デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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プロローグ:To the next life・・・

====T県S市・・・とある住宅地====

---この住宅地には、昔からある奇妙な噂が立っていた。

 

何でも、この住宅地の中に建っているとある一軒家には、白金色に輝く幽霊が存在し、常にその一軒家の住人である老人の傍に立っているのだとか・・・

 

その幽霊は、その老い先短い老人を見守る守護霊だとか・・・

 

どこの誰が言ったのかも、今となっては知りようのないその噂話は、どこからともなく徐々に広がっていき、今ではこの近辺では割と普通に語られるような怪談話となっていた。

 

その問題の幽霊や一軒家が・・・いったいどこにあるのかすら知られないまま・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この住宅地のある一軒家に、一人の老人が住んでいた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・夢か。・・・久々に懐かしいものが見れたな・・・」

 

その老人は、呟きながらベッドからゆっくりと起き上がる。

 

見た目は90歳近くなのにもかかわらず、発音ははっきりと、その動作はどこか若々しさを感じさせるものだ。

 

「ゲホゲホ・・・やれやれ、まさかこんなボロボロになるまで生きていられるなんて、当時は考えもしなかったな・・・・・・ククク、俺の健康診断をした医者の仰天顔が今でも目に浮かぶ。あの時のあいつらの・・・「ありえないッ!!」って顔はかなり笑えたなぁ~~ゴホッゴホッ・・・」

 

口元に手を当て、老人は言葉を紡ぎながら激しく咳き込む。

手を放すと、その手には血がついていた。

吐血だ。もうかなり・・・体にガタがきているのが分かる。もう・・・そう長くないことも・・・

「ケホッケホ・・・・・・・・・あれからもう・・・随分時間が経ったな。俺の親も、妹も、友達も、親しい奴から知っている奴までみんな死んでしまった。俺も全身に癌が転移している。長くはねえ。そして今、俺を知っている奴と言えば・・・」

 

老人はいったん言葉を切り、自分のベットの脇を見た。

 

「俺自身と・・・・・・・お前くらいなもんだな。」

 

いつからそこにいたのだろうか・・・

 

老人の座っているベッドの隣には奇妙な何かが佇んでいた。

 

ピントのずれた写真のように明確な姿を言い表すことはできないが、かろうじで表現できることがあるとすれば・・・

 

『その何かは人間のような姿形をしており、東から昇る朝日のような・・・金色のような・・・白金色のような・・・優しくも力強い輝きを自らの体から放っている。』

 

『人間の額に当たる部分には、矢の意匠とそこに集まるラインがはっきりと顕れている。』

 

『眼と思われるものが4つある。』

 

この三点ほどであろうか。

 

とにかくその人型は、ベッドに座る老人の隣に、ただ寡黙に・・・ただ静かにたたずんでいた。

 

老人は特に気にした様子もなく言葉を続ける。

 

「・・・ああそうか。お前、その状態だとあまりしゃべらなかったんだな。やれやれ、元の姿だと無駄にベラベラしゃべるってのに・・・」

 

---静かだな・・・

 

老人は、誰に聞かせるでもなく呟く。

 

この老人はどうやら、この存在がどんなものかを知っているようだ。

 

「・・・・・・散歩に行くか。睡眠はもう十分とった。ゲームとかは・・・もう目がよく見えないしできないな。淋しいものだ。」

 

老人は、震える手で箪笥から靴下とジャージらしきものを取り出し、苦労しながらもなんとかそれを履く。

 

そして、ハンガーから真っ黒いコートを取り外し、それを羽織って外に出かけた。

 

側に立っていた謎の人型は、いつの間にか消えている。

 

「・・・行ってきます。」

 

 

 

 

 

 

 

先ほどの老人は、自分の家から少し離れた公園にきて、隅の方のベンチに座っている。

 

その眼差しは、ジャングルジムや滑り台で遊んでいる子供、それを見ながら談笑している親たち、また、それとは関係なく歩いている歩行者たちに向けられていた。

 

「・・・ああ、今日もまた過ぎていく。そして明日は今日になる。なんてな。・・・ん?」

 

そんなふうにいつものように過ごしていると、老人の足元にボールが転がってきて、そのあとに一人の少年が歩いてくる。

 

「・・・このボールは君のモノかい?」

 

「は、ハイ・・・」

 

(・・・この少年・・・)

 

老人は近づいてきた少年を見て、どこか怪訝な顔をする。

 

まるで将来、この少年に何かが起こることを心配しているような・・・

 

が、それも一瞬のことで、すぐに微笑みを浮かべて足元に転がったボールを手に取る。

 

「はい、どうぞ。」

 

「・・・ありがとうございます。」

 

その時、少年は気づかなかった。

 

ほんの一瞬だけ・・・ボールを手渡された一瞬だけ、老人の手とは違うなにかが、老人から出て自分を触ったことに・・・

 

「・・・少年、君はこれからも・・・様々な苦難にぶち当たることになるだろう。けれどそれでも・・・諦めなければいつかは越えられる。だから・・・君は君の幸福を掴んでみせなさい。・・・まずは親と仲直りしてから、な?」

 

「??!・・・は、ハイ・・・」

 

子供はまるで、自分の心の内を的確に指摘されたかのように驚き、かろうじで一言そういうと、またどこかに去って行ってしまった。

 

(・・・ハハハ。死に損ないのくせしてにいらんお節介をしてしまったかもな。さて・・・次・・・は・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

老人は少年の去っていく様を眺めながら、静かにその眼を閉じた。

 

 

・・・・・その瞳は・・・二度と開かれることはなかった・・・・・・・・・

 

 

ただ、その寝顔は・・・・・・何の迷いもない、安らかなものだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは・・・いったいなんなのか、いったいどういうものなのか・・・

 

そこは・・・白い空間だった。

 

どこまでも白く・・・中心に白い机が一つと椅子が向かい合うように二脚。

 

そしてその椅子の後ろに扉が一つずつ。

 

そんな空間があった。

 

そして・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・その中で一つだけ、黒かった。

 

どす黒い人型が一つだけ・・・その空間に、異質な異物のように、その空間において、決定的に違うと言わんばかりのものがそこにあった。

 

人型は、いつのころからいたのかはわからないが、まるで眠っているかのように片方の椅子に座っていた・・・

 

 

「ふむ、こ奴が次の転生者かの?」

 

その空間に突如、一人の老人が現れる。

 

本当に、まるで最初からいたかの如く現れたのだ。

 

(しかしどういうわけかの?こやつ・・・真っ黒いな。幾度となく人間を転生させてきたが、こ奴ほど珍妙な奴も見たことがないのう。)

 

「まあいいわい。余計な奴が来んうちにこいつにも今まで通り適当な能力をつけて、精々不幸になってもらうとするか。」

 

老人は意地の悪そうな笑みを浮かべる。

 

(一人はあ奴にとられたが既に転生者を二人送り込んでおる。精々こ奴にも儂の慰み者になてもらおうかのう。ついでにあの新米の小娘にも一泡吹かせられる。

他人の不幸は蜜の味。まったく、よく言ったものじゃわい。ウウェヘヘヘヘヘへ・・・・・・)

 

(さて、とにもかくにもまずは起きてもらわんとな。)

 

老人はそう考えると、眠っているかのようにピクリとも動かない人型に徐々に近寄っていく。

 

「おい、お前!いい加減寝てないでおk{ドシュウッ}い・・・ロ・・・・・・」

 

その時だった・・・真っ白い部屋に、何かを貫くような音が鳴り響いたのは・・・

 

老人の目の前に、突如として人型の異形が現れたのは・・・・・・

 

(・・・何じゃこいつは。いったいどこから出てきおった?・・・声が出せん。それになんじゃ?この胸の違和感は・・・)

 

老人は、目の前に現れた異形を確認してから自分の胸のあたりをよく見る。

 

(・・・・・・・え?な、なんでじゃ?なんでわしが・・・胸を貫かれて・・・)

 

そこには、目の前の異形の右腕に、背中まで貫かれた自分の姿があった・・・

 

「・・・・・・・・・・・・・・ガフ、何・・・じゃき・・・様は・・・誰に・・・こんな・・・」

 

『オ前ハ・・・・・・私ノ本体ニ・・・望マヌ未来ヲ歩マセル・・・敵ダ・・・!私ガイル限リ・・・私ノ本体ニ危害ヲ加エヨウトスル者ハ・・・誰ダロウト・・・生カシテハ置カナイ。』

 

目の前に立つ人型はそういうと、老人の首を左手で握りしめてから胸から右腕を引き抜き、

 

『ココデ・・・・・・始末・・・スル・・・・・・!』

 

左手の力をより強くし、引き抜いた右手を強く握りしめる。

 

「や・・・やめ・・・・・・」

 

『ギルァアララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララァッ!!!!』

 

そしてその人型の異形は、もだえ苦しむ老人に対して明らかなオーバーキルともいえるレベルのラッシュを無慈悲に叩き込んでいった。

その一撃一撃は、老人の体を確実にとらえ、ミンチどころか肉片一つも残さず消し飛ばしていき・・・

 

「・・・・・・・・・・」

 

その凄まじい拳打をすべて叩き付ける頃には、老人の存在は塵一つたりとも残ることなく、最初からそこにいなかったかのごとく消えてなくなってしまった。

 

『コレデ・・・イイ。アトハ・・・コノ後来ルモノニ・・・任セヨウ・・・・・・』

 

そして老人を消し去った異形も、誰に聞かせるでもなく呟くようにそう言い残すと、そのそばにいる真っ黒い人型の中に戻るように消えて行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ピクッ

・・・・・・・・・人型が動いた・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・なんだここは?」

 

俺は・・・確か自宅から離れた公園に行って・・・お気に入りの位置取りにあるベンチに座って・・・偶々来た子供に不吉な道程を見て・・・それで・・・

 

「・・・・・・ああ、そういうことか。」

 

やれやれ・・・俺も割と長生きしすぎた。確かあの日は三月の中ごろだったから・・・間違いなく100年以上は生きてきたことになるのか・・・

 

まあいいさ。最後に・・・誰かに明日を託して終われたんだ。無駄に長生きした割には十分すぎる最後だ。

 

(というか結局・・・結婚どころか浮いた話一つすらなかったな、俺の人生・・・まあそこそこ充実してたからいいんだけど。)

 

一人暮らしを続ける中、俺以外の友達がみんな結婚していく。

 

皆は『早く相手見つけた方がいいんじゃない?』とか、『手遅れになっても知らんぞぉ――――ッ!!』とかいっていたが、俺としてはむしろ独りのほうが気楽だった。

生きるのに最低限のことまでちゃんとやっていたおかげで、今までボケることなくここまで生きてこれたんだ。

 

---・・・完全ニボッチガ身ニ染ミテマスネェ・・・ソンナンダカラ浮イタ話スラマトモニデナインデスヨ・・・

 

やかましいわ!俺がいいんだからそれでいいんだよ!

 

---ソンナモンナンデスカネェ?

 

まあ体の動きに支障が出るようになってからはかなりしんどかったけど・・・というか元に戻ってたんかいお前!?

 

---・・・エエ、チナミニ『矢』ト『鍵』モシッカリアリマスヨ・・・ケケケケケ

 

ベネ!そのまましっかり持っていろ!

 

---アイアイサー。ヒヒヒヒヒ・・・

 

「さて、思い出話はここまでにして・・・本当にここはなんなんだ?」

 

---コノ雰囲気・・・イツカノ『アレ』ヲ思イ出シマスネ。ケケケケケ・・・

 

(おいやめろ馬鹿!!しかしこの展開・・・まさかのまさか・・・だよな?)

 

 

 

 

-----遥か昔・・・もう一世紀以上は前の話だったか。まだ俺が高校に入って間もない頃にそれは起きた。

 

自転車に乗って動こうとした瞬間、突如として訪れた死。

 

ただそれだけならば、普通に不慮の事故とか、そんな感じとしておいておける話だろう。

 

・・・実際に恐ろしいのは、そのあとに起きたことなのだが・・・あの恐ろしい体験が。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

この状況が、あの日あの時間より始まった、俺の人生最大の死闘の日々の・・・その記憶を鮮明に呼び覚ます。

 

「あの時・・・最初俺はベッドに寝ていた。そして今度は椅子に座っている・・・些細な差こそあるが既視感(デジャブ)が仕事をし過ぎているな・・・」

 

---実ニゴモットモナ考エデスネェ。マ、私トシテハアレガアッタカラ今イル訳デスシ、御主人(マスター)モソレニハナンダカンダデ感謝シテイルンデショウ?

 

(ああ、かなり嫌々だけどそうなるな。)

 

俺は・・・あの体験に対しては言うまでもなく感謝している。

 

結果的に・・・かなり極論的に言ってしまえば、あそこでの体験や得たものは間違いなく俺にとってプラスになるものだった。

 

それに、あの出来事がなければ、俺は間違いなくただ無残に死んでいただけなのだから。

 

・・・・・・・・・・・・・・・ただその分を差し引いても、またあんなことをしたいかと聞かれれば、俺はスター・プラチナのラッシュを超えるスピードで首を横に振れる自信がある。

 

俺は戦いの心構えが付け焼刃とは言えできていたからまだいいが、常人があんなことやってたら絶望どころか発狂する。

 

・・・まあ戻る方法が確立してても心残りのために探索を再開したり、こいつを使いこなすためだけにまた探索を始めてたあたり俺も大概常人離れしてる気はするけどな・・・

 

・・・本当、仲間の声援があったからともいえるが・・・・・・良く戻ってこられたよな、俺・・・

 

---ツクヅク御主人(マスター)ノ精神力には脱帽モノデスヨ。実際ニデキル可能性ハホトンド0%ダッタト思ウンデスケド?

 

「完全に0%じゃなきゃ案外どうにでもなるんだよ。・・・・・・とりあえず俺の姿がハガレンのお父様の本体みたく真っ黒なこととか、殺風景を通り越して最早なんも無いとかそんなことは一応おいとくとして・・・一先ず探索を「{ガチャッ}ごめんごめ~~ん。待たせちゃったかな~?」・・・あ?」

 

ようやく決心をつけて、当時のように探索を始めようとした時、突如向かい側のドアから誰かが入ってきた。

 

「いや~~すっかり遅れちゃったよ。{ボソボソ}・・・あの邪神ども余計な事ばっかりしやがって。おかげで休日返上しそうになったじゃないか、全くもう・・・」

 

そいつは扉を閉め、向かい側の椅子を引きながら俺にそう言ってくる。

 

余談だが、見た目はどう見ても女・・・それもかなり美人だ。見た目は。

 

---・・・コイツ、人間ジャアナイデスネェ。トイウカコンナトコロニイル時点デ人間ナ訳ナイカ。ヒヒヒヒヒ・・・

 

「(ちょっと静かにしてろ。)・・・あの、これどういう状況なんですか?」

 

突然のことに若干緩みそうになった気を引き締め、その女に尋ねる。

 

「あ、ちょっと待っててね。今からそれも含めて話してあげるから。えっと君の書類は~・・・これだ!」

 

女は、どこからともなく取り出した書類入れのようなものから何枚かの紙を取り出して、それを机の上に置く。

 

「それじゃあまずは自己紹介ついでに人物確認をさせてもらうね?君の名前は『梶原泰寛』君でいい?」

 

「ええ、なんで知っているかは知りませんけれど・・・それであってます。」

 

「ありがとう。・・・君は、転生って知ってる?」

 

「・・・それってあれですか?ネット小説に出てくる転生ものとかそんな感じの・・・」

 

友達の勧めで高校の頃から読みまくっていたため、その類のことをイメージにする分にはそういうことしかわからない。

 

この状況からして、月姫の某【蛇】の事ではないだろう。

 

「その認識で大体あってるよ。そして私はその中の神様、もしくは世界の管理人みたいなものなんだよ。いやいや、理解が早くて助かるわ。」

 

・・・予想の斜め上を行く回答・・・というか真相だな。

 

良かった~地獄行きとかじゃなくて。

 

---御主人(マスター)ッテソコマデノ悪事ハ働イテナイデショウニ。不安ニナリ過ギデスヨ。

 

「ふふふ、君の場合そんな心配はいらないと思うけどね。それじゃあ説明を続けるよ。」

 

「宜しくお願いします。」

 

「まず君がこの処遇になったのには・・・とある理由があるんだ。君は自分の姿が分かるかな?」

 

「・・・ええ、顔とか背中はわかりませんけど、とにかく真っ黒になっているのはわかります。これって仕様?」

 

---仕様デ魂マデ真ッ黒トカヒドスギルナwww修正ヲ要求スルwwww

 

「違うよ。他にも神の悪戯とか、ミスとかでここに来る輩は少なからずいるけれど、君はそのどれとも違うのよ。」

 

「・・・なんですかそれ。」

 

「だから・・・わからないのよ。こんな事、私達(神)でも予想していなかったことなんだから。これを見てくれる?」

 

そういって、俺に書類を突きだしてくる。

 

「これはね、その世界に存在する魂の、いわば管理票なのよ。これにその魂の持ち主が今まで何をやってきたのか、そのすべてがここに自動的に記されるの。ここの欄から先を見て。」

 

そんなものを俺に見せてもいいのかとか、そんなことを考えながらとりあえず見る。

 

「・・・なんだこれ?ほとんどの部分に真っ黒な何かが広がってる・・・」

 

最初の方は普通に読めるが、それは大体十八分の一ほどで、そこから先の文章はドス黒く塗りつぶされていて全く読めなくなっていた。

 

---・・・・・・ン?コノ日付ハ・・・アア、ソウイウコトカ。マッタク難儀トイウカナントイウカ・・・ギシャシャシャシャシャ・・・

 

は?どういうことだよそれ?

 

「正確には・・・君の本来の寿命、2013年5月20日からこうなっている。誰にも理由はわからない。ただ一つ言えることは・・・『本来ここで死ぬはずだった君が、君自身の天命をはるかに超えて生きてきたということ』」

 

・・・本来の寿命、だと?俺ってあそこで本当に死ぬ予定だった?

 

・・・でも俺生き返った・・・というか死を免れたよな?それも現実じゃありえないもの引っ提げて・・・アッレレ~~~~~?

 

「そう、本来は死ぬ予定だった・・・・・・でも君はこの日から・・・本来の運命を越えた人生を歩んできている。」

 

きみの心とかも文字化けしてるみたいにまったく読めないし、割と異常事態なんだよと、つけたしてその女は言った。

 

なるほど、まあ俺はもう死人だから俺はどうでもいいんだが。というかやっぱ普通は読めるのね、心・・・本当にあれからいろいろあったからなぁ・・・

 

---反応ガ実ニアッサリシテマスネェ、実ニ。ケケケケケ・・・

 

「・・・・・・それで、俺はこれから転生でもするんですか?それこそ小説みたいに。」

 

「そういうことになるね。本来なら輪廻の輪に乗って正規の転生をしてもらうことになっているんだけど・・・今の君は原因が分からないから特別に私が転生させることになったんだよ。幸い君の問題点と言えば迂闊に解b・・・もとい解析とかの手出しができないことくらいだし、君がいたからと言ってその地域とか時間が特におかしくなってたわけでもないから君自身は生きてる分には問題ないんだよね。・・・というかただでさえ忙しいのにこれ以上の面倒にはかまってられないんだよ察してちょうだい!!」

 

「(オイイイイイイイイイイイイイイ!!今あっさりぶっちゃけやがったよこいつ!要するにあれか!?仕事ブン投げたいだけか!?というか不吉な言葉があったような・・・)・・・分かりましたよ。俺として・・・『梶原泰寛』としての人生のリ・スタートが、俺の歩む新たな道程。そういうことですね?」

 

行き先がどんなのかにもよるがな。

 

---少ナクトモ御主人(マスター)ガ私ニ二度ト無茶ブリシナイ程度ノトコガイイデスネェ。私ガ外ニ出テ間モナイコロハ『スタプラニ匹敵スル性能ナラ時間停止モデキルハズ!』トカ言ッテ本来ノ能力使ウ前ニ馬鹿ミタイニヤラサレマシタシ(シカモ結果的ニ劣化版ミタイナノガデキタトイウコノ不思議)・・・イヤホント。ケケケケケ・・・

 

「ふふふ、行き先の方は心配しなくてもいいと思うよ?きみの希望にできるだけ添えるものを入れてるつもりだから♪」

 

は?入れてる?どゆこと?

 

「{パチンッ ドンッ}さあッ!ここに君の行く世界が入っている!ここから一つ引いてちょうだいッ!!」

 

そう言いながら俺の目の前に出されたのは、商店街のくじ引きとかでよく見るあの箱が、目の前の神様の指パッチンの音とともに俺の目の前に一つ置かれた。

 

「・・・・・・え?どゆこと?」

 

「ルールは簡単!この箱から一枚カードを引いてもらい、そのカードにかかれた世界観が混ざった世界に行ってもらいます!」

 

な、なんだってええええええええええええええええええええ!!?

 

「さあさあどれでも一つ引いちゃって!さあさあさあさあ!!」

 

(おい、これお前の方でどうにかならないか?せめて無難な世界を・・・)

 

---・・・・・・タブン大丈夫デスネ。コノ箱自体ハ特ニ何モシカケラレテナイヨウデスシ。ゴク普通ノクジデス。トリアエズコチラデ一番無難ソウナノヲ選ンデオキマスヨ?

 

(頼む。世紀末とか厄介なのはごめんだ。)

 

---ソンナノハ絶対ニ選ビマセンヨ。主ノ心ノ平穏ハ私モ望ム所ナンデスカラ。ソレジャア選ンデ下サイ。

 

(了解した。頼むからまともなのがあってくれよ~~?)

 

全力で自分の未来に祈りながら、まずは左の箱に手を入れる。

 

---コノ箱ニハ・・・ウ、ウワアアア・・・・・・

 

(ちょ、ちょっと待て!なんだよその反応!?何が入ってんだよ一体??!)

 

---・・・御心配ナサラズ。エエ・・・ドウセ引クノハ一枚デスカラ、ソレニダケ注意ヲ払エバイイカト・・・・・・本当、オ気ニナサラズ・・・

 

言い方が不吉すぎる・・・本当に一体何が入ってんだよ。

 

---サア、早イトコ次ノヲ引キマショウ。大丈夫デスヨ。私ト御主人(マスター)ナラ例エ何ガ来ヨウト・・・必ズ未来ヲ切リ開ケマス。ソレニ・・・私ダケデハ無理ダトシテモ、トモニ『立チ向カウ者』ハイマス。・・・エエ、大丈夫デスヨ。例エ残ッテルモノガ『最悪』バカリダトシテモ・・・

 

(ちょっと待てええええええええええええ!!最後の言葉はなんだテメエえええええ!!)

 

---イイカラトットト引イテクダサイ。サスガニクジノ中身マデハ・・・私デモドウシヨウモアリマセンノデ・・・

 

(クソ・・・やったらあああああああああああああああ!!)

 

ほとんどヤケクソな勢いで、最後の箱から一枚取り出す。

 

{ズボォッ}

 

---エット・・・コレデスネ。ハイ、デキマシタ。

 

「{ガサッ}えっとこれは・・・『魔法少女リリカルなのは』・・・あっれれ~~~~~?」

 

「ムムム、随分無難なのを引いたね。」

 

・・・これって確か・・・世界の危機が二回くらい短期間に発生するアニメだったよな?(内容はあんまり覚えてない。話の概要すらあやふやだ。)

 

こ、こんなのが『無難』だと?いったい他に何が入ってたんだよ・・・

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(おい、これ以外っていったいどんな品揃えになってたんだ?)」

 

---エエト・・・ヘルシング、呪怨、サイレントヒル、サイレン(ホラゲの方)、零、青鬼、Outlast、バイオハザードetcetc・・・

 

「(おk、もう何も言うな。頭が痛くなりそうだ・・・)それじゃあ俺の行先は決まりましたね。」

 

「そうね。ちなみにこういう時、何かしら転生特典をあげることになってはいるけど・・・君の場合不確定要素が多すぎて道具くらいしかあげられないよ?それでもいいかな?」

 

「ええ、ありがとうございます。・・・それじゃあいくつか頼んでもいいですか?」

 

「ええ、何にするの?」

 

「それは・・・・・・そうですね。DEVIL MAY CRYの閻魔刀(やまと)と、METAL GEAR RISING REVENGEANCEの高周波ムラサマブレード、後は高性能のPCをください。」

 

憧れてたんだよな。バージルとかサムとか、戦国BASARAの石田光成とかの・・・あの居合切りのかっこよさに。

 

「分かったわ。それじゃあ後で君の家に送っておくね。」

 

「有り難うございます。お仕事頑張って下さい。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・{ポロポロ}うん・・・ぐす、有難う。」

 

ちょ!?この神様泣き出しちゃったよ!どんだけ嫌な思いしてんだよ?!

 

さて・・・第一目標は普通の暮らし・・・のはずなんだけどこれどうなるよ?

 

「それじゃあ梶原君・・・良い旅を!!」

 

{ガタンッ}

 

・・・・・・・・・・・・・え?

 

「ってこれ落とし穴あああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・・・・・・」

 

出だしからしまら無過ぎるウウウウウウウウウッ!!

 

・・・ちくせう;;

 

こうなったら・・・絶対に幸福に生きてやるからな!そうだろ?

 

「なあ!『アライブ』!!!」

 

『無論、私ハモウ一人ノアナタ。常ニアナタトトモニアルノガ私ノ務メデス・・・ケケケケケ・・・』

 

 

 

 

「はあ~~~、早いとこ次もこなさないと。それもこれもあのくそ爺のせいだぁ――――――――!!今度会ったら絶対にとっちめてやるんだから!」

 




ちなみに彼を転生させた神様が言ってる邪神の一人ですが…すでに終了されています。

分かる人にはわかりますかね?

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