一夏×箒 短編集   作:まろ@ファース党

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こんにちはー!初投稿です。
一箒の民あつまれ!!!
「福音戦のなかったら」のif話です。


七夕(前編)

「箒は、何の願いを書くんだ?」

一夏に声をかけられた箒は、びくっと震えた。

「む、何にしようか」

「え?何にもないのか?」

「…去年まではあったのだが、今年はないのでな」

 

そう、去年までは、あった。「一夏に会えますように」毎年毎年心からの願いで、1度も変えたことは無かった。

去年の七夕は―――――――

「…」

学校から東の方向へ歩くこと20分、小さなアパートが見える。鍵を開けると驚くくらい片付いていて、清潔すぎる小さな一角が現れる。政府に用意された箒の住まいだ。

といっても、ほとんどの家事は雇用された家政婦がしている。住居も家政婦も二ヶ月経つか経たないかの、慣れた頃に引っ越しをする。今の住居は、壁も家具も寝具も全て灰色に統一された部屋だった。そこに寝転んでいると自分も人間ではなくただの灰色になるみたいだ、と箒は感じていた。

今の家政婦は、できる料理の種類が豊富でどれも絶品だったが、今までの家政婦同様に、必要な時以外は話をしようとせず、淡々と家事をこなしては逃げるようにして退勤していった。今日は家政婦が休みらしく、「お弁当を買ってきました」のメモが置いてある。

早速家政婦が買ってきたお弁当をレジ袋から取り出す。その時小さな箱が箒の手に触れた。

(?)

それは、きれいに内装されている赤色の箱だった。開けてみると、小さなケーキが入っていてチョコレートのペンでこう書いてあった。

『箒さん、お誕生日おめでとうございます』

 それは毎年政府からおくられるショートケーキだった。美味しいのに、毎年同じケーキと形で、ついでにメッセージの文字まで毎年同じだった。

…そうか、今日は私の誕生日だったか。

今日が七日だってことはすっかり忘れていた。七夕のイベントとして学校に笹が飾られたのは一週間も前だったから忘れていてもしょうがない。それに今日は―――

「本当に篠ノ之束の居場所を知らないのか?」

「…はい、わかりません」

箒は毎月一回、政府の重鎮と面会(という名の、尋問)がある。大抵束のことについて聞かれる。今日は九時間ぶっとおしで、終わるころには下校時間になっていた。

「はぁ、ったく…全く、隠しても意味が無いんだからな」

「…そうですね」

居場所なんて知らん。知っていたら姉さんを「謁見」したいのはむしろこっちだ。箒は心の中で毒づいた。私も今この人が私にしているように、姉さんに問いただしたいことがたくさんある。どうして、ISなんかをつくったのか。どうしてこんな暮らしをしているのか。どうして一夏に会えないのか…

 

ジワァと熱いものが目の裏に溜まってきた。それを零さないように指で拭き取りながら、箒はふと思った。

 

姉さんは感じたことないのだろうか…孤独を。

 

姉さんは、篠ノ之家をバラバラした張本人。だから、いや、だからこそ、孤独に向き合っているのではないだろうか。中学を次々に転校し、学校どころか自宅にまで監視が及んでいる私。しかし、姉さんのように、指名手配犯となれば更に世界中から監視されて、誰にも助けてもらえない状態にあるのだろう。しかし、私は、姉さんの気持ちがわからない。

昔からそうだった。ずっと前から、姉さんの気持ちはわからない。姉さんは私よりもずっと、世界中の誰よりも頭が良くて、天才で、物心ついてから、ずっと姉さんとは全く似てないことを自覚していた。

 

だけど…

 

だけど、この気持ちだけは一緒であってほしい。

離れ離れになる前、姉さんは、私や一夏、千冬さん(その代わり私たち三人以外の人間には興味がないのだが)をとても好いていて、毎日私と一夏をぎゅっと抱きしめてくれた。それは当時、素直に言うと恥ずかしいが…。とても嬉しいものだった。今も、同じ気持ちで、私たちに会いたいと、抱きしめたいと思っていてほしい。私は正直言って、姉さんを歓迎したくはない。でも会いたい…のかもしれない。そうでなければ私は…

 

チンッ

 

無機質な音が一人きりの部屋に響いた。冷え切った弁当が温まった音であった。その音で我に返る。

「いただきます」

箒の声もレンジの音同様部屋中に響き、灰色の壁の向こうに消えていった。

 

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