私、婚約破棄されたはずの王子様に無意識に愛されてたようです。 作:@しおむすび
「それに、マリー嬢に対して敵意を持っていた」
「ちなみに、理由は分かっているのですか?」
「いや、わからない…俺が関係しているのかと思ったが、そもそもマリー嬢のことは話したことがないしな。これからアリサを辺境の塔に軟禁することになったから精神が安定したら原因を調べる」
なにそれ、気味が悪い…。
ストーカーでもされてたのかな…?
まぁでも、軟禁されるなら安全だろう。
「婚約破棄もアリサがマリー嬢を嫌っている原因に俺が関わっていると考えられたからだ…どんな理由であれ、勝手な真似をして本当に申し訳ない!!」
イスに座ったままではあるが、ハルト殿下がガバッと頭を下げた
「は、ハルト殿下!頭をお上げください!」
王族が自ら頭を下げるなんてとんでもない。逆に私の立場がない。
というか、
「私、そもそも殿下と婚約してませんわ!!」
「え?」
「…え?」
ポカーンと顔を見合わせる。
「あの、で、ですから、ハルト殿下と私は元から婚約しておりません」
「いや、たしかに婚約していたはずなんだが…」
「いえ、そんなはずは…そもそも、婚約の披露宴も顔合わせもしていないでしょう?」
「私はマリー嬢は披露宴も顔合わせも避けて、婚約のみがいいとマリー嬢の父上から聞いていたのだが…」
「え?」
全く身に覚えがない。お父様なに言ってんの!?
というかそもそもそれ婚約する人の希望じゃないよね!?
2人して混乱しまくっていると、
「はいはい、お2人とも一度落ち着いてください」
イアンが私たちを諭した。
「どこかで食い違いがあるようなので、それは後々調査しましょう」
「ああ、よろしく頼む…」
心なしか殿下がぐったりしている。多分殿下から見た私もぐったりしているだろう。
「そろそろ夜も更けてまいりましたし、マリー様の迎えの馬車ももうすぐ来ます。今日のところはお休みになってください」
「ええ、わかったわ」
「では馬車の来るところまでお見送りしますね。ハルト様、失礼します」
とりあえず、家帰って寝よ…。
もう今日疲れた。
外に出てみると、ほんの少し肌寒い。まぁ、春先だしなぁ。
空はもうすでに暗くて、星が輝いている。
馬車はまだ来ていなかった。
「イアン、ありがとうね」
あのままじゃ確実によくわからない言い合いになってた気がするし。
「いえ、こちらこそ。ハルト様の話、聞いてくれてありがとうございますね」
「ううん、私も知りたかったから。いいのよ」
「それより婚約の件ですが、本当に心当たりはないのですか?」
「ないのよ…でも、殿下は婚約していたと思っていたようだし」
「ハルト様は4、5歳くらいのときに決まった、と仰っていましたけど、さすがにそんな昔だと…」
「覚えていないわ」
「ですよね」
本当にどういうことなのか。
とりあえず今日はもう遅いし、明日お父様に聞いてみよう…。
でも…殿下、案外いい人なのかも?
「あの…」
「ん?どうしたの?」
「今はどちらにせよ、婚約はしていないのですよね?」
「そうよ?」
少し顔を赤らめたイアンが私の目を見据える。
「だったら…もしよかったらっ、僕ではダメですか?」
「へっぇ…?」
カァッと顔に熱が集まるのがわかる。
「ちょっ、ちょっと待って、だってイアンとは会ったばかりで…」
「マリー様、あなたの可愛らしい笑顔に一目惚れをしてしまいました。真剣に、です。嘘じゃありません」
これまで男性にこんな風に言われることなんてなかったからか、全然頭が回らない。何か言おうとしてもイアンの雰囲気にあてられて、口がはくはくするだけだ。
「これからちょっとずつでいい、僕のことを知っていってください。…ああ、もう馬車が見えてしまった」
えっ、えっ、えっ、どうしよなにこの状況!
一歩、二歩と私に近づき、ついにはキス出来そうな距離にイアンの顔が近づく。
イアンの熱っぽい瞳に食べられてしまいそうな気分になる。
思わずギュッと目をつむった。
「そこで目をつむるの反則ですよ…かわい…」
「やっ!?」
耳元でそう囁かれる。
イアンの低い声と吐息が腰に響いて、なんかムズムズするっ…。
「そんなことして、そんな反応して、僕が我慢効かなかったらどうするんですか」
「そんなつもりじゃないのっ…」
「好きです、マリー様。僕のこと、考えて」
最後にそう囁いて、イアンは顔を離した。