万象の半精霊   作:宇宙豆

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第2話

目を開けると目の前に見慣れた天井が映し出される。

悪夢から覚めた俺は、その光景に少しだけ安堵の気持ちが湧いた。

見慣れた悪夢なので大した苦痛ではないが、そうであっても気持ちのいいものでもないから、どうしてもこういった感情が湧いてきてしまう。

 

少しの間、ぼーっとその天井を眺めてからゆっくりとベットから体を起こす。

それと同時に少しだけ違和感を覚えた。

 

(なんか静かだなぁ...)

 

そう思い、俺は部屋にかけてある時計を見た。

時刻は朝の6時を指している。

 

何が違和感といえば、普段ならこの1時間前くらいに叩き起こされるのだが、珍しく今日は何も言われなかった。

なにも言われず好きな時間に起きられるというのはいい事なのだが、普段当たり前になっていた事が突然無くなるとなんとも調子が狂う。

 

だが、何も言われないのならそれに越した事は無いので、取り敢えずいつも通り、ベットから起きて着替えることにする。

 

「ふぁあ〜.....珍しいけど、流石の師匠も祝日の朝くらいはゆっくりしてるよなぁ。」

 

そう言いながら、ロッカーにかけてある魔導衣に着替えた。

師匠が手作りしてくれた特注品だ。

この衣は、自分にかける強化《バフ》がかかりやすく、弱体化(デバフ)はかかりにくいと言う特性を持っている。

何でも師匠の髪の毛と、とある霊獣の毛が織り込まれているらしい。

お守りとかで、髪などを入れる事があるらしいが、それによりハッキリとした効果が物は少ないだろう。

それこそ、魔力を浴びた素材などじゃないと、ただの気休めにしかならない。

 

(まぁ、師匠の種族柄そう言った用途で体の一部を使えるのは分かるけど)

 

そうこう考えている内に着替え終えた俺は、一階のリビングに向かう。

階段を降りていると何やら良い匂いが漂ってきた。

どうやら師匠は既に起きているらしい。

 

一階についた俺は、リビングの扉を開けると同時に朝の挨拶をする。

 

「おはよう師匠、今日の朝食は何?」

 

「ようやく起きたかこの馬鹿弟子め。」

 

リビングに入ると、キッチンの方で黒髪の小柄な少女がエプロン姿でこちらを見ながら言った。

 

ちなみに、目の前にいる若干15歳くらいの少女が俺の師匠だ。

こんな見た目だが数千年生きている吸血鬼で、大陸中でも有名な魔導師らしい。

 

「ほら、できたぞ。」

 

そう言って、テーブルの上に出来立ての朝食が並べられた。

サラダとスープとパンという、とてもシンプルな朝食だ。

 

「あ、師匠。そう言えば庭のミカンってもう食べれたっけ?」

 

「ん?そろそろ食べ頃じゃないか?」

 

「じゃぁ、今日はミカンでジュースでもつくろうかなぁ...」

 

「考えるのは後にして、早く食べろ。」

 

「は〜い。」

 

俺は席に着き朝食を食べ始めた。

相変わらずシンプルな味付けだが、全く飽きる事がない味だ。

 

(普通に美味い!)

 

そんな事を思いながら食べていると、それまで無言で食べていた師匠が静かに口を開いた。

 

「馬鹿弟子よ、のんびりと朝食を食べているが、今日は何の日かわかってるのか?馬鹿弟子よ。」

 

師匠の言葉はどこか含みがあった。

それに二回も馬鹿弟子って言われた。

 

「いや、突然そんな事言われても分かんないよ。」

 

「ほう?分からんか...」

 

そう言った師匠の表情は、雲行きが怪しくなり声のトーンも心なしか低くなったようにも聞こえた。

 

(あれ〜なんか怒らせるような事言ったかなぁ...けど分からないものは分からないしなぁ....)

 

俺はそんな事を考えながら、今日がなんの日か一生懸命思い出そうとする。

そして数秒間考えてから、俺はある答えに辿り着く。

 

「俺の誕生日とか?」

 

「ん〜」

 

俺がそう答えると師匠は眉間にしわを寄せながら立ち上がり、俺の横までテクテク歩いてきた。

そして俺の横で立ち止まると、こちらにニコッと笑いかける。

 

「あれ?もしかして正解...」

 

「ふんっ!」

 

「いだだだだだっ!」

 

俺が言葉を言い切る前に顔面を鷲掴みされる。

しかも、師匠は手が小さいくせに力が半端ないので、顔の中心に指がめり込みかけてとても痛い。

 

「どうしてそこでお前の誕生日になるんだ!そこはせめて私の誕生日だろ!」

 

「そっち⁉︎そっちで怒った⁉︎いやいやいや!だって師匠の誕生日は先月やったし、それ以外にこの時期にお祝い事する日なんて無いし、早めの誕生にでもしてくれるのかと思って...あだだだだ!」

 

「お前の頭の中は祝い事の日しか無いのか?それにお前の誕生日はかなり先...ってそんな話じゃ無い!お前は今日、編入試験の日だろ!のんびり朝食取ってないでさっさと学園に行け!」

 

そう言って、師匠はそのまま玄関の方に俺を投げ飛ばし、俺を家から放り出す。

俺は玄関の扉を突き破る事なく、扉は勝手に開き俺が庭に放り出された後、自然と閉まっていた。

 

俺は、顔面から地面にダイブしたものだから口の中に土が入り、それをせっせと吐き出す。

 

「ぺっぺっ...別にそんなに怒らなくても.....どうせ転移魔法とかそこら辺を使えば直ぐなのに....」

 

そう文句を言いながら、俺は"スキル"を発動させる。

それと同時に、目の前には青白く光る魔法の扉が展開された。

これは、移動スキル"ゲート"と呼ばれる転移魔法をスキル化させたようなものだ。

この世界には魔法以外にも、スキルや超能力、固有特性など多様な力が混在し、人々は日々それらを生活の中に取り入れ、生活基準を上げたりなどしている。

 

「んじゃ、さっさと行きますか...」

 

そう言ってゲートを潜ろうとした....が、

 

パリンッ!

 

「うぉっと!」

 

俺が潜る直前でゲートが弾け飛んだ。

 

「初日からそんなもの使うな、徒歩で学園まで行け。」

 

家の中から師匠の声がする。

どうやら師匠が俺のスキルを吹き飛ばしたらしい....

 

(別に良いじゃん、時間ギリギリなんだし....)

 

師匠に言われて思い出したのだが、編入試験とやらは確か朝の7時から受付開始で8時に受付終了、その後直ぐに筆記と実技の試験がある。

 

懐中時計を見ると時刻はすでに6時半、この家から学校まで普通に歩いて2時間、乗り物を使えば交通状況にもよるが大体1時間...しかしこの時間帯は何処の乗り場も混んでいて、乗るまでに30分は余裕でかかる、特に今日は祝日なので、町の中央街などに多くの人が集まる。

そのため、中央街付近ににある学園まで行くことの出来る乗り場は、噛み合っていると思われる。

当然、この《外周地区》から《中間地区》まで行く乗り物にも人混みが出来るだろう。

 

(やっぱり転移系の力を使わなきゃ間に合わないのでは....まぁ家から少し離れた場所でゲートを使えば良いか...)

 

先程は、家から近かったので師匠の妨害もタイムラグなしで効果を発揮したが、ある程度距離を取れば気付かれたとしても妨害を受けるまでタイムラグが発生するので、その前にゲートを潜ることができる。

多分、後で説教されるが試験が受けられなくなるよりはマシだろ。

 

「分かったよ師匠、力を使わずに学園まで行くけど間に合わなくても怒らないでよ?」

 

俺は家の中にいる師匠に、諦めましたと言った感じで話す。

 

「遅れたら許さんからな....それと、どうせお前は私との距離が離れたらまたゲートを使うだろうから、スキル封印と魔力低下を付与しといたから....」

 

「..............」

 

「それじゃあ、遅れずに来い。」

 

その言葉を最後に家の中から師匠の気配が消えた。

 

(あの鬼畜師匠ヤロウッ!弟子には能力使うなって言った癖に!自分は転移魔法使って学園に行きやがった!)

 

正直詰んだ....

 




読んでいただきありがとうございました。
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