デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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主人公のスタンドのイラストを描いてたらかなり時間がたってしまった・・・
近いうちに設定集にでも貼り付ける予定です。
ちなみに画力は期待しないでください。あくまでもこういうイメージなんだなーって程度なので。


第十九話

「リンディさん、料理をしたいので少し厨房をお借りしてもよろしいでしょうか?」

 

仕事に戻ろうとしていたリンディさんを引き留め、俺は一番重要かもしれないことについて聞く。

これができるかできないかで、プレシアの今後、ひいては俺の任務達成に大きな影響が出るのだ。

時間も限られているしここで了承をもらわないわけにはいかない。

 

「え、ええ、それは別にかまわないのだけど・・・料理はできるの?」

「自分で言うのもなんですけど一応腕前は主夫レベルですよ。で、時間的にそろそろお腹も減ってきたんでよければ使わせて頂きたいのですがどうでしょうか?」

「うーんそうね、ちゃんとあとかたずけまでしてもらえるのなら使ってもいいわよ。。」

「わかりました、ありがとうございます!それじゃあまずは・・・」

 

リンディさんの許可が出たところで、まずは汚れているであろうコートを脱いで厨房用の帽子とエプロンを探しに向かう。

あれだけ立派な厨房なんだ。俺が使えそうなのか使い捨てのものくらいは用意されているだろう。

 

「あ!ま、待って!」ガシッ

「ぬ?」

 

厨房に入ろうとした途端、なのはに腕を掴まれて俺はいったん止まる。

 

「どうした?なのは・・・もとい二人とも何か作って欲しいの?」

「え?あ、うん、それもないわけじゃないんだけど・・・」

 

何か恥ずかしげにこっちを何度かチラ見した後、意を決したように口を開く。

 

「?どうしたよ?」

「あのね、前に海でジュエルシードが暴走した時助けてくれたでしょ?そのお礼、言ってなかったから・・・」

「・・・ああ、そういえばそんなこともあったな。」

 

正直拍子抜けするくらい簡単なミッションだったよな、あれ。

俺としては簡単なのに越したことはないんだけど・・・

 

「あの時泰寛君が助けてくれなかったら、私達もフェイトちゃんもだめだったかもしれないから・・・だから・・・ありがとう、泰寛君。」

 

まあそんな俺の心情なんて知る由もなく、なのはは介抱した後のフェイトに勝るとも劣らない笑顔で俺に礼を言う。

 

「・・・俺の話を聞いて何も思わなかったのか?こんな状況で言うのもなんだが結構ショッキングな話だと思うんだけど・・・」

「え?・・・ああ、うん。それはびっくりしちゃったよ。でも・・・」

「でも?」

「泰寛君なら大丈夫だって信じてるから♪」

「・・・・そうか。」

 

心から言っているであろうなのはの言葉に、若干罪悪感とむず痒い感じを覚えながらもそう答える。

 

「あ、あの!僕からもお礼を言わせてください!」

 

そんなことをしていると、さっきまでなのはの隣にいた民族衣装の少年がまだ何か言いたげだったなのはの前に乗り出してそう言う。

 

「・・・・・・アンタは・・・誰だっけ?」

 

俺はマジで名前が出てこないため、少年に対して何者か尋ねる。

 

「え゙?・・・あ、そういえばまだ名前を名乗ってませんでしたね・・・僕はユーノ・スクライア、なのはたちと同じ魔導師です。」

「ユーノ?・・・・・・ああ、前に矢島が話してた・・・」

「・・・ッ!!」

 

そうかそうか、この少年があの・・・

 

 

 

「フェレットに変身して女子のいる温泉に入ったっていうあの?」

「・・・・・・・・・え?」

「いやぁ君もなかなか勇者だよね。年齢的に問題ないとはいえあの高町一家の男連中がいるにも拘らず女子と一緒に入浴するなんて・・・いやはやまったくもって大した度胸というかなんというか・・・」

「ちょ!?いったいどんな伝わり方してるんですかそれ!?」

 

途中から渋い顔をしていたのに、女子風呂に入ったと言ったあたりから俺の発言に目に見えてうろたえ始めるスクライア君。なるほど、こいつがその少年だったのか。

マジで気が付かなかった。

 

「まあまあ落ち着けよスクライア君。人間だれしも過ちの一つや二つは犯すものだって。俺も男としてわかることではあるから別に責めやしないよ。」

「やめて!言われれば言われるほどにあの時の羞恥心と罪悪感が{ガシィッ}え・・・・・・」

 

弁解らしきことをしようとしていたスクライア君の肩から、やけに重々しい音が鳴り響く。

よく見ると隣にいるなのはが彼の肩を掴んでいたようで・・・

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

---ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

そのなのはは、見る人が見れば確実に見惚れそうな笑顔をしているにもかかわらず、なぜか熟練のスタンド使いと相対した時のような『スゴ味』を放っていた。

 

「な、なのは・・・・・・・?」

「・・・フフフフ、そうだよね・・・ユーノ君、あの時は男の子だなんて知らなかったからなぁー。何の気無しにそのままお風呂に入れてあげてたっけ♪ふふふ♪」

「ま、待って!あれはみんなが無理やり連れて行っただけで僕はちゃんと拒否したじゃないか!」

「うん・・・でもさ、あれってちゃんと男の子だって言ってくれれば避けられたかもしれないんだよね・・・?」

「言っても『フェレットの雄ですって感じにまとめられて結局入ってた』に俺は100ぺリカ賭ける。」

ちなみに知っている人なら分かるが、このぺリカという単位に意味はない。

もっと言うと価値そのものがないといってもいい。

「・・・それじゃあ泰寛君、お料理楽しみにしてるね。」

「(うん、まあ分かってた(受け答え))ああ、楽しみにしといてくれ。ちなみに何か希望はあったりする?」

「うーん・・・折角だから泰寛君にお任せしてもいい?」

「了解した。出来るまでどっかで時間を潰しといてくれ。」

「うん、出来たら呼んでね。それじゃあユーノ君・・・・ちょっと、お話しよっか・・・」

「ちょ!待って!た、助けて・・・」

 

はははスクライア君、俺も気持ちはわかるよ。けどな・・・俺に出来ることはない!

 

「まああれだ、その状態のなのはでも主張さえ曲げなければ案外何とかなるぞスクライア君。あとは気持ちの問題だ。気持ちで負けなきゃ何とかなる。」

 

あの戦闘鬼人高町ファーザー&ブラザーを前にうまく立ち回ってたあの頃の俺みたいにな。

 

「そ、そんな「ほら、邪魔しちゃ悪いから早く行こうよユーノクン・・・」え?うわ!?ま、待って!話を・・・」

 

そう言って食堂から出て行くなのはと引きずられていくスクライアを見届け、俺は再び気合を入れて厨房に入っていく。

 

「・・・さて、まずは着替えと手洗いからだな・・・・・・あ、その前に・・・」

 

一端コートを脱ぎ、内ポケットに入れていた紙の一枚を広げてPCを取り出す。

そしてメールアプリを開き、文字を打ち込んでいく。

 

「『これからプレシアのところに行くからついでにやって欲しいことがあれば言って欲しい』っと。よし、これで送信して・・・それじゃあ今度こそ始めるか。」

 

PCをスリープ状態にしてポケットにしまい込み、今度こそ俺は厨房に入る。

さあて、食材はどんなのがあるかなぁ~

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「うっし、ざっとこんなものかな?」

 

献立は白米、豚の生姜焼き、キャベツの千切りとレタス、プチトマト等で作ったサラダ、ほうれん草の胡麻和え、ワカメと細切り大根の味噌汁だ。

デザートはマンゴープリンを用意している。

俺としては本当は玄米がよかったけど生憎とそれはなかった。玄米の方が保存が効くのにな~

 

「後はコイツを持っていくだけだな。あ、でもその前に・・・」

『ハイハイ本日ハコチラデスネェ?ケケケケ・・・・』

 

一応周囲の確認を済ませた後アライブに鍵を吐き出させ、そこからエニグマのディスクを取り出す。

料理中にやらせていたが、この厨房には監視カメラの類が見当たらなかった。

つまり、少なくともここならば場合によってはディスクの切り替えなどを行っても問題がないということになる。

おかげで『アレ』の仕込みも十分に・・・おっとここからは後に説明しよう。

まあその死角も次に乗る時は分かったもんじゃないが・・・というか乗る時があるのか?

 

(・・・今気にしてもしょうがないか。とりあえずやることやっちまおう。)

 

一先ずアイスの一部をスプーンですくい取り、それを冷やしておいたガラスの器に移す。

 

「それじゃあとっととやりますか。{ズブズブ}よし、エニグマ!」

 

いつも通り渡されたディスクを頭に差し込んで名前を呼ぶと、体の内側から全身に模様の入った紫色の土偶のようなスタンド、『エニグマ』が飛び出し・・・

 

---ドン!

 

お皿に盛りつけていた小豆と抹茶のアイスの内一つに手を添える。

 

---ズズズズズ・・・

 

アイスはエニグマの手と合わさってまるでトリックアートのようなイメージになっていき・・・

 

---・・・・パラッ

 

最後には一枚の紙に描かれた絵となった。

俺はそれを拾い上げ、何度か折り畳んで懐にしまい込む。

 

「さて、さっさと飯食って行くか。」

 

調理場のあとかたずけを一通り済ませ、用意したメニューをトレイの上に乗せてから食堂の机まで持っていった。

そして持っていたフェイスマスクをファイリングしてからコートにしまい込み、スタンドディスクを何枚か入れ替える。

 

「いただきます。」

 

自分の斜め前の席になのはの分のご飯を置き、俺は一足先にご飯を食べ始める。

 

(・・・・・あ、そうだ。そろそろメールの確認を・・・よし、さすがにちゃんと見てたか。)

 

左手で先ほど使っていたメールアプリを開き、送り先である矢島からの返事を確認する。

 

(・・・・・・・・・・・・・・・OK、ついでに聞いてみるか。)

 

返信の内容は要約すると、『プレシアに少し聞いてほしいことがある。ヒュードラ事件って言えばたぶん向こうもわかる。』ということだった。

おそらくプレシアに関係あることなのだろう。

 

「{プシュウ―――ッ}ごめん!いろいろやってたら遅くなっちゃって!」

「{ビクッ サッ}あ、ああ。大丈夫、こっちもさっき食べ始めたところだから。」

 

いろいろ考えているうちになのはが食堂に入ってきたため、咄嗟にコートにPCを隠しながらそう答える。

 

「そうなの?よかったぁ~~、ところで今何か隠したように見えたんだけど・・・」

「ん、まあちょっと手持ちの確認と整理をしてただけだよ。それよりほら、冷めないうちに食べよう。」

「うん、それじゃあ頂きます!」

 

その後はしばらくは、なのはと最近のことについて話しながら楽しく食事をすることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあなのは、俺はしばらく一人でうろついてるから。」

「うん、何かあったら遠慮なく行ってね。」

 

食器をかたずけ、俺は食堂の出入り口でなのはと別れる。

作ったご飯について好評価がもらえたのは純粋にうれしかった。

もっとも、途中であの金髪紅眼の少年(迷惑馬鹿)が押しかけてきたせいでいろいろと台無しになってしまったが。

そういえばなのはがバインドを一瞬でかけたうえでそいつの意識を刈り取ったのは割かし驚かされたな。

 

「さて、俺もとっとと自分の仕事をするか。」

 

机に置いてあったコートに袖を通し、近くのトイレに入る。

 

「・・・これにするか。」

 

そう言うと同時に、先ほど装備したスタンドを自分の傍に呼び出す。

その姿ははまるで人間と恐竜を足して二で割ったようであり、全身は放電しているかのように黄色く輝いている。

 

「潜り込め、『レッド・ホット・チリ・ペッパー』」

 

言い終わるや否や、体の中から出て行ったスタンド・・・『レッド・ホット・チリ・ペッパー』は俺の頭上にあったライトに放電しながら消えて行った。

 

(よかった、魔導師の使うような魔力を動力源として使ってはいるが実際のエネルギー供給はほとんどが電気エネルギーに変換してなされている。転送ポートとかの運用はさすがに魔力で行われているがこれなら監視系統くらいはチリ・ペッパーである程度いじれるぞ。)

 

願っていた状況に安堵しつつ、電気の塊と化したチリ・ペッパーを高速で走らせる。

 

(・・・・・・見つけたぞ!プレシア達がいる場所を!)

 

数秒後、チリ・ペッパーの感覚を通してプレシア達のいる牢屋を見つけ出す。

中にはほかに三人ほどいる。おそらくフェイト、アルフ、アリシアの三人だろう。

(後はさっき入れたメタリカで姿を消して・・・これで準備は整った。行くぞ!)

チリ・ペッパーを近くに戻し、自分が映りそうな監視カメラの映像を俺が映っていない様に改変しながらプレシア達の牢屋を目指した。

 

 

 

 

 

(・・・ここだな。)

 

艦内を歩くこと十分。ようやくお目当ての牢屋の近くまでたどり着いた。

 

(中の様子は・・・チッ、やっぱりプレシア以外が起きてやがるな。)

 

カメラの死角に立ち、チリ・ペッパーを先行させて中を確かめると中で四人が楽しそうに話している光景が見えた。

見たところもう蟠りの類はないのだろう。まあそれはいい・・・だがこのままだと俺が踏み込めん。

折角の家族団欒にこんなことを言うのもなんだが、このままいってしまうと複数に俺の能力がばれてしまうからだ。

ここはやはり、しばらく寝ていてもらうことにしよう。

 

(と、いう訳で出番だ。)

 

チリ・ペッパーとメタリカの他にもともと装備していたスタンド・・・原作ではタロットの十三番目のアルカナを司り、ジョースター一行並びに俺をさんざっぱら悪夢に誘い込んで苦しめてくれたあいつを、ピエロのような顔と大鎌が特徴の憎たらしいあいつを呼び出す。

 

「『デス・13(サーティーン)』プレシア以外の三人を夢の世界にご招待だ。」

 

『ラリホ~~ッ』

 

 

 

 

 

 

 

『・・・ふわぁ~~~、なんだか眠いよ・・・』

『・・・そう言えばあたしも・・・』

『私もなんだかすごく眠い・・・』

『あら、三人とも疲れてるのかしら?』

 

耳を澄ませると、牢屋の中からそんな声が聞こえてくる。

 

『もう無理・・・お休み・・・・・』

『アタシも・・・お休みフェイト・・・zzz・・・』

『アルフ・・・お休み、母さん・・・』

『ええ、三人ともお休み・・・』

 

中の様子をチリ・ペッパーを通して見ると、プレシア以外は全員が寝ている姿が見えた。

ちなみにフェイトとアリシアはプレシアの膝枕である。

 

(・・・すぐに行くと不自然だし、一分くらいしたら入るか。)

 

見たところプレシアは二人の娘の寝顔をこれでもかってくらいに幸せそうに眺めている。

この調子なら一分くらいはつられて寝入ることもないだろう。

 

 

 

 

---一分後・・・

 

(よし、そろそろ行くか。)

 

一分が経過したのを確認し、チリ・ペッパーで監視カメラをいじりながら扉の前まで行く。

 

「?だれかしら?」

「アンタに説教たれてた仮面の剣士だ。少し話したいことがあるんだがいいか?」

「?まあそれは構わないのだけれど・・・」

「なら中に入らせてもらうぞ。」

「ええ。」

 

電子ロックを解除し、扉を開けて中に入る。

 

「どうも、実際に顔つき合わせるのはこれが初めてだな。あ、これはお近づきの印ってことでどうぞ。」

 

コートの内側で畳んでいた紙を開き、取り出したマンゴープリンとスプーンをプレシアに渡す。

 

「あ、ありがとう。いただくわ・・・(どうやって取り出したのかしら?)」

「どういたしまして。よっと・・・」

 

プレシアがプリンを受け取ったのを確認し、俺は向かい側のベットに座る。

 

「・・・・・おいしいわね、これ。」

「ありがとう、作った側としてはうれしい答えだ。」

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・え?ひょっとしてこれだけのためにきたのかしら?」

「まさか。少し聞きたいことがあるんだ・・・けど今はそれを食い終わるまで待たせてもらうよ。プリンは冷えた状態がおいしいからね。」

「そう・・・ねえ。」

「何か?」

「アリシアやフェイトのこと、改めて礼を言うわ。ありがとう。あなたがいなかったら・・・この瞬間はきっとありえなかったわ。」

「いや、それはさすがにないと思うが・・・まあどういたしまして。その分だと憑き物は落ちたみたいだな。」

「ええ、二人には悲しい思いをさせてしまうかもしれないけれど・・・これで思い残すこともないわ。?刑が執行されるまですら持たないかもしれないけれど・・・後は残った時間のすべてをこの子たちのために使うつもりよ。」

「ハハハッ、まるで今から死ぬみたいな言い方だな。ひょっとしたら何時の間にか病気が治ってるなんてオチが付くかもしれないじゃないか。」

「どうかしらね。ひょっとしたらもっとひどいかもしれないのよ?」

「けど逆だってあるかもしれない。神にだって予想だにしないことが起こるこんな世の中・・・期待期待したって罰は当たらないと思うね。ま、俺は力尽くでも望む方向に切り開いていくけど。」

「・・・・・・・フフフ、そうね・・・こんな奇跡があり得たんだもの。少しくらいは期待してもいいかもしれないわね・・・」

「そういうことだ。」

 

そう言ってお互いに笑い合う。

そんなことをしているうちに、皿のプリンはあと一口という状態まで減っていた。

いよいよか・・・

 

「ありがとう、とてもおいしかった{ポンッ}・・・わ?」

 

プレシアが何か言おうとしていたその時、彼女の胸のあたりから紫色の光の玉が出てくる。

 

「こ、これは!?あなた何を・・・」

「落ち着け、今にわかる。」

「なんですって・・・」

 

声を荒げるプレシアを制し、目の前で激しく明滅し続ける光の玉をじっと見守る。

そして・・・

 

---シュポンッ

 

明滅がある程度収まった光の玉は瞬時にプレシアの中に戻っていき、更にプレシアの状態に変化が起きた。

 

「これは・・・・・・体が軽いッ!今までずっと重りを付けてたようだったのに今は羽根よりも軽い気さえしてくるわッ!」

 

フェイトたちを起こすわけにはいかないため立ち上がることはなかったが、体の変化に気付いて何度かその場で動かしていたプレシアがそう言った。

顔色なども先ほどより格段に良くなっており、もはや若返りと言って良いほどとなっている。

 

「{ニヤリ}フフフ、我々の特製マンゴープリンは御楽しみ頂けたでしょうか?ちなみにレシピは門外不出となっておりますゆえ悪しからず。」

「・・・な、なんて言ったらいいのか・・・・・・ホント、あなた達には驚かされてばかりね・・・」

 

驚きすぎてコメントを満足に出せないプレシアの反応に、俺の口角はますます上がっていく。

 

「ヒッヒッヒッ・・・・・・さて、プレシア・テスタロッサ。アンタに少し聞きたいことがある。」

 

暫く笑ったところで、俺は本題に入るために気を引き締める。

 

「?何かしら?あなたにはいろいろと助けてもらったし答えられる範囲でなら答えてあげるけど・・・」

「いや、実はな・・・俺の友人がアンタにヒュードラ事件のおかしい点について聞きたいと言ってきたんだ。何でもこの事件、アンタが携わっていたらしいな。そして・・・今回の事件の根幹にあった出来事だとも・・・」

 

矢島がこれを聞けといった理由は大体予想が付く。この予想、万が一外れていなければ・・・

 

「・・・ええ、そうよ。でもそんなこと聞いてどうするの?あの事件は上層部が私の責任としてもみ消したのよ。おそらく当時の資料もごく一部の人間が持っているもの以外は管理局の都合のいいように改竄されているだろうし今更調べたとしても「おい待て、そのあたりを詳しく話してくれないか?」・・・は?」

 

プレシアの愚痴に近いセリフに、ここから先の行動に改めてはっきりと指針ができた気がした。

 

コイツの罪ももしかしたら・・・いや、間違いなくできるはずだ!

「・・・どういう意図があるかはわからないけれどいいわ、教えてあげる。」

「ああ、頼むよ。」

 

訝しんでいるプレシアに頼み、俺はそこから先の話を再度聞き始めた・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・以上が私の知るヒュードラ事件の顛末よ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・クックックッ・・・」

「?」

 

クックックックック・・・・・だめだなぁ~~、これは・・・クックック、あんまりにもことがうまく運び過ぎそうで思わず笑っちまう・・・

いくら簡単なのがいいとはいえこれは・・・ハハハハハ!

 

「どうしたの?途中から顔を抑えたかと思ったら急に笑い出して・・・何か思いついたの?」

「クックック・・・・・・いや、何でもない。ああ、何でもないさ。」

「・・・とてもそうには見えないのだけど・・・」

ククク・・・いや、本当に笑わせてもらったよ。さて、後は仕事に取り掛かるだけだ。

「ありがとう、それじゃあ俺はこれで失礼させてもらうよ。」

「ええ、何時会えるかはわからないけれど今度はこの子たちとも遊んで頂戴ね。」

「断言はしかねるね。それじゃあまたいつか。」

「ええ、またいつか。」

 

お互いに挨拶を交わし、牢屋の自動ドアを出て電磁ロックを掛け直す。

 

(後は矢島にこのことを知らせて俺の考えた策ができるか検討するだけだ。まあ心配する意味はさほどないかもしれないが。)

 

「さてと、ここの用事は終わったから・・・次はあいつらだな。面倒だが保険はかけておかないと。」

 

牢屋の前から離れ、一先ずは自分の部屋に戻りに行く。

チリペッパーは・・・適当なところで解除するか。

 

 

 

 

 

 

 

 


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