万象の半精霊   作:宇宙豆

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第4話

景色が次々に流れていく。

まばらに見える家々は、所々集合している場所があるくらいで、次の家まで数分かかるくらい家が点在しているエリアなのだが、今はほんの数秒で次の家まで着いてしまう。

 

「それにしても、ほんとこの地区って田舎だよなぁ、まぁ走り抜けるのに障害物が少ないのは有り難いけど。」

 

俺は今、かなりの速さで走っている。

多分、馬の全力疾走と同じくらいで土埃も立っている。

 

今の所、付近は畑ばかりですれ違う人もそんなに居ないが、中間地区に近づくに連れて家や人も増えてくる。

そうなると、少しこのままでは目立ってしまい騒ぎになるかもしれない。

いや、間違いなく騒ぎになる。

何せ一人の人間が馬並みの速度で走っているのだ、一般の人が見ればまずおかしいと思うだろう。

なので本来は、この状態に不可視化の魔法を掛けてから走るのだが、生憎魔力が低下しているおかけでその魔法を使う事ができない。

 

因みに先ほど飲んだポーションについてだが、効果としては身体能力、特に足の速さとスタミナを上げるポーションで、実は俺の自家製ポーションでもある。

なので、市販品の物より少しばかり効果が違う所があるが勘違いしないで欲しい....ちゃんと合法だ。

一応、ポーション技師の免許も取得している。

実は一昨年くらいに師匠から...

 

「お前は私の許可なく勝手に何か作って騒ぎを起こしそうだから、取り敢えず一通りの免許取ってこい。」

 

と言われ、王都に行き必要になるだろう免許を取らせて貰ったのだ。

 

主に俺がもっている免許は...

《一級ポーション技師》《一級魔道具技師》《一級薬師》

《中級魔導研士》《中級付与魔法研士》《中級錬金術師》

この六つの資格を持っている。

 

補足だが一級二級の違いについては、級によって何か扱える材料に制限が掛かるという訳ではなく、第三者からの信頼度に差が出ると言うだけで、個人で研究する分には正直一級まで取る必要はない。

しかし、師匠が頑なに一級まで取れというので仕方なく取った。

そして、中級と付いている三つの資格だが師匠曰く、上級まで取らせたかったが、それを取ってしまうと年に一度研究した物を提出し無ければならないらしく、それは面倒くさいからと中級までで止めたらしい。

まぁ正直それは有り難い。

 

10分ほど走っていると、少し先に大きめの街エリアが見えてきた。

 

「中間地区の駅まで後半分程.....もうそろそろ追加のアイテム使うか...」

 

俺はそう呟くと、先程のポーションと同様に懐から二つの小ぶりな玉を取り出す。

その二個を手の中で握りしめて砕く。

 

(スキル"走破“、スキル“縮地“)

 

二つのスキルを発動させた俺は、さらに速度を上げより静かに走る。

今砕いた物は《封玉(ふうぎょく)》と言って、この中に魔法やスキルを封印する事ができるアイテムで、物の質によって封印できるものに制限が掛かるが、通常レベルの付与魔法やスキル程度なら問題なく封印する事ができる。

 

そして、《走破》《縮地》と言うスキルは、速力を増大させるもので、走破とは走る際に微量に分散される力を全て推進力に変換させるスキルで一定時間、一方向に対しての速度が格段にあがる。

縮地はスキルとなっているが、どちらかと言うと身体技術に近いもので、足が地面に接する時間を極端に減らす事ができ足音だけ出なく、踏み込む際の脚にかかる負担を減らし尚且つ足跡も付きにくい。

また体全体の旋回力も向上するため、非常に小回りが効くようになる。

この二つのスキルを合わせる事で、走破のスキルで速力を最高率化する影響で基本的に一方向にしか走れなくなっても、縮地のスキルで細かい範囲を自由に動く事を可能にする。

と言った、まさに走ると言う点において最高のスキルの組み合わせになるのだ。

 

しかし難点もあり、走破スキルの効果時間は経った三分、縮地に至っては1分半しか持たない。

しかもスキルは道具を使ったとしても、次使うまでにリキャストタイムがあり、連続使用は出来ない。

しかし、素でスキルを使うより道具を使った方が幾らかは、リキャストタイムが短くなる。

まぁ、この難点も魔法でどうにかなるのだが、何度も言うように今はまともに魔法が使えないのである。

 

そしてこのタイミングでスキルを使った理由は、すぐ目の前に迫る外周地区で3番目に広い街エリア、エイトストリートがあるからだ。

そこは今までと違い家や店が立ち並んでいて人の目も多い。

更に建物の上や間を駆け抜けるので、少しでも油断すれば建物にぶち当たってしまう。

 

エイトストリート

 

「街まであと少し....よっと!」

 

街の入り口に差し掛かる瞬間にジャップし、手前の家の屋根に着地する。

そしてそのまま、家々の屋根を走り抜ける。

縮地のおかげで屋根を蹴り壊す事が無いので、家に被害は出ない。

そして、音も立ちにくいのであまり目立たなくもなる。

 

大小様々な建物が並び、その上や間を高速移動して行く。

 

(縮地の効果時間はあと30秒....余裕だな)

 

俺は目の前に迫る街の出口に向けて一気に駆け抜けた。

そして、街を出るとそのままの勢いで中間地区まで平地を走る。

 

「ふぅ〜、相変わらず街エリアでこれやると緊張するな〜、それに多分何人かには見られた..ッ!」

 

そんなことを呟いた瞬間、突然目の前の地面から岩の突起物が出現する。

 

「マジかッ!」

 

俺はその突起物をギリギリ回避するが、抜けた先に一人の剣士が立っていた。

その剣士は向かってくる俺に容赦なく斬りかかってきた。

剣が目の前まで迫る....

 

(“縮地抜き")

 

「何っ!」

 

剣士が驚きの声を上げる。

 

紙一重、剣が俺を真っ二つにする前に何とか相手の右前方に回避する。

しかし、回避した際にバランスを崩し地面に転がってしまう。

 

「かはっ!」

 

かなりの勢いで転んだのですごく痛い、が痛がる余裕も無く直ぐに体勢を立て直し相手を見る。

 

目線の先には、剣士が不思議そうにこちらに振り返っていた。

その直後、後方から魔道士らしき女性とおそらくレンジャーの男とガンナーの女性がこちらに向かってくる。

 

「おいそこの青年、どうやって今の攻撃を回避した。」

 

剣士の男が質問を投げかけてくる。

 

「いやいや、質問する前にいきなり切り掛かって来たことを謝るのが普通じゃ無いですか?」

 

「..........」

 

俺がそう言うと、剣士はこちらを睨んだまま黙ってしまう。

 

(何とか言えよ!)

 

俺は心の中で叫ぶ。

 

先程、剣を回避した件についてだがあれは縮地抜きと言って、縮地を使用している際にその効果を攻撃を喰らう直前に解除する事で、急激な緩急と歩幅操作で相手の攻撃する対象の位置認識をずらして回避する身体技術の一種だ。

 

(それにしても、何なんだこの危ない奴は...治安部隊の隊員なら余程の事が無い限りいきなり殺しに来る事は無いはず...)

 

そんな感じで剣士と睨み合っていると、後方にいた仲間らしき三人が剣士に合流した。

その中の魔導師の女性が剣士に近づくと.....

 

「このバカッ!」

 

「おっふっ!」

 

男の腹を持っていた杖で力一杯殴打した。

 

(絶対痛い!あれは痛い!)

 

見事な殴打を喰らった男は、その場に這いつくばり呻きながらピクピクしている。

 

「バッツ!何度言ったらわかるの!いきなり人を斬っちゃダメ!」

 

女性が、倒れているバッツと言う男に説教をし始めた。

 

「おいバッツ、マジでヒヤッとしたぜ。あの子を真っ二つにしちまったかと思ったぞ。」

 

「うん、本当に....しかしあの子....良く回避できた...」

 

後から追いついた、二人の男女も話に入る。

 

どうやら、先程あの男が斬りかかったのはこのチーム的には何らかの手違いがあったらしい。

チーム的に故意でやったのなら、まともに対話できなかったかもしれないが、この様子だとしっかり対話ができそうな気がする。

 

自分の中でそう結論付けると、早速話を切り出す。

 

「あの〜、先程の斬りかかられた事は事故的な感じなのは分かりましたけども、何故俺が狙われたんですか?」

 

そう質問すると、先程まで倒れていた男がむくりと起き上がり、俺の方を見てこう言い放った。

 

「そこの青年!お前を、連続トラム線路破壊事件の容疑者として拘束させて貰う!」

 

「......はぁ?」

 

俺はいつの間にか事件の容疑者になっていた。

 

 

 

 




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