「おやすみしてんじゃねーぞ……」
!?
耳元で囁かれて飛び起きる。
ごつん。
「いったぁい!?」
「えぇ!?ごめん!!」
振り替えるとおでこを抑えて涙目になるアキくんがいた。
どうやら僕が寝てるのを見てイタズラしようとしていたみたいだ。
アキくんがぼそぼそと耳元で喋るのは、なんというか……心臓に悪い。
今後そういうことをしたいなら許可をとって欲しいものだ。
「うう……あのね、今日もギターなんだけど……いいかな?」
「う、うん……良いけど」
いそいそとギターを取り出すアキくん。
チューニングは……え?今日はいいの?
「自分でやってみたんだ」
「へぇ」
「聴いててね」
大人しく椅子に座ると、アキくんは膝にアコネコを乗っける。
様になってるねぇ。
ビン……ボン……。
ん?
昨日とはあきらかに違う。
え、ちゃんとした音……え?
「成長早くない?」
「んー?」
「いやだから、ギターの成長。もしかして練習した?」
「んふふ、まあね」
はぁ……!本気なんだな、アキくん。
いや、ギターを買った時点でやる気だなとは思ったけど……。
まさか、昨日の今日でちゃんと音を出せるようになるなんて驚きだ。
「でもね、なんか……ボクの指って爪が長いからどうしても爪が当たっちゃうんだよね」
「爪?」
「うん。深爪ギリギリまで切っても、指の柔らかいとこが当たっちゃって」
へぇ、指の柔らかい……ん?
ってことは、指はまだ硬くないし、皮膚は柔らかい……。
「アキくん、長時間練習したんだよね?」
「え?うん」
「ちょっと指見せて!」
蹲み込んでアコネコを抑えつつアキくんの手を取る。
「え?ちょ、ちょっと?」
「やっぱり……小さい水ぶくれができてる」
「え?ほんと?」
アキくんの細くしなやかな指に、ちいさな袋がぷっくりと現れている。
あぁ……おいたわしや……。
「アキくんソーイングセットって持ってる?」
「え?うん、ロッカーにあるよ?」
「ちょっと借りていい?」
「……?うん。けど、お裁縫セットなんて何に使うの?」
とりあえずアコネコを置いてもらい、アキくんのロッカーにお邪魔する。
えーっとソーイングセット……あった。四つ葉のクローバーとネコのシルエットが描かれている。
可愛いなおい。
「一本ダメにしちゃうから、あとで僕のを返すよ」
「いまだに何をやろうとしてるのかわからないんだけど……?」
「あっ、ごめん。今から水ぶくれを潰すんだ。ほんとは何もしないで安政にしてるのが一番なんだけど……」
小さなやつだったら潰してもすぐに繋がるだろう。
消毒液は教室に常備してるやつを……水抜き用のティッシュも用意する。
あとは……。
「あっ、先生!ライターを貸して貰えませんか?」
困惑する先生からライターを受け取る。
やっぱり持ってやがったよニコチン中毒教師がよぉ。
あ、先生は外出ててくださいね。アキくんの教育に悪いです。
「ライター?」
「ちょっと待ってね。いま治すから」
ライターと針で水ぶくれを治療していく。
大変心苦しいが、ふやけさせてから穴を開ける。
あああああああ開いちゃった!綺麗なおててに開いちゃった!
ここまできたらもうやるしかない。
ティッシュ……よりもガーゼが適任だったし治療箱にあったのでガーゼで水抜きをしていく。
中の液体がある程度吸い取れたところで……。
「っ!!」
「ごめん、痛かった!?」
「……ううん、大丈夫。ボクのためにやってくれてるんだもん」
アキくんの足がたまにピクピクしている。
痛みで強張ってるんだ。
「なるべく痛くないようにするから……」
「う、うん……」
あと……もうちょっとで。
丁寧に針を刺し、皮を繋げていく。
「ん……っつ……」
「うわ……柔らかいっ……」
「痛っ……くない、痛くないよ」
絆創膏じゃカサカサなっちゃうから、包帯を巻いて……。
「いった!」
「ふぅ……ふぅ……終わった……?」
「うん、最後までいったよ」
「よかった……」
そう言って、僕の巻いた包帯を撫でるアキくん。
あ、そうだ、ライター返さないと……。
え?先生?どこいくんですか?
『センシティブ』ってなんのことですかああああああ!?