万象の半精霊   作:宇宙豆

9 / 16
9話

昼休み、俺は校内の地図を見ていた時に見つけた実技試験会場からあまり遠くない庭園で昼食を取る事にした。

多くの受験者は学園の大食堂で昼食をとるらしいが、あまり騒がしい所は好きじゃないので静かそうなこの庭園で昼食を取ることにしたのだ。

 

「さてと、んじゃ早速作りますかね...」

 

そう言って俺は、先程ようやく開く事が出来た固有空間から鍋セット一式と地面に敷くためのシートを取り出した。

鍋セットを目の前に設置してシートの上に触る。

 

「今日は何にしようかなぁ〜、キノコを沢山使ったニョキニョキ鍋か、それとも野性味あふれる肉を詰め込んだタンパク祭り鍋か、迷うなぁ〜。」

 

俺は、ようやく開ける様になった固有空間から色々と鍋を取り出しながら考える。

普通に作っても良いのだが流石にこんな場所で料理をするのは少し変な目で見られそうなので、あらかじめ鍋に具材と出汁を詰め込み、後は煮込むだけですぐ出来る鍋を用意してある。

こうしておけば野営の時でも簡単に栄養価の高い食事を取る事ができるし、時間の短縮にもなるので何かと便利だ。

しかも、固有空間は食材の保存、色んな植物を栽培する事やあらゆる素材の保存管理が完璧なのである。

故に食材や料理を保存の効く固有空間に仕舞っておけば、かなりの長期間備蓄する事が可能でいつでも新鮮な食材を取り出す事が出来る。

 

「よし、今日は東国(とうごく)に広く伝わる牛肉と色んな野菜や材料を少し甘いタレで煮込む、すき焼きってのを食べようかな。」

 

食べるものを決めた俺はすき焼きが作ってある鍋を鍋セットに置いて簡易コンロに火をつけた。

コンロに設置してある発火性の燃料に火が灯る。

火がついた事を確認した俺は次に飲み物を取り出す。

 

「この間完成したばっかりの果実の蜜と街で大量に買い込んだ炭酸水を取り出して...」

 

そんな感じで鍋ができる間テキパキと飲み物を準備していた時に、ふと複数の視線を感じた。

周りを見渡すと何人かが俺と同じように庭園で昼食を取っていた。

そのほぼ全員からチラチラ視線が送られる。

 

(ん?何か妙に周りからの視線を集めているけど、俺何か変な事してるかなぁ...ただ昼食を取ろうとしているだけなのに...まぁいいか)

 

周りからの奇異な視線を理解出来ない俺は、気にする事を辞めて鍋が出来上がるのを待つ。

 

10分ほど経ち、鍋の蓋の隙間から少しぐつぐつと泡が出始めたのでもう少しで鍋が完成する。

先程の果実の蜜を炭酸水で割ったジュースを飲みながら待っていると、背後から誰か近づいてくるのを感じた。

後ろを振り向くとそこには一人の受験者らしき人が立っていた。

 

「ど、どうも〜。」

 

彼はぎこちない笑顔を浮かべながらこちらに挨拶してきた。

 

「どうも。」

 

俺は一言挨拶を交わしてから鍋の方に視線を戻し鍋の完成を待つ。

少ししてから鍋の蓋を開いた。

瞬間、ほんのり甘い香りが俺の鼻を通り食欲を刺激する。

 

「ふっふっふ、我ながらなんて美味しそうな料理を作ってしまったのだ、もういっそ料理人でも目指してみようか....」

 

そんな事を呟きながら俺は箸と呼ばれる東国伝統の食器を使う事にした。

今飲んでいるジュースもモモと呼ばれる、東国で有名な果実のジュースで今日は東国尽くしなのである。

まぁ、桃は東国原産って訳じゃないらしいがそこはいいだろう。

 

「よ〜し!それじゃあ頂きま〜す....はむっ、もっきゅもっきゅ.....美味!」

 

そんな独り言を言いながら楽しいボッチ飯を楽しんでいるがしかし....

 

モジモジ....

 

(.....気になる)

 

モジモジモジ......

 

非常に気になるのだ、先程の挨拶から背後でモジモジしながら居座るコイツが....

先程から無視を続けていたが、一向に離れる気配が見られない。

 

「はぁ〜....なんか用?」

 

「ビクッ!」

 

痺れを切らした俺が後ろにいる彼に話しかけたら、彼はびくりと驚き恐る恐る口を開いた。

 

「えっと、その...良かったら一緒にお昼どうかな?なんて...」

 

「.........」

 

(ふむ、何となく予想はしていたがマジでそんな事で5分近くもモジモジしてたのか....おかしな奴だなぁ)

 

見るからに少し面倒くさそうな奴だが、今の俺はすき焼きのおかげで少しばかり機嫌が良い、なので彼と一緒に昼食をとる事にした。

 

「いいよ、このシート広げれるから隣に座って。」

 

「⁉︎え、本当?あ、ありがとう。」

 

俺の返答が意外だったのか、一瞬戸惑った様子を見せた彼はお礼を言ってから俺が広げたシートに座った。

 

「俺の名前はソール、名前は?」

 

「僕の名前はリク。」

 

「そうか..よろしくな、リク。」

 

「うん、よろしく。」

 

そんな他愛もない挨拶を交わしてから彼は自分の弁当を取り出した。

 

「その弁当、親が作ってくれたのか?」

 

「そうだよ、母さんが作ってくれたんだ。」

 

「へー、バランスの取れた良い弁当だな。」

 

「そうかな?普通の弁当だよ、僕より君の弁当?の方が栄養高そうだよ。」

 

「まぁ野営様に考えた物だからな、栄養は満点だぞ?」

 

「そうなんだ...」

 

俺の返答を聞いた彼は少し微妙な反応をした。

 

(何か言いたそうな感じだがもしかして...)

 

俺は彼が何を言いたいか察した。

 

「ちょっと待ってろよ、今取り分けるから。」

 

そう言って俺は皿を一枚取り出して、そこに料理を取り分けていく。

 

「え?あ、いや違う違う!欲しい訳じゃないよ⁉︎」

 

「え?そうなの?」

 

料理を取り分けていた俺を彼は止める。

 

「なんだぁ、てっきり欲しいけど遠慮して言えなかったと思ったんだけどなぁ...」

 

「ごめん何か勘違いさせちゃったみたいだね。」

 

「いや、こっちこそ勝手に勘違いしただけだから、まぁ少し取り分けちゃったし良ければこれだけでもどうだ?」

 

「じ、じゃあ貰おうかな...へへ。」

 

半ば押し付ける感じで取り分けた皿を渡す。

 

(しかし、欲しいわけでもないなら何を言いたかったのだろうか...)

 

「美味しいねこれ、何て料理なの?」

 

「すき焼きだ、東国に伝わる伝統的な鍋料理だぞ?」

 

「へー、これがすき焼きっていうやつか...けど弁当なのになぜ鍋なの?」

 

「鍋料理が好きだからな、何かまずいか?」

 

「いや、まずいわけじゃないと思うけど...こんな所で鍋なんて普通はやらないからさ、そのぉ...少し浮いてる感じがして。」

 

彼からそんな指摘を受けた俺は、ようやく彼が言いたかった事を理解した。

 

(成る程、つまりはこんな所で鍋をやっている事に違和感を覚えたわけだ、いつも普通に野外で鍋とか食べるから変と思わなかったが、確かに鍋はこんな庭園でやる物でもないな...)

 

「ごめんな?何か場にそぐわない事やってて。」

 

俺は指摘してくれた彼に謝る。

 

「いや!別に鍋を食べてる事を咎めに来たわけじゃないよ?ただこんな所で珍しいなぁって...」

 

「珍しいって....見た事ないの間違いだろ?」

 

「え?あ、...うん。」

 

彼は素直に頷く。

 

(おお、気が弱そうなのに中々正直な意見を言うんだな...最初はかなり変わり者な気配がしたのに....何かブーメランを食らった気がするな....とにかく楽しい昼食の時間だ、何か話題を振って会話を盛り上げなければ!)

 

「そう言えば、リクも実技試験受けるんだろ?どこのグループなんだ?」

 

「君と同じグループだよ。」

 

「え?全然気が付かなかった...」

 

「そりゃあの部屋で君より目立った人は居なかったからね。」

 

「って事は彼とのやり取りも見ていたと?」

 

「うん、途中からだけどね....けど彼、ランハット君って言ってたっけ?何と言うか凄く真面目な人だったよね。」

 

「そうだな〜、意識高い感じだけど言葉だけじゃなくてしっかりと行動にも示してきた奴なんだろうな、なんと言うか彼に叱られても嫌な感じしなかったし。」

 

「だねぇ、ああ言うのをカリスマ性って言うのかな、羨ましいよ。」

 

「まぁでも俺とは余り気が合わんかも知れんが。」

 

「あはは、そうかもね。」

 

そんな感じでリクと話をしていると、またしても背後から人の気配を感じた。

 

「コラッ!君達ここで何をやっているんだ!」

 

直ぐに背後から鋭い怒鳴り声が聞こえた。

俺達は後ろを振り向くと、そこには体の前に腕を組んで仁王立ちしている女子生徒の姿があった。

 

(おぉ、またしてもめんどくさそうな人に絡まれたな...)

 

彼女は俺たちと目が合うと、堂々とした足取りでこちらに近づいてくる。

茶色がかった長い髪を高い位置で一つにまとめ、歩く姿も姿勢が良く凛とした雰囲気を漂わせていた。

しかし、眉間にはシワが寄せられその表情は怒りの感情を示している。

そして彼女の腕には風紀と書かれた腕章が巻かれていた。

 

(あの腕章....風紀委員会か?)

 

彼女が俺達の直ぐ後ろまで来ると足を止めて、またしても鋭い怒鳴り声を上げる。

 

「ここはこの学園の歴史ある庭園だぞ!そんな場所で何故鍋などやっているのだ!」

 

「今は昼食の時間なので。」

 

「え?」

 

俺がストレートに理由を述べると、リクが隣で"コイツマジか?"って言う感じの表情で俺の方を見ていた。

 

彼女も俺の返しに少し面食らったようで、一瞬言葉を詰まらせるが直ぐに先程の口調で話し出した。

 

「いくら昼食だからって鍋はないだろ⁉︎それに鍋をやるにしても庭園でやる必要は無い!」

 

「確かに、少し場違いかも知れませんが安心して下さいください、火の管理はしっかりと行っているので火事の心配は無いです。」

 

「私はそう言う事を言ってるんじゃ無い!TPOを考えろと言っているのだ、君達は受験生だろう?こんな非常識な事をやって評価が下がるとは思わないのか⁉︎」

 

「俺は評価が下がるとは思って無いです、むしろこの程度で評価を下げて受験に影響すると言うのなら、そんな学園はこっちから願い下げです。」

 

「なっ!本気か?」

 

「別にこの庭園で食べている他の人達に迷惑は一切掛けてませんし、何より次は実技試験です...出来るだけ栄養価の高い食事を取る事で本番で実力を発揮できます。時々言うじゃ無いですか"腹が減っては戦はできぬ"って。」

 

「だからって...もう少し別のチョイスがあっただろ?鍋は行き過ぎだ!常識のない行動をとる者は風紀委員として見過ごす事は出来ない!今すぐ鍋を片付けろ!」

 

「あぁはい、もう食べ終わったので片付けますよ。」

 

俺は彼女との会話中に箸を止める事はなく、残り少なかった具材を食べ終えていた。

 

「貴様!人から注意を受けていると言うのに...」

 

「まぁそう言う事なので、次からは気をつけます。それでは僕達は実技試験があるのでこれで...」

 

そう言って俺はテキパキと鍋を片付けていく。

と言っても固有空間に突っ込むだけなので直ぐに終わる。

 

「え、固有空間持ってるの?」

 

隣で見ていたリクが何故か驚いていた。

 

「あぁ、いくつか待ってるぞ。」

 

「凄いなぁ、けど固有空間の使い方が勿体無い気も...いや、複数持っているなら別に良いのかな?」

 

「人を無視して勝手に話を終わらせるんじゃない!なんなんだ君達は!」

 

「ひっ!す、すみません!ボクそんなつもりじゃ..」

 

「あぁ自己紹介がまだでしたね、俺の名前はソール、魔導師です。」

 

「あぁ、私の名前はグラシア、この学園の風紀委員長を務めている者だ....じゃなくて!なぜ何事もなかったかのように自己紹介が始まっているのだ⁉︎」

 

「いや、俺達は何なのかって聞かれたから答えたんですが...」

 

「あはは、このやり取りさっきも見たなぁ...」

 

「それにお前!」

 

「は、はいっ!」

 

「コイツは論外だが、お前はなぜ名乗らない!なぜそんなビクビクするのだ!男なら堂々としろ!」

 

「すみません!り、リクって言います!外周地区コロネ村から来ました!」

 

先程からリクは彼女の勢いに圧倒されて、ビクビク震えていた。

 

(へぇー俺とは真逆の外周地区から来たのか...)

 

そんな事を考えていると、彼女はため息をついた。

 

「まぁしかしだ、食べ終わったのだろう?今回はお前らが受験者でありこの学園に所属してない為多めに見てやる、だがもし試験に合格してこの学園の生徒になったのならば、次は容赦しないからな!以後気をつけるように!それと実技試験までもう少し時間はあるが、早めに会場に向かって準備しておけ、筆記試験のように遅刻は厳禁だぞ?」

 

「あ、はい気をつけます。」

 

どうやら受験に遅刻した生徒がいると言う情報は既に広く知られているようで、俺に念を押すようにそう言った。

 

「それでは、武運を祈る!」

 

最後に一言、彼女は激励の言葉を残して去っていった。

 

俺とリクは去って行く彼女の背中を見ながらボーとしていた。

 

「とても勢いのある人だったね...なんだか規律正しい騎士の風格を感じたよ...」

 

少ししてからリクが感心したように言った。

 

「お前は戦士系だから、そう感じるんだろうなぁ....」

 

「え?僕が戦士職志望って話したっけ?それに彼女はどう見ても戦士職でしょ?」

 

「いや、あの人は多分魔導師系だよ。」

 

「へ?魔導師⁉︎だって見るからに剣で戦う戦士っぽかったけど、それに腰に剣もあったよ?」

 

俺の言葉に彼は、面白いくらいに驚いた反応を見せてくれた。

 

「厳密に言えば魔法戦士って言われてる部類に入ると思う。」

 

「ん?魔法戦士って....やっぱり戦士って事じゃ...」

 

「そうだなぁ...魔法が使える戦士と魔法戦士は一緒だと、勘違いしている人が多いけど...そもそも職業ってどんな種類に分けられてるか知ってるか?」

 

「種類?うーん、まずはさっき言ってた戦士系の職業、それに武闘系の職業と...あと魔導師系の職業かな...あっ!料理人や技術系の職業もあるね...」

 

「まぁ本来はもっと細かいんだけど、大体そんな感じでいいや、今リクが言った種類は職種を分けている中で大きい枠組みの事なんだよね。」

 

「え?どこかおかしい?」

 

そんな俺の返しに彼は、首を傾げた。

 

「まぁ立ち話してると試験まで間に合わないかもだから、歩きながら話そうか。」

 

そう言って俺はゆっくり実技試験の会場に向かった。

 

「ちょ、僕まだ片付け終わってないから待ってよぉ。」

 

後ろの方でリクが、情けない声を上げながら急いで弁当を片付けると駆け足で俺の隣まで来た。

 

「それで、何が足りなてないの?」

 

「そうだなぁ...まずは職業について軽く説明するんだけど、リクは“スキル“とか使えるか?」

 

「スキル?簡単な戦士職系のスキルなら使えるけど、今の話と関係あるの?」

 

彼は不思議そうな顔して質問してくる。

 

「かなり関係あるよ、普通スキルって個人の適性によって使える使えないがあるんだけどこれは知ってるよな?」

 

「もちろん。」

 

「このスキルって奴はさ、その人の得意な事...例えば剣が得意だよとか歌が得意、編み物や料理が得意、その得意の延長線上にある物がスキルなんだ。」

 

「確かに、言われてみれば僕の使える特技も自分の中で得意な事に近い物が多い気がするよ。」

 

「だろ?そしてそのスキルってのは結構種類が多くてさ、戦闘で使える攻撃系のスキルから、料理や家事全般で使えるスキルまであるんだよね。」

 

「そんなにあるんだね。」

 

「んじゃこっからが本題なんだけど、もしリクが戦闘系のスキルが一切使えなかったら、戦士職になろうと思ったか?」

 

「普通、使えなかったらなろうとは思わないけど。」

 

「んじゃその代わりに、料理がめちゃくちゃ得意でお店で出せるレベルのスキルがあったらどうする?」

 

「ん〜、それなら飲食店で働いても良いかもねぇ...ん?」

 

どうやら彼は、俺の言葉の意味をすこし理解したらしい。

 

「多分当たり前すぎて大体の人は気付かないんだろうけど、スキルってその職業になったから身につくものじゃなくて、元々そのスキルの適性があるから使えるだけなんだよね。」

 

「成る程....確かに僕も戦士職になったからスキルが使えると思ってた。」

 

彼は感心したように頷きながら話す。

 

「自分の得意な物を職業にするってのは当たり前だ、わざわざ自分の不得意な物を職業に選ぶ人は中々居ないだろう?」

 

「ふーん....スキルの事は分かったけど、その話とさっき言ってた彼女の職業について何か関係があるの?」

 

「あるよ...それじゃあ聞くけど、さっき言ったようにリクには料理のスキルが使えるとして、戦士のスキルも使えるってなったらどうする?」

 

「ん?どうするって、どっちを選ぶかって事?」

 

「少し分かりやすい例えにするけど、もしリクに戦士としての適性と魔導師としての適性があったとしたら?」

 

「え?それなら魔法も使って剣でも戦って...あ!」

 

俺の言いたい事が全て分かったらしい、彼は声を上げる。

 

「魔法と武器、両方使える人の事を魔法戦士って言うんだよ。」

 

そう、俺の言いたい事は魔法を行使しながら剣で接近でも戦える。

彼女は魔導師でもあり戦士でもあったのだ。

なので戦士職のリクは彼女が戦士だと認識した、自分と同じ雰囲気は知らない雰囲気より感じ取りやすいだろう。

 

「け、けど、戦士職も魔法を使った剣技だったり、魔法を撃ってくるよね?それはどう言う事?」

 

(やっと欲しい質問がきたな...)

 

「魔法を使える戦士職と魔法戦士、この二つの違いって率直に言うけど使える魔法の種類が多いか少ないかってだけなんだ。」

 

「え〜っと...つまり?」

 

「戦士職の人の魔法を使った攻撃って、一部の特別な人を除いて一つの属性、もしくは多くても二つの属性くらいしか使えないんだよね、しかも属性ごとの魔法の種類も少ないし、そもそも武器をメインに使って戦うから魔法は武器の攻撃力を上げる為に使うみたいな感じになるんだよね。」

 

「い、言われてみれば...」

 

「リクはそう言う人達と魔法戦士の彼女を勘違いしたんだろうね、そして魔法戦士と言われる人達は最低でも四つ、基本属性の八つ全てを使える人も居れば、派生系の魔法や融合系の魔法も使える人が居るし、その使える魔法の種類もかなり多い...」

 

「.........」

 

どうやら彼は、俺の説明がいまいち入ってこない様だ。

そんな感じの顔をしている。

 

「ちなみに魔導師を含めた三者の関係を表すと.....」

 

そう言って俺は空中に向かって指で文字を書く。

 

《接近戦》戦士職>魔法戦士>魔導師

《魔法戦》戦士職<魔法戦士<魔導師

 

「単純な考え方だけど、大体こんな感じになる。」

 

「.....」

 

俺の説明を聞いた彼は、口を半開きにして何ともアホらしい表情をしている。

 

「どうした?」

 

「いや、色々驚いちゃって....さも当たり前のように空中に文字を書くもんだから、どう言う反応をしたら良いか分からないなぁ〜なんて...」

 

「あぁ、なるほど...まぁそれは良いや、とにかく戦士と魔法戦士の違いはこんな感じだが...」

 

「あ、うん...」

 

彼は何かを悟ったように、静かに返事をする。

 

「さっきの三者の関係性は覚えたか?」

 

「うん、要するに魔法戦士は戦闘の場面において魔導師と戦士の両方を担えるって事だよね....」

 

「そんな感じかな、まぁもっと細かく説明する事もできるけど、今はそれで良いや...もう会場着くし。」

 

そう言って俺は指を指すと彼も同じ方向を見る。

その先には、かなり大きいドーム型の建物が建っていた。

 

「あれが試験会場....広いね...」

 

「まぁ、戦闘授業でも使うくらいだから、あれ位の広さが無いとダメでしょ?」

 

「いや、それでもあれは広いと思うよ...だって小さい頃に見た大陸大会の会場と同じくらい広そう...」

 

「大陸大会を見に行った事あるのか?」

 

「....無いけど、でも映像マテリアルから見た会場の雰囲気で同じくらいかなぁ...みたいな。」

 

彼が言っている大陸大会とは、このユグドガル大陸に存在する小国、大国を含めすべての国が参加する武闘大会の事だ。

武闘大会と言う名前だが、決して戦士系や武闘系の者達だけが参加するものではなく魔導士も参加出来る大会で、大陸内の各国が有する強者達が己の強さを見せる為の大会である。

 

開催当初は国同士が揉め事を起こした際、戦争みたいに無利益な血を流すリスクを減らす為、比較的平和な解決方法とし用いられていたが、200年前ユグドガル大陸和平国家条約を結ばれて以来、今では国ごとの戦力を公式の場で見せる事で、大陸全土の民に国家間の平和と友好を示す大会として4年に一度行われている大きな大会なのだ。

 

「まぁ、大陸大会で使われる会場並に広いとは言えないけど、確かに広いな...まぁあれが全て戦闘実技場とは思えないけど。」

 

「え?あれ全部実技場じゃ無いの?」

 

「当然だろ?学園内の案内図にも戦闘実技場と魔法実技場が別れてるって書いてあったし...あの会場の半分が戦闘実技場って考えるのがいいんじゃ無いか?」

 

「そうなんだぁ...少し残念かなぁ...」

 

俺の説明を聞いたリクは、思いのほか大きく落ち込んでいる様子だった。

 

(そこまで落ち込むなんてなんか理由があるのか....)

 

俺は彼の意外な落ち込み用を不思議に思い、理由を尋ねてみることにした。

 

「何か凄い落ち込みようだけど、どうした?」

 

「いや、あまり狭いエリアでの戦いは好きじゃ無いんだよね、特に戦闘範囲を制限されると特に...」

 

「あぁ、成る程ね。」

 

彼はどうやら狭いエリアでの戦闘が苦手らしい。

あの実技場の半分が戦闘用の会場だとしても、その中でさらにいくつかの戦闘場に分かれているだろうから、実際に実技をする場所はもう少し狭くなると思われるので、それを気にして落ち込んでいるようだ。

 

(それにしても、いくら場所が半分だけでそこからもう少し狭くなるって言っても、通常使われる戦闘場と変わらんだろうにその広さで狭いって言うとか、どんだけ広く無いと戦えないんだよ...)

 

確かに彼は人族にしては中々大きな体をしていると第一印象では思った。

身長は俺より少し高いので190cmはあるだろう、線はまだ細さが残るが筋肉質なのでパワーも思われるし、戦闘スタイルは接近戦メインの重戦士と言った所だろう、盾とか持たせたらいい盾役(タンク)になりそうだ。

 

しかし疑問に思うのは盾役として戦うのなら彼の広く無いと戦えない発言が気になる。

見た所武器や防具は事前に試験会場に預けてあるようで、今は何も装備していない状態だ。

俺みたいに武器を固有空間に収納したり体と同一化させていたら話は別だが、彼の魔法を見た反応からするとその線は薄いと思う。

出会いこそガタイの良い小心者のイメージがあったが中々興味をそそられる人物のようだ。

 

「あ、試験会場の入り口が見えたよ。」

 

彼を横目で観察しながら歩いていると、試験会場の入り口に着いていたらしい。

付近は結構な人数の受験者達で溢れていた。

俺は遅刻ギリギリで来たので、今回の受験者がどれ程いるのか把握していなかったが流石は国でも有名な学園なだけあって人気は高いらしい。

 

そんな感じで辺りを見渡していると、一部に列が出来ているのが見えた。

列の先にはこの学園の制服を着た生徒と思しき人物が、受付に立ち受験者の対応を行なっていた。

 

「受付はあそこの列に並べば出来そうだな。」

 

「本当だ!結構並んでるから急いで行かないと!」

 

そう言って彼は小走りで受付の列に並びに行った。

 

いよいよ実技試験が始まる。

試験内容はあらかじめ聞いているので、先程の昼食の間にいくつかの作戦を頭の中で立ててある。

正直、実技試験の内容がどれくらいの難易度なのかは予想が付かないが、まぁ師匠の封印もそこそこ解けているので何とかなるだろう。

 

俺はこの後、試験で起こる事故など想像しないまま彼に続いて受付の列に並びに行くのだった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。