ログ・ホライズン-『現実の生産者』 作:サブ職業:小説家 lv.1
「治安悪くなっているという話は本当だなー」
アイテムを回収しながら、直継が独り言を呟く様に話した。
それを聞きながらも、私は周囲を警戒する様に柄を持ったまま周囲を回り始める。
守護戦士は二人いるが速度が遅く対処が遅れると死ぬ可能性が高い為、私が周囲を警戒するのが一番だという結論だ。
一応他に伏兵や漁夫が居た場合を考えてアカツキさんを私の直ぐ横に居るらしい。
「アカツキさん。そういえばよくすぐ隠れる事が出来たね」
「それは…まぁあれだ。主君が時間を稼いでくれたからなのと…ツキが助けてくれたのだ」
「…ツキが?」
辺りの警戒をしているツキを見つつ、私達は会話を続ける。
全員でツーマンセルを組んでアイテムを回収をしているのを確認しつつ、私達はアカツキさんと一緒に辺りを警戒した。
「本当は、召喚術師の出した従者に気付かれそうになってな。それを助ける様に先に召喚術師を排除してくれて…相手を反撃させずに殺せたのも、ツキのお陰だ」
「あの子、状況判断は凄いからね」
そんな事を言いながら手を振れば、ツキも嬉しそうに手を振り替えてくれた。
それを見て私は微笑むのと同時に…アカツキさんが喋り始める。
「そうだな。それに…任務中に心を殺す事は難しい。私は、あの時一瞬だけ途惑ってしまった。だけどツキは…何も気にせず、夜空の星を見ている様に矢で射抜いた。それが当然と言わんばかりに」
その言葉を聞いて、私は少しだけ考える様に指を口に当てる。
それを見たアカツキさんが小さく首を傾げるのを見て…私は小さくため息を吐いた。
「…皆には、この世界をゲームだと思わせてる」
「それは…当たり前だろう?」
アカツキが何を言っているんだという顔でこちらを見てきた。
だけど私は、その言葉に対して首を振る。
「ううん。この世界はエルダー・テイルであってエルダー・テイルじゃない。私達は、この世界で生きなきゃいけないんだ」
「…」
「だからこそ、この世界がゲームだという認識を改めなきゃいけない」
ご飯は料理人が作れば美味しい味の料理は出来るし、EXPポットを売るという商売だって出来る。
そんな事を心の中で呟きながらも…私は月に手を伸ばしながら小さく呟いた。
「私達に唯一出来る事は、この世界でどう生きるか…それだけだよ」
「どう…生きるか」
その言葉を聞いて、アカツキは主君と慕っているシロエの方を見る。
私はその様子を見て微笑みつつ、ゆっくりと伸びをした。
「さ、金も少ない彼らから貪り取ったし、私達は先に戻るねアカツキさん」
「…そうか、分かった…その、フレンドとうろ…」
「サミダレさん!皆の準備が整いました!」
アカツキさんが何かを言おうとする前にハヅキが私の傍にやって来た。
…そのままハナの方を見ると問題なしと小さく指を動かした。
それを見て頷くのと同時に、私は全員に聞こえる様に声を出す。
「分かった。じゃあハナに警戒しながら先頭を進むように連絡をお願い。シロエ、五分後に出発!」
「分かった!」
ハヅキが私に…正確に言えばアカツキさんにニコニコと笑う様に私の傍に寄った。
そしてそのままゆっくりと私の手を握り、目を潤ませながら小さく微笑んだ。
「サミダレさん。行きましょう?」
「え?うん。ごめんアカツキさん、何か大切な用事があったらシロエに聞いておいて!」
「わ…わかった」
私がハヅキに手を引っ張られて連れていかれ…私は木陰に向かって歩き出す。
ハヅキは私の手を握るのと同時に、ゆっくりと私の身体を抱きしめた。
「…私を…捨てないですよね?」
「捨てる…かぁ。と言っても、今は保護してるって扱いだからね。現実で手に職付いてたら良いけど…流石に無いでしょ?」
「…あります。私は…私は…」
ジッと縋る様に私の手を握る彼女を見て…私は彼女のサブ職業を確認した。
…彼女のサブ職業は、毒使い。
もし、彼女が現実でも同じだったら…多分、そう言う事なんだろう。
「…帰ろ?私も温泉入りたいや」
「そ…そうですね。帰りましょう…!」
ハヅキの手を握り返しつつ、私はゆっくりと皆の下へ戻っていく。
…弱弱しく握る、彼女の手を離さない様にしながら。