イタチは考えていた。これからのこと、これからの人生を。
今まで里と弟を存在理由に考え生きてきたイタチ。それがない今のイタチはまさに空っぽだった。
イタチは起きている時は常に、病室から見える町並み眺めていた。見えるのはこの世界に生まれてからよく知っている町並み。
一族の根絶やしにし、数多の命を奪ってきた自分が今一度生を謳歌するのはやはり気が引けた。
長門の生きろという言葉が心に響く。
(俺はこれからどう生きればいい……)
考えた結果、残ったものはやはり家族だった。
襲われた母親の様態は出血は酷かったものの、そこまで重傷というわけではなく。
むしろ様態はイタチよりはいいそうで、早期に退院できるそうだ。
襲われた吸血鬼に関して新聞などで調べてはみたが、犯人が捕まったという情報は一切なかった。
さらに、あの日を境に事件そのものがなかったかのような扱いになっていた。意図的な情報操作が感じられた。
(確かやつは月村と言っていたな)
この街、海鳴市で「月村」といえば一軒しかない。
資産家で有名で、イタチの母親が務める製薬会社も月村が関係していた。
それにイタチには気になることがあった。それはイタチが目覚まして数日たった日のことだ。
男女の刑事がイタチを訪ねてきた。
あのような事件に巻き込まれたのだから、事情聴取はあるだろうと考えていたが訪れた刑事にイタチは疑念をもった。
年齢は三十代半ばに見えたが、うまく変装していることがイタチはわかった。
男性からはただならぬ雰囲気を感じ、女性からは常人では聞こえないだろうがイタチには機械の駆動のような音が聞こえた。
内容は簡単な事情聴取だった。女性の方が質問をし、男性はただ静かにイタチを見つめていた。
犯人の顔や姿などを聞かれたが、イタチは何もわからず気づいたら病院だった答えた。
相手はイタチのあまりの冷静さに少し疑問を持ったようだが、聴取が終わると静かに帰って行った。
(刑事は月村の関係者だろう。月村と吸血鬼に関して調べる必要があるな)
あの吸血鬼の話から、今回襲われたのは偶然だったとイタチは考えている。しかし、母親が月村系列の仕事している限り標的になる可能性があると考えていた。
イタチは母親の仕事内容までは聞たことはないが、もし月村の中枢に関係する仕事をしているならば襲われる確率は上がるはずだ。
イタチは早急に力を取り戻すために行動を開始した。
入院は全治3ヶ月以上といわれたが、イタチはたった一週間で退院した。これには医師も相当驚いていた。
少ないとはいえイタチにはチャクラがる。医療忍術という治療用の術もあるがイタチは使用出来ない。だが、原理は知っている。
チャクラを使い肉体を強化、活性させ傷を癒す。それでこの短期間で回復したのだ。
両親から人が変わったようだと言われたが、あのような事件に巻き込まれたのだからしょうがないと思われていた。
退院後、イタチは吸血鬼や月村について調べようにも大きな壁が立ちはだかった。
一つ目が情報源、前世では優秀な忍と言われようが今のイタチは6歳の子供、チャクラがあれば術を行使して裏世界に入り込むことができただろうが今はそれすらできない。
二つ目は……文化レベルの違いだ。こちらの世界の科学技術は下手をすればイタチの世界の何十世代も上を行く。イタチにとってはすべてが未知の技術だ。
前の感覚でどこかに潜入などしようものなら、即座に捕まってしまうだろうと考えている。
三つ目は……門限ができた。あの事件で両親が以上に過保護になり、自由に行動できる時間が減っていしまった。
「はぁ~、とりあえず知識面もだがチャクラがなければ話にならないないか。写輪眼も開眼初期状態だしな」
珍しくため息つきつつ、イタチは今後のことを自室で考えていた。
写輪眼の性能は成長する。初期は勾玉模様が一つだけだが、最大三つまで増える。増えるごとに性能も各段に上がっていく。
海鳴市は山と海に囲まれた街だ。森に入れば人目もつかない。
深夜に行けば誰にも見つからないだろう。
そんなことを考えつつ、修行しつつ一ヶ月の月日が流れ、イタチの小学校入学の日となった。
クラス分けを見ると何の因果か月村の名前があった。さらに学校で意外な出会いもあった。
「イタチくん!」
廊下で不意に声を掛けられ振り向くと、そこには満面の笑みを浮かべたはやてがいた。
どうやらはやても同じ学校だったようだ。相変わらず、足が悪いのか松葉杖を持っている。
「イタチって、名前が別のクラスにあったからまさかと思うたが、やっぱりイタチくんか。えっらい久しぶりやなぁ~最近図書館こんから、なにかあったかと心配したはわ。ん?イタチくんなんか雰囲気変わった?」
「はやても同じ学校だったのか」
「あれ?前えゆうてへんかったけ?」
「ん?そうだったか?」
イタチは腕を組みつつ過去の記憶を思い出すと、確かに図書館でそのような会話をしていたことをおぼろげながら思い出した。
あの時のイタチは夢のことを考えるのが全てで、はやての会話にただ相槌を打つだけだったためあまり覚えていなかった。
「で、なんで最近図書館こんの?」
「家ことで少しごたついてな。行く時間がなかったんだ」
「ふ~~ん。あ、なあ。今日一緒に図書館いかへん?前、私が本でわからんこと教えてくれるって約束したやろ?覚えとる?」
「すまない。今日は予定があるんだ」
「え~~少しくらいええやん。てか、なんかしゃべり方が少しかたっくるしくなったなぁ」
イタチはそっと人差し指と中指をはやての額に当てた。
「許せはやて……また……」
言葉が詰まった。
脳裏に前世の最愛の弟の姿が浮かんだ。
いつもそうだった。イタチは約束を破る時や、忙しい時はそうやって弟に許しをこいていた。
今思い返せばもっと弟にかまってやるべきだったのかもしれない。そうすれば、弟は間違いを犯さなかったのかもしれない。
きょとんしているはやてから、手を下ろした。
はやてのほほが赤く染まっていた。
「いや。ついて行こう」
「む~~女の子にそないなことしたらあかんで」
「ああ、すまない。ついな」
「ほんま雰囲気かわったなぁ。ほんまに何があったん?」
「秘密だ」
「も~~またや。秘密。秘密て」
イタチは苦笑しながら怒るはやてを見つめて居た。
学校生活はイタチにとって退屈極まりないものだったが、こんな平和な生活に少し新鮮味を感じていた。
前世は忍者を育成するアカデミーと呼ばれる学校に行ってはいたが、学ぶ内容は主に戦闘術がメインでこんなにゆったりとした学園生活ではなかった。
それに、アカデミーも飛び級で七歳には卒業してしまった。そのあとは実戦に次ぐ実戦。
心休まる日はなかった。
(平和とはこういうことを言うのだろうな……)
授業中、窓の外を見ながらイタチは思った。
イタチの友好関係だが、相変わらず近寄りがたい雰囲気からクラスで仲の良い友達いず、話すのは休み時間にやってくるはやてだけだった。
はやての方は持ち前の明るい性格から友達は多いそうだ。
それから半年の荒行で、なんとか影分身の術を使えるようになった。
影分身の術は分身とは違い実体をもつ分身だ。さらに、分身が消えるときそれが体験したことや目撃したことが、術者の記憶と経験になるのでスパイ活動に強力な効果を発揮する。
ただし、この術は、分身にチャクラを均等に分ける必要があるため、正確なチャクラコントロールが必要とされ会得難易度が高い。
この術のおかげで、いつでも気兼ねなく修行が出来るようになった。現代の技術でも分身と本体を見分ける事が難しいことも実証済みである。
「せめて、少しは体を作ってい置けばこれほど時間はかからなかったのだな。チャクラ量も生前には程遠いか。戻すまでに何年はかかるか」
三日月が夜空に輝く森の中で、イタチは空を見上げながら呟いた。
イタチが立っているのはこの森に生える杉の天辺、周りは木々がうっそうと生い茂り彼方に街の光がきらめいている。
一度あることは、二度ある。
月村の家があそこにある以上、また吸血鬼がこの街に現れるかもしれない。
「早く、戻さないとな」