万象の半精霊 作:宇宙豆
突然容疑者扱いされた.....
(連続トラム線路破壊事件?そんな事件が起きてたのか...全く知らなかったし、身に覚えが無い)
どうやら、何らかの理由で俺がその事件の容疑者になったらしい。
理由は何となく想像できるが....
「大人しく俺達について来てもらおう!」
「ちょっと待ちなさい!」
男がそう言うと、直ぐに女性の静止が入った。
「まずは謝罪が先でしょ!あと一歩で彼は死ぬ所だったのよ⁉︎」
「..........」
彼女の言葉に彼はまたしても黙ってしまう。
しかし.....
「貴方は頑固だから、容疑者のあの子に頭下げたく無いと思っているでしょうけど、今は謝りなさい!」
「うぅ.....すまん。」
彼女がさらに強く言うと、堪忍したのかボソッと小さな声で謝った。
「もっとちゃんと!大きな声で謝る!」
「いやいや!もう結構ですよ、大丈夫ですから。」
このままだと更に彼女が怒りそうなので直ぐ様止めに入った。
まぁ、何にしても謝ってくれたのだからこちらとしては十分だ。
それに、今はそんな些細な事はどうでもいいので事情を詳しく聞かなくてはいけない。
「えっと、取り敢えず俺がその事件の容疑者になった理由を聞いても良いですか?」
俺はバッツを叱っていた女性に聞いた。
「そうね、いきなり言われても分からないわよね、けど何となく気付いてるんじゃない?」
「まぁ....はい、多分あの速さで走ってたのが理由かなぁとは思いました。」
「うん、それが理由なんだけど....そうだ、まだ名前を言ってなかったわね、私はネリム、魔道士をしているわ。」
と、突然自己紹介が始まった。
この女性はネリムと言うらしい、話してみて分かったが中々丁寧な口調で好感の持てる人だ。
見たところ人族だと思うが、左右の瞳の色が違うので何らかの《魔眼》を持っていると思われる。
《魔眼》とはその名の通り魔力が宿る目の事で、様々な能力が世に存在している。
基本的には一つの魔眼につき宿る能力は一つだが、時折複数の能力を宿す魔眼もある。
更には両目にそれぞれ異なった魔眼を持つ者も稀に存在し、そう言った人材は《希少能力者》と呼ばれ様々な分野で活躍している。
また、魔眼には先天性と後天性があり後天性には《人工魔眼》と《天然魔眼》の二つの種類があり、魔眼に関しての研究はまだまだ完璧とは言えず発展中の研究分野として、世の研究者達は力を入れている。
「んじゃついでに俺も、名前はディール、このチームのレンジャーをしている。因みに種族は獣人族で、耳はこの帽子の中に隠れてるぜ。」
そう言うと彼はひょいっと帽子をとって耳を見せてくれた。
良い感じにラフな雰囲気で、悪い人ではなさそうだ。
獣人族は身体能力が非常に高く、特に瞬発力に関しては他種族と比べてもトップクラスの実力を持っている。
獣に近い感性を潜在的に持ち五感感知能力が非常に高く、レンジャーや盗賊系統の職業に適性がある。
またその瞬発力と反応速度を活かして戦士系の職業に就くものも多い。
その反面、魔法適性範囲は広いとは言えず稀に魔法の適性値が高い者が生まれる事があるが、獣人族全体で見ても3割居ない位低いのだ。
多分俺を見つけたのも彼だろう。
「私....名前はルールラ.....ガンナー....エルフ...宜しく...」
そう言って彼女はひょこり頭を下げる。
口数は少なそうだが、要所はしっかり言葉にするっぽいので、話はスムーズに進みそうだ。
エルフは昔から狙撃の名手を多く生んでいる程、射撃能力に富んだ種族だ。
その上、魔法適性範囲も広く援護系のスキルや魔法を取得する者が多くいる。
しかし、獣人族やその他の種族と比べて身軽ではあるが丈夫さに少し欠け、筋力の弱い者も多いため戦士系の職業には不向きな傾向にある。
因みに彼女が持つ武器は、ここ数年の間に開発された《魔導銃》と言われる物で、元はダンジョンなどで手に入るアーティファクトの《魔法銃》と言われるものだったが、魔道具の研究が進み人工的に魔法銃を開発することに成功した。
また、構造的に従来の魔道具より機械的な部分が多く見られる事から、新たに《魔導工学》と言う分野が作られたのも魔導銃の開発成功に伴ったものでもある。
あの《トラム》や少し説明した《エレクトレイン》と《魔導車》も魔導工学の分野に含まれている。
三人の自己紹介が終わったがなんか違和感を覚える。
「さて、それじゃあ貴方にいくつか質問させてもらうわね。」
「ちょっと良いですか?」
「何かしら?」
俺の静止に彼女は快く応じてくれる。
「容疑者である俺に、何ぜそんな丁寧に自己紹介してくれるんですか?」
俺は素朴な疑問を聞いてみた。
「ん?それは〜....ほら、あんまり警戒されても話しにくいでしょ?それを解くためにね...それに見たところ貴方に抵抗の意思は無さそうだし、ちゃんと話し合えると思ったからよ。」
「なるほど、分かりました。」
一応彼女の理屈は通っている。
だか、違和感は完全に消えない。
なら、彼女との会話の中で少しでも探るしかないだろう。
(それに、余り時間もないしな...)
編入試験の受付終了まで後、45分程度しか無い。
「それじゃあまず、貴方の名前と住所を教えてくれるかしら。」
「名前はソール、住所は....多分名義されて無いですが、外周地区の"森エリア"《
「.....なる程、確かにあそこに人が住んでいる情報は無いわね、ちゃんと身元を登録してるの?」
「はい、一応ここに身元登録書がありますよ。」
そう言って俺は、懐から1枚のカードを取り出す。
これは身元登録書と言って、このカードには《記録保存マテリアル》が埋め込まれている。そのマテリアルが個人の様々な情報を記録しこのカードの項目に反映させている。
名前、年齢、性別、種族、職業、出身地、身長、体重、何の資格を持っているかなど、そのひと個人の身元の証明として使われる。
俺はそれを彼女に見せようと近づくと.....
「あぁ、別に良いわよ...ここからでも見えるから。」
そう言って、カードの受け取りを拒んだ。
(おかしい、そんな位置から正確に見えるはず無いし、容疑者の身元確認は少しでも見落としがあってはならないと思うのだが、詳しく確認する事を拒んだ....俺に近づかれるのを嫌がっているのか....やはり怪しい)
「それじゃあ次の質問に行くわね。」
「.........はい。」
「貴方は何故、あんな速さで走っていたの?それとどうやってあの速さを出す事が出来たのか教えてくれる?」
「俺は今日、中間地区にある《ランスダイト学園》に編入試験を受けるのですが、その事を忘れて寝坊してしまって.....今の時間にトラムを使っても間に合わないと判断したので走ってました。
ただ走るだけでは間に合わないので、"身体能力強化"と"スタミナアップ"の効果があるポーションを飲み、追加で"走破"と"縮地"スキルを使っていたのであの速さで走れました。」
「なる程、因みにそのポーションは合法?ちゃんとした店で買った物?それにスキルは....見た所、貴方は近接戦闘する様には見えないけど、何故戦士系のスキルが使えるの?」
「えっと、ポーションに関しては自作なので店で買ったとかでは無いですが、ちゃんと資格も取ってます。それからスキルについては封玉を使って発動させてました、見ますか?」
「そうね、それじゃあ封玉を幾つか見せてくれる?」
(ここだな...)
そう言ったので、俺は懐に手を入れ封玉では無くポーションを取り出そうとした。
俺が指定された物以外を取り出すと、彼女がどの様な対応をするのか確かめる。
これで、彼女達が俺に向けている疑いの目がどれほ程のものか分かるだろ。
勿論、瓶の中身は回復ポーションで害のないやつだ。
「えっと...確かここに...あった。」
俺はわざと探すフリをして、懐から薬瓶を取り出そうとした刹那.....
バンッ!
「ッ!」
発砲音とともに、俺の左頬を何かが掠めていった。
いや、一応は見えていたが.....多分魔法弾だろう。
しかも、実弾入りなので殺傷能力が高いやつだ。
魔導銃は単純に魔力のみを撃ち出す物と、実弾に魔力を纏わせて撃ち出す物の、二種類が存在する。
当然、魔力単体を撃ち出すより、実弾入りの方が殺傷能力が高い。
その分リロードをする時間が必要になる。
「三回まで...許す....あと二回....」
先程まで構える様子がなかったガンナーの彼女は、いつの間にか銃を構えて俺に狙いを定めていた。
「それじゃあ、封玉を見せてくれるかしら?」
そんな彼女をネリムは、バッツの時とは違い止める様子もなく何食わぬ顔で話し始めた。
(あぁ、そう言うことか....)
俺は先程から感じていた違和感が何なのか理解した。
ルールラに威嚇された後、ネリムという女性の雰囲気に少し刺々しさが見え始めた。
先程までの彼女の態度は、俺の油断を誘ってボロを出させるためのものだろう。
彼女の態度から、容疑者と言っても余り疑われてない感じと少しでも思い違いをしてしまった。
彼女達は初めから俺を捕らえる気でいたのだ。
(まぁ、普通に考えたらそうなるのは当たり前だな....とりあえず大人しく指示に従うか)
彼女達の目的が分かったことで、少しだけこの状況を理解できた。
とりあえず、指示に従って見みることにする。
「すいません、手に取ったものが似た様な形状だったのでつい間違えました....」
バンッ!
「.........」
またしても射撃された。
「あと1回.....」
ルールラは静かに呟く。
(嘘付いたら撃たれた.......ん〜、俺が意図的に封玉では無くポーションを取り出そうとした事をどうやら分かっている様子.....彼女も魔眼持ちだな、きっと相手の嘘や敵意、思考などを見抜く"看破系の魔眼"っぽい....)
「嘘は付かないでね...まぁ、あと一回はチャンスがあるわ。それじゃあ改めて、封玉を見せなさい。」
ネリムの口調は更に強くなる。
少し状況は悪化している様に見えるが、先程のやり取りで打開策を思いついた。
"看破系の魔眼"を持っている者がいるのだ、そして俺の無実は俺自身が知っている....なら、やる事は後一つだけ。
彼女に言われた通り、懐から封玉をいくつか取り出す。
「なる程...これで全部?」
「一応、とある事情により今出せる分はこれだけです。」
「そう、
彼女は一瞬、不機嫌な様子を見せたが、俺が言った事に対してルールラさんが何にも反応を見せなかったからか、それ以上は何も言ってこなかった。
「それじゃあ次の質問で..」
「もう良いですよね?」
封玉に関しての質問は終わり、ネリムは次の質問を投げかけてきたがそこで俺すぐに彼女の言葉を遮った。
「もう良いって、何が?」
ネリムは不思議そうな感じで聞いてきたが、多分これも演技だろう、本当は俺の言いたい事は分かっているはずだ。
「そこのガンナーの人、ルールラさんでしたっけ?...貴方は"看破系の魔眼"を持っているはず.....ならいっそシンプルに俺がその事件に関与しているか、関与していないか、質問したら良いじゃないですか?先程説明した通り、俺は編入試験に行かないといけないので、出来るだけ手短に素早く容疑を晴らしたいんです。」
そんな俺の言葉を聞いた全員は、お互いに顔を見合わせた。
そして、四人とも互に目で各々の意見を伝え合って....
いや違う、多分四人は"通信魔法"の類で無言で意見を交換していると思う。
少しして、四人の意見は纏まったのか、ネリムさんはこちらに向き直る。
その表情は今までと違い、一切の無警戒を感じられない厳しい顔になっていた。
「普通の犯罪者なら、ルールラの牽制で簡単にボロを出すものなんだけど....貴方かなり胆力があるのね。」
先程から質問口調の彼女が、普通に会話を始め出した。
直ぐに俺が言った質問が来ると思ったが、
「まぁ、自分が無実なのは分かっているので、何されても特に慌てる要素が無かっただけですよ。」
「なる程ね....確かに貴方の態度や仕草、雰囲気から感じる取れる物の中に後ろめたさみたいな感情は感じ取れなかったわ....なら、私の質問に対して嘘の行動や言動をしたのも、それを聞いた私達がどんな行動を取るか確認する為だったのね.....理解したわ。」
どうやら、俺の行動の意図を理解してくれたらしい。
彼女の表情が少しだけ柔らかくなった。
「実はね、多分気付いているとは思うけど、初めから貴方を確保するつもりだったわ。さっきまで回りくどい質問をしていたのも、貴方を確保するための口実を作るため....正直今でも貴方が犯人だと思ってる。けど確保する証拠が挙がらなかったから、それもできないわね。」
(証拠が一切見つからなかったから、捕まえたくても捕まえられないか....完全に容疑を晴らせた感じではないが、少なくとも今すぐ身柄を確保される事はなくなったな)
「ふぅ....」
そう理解した俺は少しだけ安堵の息を着く。
「了解.....貴方達も彼は今の所無実って事で良いかしら?」
彼女はそう言って他の仲間に同意を求める。
「俺は別に良いぜ。街で感知した時は犯人だと思ったが、話を聞いてた限りそんな雰囲気は無かったからな。」
「異論はない.....危ない事して....ごめんなさい。」
「..........」
バッツ以外の二人は賛成らしい。
「それじゃあ、全員賛成と言う事で....疑ってごめんなさいね。」
(え?バッツさん無言だったけど、あれで賛成してるの?)
「それと、度々ごめんなさい。今更だけど身元登録書を見せてもらえないかしら。」
彼女は少し申し訳なさそうに言った。
「別に良いですよ。」
そう言って俺は、彼女にカードを渡す。
それを彼女はまじまじと確認する。
「ふむふむ、名前はソール君ね、年齢は15歳、身長182センチ、体重83キロ、随分体格が良いのね。その格好じゃ分からないわ。」
「まぁ、良く着痩せするとは言われますけど。」
「なる程ね.....ん?これちょっとおかしくない?」
カードの項目におかしな点を見つけたらしく、俺に見せてきた。
それを俺は覗き込む。
「あぁ、これですか。」
彼女が疑問に思ったのは種族欄のとこらしい。
その欄には人族と書かれていた。
彼女が疑問に思うのも仕方ない俺の見た目は明らかに人族にしては奇異な物だからだ。
まぁ、実際にそこに書かれているのは間違いがあるのだが、これにはちゃんとした訳があるのだ。
「これ人族って書いてありますけど、実際は少し違うんですよ。向こうの手違でこうなっていると言いますか....実は俺
「え?
俺の言葉にネリムさんが少し驚いた様子で聞き直してきた。
《半血種》と《混血種》は二つとも複数の種族の特徴や特性をもって生まれた者達のことで、主に別種族の両親を持つ子供に見られる傾向にある。
半世紀前、ようやく多種族文化が定着し始めた頃だったが、別の種族同士で結婚し子供を作ると言うことに対しては、世間的にあまり良しとされてない認識が多く、今でもその考え方を持つ人も少なくはない。
しかし、時代とともにそう言った考え方に対して抵抗を示さなくなってきた人が増えたのだ。
また他種族同士を親に持つ子供が、両親の種族の長所を合わせ持つスペックの高い子供達が生まれる可能性が見え始め、この数十年の間で《混血種》や《半血種》の子供の数が増え始め、既に世の中で活躍する者も現れている。
この《混血種》と《半血種》の区分の違いだが、用は両親の種族の特性を、生まれて来る子供がどれくらいの比率で引き継いでいるかの違いだ。
混血種は、比率がどうであれ両親の特性をそれぞれ持って生まれてくる者達の事で、例えば人族と獣人族との間に生まれてくる子供が、人族:獣人族=1:9でも、6:4でもその子供達は《混血種》となる。
逆に《半血種》は、両親の種族の特性を完璧にで引き継いでいる者のことを指す。
その為、両方の種族の特性や能力を全く偏りがない状態で扱うことができ、混血種より半血種の方が全体的なスペックが高くなる傾向にある。
その代わり半血種で生まれてくる子供は数が少なく、世界的な比率で見ても一割もいない程数が少ない。
なので大概の人は他種族の特性を持つ者を見た時、混血種だと思うのが普通で、彼女が驚くのも無理は無い。
しかし、多分彼女は俺の話を聞けば、更に驚くことになると思う。
「へぇ〜、珍しいな。」
「半血種なら..バッツの攻撃を...躱したの納得....」
「いや、あの攻撃を躱したのはそれだけが理由じゃねぇよ。」
「ッ!」
彼女と話していたら、先ほどまで会話に入ってこなかった三人が、いつのまにか近くに居て話出したので少しびっくりした。
(て言うか、バッツって言う人の話し出すタイミングが読めない!)
そんな事を思っているとネリムさんからこんな事を聞かれた。
「これって、種族を偽装している?のかな?さっき言った手違いみたいなものってなに?」
「えっとですね....俺は《人族》と《精霊族》の半血種なんですよ、信じられないと思いますが....」
俺がネリムさんの質問に答えると、四人が一瞬で固まった。
まぁ、無理もない。
何故なら種族相性の関係上、
そう俺は、存在事態があり得ない"人族"と"精霊族"の"半血種"...《半精霊》なのだ。
最後まで読んで頂きありがとうございます。