二年生に、体験入部を繰り返す美少女がいるらしい。
なんて噂が、ここ一月ほど話題になっている。
曰く、フットサル部でハットトリックを決めただとか。
曰く、ソフトボールで完投勝利しただとか。
曰く、テニス部でレギュラー選手に勝っただとか。
そんな噂だ。
まぁ噂なんてのは、例え聞く気がなくても耳に入ってくるもので。
少なくとも、僕はその噂を聞こうとして聞いたのではなく、あまりにクラスで話題になるものだから、勝手に耳に入ってきた、と言わせて欲しい。
決して、その二年生の美少女とやらに心当たりがあったから、聞き耳を立てていただとか、そういう訳ではないのだ。
そもそも、僕に『噂になってる二年生のことなんだけど』なんて声をかけられて、まともに答えられそうな奴は、このクラスにいない。
原因は僕の顔面の、その右半分を覆っている火傷痕だ。
かつて僕がまだ幼かった頃、それこそ純真無垢で純一無難であった頃の話になる。
といっても僕に当時の記憶はなく、これも父親に聞いたのだが。
ざっくり言うと、母親の不注意だったらしい。僕と母親が二人きりの時に、母親は僕から目を離してしまい、その間に僕は火傷を負った。
結果として僕には大きな火傷痕が残り、今現在お決まりのようにクラスでは浮きに浮いている。
そういう話だ。
正直なところ、現状に対して怨みとか妬みだとか、そんなマイナスの感情はある。あるにはあるが、怨んだところで仕方がないという、諦めに近い悟りも、同じように僕にはある。
こんな顔でも、声をかけてくれる人がいるにはいるし、良くしてくれた人は、皆んな人間ってやつが出来ていた。
なので、僕はまだツいている方だと思う。これまで出会った人に恵まれたから、今の僕があるわけで、辛い思いばかりをしていたら、もっと鬱屈とした岩根勇吾がここにいたはずだから。
と、そんな自分語りはさて置き。
噂になっている件の美少女二年生というのは、まず伊吹さんで間違いないだろう。
噂が流れ始めたのは"あの日"以降のことだし、内容からしても予想は当たっているという自信を持てた。
きっと彼女は探している。自分が夢中になれるものを、今もこうして探しているんだ。
そう思うと、なんだか少し嬉しかった。あの時の出会いが、伊吹さんが探しものをするキッカケになっているような気がして。
あれ以来顔を合わせてはいないが、なんだか応援しているスポーツ選手の活動を聞いているようで、僕は上機嫌になれた。
いったい、彼女は何に打ち込むんだろうって考えると、こっちまでワクワクしてしまう。
例えば──。
「お邪魔しま〜〜す!! ユーゴ先輩いますか?」
後ろ側。
僕の席は最前列の右から二番目なので、後ろ側の出入り口からだ。
どうにも聞き覚えのある、甘い声が教室に響いた。強いて言うなら、その声で僕の名を呼んでいた。
ピタッと、先ほどまでのガヤガヤとしていた昼休みの空気が凍る。多分僕以外のクラスメイトは、一人残らずそちらを向いていたに違いない。僕は頑として前を向いているから見えないけど。
おいおい嘘だろ。
噂をすれば影とは言うけど、言うけどもっ。そんな律儀に従ってたら、彼女は校舎中に現れなくっちゃいけなくなる。
噂の彼女、体験入部の美少女二年生。
そう、伊吹翼は。
「あれ、ユーゴ先輩お休みなのかな〜?」
困ったことになった。
とても困ったことになってしまった。
彼女はどう見ても僕に会いに来ている。
いや、別に会うのは構わない。構わないのだが場所が悪い、悪過ぎる。
これでクラスの注目が僕のほうに向いたりしたらジ・エンドだ。
するとクラスの中で『ゆーご?』『あれ、そんな名前のやついたっけ?』なんて言葉が聞こえ始めた。なるほど、そもそも名前を覚えられていなかった。確かに先生も基本苗字で呼ぶけどな、流石に酷くないか?
とにかく初手は免れた。ただどっちにしろ、やはり場所が悪い。
こんな教室の中で、僕と伊吹さんが会話でもしてみろ。伊吹さんはこの間みたいに、僕の火傷痕なんて最初から見えてないように話してくれるかも知れない。そうなれば、根っこしか合っていない滅茶苦茶な噂が蔓延するに決まってる。
僕はいい、僕は今更どんな謂れのない噂を流されようが、別にどーってことはない。
でも伊吹さんは駄目だ。
僕一人ならまだしも、彼女まで変な噂の対象にしてしまうのは許せない。僕が、僕を許せなくなる。
さて、どうしたものか……
「な、なぁ伊吹さん。久しぶりだね」
「えと、あ〜吹奏楽部の部長さん? 久しぶりですねー」
「う、うん。ここに来たってことは、もしかして……正式に入部してくれる気になったのかい?」
「……えっ?」
おや、話の風向きが変わってきたぞ。
「おい待てよ、伊吹さんは写真部にだな……っ」
「ちょっと、伊吹ちゃんは女バスに入るんだから」
「いやいや、うちのテニス部にだって!!」
吹奏楽部の部長やらが言った一言を皮切りに、次々と自称部活の代表者たちが伊吹さんの所属先を巡って声をあげ始めた。
どうにも伊吹さんのポテンシャルの高さは桁外れだったらしい、ほぼ全ての部活があーだこーだと彼女を求めて紛糾している。
こうなってくると、もう伊吹さんも僕を探すどころではあるまい。
チラリと時計を確認。昼休みの残り時間は数分だ。五時限目の担当教員は来るのが速いし、これならヒートアップして伊吹さんが揉みくちゃにされそうになったとしても、先生が止めてくれるだろう。
そう判断した僕は。
(よし、じゃあ帰るか)
カバンに荷物をまとめ、スタコラサッサと教室を後にした。
■ □ ■
伊吹さん3年5組襲来を経て、午後の授業をブッチした僕は近所の喫茶店を訪れていた。
扉を開くとカウベルが小気味の良い音色を奏で、僕を出迎えてくれる。
「あれ、岩根クン。今日もサボりかい?」
「僕がさも日常的にサボってみたいに言わないでくださいよマスター。まぁ、サボりなんですけど」
開口一番にそんなことを言ってのけるのは、たっぷり蓄えられた口髭にスキンヘッドが印象的な30代半ばの男性──この喫茶店のマスターだ。
この店に通い始めて二年と少しになるが、相変わらず見た目のキャラが濃い。そして口は軽い。
「そっかそっか、まぁ座ってなよ。お昼は食べた?」
「はい、なんでお構いなく。コーヒーだけ貰っても良いですか?」
「あいよ、んじゃごゆっくり〜」
それだけ言うと、マスターは厨房に引っ込んでしまった。
なので僕もいつも通り、一人掛けの椅子へと腰掛け、ノートを広げる。
ここは僕が小説を書く時に、良く使わせてもらっている店で、学校がしんどい時の避難場所でもある。
マスターは本当に良くしてくれており、頭は上がらないし、足を向けては寝られない恩人だ。
中学に入ってからの二年間、僕が腐らずにいられたのは、この店の影響が非常に大きい。
にしても安心できる場所に来たせいか、ドッと疲れが出てきた。ああいう、自分に視線が集まりそうな空気は苦手だ。胸がギュッとなって、息苦しくなる。
けど、伊吹さんには悪いことをしてしまった。
せっかく訪ねてきてくれたのに、僕は逃げ出した。事情が事情とはいえ、もっとスマートに事態に収拾をつけられたらなと思わずにはいられない。
「難しい顔してるねえ岩根クン、ほら珈琲お待ちどう」
「あ、ありがとうございます。頂きます」
「うん、私は倉庫の整理をしているから、用があったら声をかけてくれい」
コーヒーを置くないなや、マスターは倉庫の方に行ってしまった。これはアレだな、気を遣われてるやつだ。
こういう時に、根掘り葉掘り聞いてこようとしないで、一人にしてくれる心遣いが身に染みる。
……しっかし、あの場は運良く切り抜けられたが、どうしよう。
きっと伊吹さんはまた来るだろう。今回ので懲りてもう来ない、というのは彼女の性格を考えると望み薄だ。
どうにかして、周りにバレないよう伊吹さんに連絡を取る方法を、考えなければならない。
けれど、考えれば考えるほどに無理ゲーの臭いがプンプンする。
伊吹さんは人気者だ。
あの容姿と性格からしてそうだろうとは察していたが、推定していたが、今日の騒ぎで推定は確定に変わった。
彼女が一人で学校にいる時間はほとんどないだろうし、運良くそうなったとしてもそこに僕が居合わせる確率なんて無きに等しい。
それこそ伊吹さんを付け回しでもしない限りだ。もっとも、そんな手を打てば即座にバレるだろうし、僕の名は地を割って奈落の底まで落ちるだろう。
あれ、これ詰んでないか? チェックメイトなんじゃないか?
と、僕があれこれ考えていたその時だった。
「こんにちはー。マスター? いる? 私が来たわよー」
カウベルと共に入店したのは、一人の女性だった。
初対面どころかまだ対面すらしていない相手に、こんなことを思うのは失礼だと承知の上で思わせて貰うと、とても背の低い女性だ。
といってもこの時間に、真面目な学生なら授業中である時間に来たということは、身長通りの年齢ではないのだろう。
それに、確かに身長は低いが、マスターを呼ぶその声色や表情からして、少なくとも成人しているように僕は感じた。
こう見えて、他人の顔色から場の空気を察知するのは得意な僕だ。もうちょっと話しているところを見れば、確証が取れる気がする。
「あれ、いないのかしら。でもオープンになってたし……あっ」
「えっ」
なんて考えていたせいか、バッチリ目が合ってしまった。
当然のように、女性はこちらに向かって歩いてくる。うーん、歩き方も大人の人っぽい……いや、んな事を考えている場合ではない。
「ねぇ、ちょっといいかしら。ここのマスターがどこに居るか、あなた知ってる?」
そうだよな、僕以外にお客さんはいないし、その僕がマグカップを片手に持っていれば、マスターの所在を知っているかもって思うよな。
そして話しかけられて、僕はこの人が大人であると確信した。醸し出す雰囲気が子供のそれではない。
ともあれ、聞かれたからには答えなくては。
「えっと、マスターならさっき倉庫の方に──」
「おや、お客さんかと思えば、このみちゃんじゃないの。元気してた?」
僕が答えていると、カウベルの音が聞こえていたらしく、答え本人がやって来た。
「ちょっとマスター? 今は私も立派なお客様なんだけど」
「冗談だって、じょーだん。カモミールで良いよね?」
「砂糖は一つよ。立ち話もなんだし、カウンターで話しましょうか」
「あはは、それはお客様の台詞じゃないと思うなぁ」
どうも知り合いらしい、それも結構親密な。マスターの軽口はいつも通りだが、飄々と流しつつ合いの手を入れてくる辺りからして、付き合いの長さが窺えた。
二人はカウンター席へ向かい歩き出す。すると、女性はふとこちらを振り向いて。
「答えてくれてありがとね、勉強頑張って」
言い終えると、とても綺麗なウィンクをして、女性はマスターの後に続いて行ってしまった。
お、大人だ。大人の女性だ……
誰なんだろあの人。この二年ちょいで会ったことは一度もないが、話し振りからしてプライベートな仲ってやつなのか。
ま、やめとこう。これ以上の詮索は。
普段マスターが僕にそうしてくれているように、下手な藪は突かないに限る。
そう決め込むと、僕は残りのコーヒーを喉に流し込んだ。
■ □ ■
「おーい岩根クン、ちょっと良いかな?」
それから二時間ほど経って、僕がそろそろ引き上げようとしていた頃だった。
マスターの声に釣られて顔を上げると、さっきの女性とマスターが並んで立って、僕を見ていた。
「岩根クン、こちら馬場このみちゃん。このみちゃん、こちら岩根勇吾クンだ」
急に隣の女性を紹介されて、僕も女性に紹介された。え、なにこれ、なにこの流れ。
「ごめんなさい岩根くん。私から無理言って、マスターに紹介させてもらったの」
と、マスターの知人女性──馬場さんはバツの悪そうな顔で笑いかける。
こうしてきちんと正面から向き合ってみて思ったが、馬場さんは造形の整った顔をしている。きめ細やかな茶髪は三つ編みに結われていて、ピョコンと左右に飛び出しているくせっ毛が印象的だ。
パッと見は小学生高学年か、よくても僕らと同世代なのに、エメラルドグリーンの瞳には、大人びた光が見てとれる。いや、実際大人なんだろうけども。
「じゃあ改めて、馬場このみよ。よろしくね」
「あ、はい。岩根勇吾です、よろしくお願いします」
僕の凝り固まった返事に、僕が馬場さんを大人として見ていることを察したのか、馬場さんは意外そうな顔で。
「……マスターの言ってた通りね、ちょっと驚いたわ」
「えと、馬場さん?」
「マスターがね、岩根くんなら私が大人だってことに気がつくって言うから」
なるほど、それで。
そこで視線をマスターに向けて見れば、30代のおじさんが決め決めのドヤ顔を披露していた。ついでにサムズアップ。
うわぁ……
「ふっふっふっ、私の目に狂いはないってことさ」
「マスター、うわキツです」
「その年と顔でドヤ顔サムズアップはちょっとねぇ……」
「はっはー。息ピッタリだね、お二人さん。じゃ、お邪魔虫は厨房に引っ込むとしよう」
言うなり、マスターは本当に引っ込んでしまった。
僕と馬場さんを置いて。
なんてこった、これで正式に初対面の女性と二人きりだ。
なにを話せば良いんだこれ。あ、いやでも用があるのは馬場さんぽいし、向こうから話を振ってくれるんじゃなかろうか。
そんな期待を胸に、彼女を見る。
「マスターは相変わらずねー。岩根くん大丈夫? 振り回されてない?」
「あー、まぁ。でもマスターはやっぱりあんな感じじゃないと落ち着かないっていうか」
逆に冷静沈着なマスターとか、アレルギー反応が出てしまいそうだ。
どうやら馬場さんも同意見であるようで、口に手を当て笑いながら。
「ふふっ、分かるかも。大きな少年というか、子供心を忘れないというか。けど根っこのところで──」
そう言って、馬場さんは僕へ振るように、こちらを見やる。どんな言葉が続くのか、何となく分かって、僕は口を開いた。
「大人、ですよね」
「そうそう、私もバイトしてた頃は色々と助けられたわ」
「馬場さん、ここでバイトしてたんですか」
「えぇ、大学生の頃にね。懐かしいわ。その時に──」
それから暫くの間、僕と馬場さんはマスターとこの喫茶店という、共通の話題で盛り上がった。
馬場さんはとても話し上手の聞き上手で、マスターの知り合いということもあり、そんな彼女に僕が打ち解けるまで、そう時間はかからなかった。
「──で、結局マスターが全部食べることになって」
「なにその綺麗な因果応報、やっぱ持ってるわねマスターってば……あぁ!! いっけない、もうこんな時間?」
僕が二人スーパーウルトラロシアンルーレットドーナッツ事件の話をしていると、馬場さんは腕時計を見て、慌てた様子で立ち上がった。
そしてカバンの中から一枚のチラシを取り出すと、僕の方へと向ける。
「ごめんね、もう行かないと。話せて楽しかったわ、岩根くん。楽しくてこれを渡しそびれるとこだったもの」
「僕も、楽しかったです。ありがとうございました馬場さん。それで、その……これは?」
手渡されたチラシには『765 LIVE THEATER 開幕!!』と派手なフォントでデカデカと書かれており、隅の方には所在を示す地図が貼付されている。あれ、これめっちゃ近所じゃないか?
「岩根くん、765プロは分かる?」
「えと、一応の一般常識としては」
このご時世に765プロを知らない人間がいるとすれば、テレビも新聞もネットも見ない、仙人もかくやといった生活を送っている者だけだろう。
765プロ、というのはアイドルプロダクションの一つであり、そこに所属するアイドル達の活動範囲は歌番組、CM、バラエティにドラマと幅が広い。
かくいう僕もアイドルに強い関心があるわけではないけれど、それでも765プロの名前くらいは知っている。
いわゆる国民的アイドルってやつだ。
「なら話が早いわね。これは765プロの新プロジェクト、39プロジェクトの宣伝チラシってわけ」
詰まるところ、こういう話だった。
現在765プロには13人のアイドルが所属しているが、今回新たに39プロジェクトとして39人のアイドルをデビューさせる。その拠点となるのが先の765プロライブ
天下の765プロなら、もっと派手に宣伝出来そうなものだけれど、馬場さん曰く地道に足元から固めていくのがとても大切らしい。
ん? 待てよ、じゃあ馬場さんって。
「馬場さんも、アイドルなんですか?」
「そうよー。新人アイドル馬場このみをヨロシクね、岩根くん」
パチンと、またもやウィンクを決められる。
「とは言っても、まだメンバーが揃っていなくって、デビュー前なんだけどね」
「あれ、なのに宣伝チラシを配って大丈夫なんです?」
万が一にでも、39人のメンバーが揃わなかったらどうすんだろう。
「その辺りはプロデューサーが頑張ってるみたいだし、成るように成るわよ。岩根くんも、良ければ観に来てちょうだい」
「…………」
そう言われて、劇場に足を運んで欲しいと言われて、僕は頷くことが出来なかった。
理由は、伊吹さんの時と同じだ。
僕が行ったせいで、劇場にあんな奴が〜なんて事になったら、とか考えてしまう。
ちょっと、被害妄想が強過ぎるだろうか。
でも現実としてあり得る以上、僕は素直に首を縦には振れなかったのだ。
そんな僕の沈黙をどう受け取ったのか、馬場さんは優しく微笑んで、そして。
「ねぇ、岩根くん」
「……はい」
「『自分がどう見られるか、じゃなくて、自分がどう在るか、それが大切だ』って、私達はよく知ってると思うの」
それは、いつだったかマスターが僕にかけてくれた言葉だった。
好きな時にここにおいでと言うマスターに、僕は今と同じように言葉に詰まって、それでもマスターは僕にそう言ってくれた。
馬場さんが、僕に語りかけてくれたように。
「だから、行こうと思ったその時は、迷わず来て欲しいの。お姉さんとの約束よ?」
言いながら、馬場さんは右手を差し出す。
見た目を理由に負い目を持つなと、大人は言う。
子供の僕には、まだ難しいけれど。
きっと正しい事なんだろう。
きっと、本来誰もがそう在るべきなんだろう。
だから、僕は。
「分かり、ました。もうちょっと……やりたい事を、素直にやってみます」
「よろしい!! 会える日を楽しみにしてるわ」
しっかりと、差し出された右手を握り返した。
■ □ ■
割とホントに余裕が無かったらしく、馬場さんは急ぎ足で行ってしまった。
良い出会いだったと、心から思う。
僕はやっぱり、出会いに恵まれている。
そして、馬場さんと話して決心がついた。
次に伊吹さんが来た時は、逃げずに話をしよう。
その結果どうなろうと、僕は胸を張ろう。
それが、通すべき僕の筋だから。
なんて、一丁前に覚悟を決めながら、僕は何気なしに窓の外を見た。
窓の外を見て、窓の外にいる伊吹さんと目があった。
────えっ????