私、婚約破棄されたはずの王子様に無意識に愛されてたようです。 作:@しおむすび
「マリー公爵令嬢、貴様との婚約を破棄する!!」
…え?そもそもあなたと婚約、してましたっけ?
*
「まぁマリー様、お召しになられてるドレスとても素敵ですわ!」
「ありがとう、嬉しいわ」
そう言いつつも、私は内心ぐったりとしていた。
つい先日まで私と婚約していたらしいハルト王太子に婚約破棄されたからだ。
らしい、というのも、そもそも私はいつハルト様と婚約していたのか全く知らない。
なのにすっごいドヤ顔されるわ、ハルト様の隣にすり寄っていた聖女様にも笑われるわで腹がたって、正直こうやってパーティーに出ている気分ではない。王族主催じゃなかったらとっくに帰ってる。
「マリー様…ハルト殿下がエスコートなさってるのは異世界の聖女様ですわよね?聖女様とはいえ、マリー様という婚約者がいるのに他の女性をエスコートするなんて…」
うん?
「あ、あの、ちょっといいかしら?なんで私が殿下と婚約していると思ったのかしら?」
「なぜって、婚約は有名だったからですわよ?殿下はマリー様を深く愛されてるとか」
はい?それどころかそんなに話したこともないんですけど??
まったくもって意味が分からない。
殿下が私を、深く愛していた?バカバカしい。
現に今もハルト殿下は聖女様にデレデレしながら、時折こちらの様子を伺っている。大方、私がショックを受けていると思っているのだろう。
そんなことを考えていると余計にムカムカと込み上げるものがある。
そういえばハルト殿下に会うのは婚約破棄されて以来だ。というより、会いたくなかったのだ。
それに、あの聖女様…。
「……様、マリー様!聞いておられますか?」
「えっ、ええ、もちろんよ?」
「それならいいのですけど…お疲れのようでしたので、心配ですわ」
「大丈夫よ、ごめんなさいね」
いけないいけない、私ってばボーッとしてたわ。しっかりしないと。
「こんばんわ、マリーさん!」
はっと振り向くと、聖女様とハルト殿下がいた。
もう最悪すぎる…しっかりしないとって思った途端に疲れの元凶に会うなんて…。
「こんばんわハルト殿下、聖女様。ご挨拶が遅れて申し訳ございませんわ」
「やだ、気にしないでよー!そんなの堅苦しくて嫌になるわ!」
「はぁ…ありがとうございます。…あの、聖女様」
「なによ?なんか用?」
「もう少し淑女らしく、言葉使いを淑やかにした方がよいのではないかと。パーティですので、他の方もおられます」
聖女様は身分制度のない『ニホン』というところから来たからか、なんというか、貴族のマナーに大らかでいらっしゃる。
「は?なにそれ、あたしにたてつくわけ?!何様よ!?」
聖女様が突然ヒステリックに叫ぶ。
えー…なんでそんないきなり怒ってんの。
その声につられてパーティ会場内の視線が私たちに集まるのを感じた。
私なにもしてないのになぁ、なんて現実逃避気味に考える。
「そういうわけではございません、私はただ…」
「マリー、貴様見苦しいぞ」
「ハルト殿下…!」
私の声を遮ってハルト殿下が出しゃばってきた。非常にめんどくさい。
そもそも、私よりも聖女様の行動の方が問題あると思うんだけどな。そっちには目がいかないらしい。
「アリサから聞いたぞ、お前がアリサを虐めているとな。どういうことか説明してもらおうか?」
……???
謎の婚約破棄に引き続き、何言ってんのか理解できない。ハルト殿下ってこんな人だったっけな。もう少し賢い人だったと思うんだけどなぁ…。
周りの人もじっと見る人こそいないものの、みんなに聞こえているに違いない。
近くにいたどこかの令嬢も、いつの間にかいなくなっている。
最悪の状況だ。
聖女様って、アリサって言うんですね。
私はまた現実逃避気味に考えるのであった。