近なんか物騒やから早く帰ったほうがええで」

 

「ああ。わかったよ」

 

はやてが帰る姿を見届けると、再び書籍に目を移す。

 

(時間的にはもう少し入れるか)

 

そう考えつつ本に熱中するあまり結局日も落ち、辺り一面暗闇が包んでいた。

 

(結局、夜になったなあ、また母さん達を心配させるな)

 

そんなことを考えていると、誰かが肩をたたいた。

イタチが振り向くと、ため息をつく母親の姿があった。

 

「はぁ~~~イタチ・・・夜までには帰ってきなさいって言ったでしょ。まったく」

 

「あれ、母さん仕事は?」

 

イタチの額に冷や汗が浮かぶ。

 

「いろいろあって早く終わったのよ。それよりも帰るわよもう」

 

「いや、あと、もう少し」

 

「ん!」

 

顔は笑顔なのに額には青筋が立っていた。

あの笑顔の先に何があるのかはすでに経験済みだ。

 

「帰ります・・・」

 

イタチは観念し、静かに帰り支度をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

二人は手を繋ぎながら、帰路につく。

今日は空が曇っているため、道を照らすのは町の街灯だけだった。

無言で歩くイタチに母親は突然切り出した。

 

「それにしても、今日はやたら警官が多かったわね。逃亡犯なんだか知らないけれど捕まったかしら?」

 

「ん?」

 

「朝のニュースで言ってたじゃない。何かの犯人が逃げてるって」

 

イタチは朝のニュースでそんなことを言っていたことを思い出した。

確か、殺人犯で3日前から逃亡しているという事件だったはずだ。

 

(警官が多かったのはそういう理由か)

 

図書館へ向かう最中確かに町の至る所に警官がいた。そして、住民に何か見せて聞き込みしている用だったが、そういう理由があったのかと納得する。

 

「心配してきてくれたの」

 

「ええ、もしかしてと思ってね」

 

「3日も逃げてるんだから、たぶんこの町にはもういないよ」

 

「そうかもね」

 

これだけの規模で見つからないのだ、もう遠くに逃げたのだろうイタチは考えた。

 

「夢についてなにかわかった」

 

唐突に母親は切りだした。イタチは答えない。

 

「朝も言ったでしょ、もう少しは親をたよりなさい」

 

「ごめん。母さんこのことは、どうしても僕一人で解決しないとだめな気がするんだ」

 

イタチはうつむいたまま静かに答えた。この問題にこれほど執着する理由はイタチでも未だわからなかった。

 

「そう………」

 

母親は悲しそうに静かに呟いた。かすかにイタチの手を握るミコトの力が強くなるのを感じた。

二人は街灯照らされた道を帰って行く。そして、ついにイタチは答えを得る。

 

 

 

 

 

 

 

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