イナズマイレブン The Price of Change 作:とっぴぃ
完結といっても、第一章=アニメの1話分くらいの感覚で執筆していく予定です。
とはいえアニメのシナリオライターなんてやったことないので、あくまでなんとなくです!
1年生って、先輩の前だと緊張して自分のキャラだせないですよねぇ(フラグ)
続きが気になるって方は評価やコメントなどお願いします!
【第1章 後編 『はじまりの一歩』】
鈴雲 成恵《なるえ》の通う学校、雪花学院中等部は去年まで女子高であった。
地域の過疎化が進んでいる今、ここ、大原町《おおはらちょう》も例外ではなかった。
多くの小中学校が統廃合されていった結果である。
統合されたとはいえ、生徒数はそれほど多くない。教員を合わせても200人に届かないだろう。
そんな中結成されたサッカー部も、元女子校だからというわけでもなく、入部希望者が減っていき、
とうとう人数割れしていた、というのも仕方のないことだろう。
現3年生の中にも入部していた先輩が1人だけいたらしいのだが、まともな試合も出来ないサッカー部に用はないと
親に退部させられ、高校受験に向けて勉強を始めているらしかった。
そんな折、都会ならいざ知らず、地方では余程の強豪でなければ名前すら知られていない学校にスポンサー等つくはずもなく、他のスポーツ部員を助っ人を呼んで参加したFFTでも地区予選1回戦で敗退。結果を残せずじまいだった。
そんな、廃部までの経緯をサラッと説明された。サラッと。
キャプテンである和《やわら》は廃部になったことをそこまで気にしていない様子だったのだ。
普通、もっと落ち込んでてもおかしくないのでは?という成恵の疑問はすぐに解決した。
「ほら!これを見てくれよ!」
和に見せられたのは、ポケットから取り出した為、ちょっとくしゃくしゃになった小さなポスターだった。
いつもポケットに入れているのだろうか…?
「大原商工会主催サッカートーナメント?」
「そう!」
「これが、なんですか?」
「参加するぞ!」
「えぇ?!」
「キミ、えーと...ごめん、名前聞いてなかったね」
「あっ、鈴雲成恵です。友達からは、なるって呼ばれてまs」
「なる!だな!」
「はぃ」
「サッカーは好きか?」
「はい」
「サッカー部に入ろうと思ってたんだよな?!」
「はいっ」
「ごめんな!さっきまほりんと職員室で話しているの聞こえちゃってさ!」
「あっ、それで私に声をかけて...まほりん?」
「ししし!まほりんってのは東堂センセのあだ名!サッカー部以外でそう呼ぶとすごく怒られるんだけどさ!」
「はぁ」
「あっ、あと年齢のことも言ったらすっごいキレるから気をつけろよ?」
すごく自分のペースで話す先輩だ。というのがなるが抱いた和先輩への第一印象だった。
すごい勢いで話しかけてくる和先輩に終始押され気味でタジタジだ。
ただ、話が脱線しかけていたが、疑問はまだ残っている。
「でも、サッカー部は廃部になったから試合とかできないんじゃ...?」
「そのとーり!」
「じゃあ、そのトーナメントも参加できないんじゃ?」
「ちっちっち!このチラシをよく見てみなさいな!」
突き出されたチラシをそのまま受け取り、隅々まで見てみる。
書かれている情報といえば、トーナメントの名前と日付、参加要項に、優勝の特典...?
なるは思わず大きな声を出した。
「これって!」
「そう!優勝すれば、大原商工会がスポンサーになってくれるって!」
「それじゃあ、優勝さえできれば!サッカー部は復活できるってことですか?!」
「そのとーり!」
「わー!まだ希望はあったんだ!」
「へへっ、そゆこと!」
自慢気に胸を張る和先輩だった。
「参加要項のところもちゃんと見た?」
「はい!大原町にある中学生のチームであれば、だれでも参加可能!」
「そう!つまり、サッカー部じゃなくても人数さえいれば、参加できるってこと!」
「じゃあ私たちにもチャンスがある!」
「そのとーり!」
「優勝できれば!」
「そのとーり!」
「...ゆ、優勝?」
「ん?どーした?」
にっこりとほほ笑む先輩の笑顔がまぶしい...。
「優勝できなかったら?」
「そりゃもちろん、廃部だな!」
「えー?!」
「まぁでも考えてもみろよ!」
まさかこの先輩から「考える」というワードが出てくるとは思わなかった、ということは黙っておこうと思ったなるであった。
「なんでこんな大会が開催されると思う?」
「え?それは。えーと?」
ぶっちゃけ商工会とか言われてもイマイチピンと来ない、ほんの少し前まで小学生だったなるである。
イベントの開催理由なんて考えたこともなければ、スポンサー制度についてもなんとなーくしか理解できていないレベルだった。
「ま!単純な話なんだけどさ!町おこししたいんだってさ」
「町おこしですか」
それならなんか聞いたことがある。地域のみんなで地域を盛り上げよう的な、あれだ。
「そ!サッカーの人気は今やうなぎ登り!それにあやかろうって魂胆が見え見えなんだよなー。まぁそのせいでサッカー部も廃部に追いやられたわけだけども」
「なんか気持ち複雑ですね...」
「でもさ!」
「はい?」
「結局強くなくちゃ、FFで優勝なんてできないもんな!」
「そうですね...って、えぇ?!優勝?!」
「ん?なんか変なこと言ったかな?」
「参加するなら優勝をめざす!そうじゃなきゃ、対戦相手にもサッカーにも申し訳ないだろ?」
「サッカーにも?」
そうか、今やっとわかった気がする。なるがなぜ雷門と世宇子の試合を見て心が熱くなったのか。
なるだけじゃない、日本全国、サッカーの制度を変えるまでの存在になったのか。
言葉には出来ないけど、なんとなく、分かった気がする。
「もちろん!なるも参加してくれるよな?!」
「はい!」
考えるまでもなかった。なぜなら、そのために一人で練習してきたのだ。
「それで、他のメンバーは?」
「なる!」
「はいっ!」
「ウチとなるで、2人だ!」
「...え?」
「おいおい、春学期初日だぞ?他の元部員に声かけようと思ってたんだけど、ちょうどなるとまほりんの会話が聞こえてきたからさ」
「あ、それで」
納得しつつも、窓から中庭でシンボルみたいに堂々と建っているそこそこ大きな時計塔を見る。
気付けばもうすぐ夕方になろうかという時間だった。
午前中には入学式・始業式も終わって、すぐに職員室に来たのに、気付けばずいぶんと話し込んでいたらしい。
「わわっ!早く帰らなきゃ!」
家ではお母さんが昼食を用意してくれているハズだった。なるは怒られることを覚悟せざるを得なかった。
「ん?そうなのか?」
「はい...お昼ご飯、家で食べる予定だったので」
「そうだったのか?!わるいわるい!」
申し訳なさそうに頭を下げる先輩だった。とりあえず、悪い(?)人ではないと確信できた。
『中学に入ったらサッカー部?!なる、本気なの?!スポーツ系の部活は上下関係すっごーく厳しいんだよ?!』
そんなことを小学生のとき、親友にそう言われたことを思い出していた。
下級生の私にも頭を下げるなんて、親友に何度も脅されてちょっぴり不安だった気持ちは吹き飛んだ。
「それじゃあ私、帰りますね」
「おう!また明日な!」
今日は月曜日だ。明日から通常授業が始まる。明日の放課後、また先輩と話すチャンスもあるだろう。
「あ、そういえば大会っていつでしたっけ?私、初心者だからちゃんと練習しないと」
振り向きざま先輩に尋ねた。
「今週の土曜日だ!」
振り向きざま尋ねた格好のまま、なるはその場で石のように固まった。
と、いうわけで一縷の望みはあるものの果たしてトーナメントに参加できるのか?
メンバーは足りるの?練習は間に合うの?そんな不安がなるの胸中で駆け巡っていることでしょう。まさに「最悪のスタート」をきったなるでしたとさ。
大原町は統廃合により校区が広がったはいいものの、FFに参加できるほどの中学はほとんどなく、あったとしても地方予選1回戦敗退などが続く地区でした。
そんな中、スポンサー制度を逆に利用して、地域活性化を試みたのが大原商店街を中心とした、大原商工会の会長、一善 元《いちぜん はじめ》氏なのでした。
一善会長も学生時代はサッカー部所属。サッカー人気にあやかりたいという野望を秘めながらも純粋にサッカーを応援したい人物の一人なのでもあったのです。
今後、登場したとしてもあまり活躍はしないでしょうから後書きにて補足説明させて頂きました。