実は4話目を書くまで叛逆は見ていなかったんですけど、これを書くまでの間に見ておきました。
今後はそちらの世界線も入ってくるのですこ~しだけ矛盾点も出てくるかもしれませんが、それが極力起こらぬように書いていこうと思います。
暗闇の中に、一縷の光が走っていた。
どうやら部屋から光が漏れているようだ。
部屋の中には、二つの白い大小の影があった。
小さな方は床に佇み、大きな方は座椅子に掛けながら画面に目を向けていた。
その大きさの差はおおよそ、猫と人間くらいの差だろうか。
というよりは、実際に猫と人のような姿をしていた。
「……以上がここ数年の地球人への接触に関するデータだ。どうだい、「博士」」
小さな方が、大きな「博士」と呼ばれた方の背中に語り掛ける。
すると、少しの間をおいてそれは応答した。
「――うん。ご苦労だったね、インキュベーター。
貴方に接触するのは確か……1年ぶりかな?
やはりこの世界……いや、宇宙は……ここ数年という極めて短い期間の間に大きな変貌を遂げたみたいだよ。
それも、ただの一度だけではなくて、少なくとも、二度は起こり得たこと」
「博士」は掛けている眼鏡を拭き、白髪で埋め尽くされた頭に手を掛けていた。
「それはつまり、宇宙の再構成が二回も行われた、ということかい?
……君は確かに僕たちインキュベーターの考えの上を行く研究者だし、それに僕らが異論を持つことは無い。一見してみると地球人のような佇まいなのはよくわからないけどね。
しかしながら、それ程の存在である君の言うこととはいえ、そのような微小期間で何の前触れもなく2度も宇宙が変わる……そんなことが起こり得るはずがないと異論を立てざるを得ないね。
もっとも、1度目は僕たちも観測したけど――」
言いかけたところで、「博士」はそれを遮る。
「確かに、わたしもそう考えていたよインキュベーター。けれど……これは紛れもない事実。これを見てくれないか」
そう呼びかけると、インキュベーターは「博士」の机に静かに乗り上げ、画面に目を向けた。
「これが……その証拠」
画面には、目まぐるしく動く無数の線形グラフがある一定の瞬間においてのみ完全に静止しているものが見受けられた。
細かに刻まれた時間を表す数値のうち、2011/4/20、そして2013/10/16と打たれたその瞬間のみ、すべての軸のすべての波形がグラフ上に表わされた「0」という数値に収束しきっていたのである。
しかも、その瞬間になるごく数瞬前まではほぼ全ての線形グラフは0とはまるで関係のない一定の周期を持った動きを持っていたにもかかわらず、である。
そしてそれは、インキュベーターからしてみれば明らかな特異点とすら言えた。
「……わけがわからないよ」
「確かにそうだな。わたしも訳が分からなかった。
だが、実はこれにはもう一つ非常な特徴があるんだ」
「そういえば、確かにこの関数だけは妙な波形を取っているね。2点に入る直前に異常なまでのエネルギー値を観測して、それから他の関数同様に0になっている」
インキュベーターが指したそれは、確かに異様な値を取っていた。
グネグネと動くほかの関数とは対照的に、「特異点」に突入する直前、
明らかに不自然に無限の方向にエネルギーが向かっているのだ。
「……そう、その関数だよ。君も気づいたね。
わたしがこの関数を独自に「地球関数」と呼ぶようになったのも、これに気付いてからだった。
君の報告にあった……「暁美ほむら」についての話が本当だとすれば、
少なくとも2013年10月26日におけるこの異様なエネルギー観測は……暁美ほむらによる何らかの干渉が起きた結果、と断定できる」
「そうだね。それは僕たちインキュベーターも同意見だ。
けれど不可解なのは……ここだね」
「そうだ。だけど、これについても先ほどの君の報告ですべて判明した、と言えるかもしれない。
実はこの2011年4月20日以来、新たにもう一つ……特殊なエネルギー関数が感知されているんだ。
コレは恐らく「円環の理」と呼ばれるものだろう」
「それでは……暁美ほむらの言っていた「まどか」という存在はやはり「あった」ということになるのかな」
「……君がこうしてここに居る以前もわたしはこの関数の「存在」は分かっていた。
しかし私はこれがどのようなエネルギーか、まではよくわかっていない。
わたしはあらゆる世界のエネルギーのデータを取れるけれど、それがいったい何なのか、というところまで考えることに実はそこまで興味はないからね。探求しようという気が起きないだけともいえるけど……ともあれ、君たちに頼まれてやっているまでだ。
時折「地球関数」から検出される微弱なエネルギー波に呼応するかのように動いているのは分かったけどね」
「へぇ……? まぁ、どちらでも構わない。
円環の理と呼ばれる不可解な存在が地球年で言われる2011年に生まれたこと。そして暁美ほむらの世界改変もそれと極めて近いエネルギー変化を起こした結果であること。この2点が分かったでも僕らには大収穫だ」
「……そうかい。それよりも、君たちはこのようなデータなどを集めてどうするつもりだ?
勿論、「交換条件」がある以上はそれに干渉しよう、という気はないけれど」
「全ては宇宙の寿命を延ばすためさ」
「……なんだかとても胡散臭いな。まぁ、今に始まったことではないか」
「大きなお世話さ。それじゃあ、僕は退散するよ。
また何か興味深いデータがあれば随時教えてほしいな、「博士」」
「あぁ。そっちこそ「例」の件、宜しく頼むよ」
「任せてよ。次は1ヶ月後くらいには報告できそうだし、その時に君にも技術提供をしよう」
やがて、インキュベーターの白い体躯はその空間から姿を消した。
一人残された「博士」はインキュベーターが自分と完全に干渉出来なくなったことを確認した後、小さくため息を付いた。
「……ふぅ。この口調すっごく疲れる。でも、一ヶ月後にはそれもしなくてよくなるんだね。
でもやっぱり疲れたなぁ、今日はお風呂入って寝よう……」
「博士」はあたかも自分のものでないかのようにぞんざいに眼鏡を放り、
そして白髪まみれの頭に手を伸ばす。
その頭から、白は消え。
代わりに、紫と白を混ぜたような色が広がった。
……はい。どうでしょうか。
ちょっと短めですけど。
久々の投稿で当時考えていた世界観を完全に復元は出来なかったので、
とりあえず今後書きやすいようになる幕間話にしました。
正直「博士」の正体九割バレバレですね。伏線作るのって難しい。
次回の投稿は早くても来週になりそうですね。
なお、次回のサブタイトルは「シードキャプター佐倉」です。
嘘です。銀紬は何も考えていません。