アナザー・シャングリラ(って呼ばれるようになりたい)   作:マクバ

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長々と時間が空いてしまった。本当に済まないと思っている。あと内容もだ。


楽玲if-続き-

 さて、斎賀さんとの約束の日になった訳だが俺は集合の30分前には駅にいた。これは岩巻さんに言われるまでもなく、女の人、斎賀さんを待たせることになったりするのは嫌だったからだ。彼女は集合の少し前に来るタイプだろうと踏んでそれより早く来たんだけど……

 

「ごめん。待たせちゃったみたいだな」

 

「い、いえっ! わっ……私も今来たところでっ!!」

 

 これって普通男女逆になるのがお約束では……? とはまぁ遅れてきた俺が言えるはずもなく、想像以上に斎賀さんは早めに来る人だと言うことが分かった。

 

「ちなみにいつ来たの?」

 

「……10分ほど前です! あ、あの陽務君は30分は早く来ると思いまして、それより早く着いておこうと……」

 

 俺が斎賀さんのことを知っている以上に、斎賀さんは俺の事を知っているらしい。面目ねぇなと思いつつも、何だか嬉しい……って俺チョロ過ぎないか? これが惚れた弱みってやつか……っ! 

 

「……あ、あの…………陽務君、え、えっと…………その」

 

 斎賀さんは何かを言いたいのか俺を呼んだ。その姿を見て

 

「あ、そうだ。斎賀さん。その服似合ってるよ。制服以外を見るのは初めてだからなんか新鮮だわ」

 

 自分でも驚く程にスっと言うことが出来た。これで詰まりながら言ってたら半ば変態である。って変態なのはゲームのアバターだけで充分だわ。

 

「……こヒュッ!?」

 

「だ、大丈夫か? 腹にグーパン喰らったような声でてるけど?」

 

 潰れたカエルと言わなかったのを褒めて欲しい。いや流石に言わないけどさぁ、咄嗟に思い浮かんでしまったのだ。

 

 

「え、えっと……あっ! ……ありがとうございますっ!! ひ、陽務君もっ! ……そっ、その……似合ってます!! 服しょう!」

 

 

「復唱?」

 

「……っ!! いっ! いえっ……ちっ、ちがっ! ふ、服が!」

 

「冗談だよ。ありがとう」

 

 いつもの斎賀さんの噛み癖だと分かってはいるが、ついイジってしまう。じゃないと照れ臭くてたまらなかったからだ。これが外道共なら終日イジり続けるんだが、斎賀さんにはそんなことは出来ない。というかその後なるべく平常心を持って返せた俺を褒めてくれ。瑠美に恥を忍んで服のチョイスを手伝ってもらったんだ。それをお世辞でも褒められて嬉しくないわけが無い。顔がニヤついてたら嫌だな。大丈夫だとは思うんだけど。

 

「それじゃあ行こうか。多分席は取れると思うけど」

 

「……ひゃいっ!」

 

 俺と斎賀さんは並んでショッピングモールに向かった。まずは映画館かな。

 

 

「どれを観ようか? 別に直ぐのじゃなくても大丈夫だけど。時間潰せる場所はたくさんあるし」

 

「そ、そうですねっ……あ、あれなんていいんじゃないでしょうかっ!?」

 

 そう言って斎賀さんが指したのは、恋愛モノの映画だった。偶然にも俺が事前に調べてた時に良さそうだと思ったのと同じやつだ。

 

「いいんじゃないか? 俺もあれ見ようと思ってたし丁度良かった」

 

「お、同じのっ!?」

 

「そうそう。見解の一致ってやつだね」

 

 いやー良かった。こういう時に変に意見割れても嫌だったし。

 

「……ケンカイノイッチ」

 

「急にオウム返しのロボにならないで。玲さん」

 

 気づくかどうかの微妙なタイミング。玲さんはいつものバグが入ってるし、もしかしたら気づかないかもしれない。まぁそれでもいいのだ。俺がこう呼んだのは始めてだったし、気持ち練習がてら言ってみるかってテンションの勢いに任せて言ってみてしまった。

 

「は、はいっ! す、すみませ……ん?」

 

 何かに気づいたように玲さんは少し沈黙した。そして読み込みを経て

 

「と、とりあえず、ち、チケットを買いませんか? …………ら、楽郎君!」

 

「あ……ま、まぁそうだね。そうしようか」

 

 玲さんが顔を真っ赤にしながら俺を名前で呼んでくれたのが想像以上に破壊力があって、俺も玲さんみたいに読み込みが発生しかけたが、何とか誤魔化せたと思いたい。いつだって男の子は好きな女の子の前では格好つけたいのだ。ただしラブクロックの主人公、テメーはダメだ。

 

 ────────────────ー

 

 劇場に入って映画を見始める。スクリーンを観ながらも横に居る玲さんに思考が向くが、それだけならまぁ何とかなった。だが映画の中盤当たりだろうか? 飲み物を取ろうとした手が、玲さんの手に重なってしまった。

 

「……あ」

 

 思わず声を出して玲さんの方を向いたら、彼女もこちらを見ていた。ヤバいっと思って手を引こうとしたが、

 

「こ、このままでっ…………このままで、だ、大丈夫……です」

 

 そこからは手を繋いだまま映画を見ていた。内容なんざ覚えてるわけが無い。とりあえず、俺は自分が手汗が大変なことになってないかと、それ以上に右手の感覚に囚われていた。今まで何となく曖昧だった距離感が確かに1つ縮まった感覚だ。物理的な接触が、精神面にまで作用しているようなそんな感覚。ちらっと横目で玲さんを見る。スクリーンを観るその横顔は、暗くて分かりづらかったが耳まで赤かった。そして多分俺もそうだった。

 

 ──────────────────

 

 映画が終わり、エンディングのスタッフロールが流れる。まばらに席を立ち去り始める人達がいる中俺たちは黙って座ったままだ。当然手は繋がっている。

 

 

「……あのっ!」

 

「……あのさ」

 

 2人の声が重なった。気まづいと言うよりは気恥しい。お互い見つめあったまま、黙ってしまう。だが立ち去る人々のざわめき声が気にならないくらい、暗がりの中だが玲さんとの距離が近い。

 

「…………綺麗だ」

 

 言おうと思ってなかったセリフが自分の口から飛び出る。自分で言ったのだが、驚きのあまり手を離す。

 

「…………へ?」

 

 それだけ言って玲さんは、今にも火を噴くんじゃないかというくらい顔を赤くしていた。いや言ってしまったら後に引けない。繋がった手を握りしめながら俺は言った。

 

「そのさ、玲さん。あなたが好きなんだ。色々と釣り合わないかもしれないけど、付き合って欲しい」

 

 多分、今までの人生で1番勇気を持って言ったセリフだと思う。

 劇場内の人がほぼ立ち去り、先程まで僅かにあったざわめきもなくなる。

 

「…………そ、そのありがとうございますっ! わ、私も、楽郎君。貴方をずっと好きでした。そ、そのっ! これからもよろしくお願いします!!」

 

 こう言ってくれた時の玲さんの顔を忘れることはないだろう。俺はOKされて安堵した気持ちを持ちながら、玲さんの満開の桜のような笑顔を観ながらそう思った。お? 

 

「と、とりあえず出ようか」

 

 俺が指した先には、空気を読んで待ってくれていた清掃のおばちゃんがいた。

 

「そ、そそそ、そうですね。で、出ましょうか!」

 

 それじゃあと手を差し出すと、玲さんは黙ったままその手を取ってくれた。掃除のおばちゃんにペコペコ頭を下げながら劇場を出た。当然ながら俺ら2人の手は繋がったままだ。

 

 あーてかこの後のデートプランどうしよう。自分で全部跡形もなくぶっ壊しちまったよ。

 まぁでもいいか。俺は繋がった手を見ながらそう思った。今の俺ならどうにでもなりそうだ。

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