ログ・ホライズン-『現実の生産者』 作:サブ職業:小説家 lv.1
「…もしもしミノリさん。大丈夫?うんだったら一回、いいえだったら二回、何か質問があったら三回咳をしてね」
「…コホン…」
誰もいない場所で、私は『花鳥風月』に周囲の警戒をさせてからミノリに連絡を入れた。
喉を酷使させる返事のさせ方に悔しい想いをしつつ、私は彼女に元気の出る言葉を掛ける。
「…シロエがゆっくりとだけど動き出したよ。だから大丈夫…すぐに助けに行くよ。勿論、私もギルドを使って協力もするから」
「…コホッ」
「怖い時は連絡して、私が何かお話をしてあげるから…寝る時でも良いし、今こんな風に仕事してる時でも良いよ」
ミノリは現実で中学生だったし、私が見つけたころにはもうハーメルンに入っていた。
…それがどうしようもなく辛くて、私は念話を入れる事にしたのだ。
「……っ…サミダレ…さん」
何かされたのか、少しだけつらそうな声音で喋るミノリを見て…私は小さく歯噛みした。
けれどそれを吐露した所でミノリの立場は変わらないし、救われる筈もない。
だからこそ、私は彼女を鼓舞する為にギルドの皆に秘密で連絡をしているのだ。
「うん。なぁに?」
「…私、怖い。もし、このままハーメルンに居続けられたらどうしようって」
消えてしまいそうな声、周りに人がいるからというには…あまりにも寂しそうな声のミノリに、私は優しく…安心して貰える様に優しい声を作った。
「…ミノリ」
「…ぁ…コホッ…」
「大丈夫。話せる内に話して」
喉を酷使して返事させるよりも、今話せる内にしっかり話した方が良い。
そんな事を考えながら私は耳を傾ける。
「…このまま、悪夢のような毎日が続いたらどうしようって…トウヤも毎日、傷だらけで帰ってくるし…もし、師匠に…先輩に嫌われたらって…」
「…ミノリ、貴女の大好きなツキサギ先輩からの言葉、預かってるよ」
「…ぇ?」
私は息を吐いて、酷く心配そうなツキサギの顔を思い出す。
…私も彼女も、初めて出来た弟子を気に入っていた。
だからこそ絶対に……そんな事を考えながらも、私はツキサギからの言葉をゆっくりと伝える。
「神祇官は皆を信じて突っ走れ。もし駄目なら怒られるし、正解なら沢山褒めてくれる。自己評価は正確に、自分と相手の差を考えて…」
「「障壁貼って突っ込んでけ」」
ミノリが少しだけ楽しそうに笑ったのを見て、私は少しだけ安堵の息を心の中で吐く。
…それと同時に、ミノリが感情の籠った様な声音で話しかけてくれる。
「…大丈夫です。私、師匠の言葉を思い出しました。…だから、えっと…」
「ふふ…じゃあ、トウヤに伝えといて。大事なのは冷静な心でも、技術でも無くて…突拍子も無い判断力って」
「…二人共、変わってないですね…あ、コホッコホッコホッ」
「そうだね。…うん。分かったじゃあこっちで念話を切るね。また、時間があったら」
「…コホッ」
そう言って念話を切ってから、私はシロエの方に歩いて行く。
戦闘中のシロエに近づいて…
「ミノリは無事だよ」
「…そう…ですか…」
そう言ってから離れて、シロエの返事を聞きながら自分のパーティの元に行った。
パルスプリット連打でストレスを解消している彼女達を見ながら…
「武士の挑戦!」
私も適当に見つけた敵にヘイトを集め、ストレス解消を開始した。