万象の半精霊   作:宇宙豆

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第13話

「それでは僕から自己紹介をするね、名前はメルロウ...特技は暗器を使う事、一応少しだけなら魔法も使えるけど余り期待しないでね。」

 

会議を始めて早速メルロウが自己紹介をした。

それに続いて俺達も自己紹介をしていく。

 

「じゃあ次は僕で...名前はリク、見ての通り剣で戦う戦士で魔力の操作は苦手なので基本的にスキルを使って戦います。」

 

「私はアナ、回復魔法が得意で攻撃魔法も少しは使えるわ、近接戦闘は出来ないから前衛は貴方達に任せたいわね。」

 

「次は私ね...名前はリーリア、エルフよ。得意な武器は弓で弓師(アーチャー)、近接は少しは出来るけど得意じゃないわ...だけど、弓の攻撃力なら戦士にも劣らないわ。」

 

「んじゃ最後に...名前はソール、魔導師だけど訳あって使える魔力が少ないから攻撃面では余り役に立たないかもな、まぁ頑張って支援に回るからよろしく。」

 

自己紹介を終えた俺達はお互いの事を見ながら黙る。

それもそうだろう、何故なら...

 

「見事な偏り具合ね...」

 

リーリアが呟く。

 

「前衛がリクしかいないのは確かに心細いな...多分メルロウも近接は余り得意じゃないだろ?」

 

「そうだね、出来なくは無いけど正面から敵の攻撃をまともに受けるような立ち回りは難しいかな。」

 

「情けない話だけど、僕一人で人形の攻撃を受け切れるか分からない.....でっ、でも僕だって戦士だ、覚悟は出来てる。」

 

リクは不安そうながらもやれる意思は見せてくれた。

 

「ん〜難しいな...」

 

「えーっと、一つ良い?」

 

俺達が考え込んでいるとアナが何か思いついたのか発言する。

 

「どうしたんだいアナさん?」

 

「前衛がリク君一人なら、いっそ守る事を捨てて攻める事だけ考えたらいいと思うんだけど...」

 

「つまり、全員でリク君を援護して一人で戦ってもらうって事?」

 

「あ!完全に任せるってわけじゃ無いよ、一応私達も攻撃してみるけど、それより付与魔法を私とソール君で掛けて強化して、リーリアさんが人形の動きを牽制、メルロウ君は暗器で敵を拘束するか動きを鈍らせる、隙が出来たところに指定された魔法を付与した攻撃をリク君が当てる。人形の攻撃は各自対処するみたいな...」

 

「うーん...」

 

「駄目かな?」

 

彼女は不安そうに聞いた。

ただ人形を倒すだけならそれで何とかなる、しかし、今回の試験は指定された魔法、又はその魔法を帯びた攻撃を人形の急所に正確に当てなければクリアにならないのだ。

 

「人形の急所を探し出すのも考えると、最低でも前衛がもう一人欲しい所ね。こう言っては何だけど、彼がそれ程の時間を稼げる実力がある様には見えないし、まだ人形がどれ位の強さで設定されているかも分からなから...」

 

「うぅ、その通りだから何も言い返せない...」

 

リーリアの言葉に彼は情けない表情をする。

 

「まぁ、まだ時間はあるしこの時点で作戦を確定させるのはやめとこう。」

 

「そう言えば、さっき僕達には長い時間が割り当てられてるって言ってたけど、それってどういう意味?」

 

俺の言葉にリクは先程疑問に思った事を聞いてきた。

 

「ん?あぁ、それは他のチームが試験をしている間にも作戦を練ることができるって意味。」

 

「...ああ!そういう事か!試験時間は1チームに15分、それが僕達以外に7チームあってそれぞれ最大15分づつ、5分以内にクリアできる確率は低いと思うから....確かに時間はたっぷりあるね!」

 

「そうだ、しかも俺たちは他のチームの戦い方を見たり、人形の強さがどれくらいのものか、しっかりと観察しつつ作戦を立てれるってわけ。」

 

「成る程ね、確かにそれは私達にとってかなり有利になるわね。」

 

疑問に思っていた二人は納得した様に頷く。

 

「けど、それだと後のチームの方が有利になっちゃうよね?それだと少し試験の公平性にかかると思うんだけど。」

 

「それも問題ないと思うぞ。」

 

「何で?」

 

リクはまたしても疑問を俺にぶつけてきた。

 

「そもそも、このグループがSランク候補のグループで、その中に外部受験者も混ぜられているだろ?グループ内の実力差が大きい時点で公平性に欠けている。けどそう言った実力者は基本Aチームとか早めの順番で回ってくるチームに固められてるし、使われる人形の強さもその分高くなってると思うんだよね。」

 

「そう...なのかな?」

 

「その通りよ。」

 

まだ腑に落ちないリクに、リーリアが言った。

 

「最初のAからDチームくらいまでは、Sランク候補生が集められているわ、特にA、Bチームは候補の中でも筆頭、だから彼らには作戦会議の時間を短くして他の受験者達よりハンデを背負わせているのよ、まぁ事前に誰とチームを組む位の情報は把握していた子もいた様だけど。」

 

「あぁ、やっぱりか...さっきの喧嘩はそれ関連で起こった様だし。」

 

「それじゃあ、ハンデなんて意味ないじゃない!ずるいと思うわ!」

 

「いや、流石に試験内容までは言われてないと思うから、そこまでじゃ無いと思うぞ。それに、チームの総合力で人形の強さが決まる仕様なら強い奴が集まる程、難易度が増すと思うし。」

 

「一応試験の難易度が公平になる様には出来てるってことね。」

 

アナは納得したのか軽く頷きながら言った。

 

「はーい皆さん!10分が経過しました、Aチームの方達は私の近くに集合して下さい、それ以外の方はステージから降りて下さい。」

 

その掛け声と共に受験者達は指示に従って動き出し、俺達もそれに続いてステージから降りた。

 Aチーム以外が降りたのを確認した先生は、自身の周りに集まった彼らにそれぞれ一枚ずつ魔法絵巻(スクロール)を渡すと簡単な試験の説明をし始めた。

 

「今渡した魔法絵巻は、こちらが指定した魔法、《エレクトロショック》が付与されています、説明した通りその魔法、もしくはそれを付与した攻撃を、人形に隠されている急所に当てる事で人形は停止し試験クリアとなります。時間内に倒せなくても最後まで立っていることができた場合もクリアとなります。また、私がチーム全員が戦闘続行不可能と判断した時点で実技試験は終了になります。」

 

先生が淡々と説明すると、受験者全員の緊張が高まってきた。

 

「因みに貴方たちが戦って頂く人形はこちらです。」

 

そう言って彼女が手を叩くと魔法陣が展開されその中から、八体の人形が姿を表した。

人形の大きさは3メートル程で胴体に6本の腕、腰から下は4本の足が伸びる中々不気味な見た目をした人形が姿を表した。

 

「何か質問等が無ければこのまま試験を開始しますがどうですか?」

 

先生の質問に皆んな無言で返す。

 

「それでは!只今より実技試験を開始します!」

 

先生は、彼らの反応に静かに頷いてから片手を高らかにあげて試験開始の合図と同時にステージ外に出る。

それと同時に配置されていた一体の人形が起動して、ステージに飛び乗った。

 

「全員構えろ!」

 

ランハットがすぐさまチーム全体に指示を飛ばす。

 

「シュノ!」

 

「おう!任せろ!」

 

ランハットの指示でシュノイツが単独で人形に突撃し、それに合わせてリカテュエルとメルルが魔法の詠唱を始めた。

彼らが既に行動を起こしているのだが人形は未だに動こうとしない。

 

「はっ!俺一人だけで速攻決めてやる。」

 

そう言って彼は渡された魔法絵巻を武器に付与し人形に槍を突き刺そうとした。

 

「ちょっと!あの人形何で動かないの!このままじゃ本当に瞬殺...っ!」

 

アナがそう言いかけた瞬間、突如人形が凄まじい反応で槍を弾き彼に一撃与える。

 

「がはっ!」

 

うめき声と同時に体格の良い彼が後方に大きく吹き飛ばされ地面に転がる。

その様子を見た受験者達が騒めき出す。

ランハットを含めたチーム全員も驚きの表情をするがすぐ様落ち着き、魔法を詠唱していた二人の準備が完了する。

 

付与魔法(エンチャント)!《フィジカルアップ》《物理障壁》《スピリア》!」

 

リリムがシュノイツ以外の全員に強化魔法をかける。

 

「《ディープバインド》!」

 

リカテュエルは拘束魔法を人形に掛けた。

無数の紫色のリングが人形を縛り上げる。

 

「シュノ、立てるか?」

 

「ったりめえだ!」

 

ランハットの呼びかけに彼はそう返事すると、飛び起きる。

 

「わりい!結構重いの喰らっちまった。」

 

「気にするな、あの人形が想像していたより強かっただけだ、しかし作戦に変更は無い、カリム俺に続け!」

 

「了解!」

 

ランハットの指示で今度はカリムと二人で人形に攻撃を仕掛ける。

その隙にリリムが回復魔法と付与魔法をシュノイツにかけ、リカテュエルは攻撃魔法の詠唱を始めた。

 

(良い動きだな、状況判断と立て直しが早い)

 

既に良い連携が取れている彼らだが、人形の強さも相当なものでリカテュエルの魔法も既に解かれかけている。

 

「解かれる前に畳み掛ける!」

 

そう叫ぶとランハットは両手に盾と剣を出現させ人形に急接近する。

 

重突撃(ヘビータックル)!」

 

ランハットはスキルで人形に攻撃を仕掛けたが、人形はギリギリで後方に飛んで回避する。

 

影撃ち(シャドウバレット)!」

 

それを見逃さずカリムも手に持つ剣を銃に変形させ撃つが、弾は全て地面に当たる。

 

「え!彼はどこ撃ってるの⁈」

 

「いや、狙いは間違ってない。」

 

「え?なんで...あっ!」

 

リクは目の前で起こった出来事に驚いていた。

何故なら、回避した人形が空中で姿勢を崩したからだ。

姿勢を崩した人形は着地に失敗するかと思いきや、人間では確実に折れるような角度で体を捻り足から着地する。すかさずランハットは人形に向けて斬りかかるが、素早く人形は二本の腕で剣を受け止め、残りの腕で反撃し、その攻撃を彼は盾で受け止めもう一度人形に斬りかかる。

人形とランハットの激しい撃ち合いが繰り広げられた。

ランハットに気を取られている人形の背後にシュノイツが高速で回り込み攻撃を仕掛ける。

 

 

「え?一体何が起きたの?」

 

「あのカリムって奴のスキルだよ。」

 

「スキルって、彼は弾を外したんだよ?」

 

「しっかり命中しているぞ?今のスキルは対象の影に向けて撃つことでその衝撃を相手に伝えて相手の体幹を崩す効果があるんだ。」

 

「そんなスキルがあるんだ...」

 

「私も見た事が無いわね。」

 

リクとリーリアは感心した様にそう言った。

 

「まぁ、それ以外にも効果はあるが今はそんな感じの理解で良いかな...それよりリクは、もっとあのチームの戦闘を観察した方が良いぞ、色々と参考になる。」

 

「う、うん...分かった。」

 

そう言ってリクは観戦に意識を戻した。

 

「ん....」

 

リーリアが何処か不審がるような視線を送ってきたが、俺は無視して観戦を続けた。

 

 

「オラッ!乱れ突き!」

 

人形の背後に回り込んだシュノイツが、スキルを叩き込む。

体勢が悪い人形は防御するがもろに食らってしまい地面に転がる。

 

「リカテュエル!」

 

「分かってる...《エレクトロショック》!」

 

ランハットが支持するのとほぼ同時に、リカテュエルは魔法を放つ。

無数の電撃が人形に襲いかかる。

人形も直ぐに立て直し攻撃を避けるが、多くの電撃が直撃した。

 

「決まった!」

 

リクが大きな声でそう言った...しかし。

 

「まだだ。」

 

俺は興奮するリクを嗜める様にそう言い放つ。

同時に攻撃を受けた人形もゆったりと起き上がった。

 

「な、何で⁈攻撃は当たったのに⁉︎」

 

「そんな興奮するなよリク、先生も言ってただろ?人形に隠された特定の場所に当てないと止まらないって。」

 

「あ、確かに...」

 

その言葉に俺は、ため息を吐きながら自分達の試験に少し不安を覚えた。

 

「リカテュエル、どうだ。」

 

「大丈夫、大体の位置は把握できた。」

 

「よし、メルル!俺を含めた前衛三人に魔法を付与してくれ!リカテュエルは敵の拘束を!」

 

「「了解!」」

 

少しの会話の後に彼がそう指示すると、二人は魔法の詠唱を始めた。

 

「シュノ!カリム!一気に畳みかける!」

 

「おうよっ!」

 

「了解した。」

 

前衛の二人も攻めの構えに入る。

そんな見事な動きをする彼らを見た俺は...

 

「ん〜...甘いな。」

 

そう言って少し落胆の感情を言葉に出した。

 

「「えっ?」」

 

俺の言葉にメルロウ以外の全員がこちらに振り向く。

 

「何処か甘いのよ?めちゃくちゃ良い動きしてるじゃない?」

 

「そうだよ、僕にはあんな素早い行動と判断は出来ないよ?」

 

「私も同感ね、少なくとも学生のレベルを超えているとは思うのだけど?」

 

(えぇ、何か凄い反論されてる...)

 

「彼の言っていることは正しいよ。」

 

俺の言葉を肯定する様にメルロウが言った。

 

「確かに、君たちの言う通り彼らの動きは学生のレベルを超えた物だけど...実践で考えるならさっきの行動は甘いとしか言えない、僕だったら魔法が当たった後も追撃を加える...相手の息の根が完全に止まるまで攻撃の手を緩めない。」

 

彼は、少し殺気を滲ませながらそう言った。

そんな彼の説明と纏った雰囲気に聞いていた三人は黙ってしまう。

 

(ふむふむ...殺気の出し方や言動から察するに、彼は実践経験がありそうだな)

 

俺はフォローしてくれた彼に感心したが、チーム全体の雰囲気が若干乱れた様子だった。

まぁ、普通は殺気に晒される生活なんて送って無いので、彼らの反応にも仕方が無い。

 

「けど、入学試験にそこまで求める教師も居ないだろうから、現状はあれで良いのかもな...どちらにしろ、あいつらにとってここからが正念場になると思うけど。

 

俺は雰囲気を回復するべくこの話題を打ち切る様に、話題を先に進めた。

俺の言葉に反応した全員がステージに視線を戻すと、そこには苦戦を強いられているAチームの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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