誰が為のツバサ   作:パンド

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誰が為のツバサ

 

 

 

「──で、そんなわけでジュリアさんが案内してくれてさ」

「………」

 

 一ヶ月ぶりの伊吹さんは、小耳に挟んだそのとおりで、なんだか元気がないように見えた。

 765 ライブ劇場(シアター)にある倉庫の一角、そこに敷かれたマットレスの上で僕らは隣同士、体育座りをしており──それで、今はこうして彼女にこれまでの経緯を、僕がここまで来られた理由を話しているのだが、いかんせん反応がイマイチである。

 別に僕とて、大きなリアクションを期待していたわけでも、実際して欲しかったわけでもないのだけれど。

 伊吹さんらしくないなと、僕は思った。

 こんなことを言ってしまうと、そもそも伊吹さんらしさとは何ぞやという堂々巡りが始まってしまうが、それでもやっぱり。

 僕は、元気な伊吹さんでいて欲しいのだ。

 

「馬場さんも探すのに協力してくれて──」

「ユーゴ先輩は、聞かないの?」

 

 なにを、と言うのは流石に無粋で、察しが悪いとも思う。

 

「伊吹さんは、聞いて欲しいの?」

「……分かんない」

「なら、聞かないよ。分かってからでいい」

 

 伊吹さんが、喫茶店に来なくなった理由。

 伊吹さんの気持ち。

 それを確かめるために、僕は来た。

 でも、確かめたいからといって、無理に聞き出そうだなんてこと、僕にできるはずもない。

 聞くことを拒否されて、拒絶されるよりはずっといいし。

 こう言ってはなんだが、伊吹さんと会えただけで、その時点で、僕の目的は半分くらい達成されたようなものである。

 だから、今すぐには聞けなくたって構わない。

 

「僕の方こそ、急に押しかけてきて悪かったな」

 

 それに、分からないのは僕も同じだ。

 勢いに任せてここに来たはいいけれど、ジュリアさんにあんな台詞を言っておいてなんだけど、実際のところはノープランである。

 なにを話そうとか、どんな風に語ろうとか、まるで頭に浮かんでこない。

 伊吹さんとこうして話をしているだけで、満足してしまいそうな自分がいる。

 ちょろい。我ながらちょろ過ぎる。

 

「ううん、ビックリはしましたけど……それだけ」

「そっか、ビックリさせちゃったか」

「そりゃあしますよ〜、しかもジュリアーノと一緒なんだもん」

「さっきも説明したけど──って、ん? ジュリアーノ?」

 

 なんだそれ、ジュリアさんのあだ名か?

 

「ジュリアーノはジュリアーノですよー?」

 

 どうもそうらしい。

 ジュリアだから、ジュリアーノ。

 あれ──でも確か。

 

「ジュリアーノって、男性名じゃなかったか? イタリアの」

「え〜? でもジュリアーノってカッコイイし、別にいいのかな」

「本人の知らないところでいい事にされてる……」

「この間も瑞希ちゃんと壁にドンって──」

「なぁそれ僕が聞いても大丈夫なやつなんだろな??」

 

 後でドヤされるのは御免被るぞ。

 あと確信はないけど、きっとジュリアさんはそのあだ名を嫌がってると思う。

 まぁアイドル仲間の話で、伊吹さんが少しでも調子を取り戻してくれたのなら、それは嬉しいことなのだけれど。

 で、それからいくつかのカッコいいジュリアさん話を披露してくれた伊吹さんは、ふと思い出したように。

 

「……あ、え〜っと。ユーゴ先輩も、ユーゴって名前、カッコイイと思いますよ?」

「いらないよ!! そんなとってつけたフォローは!!」

「なんだかユーコみたいだし」

「それは本当にカッコイイと思っているのか……??」

「ユーゴスラビアみたいだしっ」

「人の名前を1929年から2003年まで存在した、南スラブ人を主体に合同して成立した国家の枠組みで例えないでくれ!! 絶対音の響きだけで言ったろ!!」

 

 というかそれ、もう存在してないじゃん!! 存在しないカッコよさじゃないか。

 そもそも、よく知ってたなユーゴスラビア。僕としてはそっちにビックリだ。

 なんて、久方ぶりな僕のツッコミに。

 

「……えへへっ、ごめんなさ〜い」

 

 ようやっと、伊吹さんは笑ってくれた。

 釣られて、僕の頬も緩んでしまう。

 まったく、そういうところだぞ伊吹さん。

 不思議なもんだ、彼女の笑顔を見ているだけで、こうも嬉しくなれるなんて。

 

「ねぇ、ユーゴ先輩」

 

 いつものように、伊吹さんがそう切り出したから。

 いつものように、僕はこう切り返した。

 

「なんだい、伊吹さん」

「ユーゴ先輩は……どうして、わたしに会いに来てくれたの?」

 

 ……まぁ、今回は僕の方から押し掛けたわけだし。僕がその訳を話さないとあっては、筋が通らない。と、言ってもだ。

 そんな改まって、かしこまって話すことでもない。

 結局のところ、僕はただ──

 

 

「伊吹さんに会えないのが、寂しくて」

「────へっ?」

「僕はここ一ヶ月、いつも通りのこれまで通り生活していたつもりだったんだけど……気がついちゃってさ」

 

 この生活は既に、僕のいつも通りではないくて、伊吹さんのいる生活こそが、僕にとってのいつも通りになっていたことに。

 一ヶ月が経って、経過して、僕はようやくその事実を自覚した。

 まったくもって遅過ぎる。

 もっと早くに気がついていれば、あぁも悩むことはなかったろうに。

 

「いつからかは分からない。あの日、ゴミ山に1人でいた僕を助けてくれた君は、僕にとって恩人だったから」

 

 無論、それは今でも変わらない。

 伊吹翼は、岩根勇吾の恩人だ。

 一人ぼっちでノートを探していて、それを当たり前だと思っていた僕に、当然のように手を貸してくれたあの日の君を、僕は生涯忘れないだろう。

 

「それから、伊吹さんはアイドルになって。それでも喫茶店に来てくれて」

 

 色々なことがあった。

 面接の付き添いでこのシアターを訪れたり。

 喫茶店で勉強を教えることになったり。

 中々ライブのチケットが取れなくて、伊吹さんに怒られたり……いや、これは今思い返しても理不尽だよな。3回目のときに慰められたのは何気に心へグサリときたものだ。

 そして、四度目の正直でチケットを手に入れた僕は、君の──君達のライブに、心を撃ち抜かれた。

 その後の夏祭りは波乱に満ちていたけれど、それでも──

 

「この半年間、君がいたから楽しかった。ありがとう、伊吹さん」

 

 君がいて、君といてこその半年だった。

 これまでの人生の、どんな半年間よりも満ち足りていた。

 だから、ありがとう。

 あの日、あの場所で、僕に声をかけてくれて。本当に、本当に。

 そんな僕の吐露を聞いて、受け止めて、隣の伊吹さんは──小さな声で、小さな雫が零れるように、こう言った。

 

 

「わたしも、寂しかった」

「…………うん」

「ユーゴ先輩が遠くに行っちゃうって聞いて……わたし、喫茶店に行ったらいつもセンパイがいてくれて、話を聞いてくれる時間が好きだったんです」

 

 やっと、聞けた。

 聞くことができた。

 伊吹さんの気持ちを、本心を。彼女も僕と同じ気持ちでいてくれたんだって確信を。

 僕が彼女との思い出を振り返っていたように、伊吹さんもこの半年間を懐かしんでいるようだった。

 

「最初は、こんな時間にあんな場所でなにしてるんだろ〜って思って、でもセンパイは凄く一生懸命な顔をしてたから──それが、羨ましかった」

 

 伊吹さんは時折、どこか切なげで、とても大人びた表情をするけれど。

 そんなことを思っていたのか。

 伊吹さんが、僕を羨ましく思っていたという事実が、上手く飲み込めずに、僕はすっかり相槌のタイミングを逃していた。

 

「だから、センパイが勧めてくれたアイドルなら夢中になれるかもって、39プロジェクトに応募して。わたし、初めてなにかに夢中になれたんです」

 

 知ってるよ。 

 君がどれだけアイドルに夢中になっていたか、夢中になることができていたのかを、僕はよく知っている。

 

「アイドルになってから、ちょっと悩んだり、迷ったりもしましたけど──ユーゴ先輩が、そんなわたしの手を引いてくれたから」

「それは、お互い様ってやつだよ。伊吹さん」

 

 そう、お互い様だ。

 僕が母さんへ会いに行くべきか悩んでいたときだって、君は背中を押してくれた。

 スランプに陥って、僕が迷っていたときも、あの出口の見えないトンネルを彷徨っていたときも、そうだ──いつだって。

 

「……僕が迷ったら、君が手を引いて」

「わたしが迷ったら、センパイが手を引いてくれる」

 

 そうやって、僕たちはここまで来た。

 だから、だからこそ。

 

「けど、だからこそ、こうして僕達は、それぞれの道に進んでいけるんだと思う」

「でも────っ!!」

 

 伊吹さんは立ち上がって、見下ろした僕へと訴えかける。

 必死な声で、必死な顔で。

 僕に対して、思いの丈をぶつけてくる。

 

「でも……やっぱり、寂しいよ。お母さんのところに行くのが、ユーゴ先輩にとって大切なことだって分かってます。でもわたし、わたしは──」

 もう、ほとんど泣きそうな声だった。

 思わず、僕も立ち上がっていた。

 立ち上がって、気がついたら、伊吹さんの手を握っていた。

 ポカンとした顔で、彼女が僕を見る。

 あれ、なんで手を握ってるんだ僕は。

 僕は、僕はただ、伊吹さんの悲しそうな顔が見たくなくて、彼女には笑顔でいて欲しくて、それで──それで、どうしたいんだろう、僕は。

 そもそも、なんで僕はこんなにも、伊吹さんには笑顔でいて欲しいと、そう願っているのだろう。

 僕は思い出す。

 出会ってから、これまでの伊吹さんを。

 ゴミ山で名乗り合った、初まりの時を。

 彼女にお礼を言って、お礼を言われた、あの日の笑顔を。

 アイドルになって、嬉しそうに笑っていた伊吹さんを。

 アイドルを好きだと言った、彼女の言葉を。

 ステージの上で見た、夢中になっている伊吹さんの姿を。

 そして、夏祭りの最後に、花火に見惚れていた彼女の煌めいた顔を、思い出す。

 

 ──あぁ、そっか、そういうことか。

 

 今更だ。

 本当に、今更だけど。

 僕は、自分の気持ちを、自分のものにすることができた。

 でも、いいのか?

 この気持ちを、想いを伝えて。

 伝えてしまっても。

 

「えっと、その……僕、伊吹さんのことが……」

 

 言葉が詰まる。

 この言葉を、口に出してよいのか分からなくなって、しどろもどろになってしまう。

 無責任ではないのか、ここでこの言葉を口にしても、彼女を傷付けてしまうだけじゃないのか。なんてことを、考えてしまう。

 すると、そんな僕に。

 この期に及んで迷ってしまった、僕の手を引いて、伊吹さんは真っ直ぐな瞳でこちらを射抜き。

 

「──お願い、ユーゴ先輩。言って」

 

 縋るような声で、彼女は言った。

 本当に、情けなくなってくる。

 こんなことを言わせてしまうだなんて。

 言って欲しいだなんて、そんな台詞を。

 いい加減、覚悟を決めよう。

 どんな結果になったとしても、それを受け止める覚悟を持とう。

 

「……君の笑顔を見ていると、勇気がもらえる。僕のやってることは、やってきたことは、間違ってなんかいなかったって思わせてくれるんだ」

 

 だからきっと、母さんと暮らすという、僕の決断は間違っていない。

 今はそれが必要だって判断も、そのために北海道へ進学するって手段も、きっと。

 そして今、この言葉を口にするって選択も──間違ってなんか、いないんだ。

 

 

「好きだよ、伊吹さん。君のそういうところが、僕は大好きだ」

 

 そう言って、告白をして。

 伊吹さんに、自分の気持ちを打ち明けて。

 僕はもう一度、彼女の手を握り直す。

 気がついたらではなく、気の迷いでもなく、自分自身の意思で。

 彼女は──伊吹さんは、そんな僕の手を握り返して。

 

「わたしも、好きです。ユーゴ先輩が、大好き」

 

 頬を、涙が伝う。

 その感触に、僕は今になってようやっと、自分が泣いていることに気がついた。

 僕は泣いていて、涙は止まりそうにもなくて、止める気にもなれなかったし、多分止められない。

 

「いつもわたしに真剣でいてくれる、ユーゴ先輩が好き」

 

 この感情は、変えられない。

 伊吹さんが僕の手を引っ張って、胸元に引き寄せる。

 痛いほどに脈をうつ、彼女の心臓の鼓動が伝わってくる。

 

「……行かないで、ください」

 

 気持ちを変えることはできない。

 僕が、自分の決めたことを、変えられないように。

 ごめん、伊吹さん。

 君は僕に謝って欲しいわけじゃないってことは、もちろん分かっているけれど。

 けど。

 

「僕、今は母さんの側に居たい──居てあげたいんだ」

 

 先に進んでいくためにも、今は失っていたものを取り戻しに行きたい。

 そう決めたから。

 そうするって、決めたから。

 だから、伊吹さん。

 これは僕のワガママになってしまうけど。

 君にそうして欲しいとは口が裂けても言えないけれども。

 もし、仮に君がそう思ってくれていたのなら。僕と同じ気持ちでいてくれるなら。

 

「じゃあいつか絶対に、わたしの隣に帰ってきてくれますか?」

 

 君にそんな──泣きそうな笑顔を浮かべさせてしまった僕が。

 君の願いに、応えてあげられなかったこの僕が。

 君が好きだと言ってくれた、君のことが大好きな岩根勇吾が。

 

「あぁ、約束するよ。絶対に帰ってくる」

 

 いつの日か隣にいることを、どうか許して欲しい。

 

 

 

 ■ □ ■

 

 

 

「ところでユーゴ先輩、小説ってもう完成したんですか?」

「それ今聞かなきゃダメなやつ????」

 

 翌日、つまり僕と伊吹さんがお互いに気持ちを打ち明けあってから一晩が経ち──僕たちは、いつものように、いつもの喫茶店に集まっていた。

 しかし、まぁアレだ。

 昨日の出来事が出来事だっただけに、僕はどんな第一声を発するべきかかなり悩んでいたのだけれど、伊吹さんは席に着くなりこう言ってきたのである。

 昨日のことにはノータッチだ。

 別にいいんだけどさ……確かに、あの後はジュリアさんと馬場さんに連れられて、他のアイドルに見つからないようこっそりシアターを抜け出そうとしていたところ、運が悪いことに双海姉妹に見つかり大騒動になりかけたので、あの辺に関しては僕としても記憶から消去したい。

 で、なんだったか。

 そうだ、小説の話だ。

 

「だって、ほら。一ヶ月も空いてたし、どうなったのかな〜って」

「……はぁ。一応、完成が見えてきたところだよ」

「え〜!! どんなお話なんですか? ちょっとだけ聞かせてくださいよ〜、ダメぇ?」

「うっ、そうだな……」

 

 反射的に、習慣的にダメだと言いそうになったけれど、随分と待たせているという自覚があるためか、それとも僕自身この話を誰かに聞いて欲しいと思っていたのか……それは定かではないが、僕はやや頭の中を整理して、伊吹さんに語り始めた。

 

 

 その世界では、人々は陸と、そして空に住んでいた。

 陸に住む人々は2本ずつの手足を持ち。

 空に住む人々は2本の足と、一対の翼を持っていた。

 空に住む人々は地面で生活する人々を、窮屈に生きる愚か者と小馬鹿にしており、陸に住む人々もまた大空の人々を家も建てられない馬鹿だと見下していた。

 そんなある日、陸に住む一人の少女は、散歩の途中で翼を持った少年と出会う。

 彼は嵐に巻き込まれ、自慢の翼に怪我を負い、自由を失ってしまっていた。

 少女は少年に言った。

「うちで怪我を治していきなさいよ」

「馬鹿を言え、翼も持たない奴と一緒にいられるか」

「あら、その翼とやらが使えない今の貴方と私、いったいなにが違うっていうの?」

 言い返せなくなった少年を荷車に乗せると、少女は彼を連れて帰り、世話をしてやった。

 少年は初めて経験する、陸での暮らしに戸惑っていたが、次第に慣れていき、ある時少年はこう言った。

「なんで、俺を助けたんだ? 俺たちはいつもお前らを馬鹿にしてるのに」

「それはお互い様だし、私個人は貴方を馬鹿だとは思ってないし──実を言うと、その翼を羨ましくすら思っていたわ」

 自由に空を飛べる、その翼が。

 だから翼が傷ついて、地に落ちていた少年を見捨てることが、彼女にはできなかった。

 それから、少年は少女に心を開き始めた。

 翼のあるなしなんて、その頃にはもう、気にならなくなっていたからだ。

「俺の翼が治ったら、お前を抱いて飛んでやるよ」

 そう言って、少年は少女に笑いかけた。

 けれど、その日が来る前に、二人の生活はある終わりを告げた。

 村の外れに住む娘が、空の民を匿っている。

 そんな話が、どこからか漏れてしまったのだ。

 周りを囲まれてしまった少女の家。

 外に出れば少年はもちろん、少女もどんな目に遭ってしまうか。

 それを悟った少年は、飛んだ。

 彼女を連れて、空へと羽ばたいた。

 しかし、まだ治りきっていない少年の翼が、二人分の体重に耐えられるわけもなく。

 飛べば飛ぶほどに、彼の翼には血が滲んで、壊れていった。

「もう駄目よ、もういいから!! これ以上飛んだら、分かっているの?! 二度と飛べなくなってしまうかも知れないのよ!!」

「あぁ、分かってるよ」

「ならっ!!!!」

「でも、やっと分かったんだ。この翼が、なんの為に──誰の為にあるのかって!!」

 そして、彼は飛んで、飛び続けて──

 

「うん、この先は実際読んで欲しい」

「え〜〜〜〜!!?? いいところだったのに!! ユーゴ先輩酷い!!」

「全部話したら意味ないだろ?? これでも話過ぎたくらいだ」

 

 そう言っても、伊吹さんはまるで納得していない様子だった。

 なので、仕方なく僕は、もう少しだけこの小説について話すことにした。

 

「じゃあ、こうしよう。小説のタイトルくらいなら教える、どう?」

「ん〜、じゃあ、それで良いです。でもでも、完成したら真っ先に、わたしに!! 読ませてくださいよ」

「わかってるよ、そういう約束だしな。忘れてないって」

 

 頬を膨らませた伊吹さんに、僕はそう言って笑いかける。

 では、教えるとしよう。

 僕が2年間かけて書いてきた、この小説の題名を。

 君と出会ってからふと思いついて、もうこれしかないと思えた、その名前を。

 

 

「この小説の題名は────」

 

 

 

 

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