デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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第十八話

「さあ!いい加減話してもらうわよ!あなたの知るアリシアを生き返らせる方法というのを!」

 

崩れていく時の庭園を脱出した俺達は、一先ず医務室に連れて来られて怪我の治療などを受けていたり(俺や矢島ははなから怪我なんてしてないからそんなのは受けていないが)簡易にだが事情聴取を受けることとなった。

 

・・・そのはず・・・だったのだ。だがいざ治療室につくと、今のように待ちきれなくなって限界が来たプレシアに一瞬で間を詰めてきて、俺は今こうやってこれでもかというくらいに目が血走ったプレシアに追い詰められていた。

というか今まさに、胸倉掴まれて宙に浮いている状態だ。

病人のはずなのに元気な奴。

 

「分かった!分かったからちょっと離れろ!今準備してもらうから!」

 

一先ずプレシアを引き剥がし、コートの乱れを整える。

 

「は?準備?」

「そう、準備。ンン・・・・・・・・・・・・・・・・・スタッフゥゥ~~~~~!」

 

かな~りタメをした後、病室中に響くほどの声で力強くシャウトする!

 

「え?す、スタッフ?」

 

訳が分からず、俺の行為に誰もが唖然としている

 

 

 

 

 

 

そんな中、一人の男が前に出る。

 

「誰がスタッフだコラwww今のでかなり出るのをためらっちまったぞオイ!」

 

その男の名は・・・矢島 敬一郎!またの名を冥土返し(笑)(ヘブンキャンセラー)

 

「でも本来なら来てくれないはずのネタで真っ先に出てきてくれる矢島君はまさに親友の鏡であるwwすごいな~、憧れちゃうな~~」

「よせやいwwそれじゃあ時間ももったいないしとっととやるぞ。」

「アイアイサー。例のモノ、忘れてないよな?」

「当たり前だ。そもそもあれがないと話にならないだろうが。アリシアの方は頼むぞ。」

「ああ、それじゃあ失礼しますよっと・・・」

 

俺はポッドの中からアリシアを出して下向きに抱きかかえ・・・

 

「ハイちょっとすみませんね~」

 

---シルシルシルシル ゴボォッ

 

肺に溜まっているであろう液体を回転している鉄球を背中に乗せ、横隔膜と呼息筋、ついでに肺胞そのものも操作して完全に吐き出させる。

無限の可能性を秘めたエネルギーだから傷つくこともございません。

 

「ヒャッハ―――!ハッパは微塵にして煎ずるに限るぜぇ――――ッ!!」

 

肝心の矢島は妙なテンションになりながらかなりの大きさの葉っぱを包丁で微塵切りにし、それをミネラルウォーターと一緒に鍋の中に突っ込んでよーく煮詰めていた。

フフフ、た~のしみだな~♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---十分後・・・

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

 

---ボコボコッ シュウ―z___・・・

 

 

「ところでそこの君、この煮汁を見てくれ。こいつをどう思う?」

「すごく・・・ヤバそうです・・・・・・・なあ」

「マズそうなのは良いんだけどよ、このままじゃあ収まりがつかないんだ・・・今度はお前の番だろ?」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

---ダッ ガシッ

 

「HAHAHA☆逃がさないんDA☆ZE!!」

「ヌワ―――!止めろ―――!死にたくな――――い!!」

 

煮詰めはじめてから数分までは・・・まあよかった。だがある瞬間から鍋の中が突如として異様な匂いを放ち始めた。

他の怪我している局員やなのはたちも、そのかなりの異臭のため医務室から徐々に避難していき・・・

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

残ったのと言えば実行犯の俺、矢島と、執念のみでかろうじで残ったプレシアさんくらいだった。

というかプレシアさん、さっきから目が怖い・・・

 

「{ヒソヒソ}おい!今更言うのもなんだけどこれ本当に大丈夫なんだろうな!?さっきからプレシアの奴目がおっそろしいことになってるぞ!あと少しで目からビーム出しそうな勢いだぞ!」

 

俺たちの後ろから放たれる眼光が最早あれだけで人殺しすらできそうな領域に達している。これで万が一できなかったら俺達に明日はないだろう。

 

「{ヒソヒソ}だだだ大丈夫だ、も、ももも問題ない。これの成果を試すためにわざわざ中東の紛争地域を往復してきたんだからな!」ジュウダンガアタマヲカスメテメッサコワカッタ・・・

「{ヒソヒソ}マジで!?お前わざわざそんなところに行ってきたの!?」

「{ヒソヒソ}当たり前だ。人間一人生き返らせなきゃ意味がないんだからな。というかさっさとやるぞ!いい加減この状況に耐えられない!」

「{ヒソヒソ}同感だ。いつまでもこんなことやってられるか。」

 

一端話を切り、鍋と中のモノを飲めるレベルまで冷ましてからコップに移し替える。

そして慎重にコップを移動させ、先ほどベッドに横たわらせたアリシアの遺体の上半身を起こしてそれを近づける。

 

---ギィンッ!!

 

「{ヒソヒソ}は、早くしろ!いい加減心が折れそう・・・」

「{ヒソヒソ}分かってるから急かすな!やるぞ・・・やるぞ・・・」

 

殺気を一身に受けながら遺体の口にコップの中身を流し込む。

 

「「「・・・・・・・・・・・」」」

 

ど、どうだ・・・・・!!

 

---ビクンッ カッ!

 

「「「!!」」」

 

突然アリシアの体が大きく震え、次に閉じられていた双眸が大きく開かれる。

 

「!アリシア!!」

 

俺達を撥ね退けたプレシアは一瞬で我が子に近寄り、その体を抱きしめる。

 

「・・・・・・ふぇ?おかあさん?あれ?ここは・・・・・?」

 

「ッ!!良かった・・・・本当に・・・本当に良かった・・・!」

 

プレシアはまぶたに収まり切らないほどの涙を流しながら、アリシアをもう離すまいと力いっぱい抱きしめる。

 

最早そこに、かつての狂気的な破綻者の姿はない。そこにいたのは・・・

 

 

 

「どうしたの・・・うっ!?」

 

一人の母の姿だった・・・・・・・・・て、あっるぇ?!

 

「アリシア!?どこか具合が悪いの!?しっかりして!」

 

物凄く具合が悪そうになるアリシア。

 

「おい!何か変な副作用があったとかそういうんじゃないだろうなこれ!」

 

さすがに事前の準備がかなりあれだったために俺も多少声を荒げてしまう。

 

「いや、たぶん理由はわかる・・・見ろ、あれ。」

「は?・・・・・・・」

 

 

「うう、お母さん・・・」

 

「アリシア!しっかりして!」

「お母さん・・・・・・・・・・・・・・なんかすごく気持ち悪い・・・この部屋すごく臭くて・・・口の中もなんだか・・・うう、吐きそう・・・」

 

「・・・・・・・・・え?」

 

 

「・・・・・・ああ、なるほど。」

「まあ・・・そういうことだ・・・・・・・」

 

・・・・・・・・・・ああ、なんだそういうことか。そういやそうだったな・・・

・・・・・なんだか・・・・・すみません・・・

 

「矢島。」

「なんだ?」

「・・・万が一俺が死んでもあれだけは絶対に使うなよ。」

「・・・ラージャ。予備のミネラルウォーターあるか?」

「うん、ちょっと渡してくるわ。あ、でもその前にここから出さないと同じだこれ・・・」

「・・・それもそうだな。」

 

何というか・・・色々ぶち壊しだ・・・

 

あ、もともとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、結局あの謎の物体を飲ませた結果プレシアの娘は見事生き返ったと・・・そう言うことでいいんだな?」

「「hai!!!!!」」

「・・・・・・・・こんな事をなんて報告すればいいんだ・・・」

「「適当にしときゃいいんでね?{ホジホジ}」」

「耳ホジっとる場合かぁぁ――――――ッ!!」

「ぶべら!?」

「タコス!?」

 

現在医務室から急遽食堂へと避難してきた俺たちは、なのはたちを含む四人に取り囲まれて取り調べという名の尋問を受けていた。

ちなみにテスタロッサ家の皆さんは、アリシアはともかく他三人が色々と問題があるため別室にて一緒に監視状態となっている。

しょうがないね。

 

「ま、まあ積もる話もあるでしょうし、まずは自己紹介から始めましょうか。」

 

どんな遺伝をしたらそうなんのってくらいに緑色の髪をした女性が、周囲をまとめるように口火を切る。

 

「私は時空管理局提督のリンディ・ハラオウンです。今はこのL級巡航艦アースラの艦長を務めています。」

「ご丁寧にどうも。あ、どうせだから仮面外させてもらってもいいですか?」

「ええ、どうぞ。」

 

リンディさんの了承を得て、全員に見られながら俺は仮面の留め金を外していく。

 

「・・・{カポッ}・・・・どうも初めまして、梶原 泰寛です。出身はそこのなのはや矢島と同じ地球の海鳴市という所です。」

 

そして仮面を外して机に置き、いつも通りの簡単な自己紹介をする。

 

「梶原 泰寛君ね。まさかとは思っていたけれど本当に子供だったことは驚きだわ。」

「ははは、まあ僕みたいなサイズの大人がいたらいたで見てみたい気はしますけどね。」

「・・・・・・・・・・・・」( ゚Д゚)ポカーン

 

やはりというかなんというか、矢島は知っているから変化はないがリンディさんやクロノ達はともかくなのはの驚き方が尋常じゃない。

俺の素顔を認識した途端、俺を指さしながら口をあうあうとさせ初めてかなり笑える。

 

「それじゃあ泰寛君。単刀直入に聞くけど、君は魔導師なの?」

「いいえ、ちがいます。」

 

リンディさんの質問に即答する。

 

「なら君のあの力は一体なんなんだ?病気を患っているとはいえプレシアの魔法を圧倒する程の力、通常では考えられない。」

 

クロノの質問に、自然と顔が無表情に近づく。

 

(・・・ここでただ一つはっきりしていることは・・・俺がここで話す真実はほんの一欠片だということだ。なのはに対しては嘘をつくようで悪いとは思う・・・思うが、正直な所俺は時空管理局という組織を全く理解できていない。スタンド使いの戦いにおいて情報面で有利だということはそれだけで恐ろしくでかいアドバンテージなんだ。そんな情報というアドバンテージをこんな奴ら相手に捨てる訳にはいかない。だからこそ・・・氷山の一角どころではない、本当に末端の末端・・・その最低限のマイナスのみで俺は最大限の成果を上げる。)

 

気を引き締め、俺は静かに話し始める。

「・・・・・そのことを話すには、こちらとしても条件があります。まずこれから僕が打ち明けることは、本来一生誰にも話すつもりのなかったものです。今回はあくまでも皆さんの信頼を得ることが必要と判断したから話しますが・・・・・・見えも話せもしないような輩にまでこのことを知らせるつもりはありません。」

 

・・・やれやれ、自分で言っておいてなんだが吐き気がするくらいに発言が図々しさ全開だな。

ほとんど言うつもりなんてないのに・・・ま、これで俺自身の幸福と平穏が約束されるというのならなんら躊躇うことはないが。

 

「それはつまり、あなたのことはここだけの秘密にするように、ということかしら?」

「ええ、それに加えて、俺に関することは絶対に報告しないでいただきたい。その条件さえ飲んで頂ければある程度は話しますよ。」

 

本当にある程度だけどな。

 

「・・・わかったわ、みんなもそれでいいわね?」

 

リンディさんは周りを見渡し、皆に確認を取る。

いまだに現状が呑み込めていないなのは以外の皆はそれに同意し、俺の方に向き直る。

 

「・・・ま、なのはのことも一応知らないわけではないし・・・良いでしょう、一度しか言いませんからよく聞いておいてください。」

「「「・・・・・・・・・・・・・」」」

「まず、僕の・・・」

「えええええええええええええええ!?!や、泰寛君ッ!?なんで泰寛君が?!!」

 

ようやく再起動したなのはの錯乱状態がしばらく続いたために、話の進展が遅れたのは言うまでもなかった・・・

 

 

 

 

 

「落ち着いたか?」

「にゃはは・・・ごめんね、折角のお話を中断させちゃって・・・」

「まったく、親しい間柄の人がこんなことをやっていたんだから驚く気持ちはわかるがもう少しタイミングを考えてほしかったな。」

「う、ごめんなさい・・・」

 

クロノのダメ出しにしょんぼりするなのは。

それを民族衣装の少年が慰める。

 

「いや、俺も折角自分の隠し事を明かすんだ。中途半端に聞かれても困るから正直戻ってきてくれたのは好都合だ。それじゃあ話を戻すぞ。」

 

軽く咳払いをし、俺は話を再開する。

 

「矢島はある程度知っていますが、僕は一般的に超能力と呼ばれる類の能力を持っています。」

「「「「超能力?」」」」

「ええ、ESP、PK、PSI・・・言い方はいろいろありますがってこっちの方がむしろ難しい言い方ですかね。あ、ちなみに妙な期待はしないでくださいよ。僕はそんなに芸達者じゃないですから。精々がサイコキネシス(念動力)と短距離ワープ・・・それとちょっとした小技くらいなんですから。」

 

スタンドが物に触れて動かせば見えない側からすればサイコキネシスになるし、ゲートを使っての移動もぶっちゃけて言えばワープだ。

どの発言も俺の起こす現象を一般的に纏め上げればこんなものになるはずだし、言い方を変えているだけで一応本当のことは言っている。

 

「精々って・・・僕達魔導師でもデバイスが無ければあれだけのことをするのは相当難しいんだぞ。それを生身の人間が単身で行えるなんて・・・上の人たちが聞いたらビックリどころじゃすまないぞ。」

「ハァ……なのはさんたちに続いてとんでもない子がもう一人、地球にいたとはね……どうなってるのかしら?地球って所は……」

「少なくともそんなに多い方じゃないと思いますよ。僕らみたいなのは。」

 

ため息をつくリンディさんやクロノに俺は苦笑しながらそうツッコミを入れる。

まあ俺も世界中全部を見たわけじゃないから断定はできないが・・・

 

「とまあ、こんな感じで聞かれたことは一通り話しましたけど・・・他にはもうありませんか?」

 

出来ればこの話題での最後の問答となるよう、期待を込めて俺は管理局の二人に問う。

 

「・・・・・・・・・・最後に一つだけいいか?」

「なにか?」

 

クロノが何か聞きたそうに声をかけ、俺はそれに応答する。

 

「君の言う超能力というものに関してはまあだいたいわかった。だが君があの竜巻が発生した時に持っていた剣は一体なんだったんだ?うちのスタッフの話ではロストロギア級の代物だと言われているんだが・・・」

 

剣?・・・ああ、閻魔刀の話か。まあこれは見られてた自覚もあったし仕方がないな。

 

「あれは俺の爺さんの家の蔵で見つけたのを(こっそり)もらっただけだよ。今では俺の切り札の一つだ。」

 

ちなみにこれはマジだ。俺が五歳の頃に祖父母の実家に行った際、其処の蔵のどこかに俺の特典を置いておいたから見つけるようにというあの神のお達しで俺は祖父母の蔵に入り、そこでいろいろとひどい目にあったんだ。

いや、場所の特定だけは簡単だったんだ。ハーミット・パープルを使えば一発でわかるし。

 

ただ・・・蔵の中がおかしいくらいの危険地帯だったんだ。

隠し階段まではまだよかった。ただ階段を下りる途中で槍や落とし穴のトラップが有ったり、天井が下りてきて押し潰されそうになったり・・・やめよう。これを思い出してるとまたあの家系の系譜が気になってくる。

多分あれは・・・平和に生きたい奴は踏み込んじゃいけない領域だと思うんだ・・・

 

「暴走の危険性はないのかしら?私達の主なお仕事はそういったものを管理することだから、そのあたりのことははっきりさせておきたいのよ。」

 

何故だろうか・・・あの眼は俺が閻魔刀を管理しきれていないのを期待している気がしてならない。

・・・そろそろこの話題は切り上げるか。今のところ割れている手札はこれで最低限明かしたはずだしこれ以上ベラベラ話す必要もない。何かいいネタないかなぁ~・・・

 

「はあ、暴走ですか・・・少なくとも俺が拾ってから今までそんなことは一度もありませんでしたけど・・・あ。」

「!どうかしたのかしら?」

 

唐突にあることを思い出して声を上げた俺に、リンディさんが何事かと聞いてくる。

 

「いや、今思ったんですけど・・・プレシアって今後どうなるんですか?」

「あ!そういえばフェイトちゃんたちもどうなるんですか!」

 

俺の質問の後、思い出したようになのはがそのことについて聞く。

 

「・・・フェイトは、事情があったとはいえ次元干渉犯罪の一端を担っていたんだ。重罪だから数百年以上の幽閉が普通なんだが・・・」

「!そんな「なんだがッ!」え・・・」

「状況が特殊だし、彼女が自分の意志で次元犯罪に加担していなかったこともはっきりしている。後は偉い人たちにその事実をどう理解させるかが問題なんだ。まあそこら辺には自信があるから、心配しなくていいよ。」

「{パアア}クロノ君・・・」

 

クロノの報告に、なのはは表情が明るくなる。

 

・・・けど・・・

 

「ただ・・・問題はプレシアの方なんだが・・・」

 

「そうだな・・・フェイトたちと違ってあいつはそういう考慮のしようがない実行犯だからな。厳刑は避けられないだろ。」

 

そう、フェイトの扱いは正直気にする必要はない。問題はプレシアの方だ。

ただやらされていただけのあいつらはともかく、奴さんは完全に実行犯。よほどのことがない限りさっきクロノが言ったような刑罰は避けられないだろう。

 

(やれやれ、蘇生はうまくいったがこのままじゃ到底ハッピーエンドとは言えない。何かいい案はないだろうか・・・)

 

少し考えては見るが・・・・・・今の俺では全く弁護や手伝いのしようがないことに気付かされるだけだった。

せめてもう少し情報があれば何か見えるかもしれないんだが・・・

 

「それもあるのだけれど・・・それ以前に彼女の容体が非常に悪いのよ。病気自体がミッドの医療技術でも治せないと言われている上に彼女自身も相当無理をしていたみたいで・・・」

 

リンディさんは少し言葉を区切り、その事実を重々しく語る。

 

「・・・正直なところ、このまま安静に過ごしても一年も持たないそうよ。」

 

突きつけられた事実に、なのはや民族衣装の子は悲しそうに、クロノは表情を固くする。

 

「そんな・・・本当にどうにもならないんですか?」

「・・・残念ながら・・・」

 

・・・・・・はあ、自分で話題振っといてなんだけど、なんだか暗くなってしまったな。

まあこれからその判決をどうにかしに行くわけなんですけどね、俺は。

 

「・・・・・・すみません。話の腰を折るようで悪いんですけど、この時間だとさすがに親が心配するので地球に返していただいてもよろしいですか?」

 

俺がそう言うと、リンディさんは少し困ったような表情を浮かべる。

 

「え、えっと・・・返してあげたいのはやまやまなんだけどちょっと問題があるのよ。」

「?何がですか?」

「実はさっきまでの次元震の影響で今空間が不安定になっていてね、転送ポートが暫く使えなくなってるのよ。予想では明日には皆さんの世界に転送するくらいには落ち着くとは思うのだけれど・・・」

「・・・え?それじゃあ俺今日一日ここで過ごすことに?」

「そうなるわね。」

「なん・・・だと・・・」

 

まずい、事前に(かなり苦しかったが)親を説得してきたとはいえ丸一日も家を空けてたら間違いなく何やってたか詰問されてしまう。

 

「・・・・・・・・・・・・・ハァ、帰る手段までちゃんと用意しとくんだった。」

 

・・・しょうがない。こんなことで切り札(ジョーカー)を切るなんて馬鹿らしいだけだし、今回は素直に怒られることにしよう。

・・・・・・それにやることも幾つか出来たしな。

「わかりました。そちらがよろしければ、今日一日ここで過ごさせて頂いてもよろしいでしょうか?」

「ええ、こちらは一向に構わないわよ。なのはさんたちもいろいろとお話ししたいようですし、是非泊まって行って頂戴。」

「・・・ありがとうございます。」

「やれやれ、これでまずは一段落か・・・と言いたいところだが矢島君、今度は君に聞きたいことが「( ゚ω゚ )お断りします それじゃあまた後で!」あ!ちょっと待て!」

 

自分に話題の矛先が向いた途端あっという間に食堂を出て行った矢島と、それを追っていくクロノを見届ける。

あれだけのことがあったのに元気な奴らだ。なのはたちが苦笑いしてるぞ。

 

 

(・・・ベネ(良し)、思ってたよりもばれていることが少なかったみたいで何よりだ。閻魔刀も確かに切り札と言えば切り札だが所詮は『空間ごと斬れる名刀』、他の手札がばれていなかったことを考えればたいしたことじゃあない。・・・・・・・・それに、『保険』は後で絶対にかけさせてもらうからな。俺の確実なる安心のためにも・・・さて、折角宿泊の許しも出たしこの際だからいろいろと情報収集に回ってみるか。エピローグの飾り着けはそれからだ。)

 

かなり予定通りの結果になった事に心の中で安堵しつつ、若干の想定外とともにこうして俺自身の戦いは一端幕を閉じた。

 

残された時間はまだまだ長い・・・・・・・

 

 

 

 

 


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