ログ・ホライズン-『現実の生産者』   作:サブ職業:小説家 lv.1

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「今日はこんな所にしとこうぜ」

 

という直継の言葉に頷いて、シロエは魔法の詠唱を止めて杖を降ろし、私達は全員武器を構えつつ、シロエ達を庇える様に警戒をし始めた。

 

「…まるで重要人物になったみたいだ」

「美人のSPハーレム祭り!」

「…まぁ、周りから見たらそうなんだけどね…」

 

シロエがため息を吐きながら喋るのを見ながら、私は少しだけお茶らけた様に笑う。

そしてそのまま念話をしながら周囲を警戒させつつ…私はシロエに話しかけた。

 

「契約だからね。体力の低い付与術師を盾にするなんて、シロエは悪い奴だな」

「そんな事言ったら、俺も守護戦士で守られてるんだが…」

「主君。採取完了だ」

 

アカツキが敵から物を採っていたのが終わって、私達の目の前に現れた。

シロエにお疲れ様と言われて頬が緩むのを見つつ、私達は辺りの警戒をしている花鳥風月に連絡を入れた。

 

「…ツキ。周りに敵は居る?」

「ううん。いないよお姉様」

 

ツキが少しだけ息を荒げながら喋りかける。

…視線を感じて後ろを見れば、其処には私の方にスコープを向けているツキが居た。

…それを見て私が苦笑しながら念話を繋げつつ、周囲に隠れているハナに手話を行う。

 

「ならハナ、トリ、フウに連絡して。三人は私達と合流、ツキは…」

 

私はチラッとシロエを見る。

私がしたい事に気付いたのか、シロエは頷いてアカツキさんを呼んだ。

現れたアカツキさんはシロエの後ろ…ではなく私の少し右前に現れたのを見て、シロエが少しだけ首を傾げつつも話しかける。

 

「アカツキさん。『花鳥風月』のツキと辺りを警戒して貰えないかな?」

「…敬語禁止と、アカツキだ!」

「という訳で、ツキはアカツキと一緒に周囲の捜索。彼女のビルドはシャドウブレイドで、サブ職業は追跡者。ツキも上からの移動でお願い」

「了解」

 

念話からの返事を聞いた後に、私は小さくアカツキさんの方を見つめた。

それを見たアカツキさんが少しだけ視線を逸らしつつ、先程の会話を聞いて不思議な部分があったのか首を傾げながら私の方を見上げた。

 

「…よくビルドが分かったな」

「…サミダレは、二刀流居合とか珍しい事しているからね。誰がどう組み合わせが良いかとか、色々考える時は、僕も良くお世話になってたよ」

「…そ、そうなのか?」

「まぁね」

 

アカツキさんからの言葉に少しだけぶっきらぼうに返しつつ、私はゆっくりとツキを見上げた。

…それを見てアカツキさんは小さく首を傾げるが…先程のお願いを思い出したのか口を開く。

 

「…じゃあ私は木の上から行こう。暗視を取っているし、隠行術と無音移動の使い心地も試しておきたい。ツキという人の構成はどうなんだ?」

「暗視無しのサイレントスナイパー。腕は信用してほしいかな、昨夜1パーティ半を殺しきった実績はある」

 

それを聞くと全員が驚いたようにこちらを見つめた。

私はその視線をあえて無視しながら全員に命令をし始める。

 

「ツキはハイディングエントリーのみ使用可。もしPK若しくはプレイヤーに会ったらハナに報告。そして命令を受け次第撤退か殲滅。

アカツキさんは先行してツキ以外の人影が居たらシロエに念話で報告してください。

シロエはマジックライトを使って視野の確保。アクアは何時でも唱えられるようにディスペルの準備、アイはゲイジングアイの起動、エリナは各種支援魔法を歩きながら掛けて。

ハヅキとミーナはノクターンでエリナの支援。

直継は私と同じ最前列へ、もし攻撃魔法が来たら一歩下がれば私が斬る」

『了解』

 

全員に指示をすれば、シロエから何時も通り凄いな…なんて声が聞こえる。

私からしたらシロエの方が凄い気がするけど…なんて思いながらも、私達はゆっくりと歩き始めた。

 

「支援魔法全員に掛け終わったよ」

「お疲れ様。後は歩くだけだ」

 

そう言って全員が今までよりも早い速度で歩き始める。

やっぱりオーバーランナーは楽だなぁ…なんて思いつつ、隣のエリア…カンダ用水路に辿り着き、アカツキと合流した。

…さっきのシロエと直継の会話は、全員が聞かなかった事にした。

 

「さくさく行こうぜ、宿が恋しいや」

 

直継の言葉に私達も苦笑しながら頷くのを見て、私は少しだけ警戒を解いた。

一応人影はないと聞いていたし油断していても問題はないだろう。

 

「確かに、温泉とか入りたいねー」

 

そんな油断からか、口が滑ってしまった。

シロエと直継から親を殺された様な視線で見つめられるが、ハヅキはそんな事に気付かなかったのか…

 

「昨日の温泉、凄く気持ち良かったです。それに、部屋に付いてたジャグジーバスもとっても良かったですし…」

 

という、火に油を注ぐ様な発言を繰り返した。

闇の帝王も逃げ出すくらいこちらを見つめてるのを感じながらも、戻ってきたアカツキさんを見て小さく視線を逸らしながら喋りだした。

 

「…あー、ゴ、ゴブリン出なかったなー」

「…ソウダネ」

「…そりゃ、来ないだろう。こっちは90レベルの団体様だぞ」

「私はあの恐竜の骨をかぶってるゴブが好きだ。偉そうにしているところが滑稽で可愛い」

 

私達の必死の話題替えにシロエが乗ってくれたのが幸いし、私達はゆっくりと安堵の息を吐いた。

その後もゴブリンに対して…というより魔術師系の話題になったアカツキが…

 

「だいたいの所、魔術師系の敵というのは偉そうにしているくせに装甲は紙でHPは少ないのだ。それならそれで下がっていればよいものを、のこのこ前線まで出てくるゆえ狙うのは至極簡単だ。

ハイド・シャドウでこっそりと接近して首筋に小太刀をぞぶり、と突き入れる。身体の力がすとんと抜けて糸の切れた人形のように崩れ落ちるのがたまらない」

 

という発言をしてしまった所為で私達の付与術師三人とシロエの頬が引き攣ってしまい、私は思わず笑ってしまった。

発言が可笑しいと感じたのか私に対してムッとした顔をしてくるアカツキの頭を撫でれば、子供ではない!と怒られる。

そんな行動のお陰で全員の緊張が解けた瞬間、遠くから草が揺れる音が聞こえた。

 

「全員準備!」

 

私の掛け声と共に、直継が慌てて武器と防具を取り出そうとするが、余りにも遅い。

私は全員の前にでてタイミングを合わせ、叢雲の太刀を使って飛んできたサーペントボルトを斬り捨てる。

そのまま両刀を抜いて走るのと同時に足に鎖が付いたが、元からエリナが準備していたディスペルマジックのお陰で鎖は消える。

 

「直継。直列のフォーメーション! 敵はPK、人数は視認4!位置を確定します。そこっ!!」

「二人はノクターンを止めて応戦準備!三人はシロエと同じ位置に移動して」

 

というか視認4って…多分向こう側は魔術師でも居るんだろうけど、それでも6だぞ…?人数も負けてるのにどうして襲って来たんだ?

…花鳥風月のメンバーに辺りを探らせるべき?…いや、それをして人数をばらすよりは待機させた方が良い筈だ。

待機命令を呟くのと同時に、目の前の男が笑いながら話しかけてくる。

 

「黙って荷物を置いていけば、命までは取らないぜ?勿論、其処の護衛は関係ない。お前ら二人だ」

「…へぇ…」

 

成程、彼らは私達を護衛だと思っていたのか。それだったら尚更可笑しい気が…いや…成程、魔術師を隠しているのならこの状況は“丁度良い”だろう。

護衛ギルドは地図師等が居ないから、今までミニマップで頼っていた部分が多いから…つまり…此処はこいつ等が地の利を得てるから此処まで傲慢なのか。

 

「守護戦士に魔術師か。無駄なあがきをしてみるか? こっちは四人なんだぜ?」

「…四人…ね。こっちは八人だけど?」

「ハッ!確かに今までだったら負けてたかもしれねぇが、こっちはこの辺りをよく知ってるんだぞ?多少の人数不利(・・・・・・・)なら巻き返せるぞ!」

 

その言葉を聞いて私は思わず苦笑し、シロエは馬鹿確定と小さく呟いた。

…そのまま武器を構えながらやってくるのを見て、私は彼らの距離が近づく前にツキの念話に連絡を入れる。

 

「…らしい。ハイディングエントリーからクリープシェイドでサイレントスナイパーからアサシネイト。二人いた場合はアカツキさんと協力して」

「了解したよお姉様」

 

私は念話を繋いだままのツキに情報を与え、それを近くに居るアカツキにも伝えて貰う。

そんな事に微塵も気付いてないだろう彼らはニヤニヤしながら、こちらを見つめる。

 

「……直継どうする?」

「殺す。三枚におろしてからミンチにして殺す。そもそも他人様を殺し遊ばせようって連中だ。当然他人様に殺害されちゃったりする覚悟なんておむつが取れる前から決まってるんだろうさ」

「直継はPK嫌いだもんね。……僕はお金払っても良いんだけどさ、一度くらいなら」

 

だけど…とシロエが言いながらニヤリと笑う。

 

「でも、あいにくお前たちには払いたくない」

「よく言ったぜ、シロ」

 

その瞬間アイが詠唱を始める。

その事に気付いたシロエと相手のリーダー、そしてその二人をのんびりと見ていた私が同時に命令を下す。

 

「第一標的左前方の戦士っ! 同時に盗賊への阻害もまかせたっ」

「そこの鎧の厚い戦士は俺達にまかせろ、お前は魔術師達をさくっと殺しちまえっ!!」

「アイは頭の中でカウントして残り2秒でフリーズ。ミーナとアクアは森の中を一斉掃射」

 

シロエがアストラルバインドを掛け、アクアがパルスブリットで一斉掃射をする。

時々当たっているのか、ミーナの輪唱のキャロルが発動し、追加ダメージも入った。

 

「ハッ!お前達は付与術師か!ならあっちの魔術師を狙うぞ!ヒーラー!適当に回復をしろ!」

「「…行かせると思う?」か?」

 

直継が私の方に走ってきて、私の直ぐ横に止まったと同時に盾を持ち上げる。

それを見て私は少しだけ微笑みながら、取り出した武器を片方だけ上げてスキルを発動させた。

 

「アンカーハウル!」

「武士の挑戦」

 

アンカーハウルでヘイトを取り、私がその横で一人ヘイトを吸い取る…という事をする。

彼らの視線が私達の方へ向くのと同時に、武士のヘイトを私が吸い取った。

 

「ちっ! 構うことはない!! 三対二なんだ。幾ら堅いと云ったってたかが知れている。この野郎を先に畳んじまえ!」

「…良い判断だね。」

 

私と目の前の武士で一対一、直継の相手は武器を見た限り盗剣士二人組だろう。

…という事はデバフを撒いて手数で押せば約40秒で落ちるだろう。

……勿論、後ろの付与術師達(優秀な仲間達)が何もしないなら…と言うお話だが。

 

「っ!」

 

相手の攻撃に合わせて、私は刀を無作為に振るう。

そして瞬時に相手の攻撃を弾き返し、返す刃で相手の首を狙う。

それを見た相手が下がろうとするのを、もう一つの刀で腕を斬り付ける事で防いだ。

 

「糞…一刀両断!」

「切り返し」

 

相手の一撃を二刀流によって防いだ。

そのままパッシブの木霊返しが発動した事により、相手に無数の傷跡が走り出す。

 

「虎口破りぃぃ!」

 

明らかにPSは低い、馬鹿みたいにスキルを使ってくれるから、対処がしやすい。

そんな事を微笑みながら、私は来る攻撃をスキルを使わずに避ける。

一撃を逸らす為に柄の先を刀で逸らしながら反撃を入れ、そのまま相手の後ろに辿り着くのと同時に…

 

「なっ!?」

 

相手の技が地面に叩きこまれる。

それを見ていたシロエが可愛そうな目で敵を見つめていたが、見なかった事にする。

それを見た彼が後ろを振り向き、スキルを使おうとするが…先程使った影響かMPが足りないのだろう。

 

「んっ!ちっ!糞が!糞がぁ!」

 

唯適当に殴っている彼の攻撃を避けながら、私は彼を憐みの表情で見続けながら反撃を入れる。

それを見た彼が瞬時に槌を大振りで振るのと同時に…

 

「居合の構え」

「…なっ!しま!」

 

私は武器を仕舞って避ける。

それと同時に彼の首に両刀が振るわれ…彼はもう二度と動く事無く、経験値と金を残して消えていった。

それを見るのと同時に、私は叫ぶ。

 

「アイ!エリナ!」

「「ソーンバインド・ホステージ!」」

 

二人の茨が、それぞれヒーラー以外の二人に纏わりつく。

私は自分の刀で二人の茨を一本ずつ斬り、直継は目の前のリーダーを斬り始める。

 

「なんだこれはっ!? くぅっ!」

「では団体様」

「ご教会へご案内~…だぜ?」

「くそっ…ヒーラー!武士を蘇生するんだ!」

 

リーダーが叫ぶのと同時に、私達は小さく頷いた。

確かに今の状況ならそれが一番だろう。

盗剣士二人なら片方がバックラーとして活躍すれば何とかなるだろうし、私達はタンクだ。

あそこ迄の距離を詰めるにはかなりのリスクが伴う。

…勿論、

 

「…ぐぅ…」

「…は?」

 

あのヒーラーがちゃんと動いていたらの話だが。

確かに、最初はアクアの一斉掃射のダメージを回復した可能性はある…けど可笑しくないか?

 

「…彼は最初からあの状態ですよ。私の妹、眠らせるのは得意なので」

「…まさかお前…嘘だ。状態異常特化の付与術師で女性アバター…嘘だ、そんな訳…」

 

その言葉を聞いて、私はおっと口を緩ませた。

アカツキさんが気付いていないから余り有名ではないのかと思ったが、どうやらそうでもなかったらしい。

 

「そう言えば挨拶を忘れてましたね。こんばんは、私は『現実の生産者』のリーダーのサミダレと言います」

「…そんな…嘘だろ?」

 

冗談であってくれと言った様な表情でこちらを見つめるのを見て、私は小さく微笑みながら一言呟く。

 

「アクア」

 

その一言で彼女はパルスブリットを掃射し、速攻で体力と茨が削り切れ倒れた。

リーダーの首に刀を置いたまま私は彼に微笑みながら喋りかける。

 

「チェックメイトだ」

「…ああ、そうだな。………お前らのな!もういい!妖術師!召喚術師!ここまで来れば総力戦だ!全員消し炭にしちまえっ!」

 

静かな夜に、目の前の男の怒鳴り声が聞こえる。

そして静かな風にバチバチと音が聞こえるのを聞いて男が笑いだした。

 

「ザマァ見ろ!伏兵を警戒しなかった事を、せいぜい神殿で悔し涙でも流すがいいさっ!あはははははっ!」

 

その笑い声と共に、寝ていたヒーラーにライトニングチャンバーが当たり…そのままアイテムをばら撒いて死んだ。

それを見ていた男の笑いが止まり、再び夜風が吹く。

 

「うわぁ…これは酷い」

「な、なっ。何やってるんだよ、お前らっ!? な、なんで攻撃するんだよ!?お、お前らまさかっ。俺達を裏切って……」

「そんなんだからお前らはダセェんだよ」

 

直継が盾で殴ると、それだけで目の前の男の茨が切れてダメージが発動する。

もはや抵抗する気も無くなったのか、森の方を信じられない様に見つめている。

 

「仲間くらい信じた方が良いよ。…君らの妖術師と召喚術師は」

「もう疾うの昔に死んでいるぞ」

 

アカツキさんがそう言いながら、森から引きずっていた二人の魔術師を道路の上に投げ出す。

それを見ていた男の顔が、恐怖一色になった。

 

「じ…じゃあ、さっきの魔法は…!」

「「「「私達、『花鳥風月』がやりました」」」」

 

その言葉と同時に四人の女性が現れる。

それを見て更に絶望した様な表情を浮かべるのと同時に、私は微笑みながら武器を仕舞う。

 

「…付与術師の呪文をバカにするのは良くない。

お前達は低火力だからと無視していたらしいが。あれだけ明るい魔法を見続けていれば、森の暗がりなんか見えるはずがない。

後ろで支援しているはずのヒーラーが寝ているのにも気が付かなかったな。お前達の連携は穴だらけだ。

戦闘に夢中でHP管理も仲間の状態確認も出来なかったお前達の伏兵なんて、簡単に暗殺できたぞ」

 

その言葉と同時に、全員が武器を構え、ソーンバインド・ホステージに引っかかっている彼に対して攻撃準備をする。

それを見て周囲に視線を向けるが、助けが来ない事が分かると瞬時に私の方を見て指を差した。

 

「お、俺達を殺したってすぐ復活だ。お前達に負けた訳じゃねぇっ」

「そうだね、次の挑戦を待ってるよ。今度は…金を貰いにでも行こうかな?」

「…ひっ!」

 

その一言と共に、許可を貰ったアカツキが刀が首を斬り…返り血を避けて首を落とした。

…静かになった相手から散らばったお金とアイテムを集める為、私達は周囲の警戒をし始めた。

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