アナザー・シャングリラ(って呼ばれるようになりたい)   作:マクバ

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信じられるか?とんでもなく時間かかってこのクオリティなんだぜ。


エスケープ フロム ミラクル

それはある朝の瑠美の一言が原因だった。

 

「買い物行くから付き合って。荷物持ち」

 

なんでもファッションストリートで古着屋巡りをしたいんだと。数をこなす以上荷物持ちとして俺を呼んでおこうという訳だ。今はシャンフロも急いでこなすクエストもないし、新しいクソゲーも特にない。行くのは別に構わないかな。ジョギング代わりの運動ってことで。

 

「それに永遠様と会うこともあるのに、そのクソダサいファッションで居られると妹のあたしまで恥かくから!」

 

どうやらこっちの理由の方が強そうだ。トワ、俺にとってはペンシンルゴンの方が馴染みがある、が関わった時の妹には逆らって良い結末を迎えたためしがない。特に俺がペンシンルゴンとゲーム友達であることがバレて、妹と邪神が直接繋がった今は尚更だ。

 

「おーけー。おーけー。道中でハシビロコウTシャツの素晴らしさとジャージの利便性について死ぬほど語ってやろう」

 

「必要なのは利便性じゃなくてファッション性なの」

 

語る前から撃墜させられた。まぁかくして意外と仲は悪くない俺ら兄妹は出かけることとなったのだ。

 

いやまぁ出かけること自体は問題なかったんだ。面倒くさいという感情がない訳でもないが、こうでもないと俺が服を買いに行くこともないし。ジャージは春夏秋冬いつでも着れちゃう万能アイテムだからな。

それはともかく問題だったのは出かけた先で出会った人物だ。

 

 

「そういやなーんでわざわざ古着を買いに行くんだ?ネットで買えばいいじゃねーか」

 

電車の中、俺は瑠美に今更なことを聞いた。家出る前に聞いとけばよかった。そこからの展開次第では出掛けなくて済んだかもしれないのに。

 

「それはね、永遠様が言ってたから!プライベートでたまに古着屋に行くって!」

 

流石は邪教徒。邪神のフォロワーなだけある。信仰の対象のススメにはすぐに乗っかっていく。ただあの邪悪なペンシルゴンがホントに古着屋巡りをしているとは思えないが。多分雑誌の取材で適当に答えたのだろう。変にブランド名を出さずに古着屋という事で、自分が仮にプライベートで邪教徒と遭遇した際に服のブランドで突っ込まれない為の防波堤としているのではないか、と考えられる。

とにかくあいつのでまかせのせいで俺の外出が確定したことだけは確かだ。必ず復讐するっ!

 

復讐の機会はすぐに訪れた。復讐の代償として俺の魂、プライド、その他諸々全てが失われそうだが。

どういうことかというと俺と瑠美が買い物に来た、古着屋の通りにペンシンルゴンが居たのだ。居たといってもオフじゃない。周りにはカメラを持った人やカンペを持った人、照明スタッフもいる。その中心にペンシンルゴンと流行りのお笑い芸人のコンビが居たのだ。

つまりはロケである。よくある街をぶらぶらする系のやつか。あんまペンシンルゴンがするイメージはないけど、そういうのを見るとあいつも芸能人なんだなぁと実感する。

まぁ実感するのと巻き込まれるのは別だ。まだ遠目にしか見えていない。変に視界に入る前に(視界に入ったところで流石に向こうも仕掛けてくることはないだろうが)とっとと退散しとこう。

 

だが俺の考えは甘かった。間抜けなことに邪教徒である妹のことを失念してたのだ。

 

「なんかロケしてるじゃん」

 

俺が気づいたのだから当然瑠美を気づく。だが今は人だかりでペンシンルゴンの姿は見えない。

 

「まぁここは有名なとこだしよくあるんだろ。あれが来る前にどっか入ろうぜ」

 

俺がそう言うと瑠美も同意したので、手近な古着屋に駆け込むように入った。

 

「おや?あれはもしかして」

 

それとあの悪魔に対しての考えもだ。そう、悪魔からは逃げられない。

 

 

 

 

 

俺たちが入ったのはメンズとレディースどっちも取り扱ってるオーソドックスな古着屋だった。とりあえず今日は瑠美に付き合うと決めているので黙ってレディースのコーナーへ向かう。

 

「うーん。あんまりこういうとこ来たこと無かったけど、意外と良いね」

 

そう言うと瑠美は、これもいいかもと色々手に取って物色している。俺は端末をいじりながら黙って待っていた。瑠美がわざわざ俺にファッションに関して意見を求めてくることはないだろうし、俺も瑠美のファッションに口を出すなんてことはしないからだ。俺が瑠美にゲームのプレイスタイルに注文をつけられるようなもんだしそんな真似はされたくないから、自分もしない。

 

なので黙っている。すると店の外がなんだか騒がしくなった。

 

「へぇ〜永遠ちゃんこういう感じで休みの日に回ったりするんだ」

 

「そうですね。たまーにですけどこんな感じでふらっと入ったみたりするんです」

 

まったく聞き覚えの無い口調で、よく聞く声の人物が話しているのが聞こえ、背筋に悪寒が走る。いやもう手遅れだ。この手の店は出入口は1つしかないし、瑠美がペンシルゴンと出会ったらもう一直線だ。

街ロケ系で自分の熱心な信者と出会う、なんてシチュエーションじゃあそのままファッションコーデ講座に移行するなんて展開は有り得る。なんて言ったってこの2人知り合いでもある訳で、当然横にいる俺の正体にも気づく。その先は魔王の気分と番組の進行しだいだが……あまり期待はできない。つまり今俺がすべきは

 

やつが店に入る前にでる。撮影交渉中にだ!これしかない。

早速実行しようと瑠美に声をかける。いや、まて

 

「声掛けたらアイツくることを知るよな?」

 

これもう詰みでは?

 

お祈りするしかないな。撮影交渉に失敗する。もしくは番組のスタッフの手によって俺らが追い出されるのを。

 

「許可も出たのでお店の中に入って行きましょうか」

 

「いいねぇ。お茶の間の皆さん!天音永遠が古着屋に行きますよ。中々ないでこれ!」

 

 

魔王の声と、共演者の関西弁を操るお笑い芸人の声が聞こえる。もう終わりだぁ。

 

「おい。瑠美」

 

「なに?お兄ちゃん。邪魔しないでよ」

 

トップスを2つ持って、唸っていた妹に声をかけると、こちらに視線を向けることなく冷たく返事をした。まぁ趣味の時間の邪魔はされたくないなよな。その気持ちわかるぞ。

 

「さっきのロケ天音永遠が居たらしいんだが、この店に来るぞ」

 

俺がそう言うと妹は閃光のごとき早さでこちらを向くと

 

「何でもっと早く言わないの?!準備できないじゃん!」

 

「お前は店員かよ。隅で大人しくしてろ。流石に撮影の邪魔はしたら不味いだろ」

 

俺がそう言うと瑠美は納得したのか、手に持っていたトップスを2つともカゴに入れると俺に渡した。

 

「あー結局2つとも買うパターンなのね。そして俺が持つと」

「そのために来たんだから当然でしょ」

 

兄を顎で使うことにまったく躊躇がない。そういう所までペンシルゴンから習わなくていいんだぞ。

 

俺らがそんな感じでいると店のドアが開いた。

 

「雰囲気以外とええなぁ」

 

「ネットも便利になりましたけど、こういう所で買うのもいい物ですよ。ネットと違って意外な発見があるので」

 

ペンシルゴンの敬語にとんでもなく違和感を覚える。いやまぁあのお笑い芸人の方が年上だし、芸能人モードならそうなるのか。

 

「普段はどうやって買う物決めるん?」

 

 

「んーこの前買ったあの服に合うやつないかなーって感じで探しますね。それに気分転換の散歩にもなりますし」

 

とんでもない嘘だ。あいつの気分転換はゲームの中でNPC、プレイヤー問わず爆殺することだ。俺とカッツォがされた。シャンフロじゃないがリアルの仕事の相手がくそ面倒くさくてとかいう理由でだ。

 

「お!お客さん居るやん。男女だけどカップルかいな?」

 

お笑い芸人のその声に俺は完全に詰んだことを悟った。芸能人モードだからか自分から一般人に触れなかったペンシルゴン、いや天音永遠がこっちに触れる大義名分を得てしまったのだ。

 

 

「んー2人は兄妹じゃないですかねー?何」

 

「はいっ!そうなんです!今日は兄に着いてきて貰って買い物なんです!」

 

魔王の質問にそう元気よく答えたのは瑠美だ。ペンシルゴンに、この前の電話以来です、だなんて言うことは無い。真のファンは相手に迷惑をかける可能性のある行動はしないのだ。訓練された邪教徒ともいう。まぁペンシルゴンがそれも今日込みで兄妹か聞いたのだろうが。

 

「いいなぁー。兄妹の仲がよくて。自分一人っ子やから憧れるわー、そういうの。というか君よく見なくてもすごい永遠ちゃんぽい格好してるね」

 

「そうなんですよ!私、永遠様のファンで!」

 

一般人に慣れてるお笑い芸人だからか瑠美を上手いこと乗せながらトークしている。

 

「永久審美眼的にも100点だよ!それにもしかして読モやってない?見たことあると思ったんだけどさ」

 

「永遠様見たことあるんですか!?そうなんです。実は最近始めてまさか見てもらえてるだなんて」

 

多分見たとかじゃなくて、お前が電話で話したんだぞ、とは言えるはずもなく……番組的にも天音永遠がゲストで服屋でファンの読モの子に遭遇、って展開は美味しいだろう。余程やらかさない限りはこのまま使われそうだ。

 

「お兄ちゃんの方は永遠審美眼的には点数低いかなぁ」

 

お兄ちゃんと呼ばれた瞬間に全身に鳥肌が立った。何よりあのくっそムカつくニヤつき顔で行ってきたのが腹立つ。カメラが俺の方に向いてたからってここぞとばかりに煽りやがって。

 

「ファッションには疎くて」

 

「お兄ちゃんはいくら言ってもジャージか変なTシャツしか着ないんです」

 

「それだけだと俺がニートみたいになるんだけど」

 

しかし思わぬ形でこいつに顔バレしたな。というかこのままテレビで使われたらもう全員にバレるじゃん。

 

「うーん。それは私的には点数低いなぁ」

 

そうだ、と天音永遠が名案を思いついたような顔をする。しかし俺にはわかる。あれは悪魔的発想を思いついた時の顔だ。

 

「この永遠ちゃんがファッションに疎いお兄ちゃんの服をコーディネートしてあげるよ!妹ちゃんも一緒にどうだい?」

 

あーもうどうにでもなれ。

 

妹は満足そうにうんうん頷いてるし、番組的にも美味しい展開だろうし、お笑い芸人の方は何故か羨ましがってるし。

 

「いや俺は付き添いだけなんで」

 

「何言うとるんや!兄ちゃん!あの天音永遠やぞ!クラスの皆に自慢し放題や」

 

「ままま折角の機会だからさ」

 

天音永遠はそこまでしか言わなかったが、俺には聞こえた。

 

存分に楽しませろよ。って声が。

 

 

 




一応形としてはここまで。4000文字くらいでキリいいので。

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