ログ・ホライズン-『現実の生産者』   作:サブ職業:小説家 lv.1

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015 異世界の始まり(下)

私とにゃん太班長、そしてシロエの三人が廃ビルに集って話し合いをし始める。

…一応セララの防衛と言う事で他のメンバーも居るが、今は居ない。

私の体質を考えたのと、セララに影響されるのも考えているのだろう。

 

「おやおや。誰かと思えばサミダレ嬢ではないですかにゃ」

「にゃん太班長。お久しぶり!」

「お久しぶりですにゃあ。ミント嬢はお元気ですかにゃ?」

 

ニコニコと笑いながら喋りかけてくるにゃん太班長を見て、私も微笑みながら返事を返した。。

それを見て嬉しそうに頷いたにゃん太班長を見て、私はにゃん太班長の事情を聴くべく喋り始めた。

 

「うん。班長はどうだった?」

「風雪に耐えかねて母屋が倒壊したにゃ。我が輩も、このススキノの地を離れてアキバへと赴けという思し召しかも知れないにゃぁ」

 

その言葉を聞いて、私は思わずにゃん太班長のステータスを見つめる。

…其処には確かに、無所属と書かれたステータスカードがあった。

 

「…そっか。そうだよね…私のアレはどうだった?」

 

私がにゃん太とお話したいという理由で、私達のパーティーメンバーは皆下で警戒して貰っている。

私の一言を聞いて懐かしそうに目を細めた後…

 

「にゃあ。その節はありがとうございましたにゃ。我が輩一人で出来ない事も、気付けた良い機会でしたにゃ」

「いえいえ。私も完成出来たのは班長達のお陰でしたのでお互い様です」

 

その言葉と同時に、私達は自分の左腕を見つめた。

…それを見てゆっくりと微笑みあった私達を見て、シロエが首を傾げながら喋り始める。

 

「…班長?サミダレ?なんの話してるの?」

「「一匹の猫のノミ取りの話」ですにゃ」

 

そう言って二人で微笑めば、結局何も分からなかったシロエが更に首を傾げる。

そのまま私達は外に出ようとして…アカツキからの念話がシロエに来る。

 

「こっちに向かってくる集団を発見しました。武闘家を筆頭にした6人パーティー。心当たりは?」

「おそらくブリガンティアのリーダー、デミクァスだにゃ。90レベルの武闘家で仲間も同じようなレベルにゃ。……今回の事件の首謀者。つまり敵だにゃ」

「…どうします?僕達は特に戦う理由は無いですけど…」

 

その言葉に私は、少しだけ考える様に顔に指を当てる。

…それを見てにゃん太班長が少しだけ考える様に目を細めるが、私はゆっくりと下に指を差してから喋り始める。

 

「セララちゃんを狙ってた奴らがこっちに来るって事は…って事にもなるけど?」

「…もしセララさんを狙うとしたら、我が輩が守りますにゃ。それが我が輩に出来るセララさんへの、贖罪ですにゃ」

 

 

私達が堂々と街の外に向かって歩くのと同時に、セララさんが震えながら周囲を見つめる。

黒灰姫と白灰姫の二人が私達の後ろでシロエがにゃん太の後ろに、直継とアカツキは別れて行動しておきながらセララは私の横に。

そしてそのままゆっくりとシロエとにゃん太班長が喋っているのを見ながら、私達はゆっくりと街の外に出る。

 

「…来た」

 

私が誰にも聞こえない様に呟くと同時に、セララさん以外の全員がゆっくりと警戒するように表情を動かした。

…それと同時にシロエが口を開こうとするのと同時に、にゃん太班長が警戒するように柄に手を当てた。

 

「ここらで良いでしょう」

 

それを見て私が頷くのを見て、シロエが小さく息を吸ってから…

 

「ブリガンティアのデミクァスさんってのはどなたですかっ~?」

 

シロエの作戦通り、挑発作戦が開始された。

 

「やあやあ。シロエち。そんな大声を出してものを尋ねるのは失礼なのにゃー。我が輩が知っているにゃ、あそこにいる大男にゃ。おーい、デミクァス~」

「…この街に入って来てあの三人を連れて帰ろうとしてたのは、お前達だったんだな」

 

その言葉を聞いて白黒姉妹が嬉しそうに微笑みながら私達の一歩後ろにやってくる。

二人の手はお互いに指を絡め合っていて、そのままゆっくりと私の頬に優しくキスをしてから喋りかける。

 

「そう言うお前は、躾が悪い唯のガキ」

「黒お姉様の言う通り。サブ職業でガキに転職したらどう?」

「言うじゃねぇかメスガキ共が!てめぇら纏めて教会送りにしてやるよ!」

 

その言葉と共にデミクァスがファントムステップを入れてから蹴りを入れようとするが、それを私が防ぐ様に刀を構える。

それを見たデミクァスが警戒する様にこちらを見つめるのと同時に、にゃん太班長が私達の前にゆっくりと歩いてきて…

 

「……若者の無軌道は世の常。その青春の熱を許容するのが大人の器量とは言え、そこには自ずと限界というものがあるのにゃ」

 

にゃん太が私達の目の前に立つ。

私は取り出した刀を仕舞っておきつつ、何時の間にか解いていた白黒姉妹の手を優しく絡めとる。

…それと同時に二人の頬が赤くなったのが見え、私は小さく首を傾げる。

 

「何を言ってるんだ、半獣がっ」

「これから云うのにゃ。よーく聞くにゃ。デミクァス。お前の所行はやり過ぎにゃ。どうせPKで襲いかかってくるつもりなんだろうから、手間を省いてやるにゃ。若造の高く伸びた鼻をへし折るのも大人の務め、胸を貸してやるから一対一で掛かってくるにゃ」

 

その言葉を聞いたデミクァスが、にゃん太班長の言葉を鼻で笑う。

…それと同時にニコニコと微笑んだままのにゃん太班長の姿を見て、私は人差し指で二人の手の甲を撫でた。

 

「はっ! 何をいってやがる。何で俺達がお前達の流儀に付き合わなきゃならねぇんだ。こっちは十人からの仲間がいるんだぜ?」

 

自信満々な彼の言葉に対して、シロエが煽る様に一々大袈裟に振る舞い始める。

 

「お話中済みません。デミクァスさん。あなたじゃなくてもこちらは構わないです。むしろ、その……灰色のローブの。それって『火蜥蜴の洞窟』の秘法級アイテムですよね? あなたの方が強そうです。武闘家じゃなくあなたと戦った方がどっちも納得できる。にゃん太班長、あの魔法使いとやり合おうよ」

「俺が“灰鋼の”ロンダーグだと知って云っているのかっ」

 

灰鋼…ね。

あんまり覚えていないけど、二つ名持ちって事は有名なのだろうか?

…それを見て嬉しそうに微笑んだ白黒姉妹が煽り始める。

 

「それもそうだにゃ……。白黒つけてはっきりさせるにゃ」

「私達と同じ“灰”。きっと強い」

「其処の肉壁ダルマよりは、絶対に強い」

 

白黒姉妹が更に煽り始めた。

それを聞いたシロエがニヤリと笑いながら、全員に聞こえる様に声を出し始める。

 

「“灰鋼の”ロンダーグさんでしたか。二つ名持ちですね。そっちのデミクァスさんよりも、僕らもその方が納得できる。……こっちはこのにゃん太班長。盗剣士が相手です。勝負と行きましょう。逃げるつもりはありませんから」

 

その言葉と同時に、セララさんが震え始め…それを見たメルが優しく頭を撫でていた。

それを見て私は小さく微笑むのと同時に、にゃん太班長が微笑みながら何時でも武器を抜ける様に警戒をし始めた。

 

「さっさとやるにゃ。その装備ならお前も一流の術者にゃ? 戦闘で白黒つけるのが、お前達のやり方にゃんだろう? 我が輩のレイピアが怖くて一斉攻撃にこだわるデミクァスは放置するにゃ」

 

その言葉と同時に、デミクァスの姿がホログラムの様に消え…

 

「良いだろう、俺がやろうじゃないか。お前みたいなふざけた野郎は、俺の拳で引導を渡してやっ……るっ!」

 

空中から現れたデミクァスの蹴りが、にゃん太から少しだけ離れた地面に当たる。

そして不意打ちをするように拳を顔に当てようとして…にゃん太が避け、数メートル離れた所でレイピアと取り出す。

そしてデミクァスとにゃん太班長の戦いが始まるのを見て、私は少しだけ周囲に目を向けた。

 

「…そろそろ…かな」

 

タンクとしては攻撃力が高くHPが高い武道家のデミクァスと、手数とデバフで戦う盗剣士のにゃん太班長。

殴り、蹴り…突き、斬撃…お互いに攻撃の応酬の繰り返し。

…お互い同じ様に攻撃を繰り返している様に見えるが、唯一違う点がある。

 

「…成程、賢い」

「相手が馬鹿なだけ。そうでしょ黒お姉様」

「じゃあ白お姉様はあのクソガキの攻撃を回避できる?」

「余裕。黒お姉様は?」

「余裕」

 

そう。

デミクァスは全て攻撃を受け止めているのに対して、にゃん太班長はその攻撃の全てを逸らしたり回避したりしていたのだ。

確かに一撃の火力はデミクァスの方が大きい。…けれど其処に回避率や受け流し、そしてヴァイパーストラッシュやブラッディピアッシングを使ってデバフを発動し、体力の温存。

それの繰り返した結果、最初に合ったデミクァスとの体力の差は詰められていく。

 

「くそっ! しゃらくさい。こんな決闘ごっこなんてやってられるかっ!! ヒーラーっ! 俺の手足を回復しやがれっ、暗殺者部隊っ! この猫野郎をぶち殺せッ!!」

 

ブリガンティアの動きが、三秒だけ止まる。

…その三秒をシロエ達は無駄に使いはしないし…私達が戦っていたとしても無為に過ごさないだろう。

 

「アンカー・ハウルっ!!」

「「ダンスマカブル」」

 

直継が突然現れ相手を引き付け、それを見てから白黒姉妹が私の繋いだ手と反対の手から自身の剣を取り出してスキルを使い始める。

それを見て私は苦笑しながら絡められた手を離し、ゆっくりと刀に片手を当てた。

 

「あれじゃぁっ!!」

 

セララさんの悲痛な叫びを聞きながらもシロエは眉一つ動かさない。

それは私達に対する絶対的な信頼と、自分の計算が一切間違っていないと言う自信だ。

 

「回復開始!」

「は、はいっ!ハートビート・ヒーリングッ!!」

 

セララが必死に回復をするが、その回復量は恐ろしく低い。

当然だ。セララはまだ20になるかどうかの堺なのだから、レイドに行っている前線の二人を回復しろと言う方が無茶なのだ。

 

「ダメですっ。耐えきれませんっ。私じゃレベルがっ」

「うちの戦士(前衛)は無視して、いまはにゃん太回復。落ち着いて、味方のHPを監視っ。出来ない事を見ないで、出来ることを見つめてっ」

「メル」

 

二人の言葉を聞いて、私は小さく囁く様に名前を呼んだ。

…それを聞いたメルが頷くのと同時に、自分の杖を構えてゆっくりと微笑んだ。

 

「セララ、班長は頼みました。代わりに直継は私が治します!従者召喚:アルラウネ、ハートビート・ヒーリング!…ライフバースト!」

 

アルラウネを召喚したメルが魔法を放つのと同時に、体力の回復をさせる。

今の人数だと正直焼石に水だが…それでも今の回復で約20秒は伸ばせる。

…そして、それを見逃さないシロエじゃない。

 

「…シロエ。タイミングよろ」

「同じ白色同士、仲良くしよう」

 

その言葉と同時にシロエが少しだけ苦笑しながら杖を構える。

…それを見て私が小さく微笑むのと同時に、私は一歩下がって二人の“道”を確保する。

 

「僕のシロは色の事じゃないけど…まぁ良いか。キーンエッジ」

「そろそろ行くぜっ。白黒っ!キャッスル・オブ・ストーンっ!!」

 

その言葉と同時に、直継の身体が黄金の様に輝く。

…それを見て一瞬だけ迷ったブリガンティアのメンバーを見つつ、私は頬に手を当てて微笑んだ。

 

「なっ。なんだっていうんだっ」「知るもんか、あと一息だ。仕留めろっ!!」「喰らえっ! アサシ…」

 

ブリガンティアのメンバーが直継の周囲を囲んで殴り始める。

…それは先程まで直継を殴り続けられていたという油断からか、速く守護戦士を倒して後衛を倒したいという考えか。

 

「「遅い。エンドオブアクト」」

 

そんな敵達の考えは、私達にとって最高の…そして敵にとっては最悪の一手だった。

二人が数多くの敵の間を通り抜け…鏡写しの様にぴったりと同じ動きをする。

…そして、体力の多い少ない関係無く全員が教会に送られた。

 

「…なっ…ネ、ネイチャーリバ…」

「構うな。デミクァスの回復を…」

 

森呪遣いの青年の言葉をロンダークが止めるが、その一手は余りにも悪手過ぎる。

それを見た白黒姉妹が加速してロンダークの前に近づきつつ、武器を構えた。

 

「こっちは構うよ」

「さっさと斬り潰れて欲しいんだけどね。“灰鋼”さん?」

 

彼らはゆっくりとだが距離を取ろうとして…アカツキの刃が周囲の回復職の首と、ロンダークの片腕を斬り飛ばしてから首筋に刀を当てていた。

それと同時にデミクァスに大量の攻撃が降り注ぎ、私はゆっくりと刀から手を放そうとして…

 

「…貴様らぁ!唯で済むと思って…せめて…せめてお前だけでも道連れに…」

「…ひっ…ぁ…」

 

体力が残っていたデミクァスが、ファントムステップを使ってセララに対して攻撃をしようとする。

動けない彼女と、突然の事に驚いたシロエとにゃん太が傍にいるが…間に合わない。

 

「…電光石火」

 

技を使って移動速度を無理矢理上げ、デミクァスとセララの間に立つ。

そしてそのまま蹴りを入れるデミクァスの攻撃を弾いてから、私は彼の首を斬り飛ばした。

それと同時に私はセララさんの手を握ってから、彼を睨み付ける。

 

「セララちゃんを…私達の仲間を殺そうとするのを、私は許さない」

「…ぁ…」

 

魔法の鞄から笛を取り出して、私達はグリフォンを呼び出す。

飛んできたグリフォンに飛び乗り、私は後ろにセララを乗せて微笑んだ。

 

「この場は僕らの勝利です」

 

シロエの言葉が響き渡るのと同時に、フェーレースの四神が私達の周囲を飛び回る。

…そして次の瞬間雷鳴が轟き、フェーレースの傍には麒麟が現れた。

それを見てブリガンティアが棒立ちしている間に、私達はグリフォンで南西へと飛び立つ。

 

「…一体、どうやって生き残った…?にゃん太班長の腕が鈍った訳でも、僕の計算ミスという訳じゃ…」

 

シロエの呟きを聞いて、私はアカツキさんの方に視線を向けた。

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