デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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次話更新しました。
それではどうぞ。


第二十一話

Side:梶原 泰寛

 

 

これは・・・俺達が次元世界に初めて足を踏み込む、およそ数時間前の出来事であった・・・

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

---ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

 

「ねえ二人とも、私達に内緒で一体どこに行こうとしてたのかな?かな?」

「後ろにあるのは・・・どうやら次元航行船のようだな。君たちの事だから良からぬことには使わないかもしれないが一応話は聞かせてもらうぞ。」

 

「「・・・・・・・・・・\(^o^)/」」

 

い、今起こっていることをありのままに話すぜ。矢島が次元航行船を用意していた場所にいち早く到着し、その後しばらくしてから合流した矢島があっという間にバインドで縛り上げられた!(俺は身の危険を感じて反射的に躱した。)

 

そして・・・上空からそれを行った連中、なのはとクロノが姿を現した!

 

一瞬何が起こったのかわからなかった・・・分かった途端状況がいかに(俺にとって)やばいか分かった・・・

 

(ディ・モールト(非常に)!ディ・モールト(非常に)マズイ!間違いなく最悪の展開だ!何故だ!?俺がつけられていたのか・・・いや、それは無い!今日ここに来るまで尾行する者の気配はなかった!見られている感覚なんて微塵もなかった!となると・・・)

 

嫌な予感を胸に秘め、空から降りてきた三人と今まさにバインドで縛られている親友の姿を見て、俺は確信する。

 

(この馬鹿、あれほど周りには気を配れといったのにこの様かッ!)

 

つけられていたのは・・・間違いなくこいつだと・・・

 

「おおおおおお落ち着けなのは、まずは話を「大丈夫・・・すごく落ち着いてるし二人のお話もちゃんと聞いてるよ?それより早く・・・私の質問に答えてよ・・・ネ・・・?」・・・アババババババババ・・・」

 

駄目だ!矢島の奴すっかり気圧されてやがる!

 

「やれやれ、なのはが急に通信を繋いできたから何事かと思ったが・・・まさかこんなものを持っていたとはな。とりあえず二人とも、もうじきほかの局員も来るだろうし詳しい話はアースラで聞かせてもらうが構わないな?」

 

クロノの冗談だと思いたい発言に、ますます気が遠くなってくる。だがおそらく本当の事なのだろう。こいつは下手な冗談を言う性質じゃなさそうだからな。

 

本当に・・・酷い展開だ・・・

 

「・・・・・・・・いつからだ。」

「?なんだ?」

「・・・何時からばれていた。少なくとも俺は見られている感触は全くなかった・・・大方そこの馬鹿の動向をお前らが見張っていたとしか思えないんだが・・・」

「ぐ、本当のことなだけに言い返せねえ・・・」

 

矢島が不満そうにしながら何とかバインドを抜けようとしているのを尻目に、クロノが口を開く。

 

「ああ、どうもここ数日間の間にこのあたりで強いエネルギー反応が何度か計測されてたんだ。それで危険がないか探っていたらつい先ほど転移魔法が使われたから辿ってみると十数分ほど前に矢島が転移した位置からこっちに向かっているのが分かって・・・」

「こいつとこの船、そしてそこに座っていた俺がついでに見つかったわけか(確か何度か動作テストをしていたといってたからそれが感知されていたんだろうな)・・・で、なのはは?」

「私は最近矢島君がなんだか不自然だったから、事情で来れないアリサちゃんとすずかちゃんたちに代わりに様子を見てもらえないかって言われて今日尾行してたらここについたんだよ。」

 

・・・・・・・・・・・・・

 

「・・・・・・・・・・・・・・このド畜生がァアアアアアアア!動作テストの影響はまだ仕方ないとしてもこんな形でばれるってどういうことだアアアアアアア!!」

「マジですまんかった!完成したのがつい嬉しくてはしゃぎながら来てたら・・・テヘペロ(・ω<)」

「(マジで腹立つ・・・じゃない!)クロノ、お前以外にこのことを知っている奴はいるのか?」

「ああ、というかアースラにいるみんなが知っていると思うが・・・」

「(・・・もうだめだ。見られたのがなのはだけだったらまだ取り返しがついたが仕方がない・・・最後の手段だ!)アライブ!」

 

意を決してスタンドの跳躍力で急加速し、数メートル離れた矢島の位置まで一気に駆け寄る。

 

『ギルァララララァッ!』

 

そして矢島を拘束しているバインドを手刀で切り裂き、すかさず倉庫を呼び出してそこから取り出した一枚のディスクを頭に差し込む。

 

「え?今CDみたいなのが泰寛君の頭に入って・・・」

「おい!今何をした!」

 

慌て始めるなのはたちを無視し、矢島に手を差し伸べる。

 

「サンキュー、よっと・・・悪いな、こんな事になっちまって・・・」

「いや、もういいさ。聞いたところじゃまだこれから挽回は可能だからな。」

「ねえ!今のっていったいなんなの!泰寛君の頭に・・・」

「ん?ハハハ、そうだな・・・」

 

立ち上がった矢島の肩に触ってから(・ ・ ・ ・ ・)、俺は淡々となのはたちに話をしていく。

 

「実を言うとな・・・俺はお前らにはまだ黙っていたことがある。俺の超能力、これの正確な名称は『スタンド』と言って、基本的に持主の精神が実体ある像として常に隣にいることからこう呼ばれている。」

「すた、んど?」

「それとこれと一体何の関係があるんだ!」

「まあ落ち着けよ。でだ、俺が前に念動力と短距離ワープしかできないって言ったろ?あれな・・・嘘だ。」

「「・・・え(は)?」」

 

驚く二人を見ながら俺は話を続けて行く。

 

「正確には俺ができるのはあれだけじゃない。スタンドってのはこれがまた面白いものでな、素質さえあれば使い手の精神次第でどんな能力だろうと身についてしまうのさ。それこそ本当にしょうもない、チンケなのから大量殺戮兵器になるようなもの、どんなに壊れた物だろうと、不治の病だろうと簡単に直せるもの、どんな防御だろうと簡単に貫くパワー、天候や運勢、時間、あるいは世界中の知性体の精神をも支配出来るレベルまでどんなものだろうとだ!で、使えるだけという意味でなら俺の持つ能力は百を超える。ただ、ある一つを除いて他は本来俺の能力じゃないからな・・・通常時は別の場所に、今のようなディスクの形にして保管してあるんだよ。」

 

「な、なんだかよくわからないけど・・・それじゃあひょっとして、フェイトちゃんとアリシアちゃんのお母さんの病気が治ったのって・・・」

「・・・なるほど、そう言われてみるとプレシアの病気が治ったのもうなずける・・・だがなぜ今更それを話した?」

 

ククク、何で、か。それはな・・・

 

「少なくとも・・・今は隠す必要がないからさ。俺の秘密、そのボーダーラインを越える者は、条件付きだが一人を除いて一度消えてなくなるのだからね!そしてその条件も満たした!」

 

側に出たスタンド・・・・・・『キラークイーン』とともに例のポーズをとる!

 

「!?何をするつもりだ!おい!そこを動くな!」

 

クロノがこちらにデバイスを向け、魔力弾を撃とうとする。

だが無駄だ!『一手』遅い!

 

 

「いいや!限界だ押すね!『キラークイーン』第三の爆弾!『バイツァ・ダスト!!(負けて死ねッ!!)』」

 

「くッ!バイン・・・」

 

「遅い!今だ!」

 

---カチッ

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「・・・・・・ハッ!!」

---・・・・・キョロキョロ

 

(ここは・・・俺の通ってる小学校か?だとしたら・・・)

「?どうかしたのヤス君?」

「え?ああ、いや、何でもない・・・」

「そう?それならいいんだけど・・・」

「うん・・・それじゃあまた月曜日に。」

「うん、また会おうね!」

 

---タタタタタタタ・・・・・

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

・・・フフフ、フハハハハハハ!戻ったぞ!これでまだやり直せる!

 

(おっと、はしゃぐ前に矢島に連絡を入れないと。バイツァ・ダストを回収ないと本当にあいつらが死んじまう。)

 

さすがに死人を出したいわけじゃないからな。

とりあえず・・・合流する場所と時間を変えておくか。俺ならあいつらの尾行を完璧に振り切ることが出来る。

 

(やれやれ、出発前から受難ありとは嫌な話だな・・・)

 

そんなことを考えながら、懐から出したPCを操作して矢島に通信を入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

キング・クリムゾンッ!我以外のすべての時間は、消し飛ぶゥ――z_ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

「ぐおおおおおおおマジで疲れた・・・生活スペースが実質背もたれ付きの椅子一つとトイレだけでマジで疲れた。」

「俺だって一緒だ。せめて美少女枠が一人くらいいればもう少し華があったんだが・・・」

「同感だ。早いとこ帰ってすずかたちに癒されたい・・・」

「俺は・・・・・・特に思いつかないな。撮り溜めてたジョジョのアニメでも見るくらいか。」

「あれ?ジョジョのアニメなんて地球でやってたっけ?」

「ああ、俺が前・・・もとい転生するときにPCに入れてもらえるよう頼んだんだ(あっぶねえ!思わずばらすとこだった!)」

「へえ、今度俺も見ていい?」

「ああ、いいよ。」

 

 

 

あの後、俺達は一度図書館の前で集合することになり、そこで周囲を警戒しながら再度待つこととなった(図書館の前で車椅子を使っている女の子に界統が悪戯してるように見えたのは気のせいだと思いたい。)

 

流れをざっくり言うと

 

到着した矢島からキラークイーンを回収

→マン・イン・ザ・ミラーで鏡の世界に入り、そこから再度矢島の用意した次元航行船へ移動

→半時間ほどの時間をかけてようやくヒュードラ事件があった次元世界へと辿り着き、目標の土地へと足を踏み込んだ。←今ココ

 

・・・といった感じだ。

 

 

途中、次元震の影響が抜けきっていない領域を無事突破できるのかとかいろんな心配はあったものの、さすがに矢島も本気で取り組んでくれたおかげかそういったことは起きずに無事に抜けることができた。

一時はどうなるかと思ったが結果オーライだ。

・・・まあ・・・船の機能を重視しすぎたせいか生活スペースが相当狭かったのが唯一の難点だったが。

あいつ曰く、ステルス性を極限まで突き詰めた結果らしい。まあこんな自分勝手な希望に極力沿ってくれたのは純粋にうれしいしありがたかったが・・・もうちょっと何とかならなかったのか?

矢島には悪いけど俺なんか途中ココ・ジャンボの倉庫の中で休憩してたくらいだし。

 

「しかし・・・・・・見れば見るほど殺風景だな。雑草もそんなに生えてないみたいだ。」

 

「確かに・・・気候条件はそこまで悪くないし、完全に土壌の問題だろうな。見れば見るほど異様というかなんというか。」

 

おっと、さすがに話題を今に戻すとしようか。

 

俺達が降り立った場所には、爆心地からかなり離れた場所のはずなのに偶に苔とか雑草らしいものが生えているだけで、小動物はおろか虫がいる気配さえなかった。

これが二十六年前に起きたことの爪痕と考えると・・・当時は相当な被害になったんだろうな。

 

「で、どうするよ?ここがぎりぎり汚染の許容範囲だ。これ以上進むとさっきやった処置の上にさらに防護服が必要なレベルになってくるんだが・・・」

「大丈夫だ。十分射程範囲に入ってる。そっちこそハードディスクの用意は十分か?」

「もちろん。足りなくなったらまた付け足せばいいし。」

「よし、それじゃあやるぞ。」

「どうぞ。」

 

矢島に確認を取り、外に出る前に装備していたスタンド・・・アンダーワールドを側に呼び出し・・・

 

---ボゴォォッ!!

 

一メートルほど前方に大きな穴を掘らせた。更にアンダー・ワールドは、穴の中へと入って掘り進んでいく。

 

「爆発が起きる一年と半年ほど前の記憶を掘り起こした。穴の中に降りれば再現された記憶がそれぞれ行動を起こしているはずだ。」

「よし、じゃあ案内よろしく。」

「ラジャー(さて、今日だけでどれだけの情報が手に入るか・・・)」

機材を一通り持って、掘った穴に慎重に降りていく。

いったいどれだけ集めることになるやら・・・

 

 

 

 

 

「よし、まずはこの部屋の探索から始めよう。」

 

掘り起こした記憶の建物内を移動中、事務所と思われる場所を見つけた俺達はそこに入っていく。

 

---バンッ!!

 

「「!??」」

 

部屋に入ろうとした瞬間、何かを机に叩き付けたような大きな音が響き、俺達は身構えた。

 

「部長!このようなスケジュールでは不可能です!」

「いや、このスケジュールでなくては先方は我々に仕事を取らせてくれなかったのだよ。」

 

 

「・・・・なんだありゃ?プレシアか?」

「・・・みたいだな。」

 

扉を開けた先にいたのは、手に持っていた書類と思わしきものを机に叩きつけて怒鳴っていたプレシア(過去)、それに対しあくまでも冷静に返した恰幅の良いおっさん、そしてプレシアの横にいる二人の小年だった。

 

「だからと言って、あらかじめ渡していた見積りの三分の一の期間で行うだなんて!あまりにも無謀すぎます!人員だって決して多い訳ではない!これでは暴走の危険が・・・・・・!」

「・・・・・・しかし、相手はあの管理局だ。受けてしまった以上これで進めるしかないよ。なに、何も完全なものを作れといっている訳ではない。取り敢えず動けば向こうも分かってくれるさ。」

「その『取り敢えず動く』段階まで時間が必要と言っているのです!」

 

 もう一度机を叩かんばかりの勢いで迫るプレシアに、溜め息をつく恰幅の良いおっさん。

 

「・・・な、なんだかすごい所に入ってきたな、俺達・・・」

「・・・そうだな。」

 

そしておっさんは、今度はプレシアではなくその横にいる二人の少年に視線を向け、話しかけた。

 

「・・・・・・なんとかならんのかね?」

「問題ありませんよ、ガンツ部長。」

「なっ?!」

 

 少年が放った言葉に絶句するプレシア。

 

「何を言ってるの?! 貴方も開発現場の人間ならこのスケジュールがどれだけ無謀か解るでしょう?!」

「まあ、普通にやったら無理でしょう。」

「でも、細かいパーツやら筐体やらのテスト行程を省略すれば十分間に合うでしょう。」

「そんな事が許されるわけがっ!」

「いや、それでいこう。」

「な!?正気ですか!?!」

 

 無茶な提案に文句を言うプレシアを遮り、強引に許可を出すガンツと言われた男。プレシアは抗議を続けた。

 

「待ってください! 魔力炉の構造は複雑で、パーツのテスト抜きに組み上げるのは無理です。最悪、拒絶反応を起こして暴走だって!」

「まあ、だから、取り敢えず動けばいいと言っているだろう。最低の出力でやれば暴走しても問題あるまい」

「それに、暴走した場合には我々が開発した結界があります。そのなかでやれば万が一のことが起こっても大丈夫ですよ。」

「最低と言っても管理局が求めているあの出力でしょう?! その大規模魔力を結界で受け止めるなんて・・・・・・待ってください!!」

 

 尚も抗議を続けるプレシアを無視し、ガンツと呼ばれた男はもう一度溜め息を吐くと立ち上がって言った。

 

「プレシア君、君には引き続き開発主任を担当してもらうが実質的な指揮はそこの二人に行ってもらう。それでは私は失礼させてもらうよ。」

「なっ!? 待ってくださいガンツ部長!」

 

 これで話は終わりとばかりにガンツと言われた男は部屋を出ていく。

 

 

「こうしてヒュードラ事件へとカウントダウンは始まるわけか・・・何つうか普通に無茶苦茶な話だったな。確か当時予定されていたヒュードラの出力がミッドチルダの大都市一帯を余裕で補えるレベルだったから・・・・俺みたいなのがいなきゃ到底一年半じゃ作れやしないぞ。」

「そうだな・・・矢島、お前はプレシアから開発計画書の場所を聞き出して見積もりの分と上が要求した分の両方を写しておいてくれ。俺はあの男から管理局とどんなやり取りがあったか聞き出して、その時の会話記録とか仕事の契約書を探してくる。」

「・・・出来るのか?それ?ここの連中ってただの記録なんじゃ・・・」

「大丈夫だ。一応受け答えくらいはちゃんとできる。それじゃあ俺は行ってくるぞ。」

「わかった。」

 

一先ずその場で二手に分かれ、俺達はそれぞれ目的のものを集めに行った。

 

side out

 

 

 

Side:矢島 敬一郎

 

「そんじゃあ取り敢えず声をかけるか・・・すみませーん。」

 

梶原が部長の後を追って外に出て行ったのを見届け、俺は緩い感じでプレシアを呼び止める。

 

「・・・あなたは・・・・・・・・そう、そういうことなのね。」

 

プレシアはこちらを見て少し無言になると、さっきまでの有れた態度とは打って変わって柔らかい物腰になっていた。

心なしか、ほんのちょっぴりとだけ笑っている気もする。本当にほんのちょっぴりとだけど。

 

「えーっと・・・とりあえず開発計画書を見せてほしいんですけど・・・」

「わかっているわ。これから行く研究室にあるからついてきて頂戴。」

「ああ、わかった。」

 

プレシアの記録についていき、途中でさっき一緒にいた二人の少年と別れた後研究室の扉の前まで来る。

 

「それじゃあお邪魔しまーす。{ウィーンッ}おお―――!」

 

自動ドアを通って中に入ると、白衣を着た十数人の男女や何台ものコンピューター、山積みにされた書類、作りかけの機械など、科学力や技術力は比べ物にもならないが大学時代によく見た研究室そのものがそこにあった。

年寄り臭い発言だけどすごく懐かしい感じがする。

 

「計画書はそこの書類入れの中にあるわ。」

 

プレシアが指差した方向を見ると、『次元航行エネルギー駆動炉開発プロジェクト』とミッド語で書かれた、本棚の一画に恐ろしく分厚いファイルがいくつもあった。

 

「・・・・・・・よ、良し!気合入れていくか!」

 

待ち受けている作業に若干心が揺らいでしまうが、取り敢えず気を持ち直して本棚に近寄る。

 

「・・・・・・・・・さて、まずはどこから手を付けていくよ(-m-;)」

 

改めて見ると、ファイルの一つ一つが広辞苑を軽く超える厚さを持っており、縦と横の大きさも尋常じゃないのが分かる。

数も相当なもので、しかも全部ミッド語で書かれているというおまけ付き。ミッド語を勉強し始めたばかりの俺にとっては、どれから手を付けたらいいか真剣に迷わされてしまう。

 

(まったく・・・とりあえずデバイスの翻訳機能を頼りながら片っ端からかたずけていくしかなさそうだな。どれ、まずはこれを・・・)

 

まずはいちばん上の段から浮遊魔法でファイルを抜き取る。開いてみるとやはり尋常じゃない情報量だ・・・きっとスゴ~く時間がかかるんだろうなぁ~

本当、数も量も多すぎですよ奥さん・・・

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:梶原 泰寛

 

「・・・すると何か?契約文書も会話記録も本社がある世界に行かないと見つけられないということか?」

「ああ。」

「・・・本社はどこにあったんだ?」

「ミッドチルダの首都、クラナガンだ。今どうなっているかは私は知らないがな。」

「・・・困ったな。どうするか・・・」

 

先ほど部屋を出て捕まえたガンツからの話によると、俺の求めていた物はどちらもこの世界には一度たりとも持ち込まれたことがないらしく、よってこの世界ではそれらの記録を掘り起こすことはできない。それ自体が持ってこられたことがないんじゃ掘り起こしようがないからな。

 

(となるとどうするか、実験材料とか実際の指揮系統がプレシアの独断では分かったことは掘り返していけばきっちり手に入るだろうけどそれだけじゃまだ手札としては物足りない。せめて管理局の上層部を強く揺さぶれるようなものがないとあいつらが日常を送れるほどの減刑は果たせないんじゃないか?)

 

末端の末端から侵入すればばれる心配はさほどないにしろ、最悪ミッドチルダに足を伸ばさないとならないことに若干辟易する。

 

「・・・・・・一度矢島のところに戻ってみるか。」

 

端折るところを端折っているとはいえ、作るのに相当時間を要するものだ。特に今は用事もないし、矢島一人でまとめるのは難しいだろうと思い、俺も手伝いに行くことにする。

 

「よし、そうと決まったら早速・・・」

 

その時だった・・・

 

 

---ドォ―――――ンッ!!

 

「!?なんだこの音、それに地面が揺れている!?」

 

矢島の居場所を突き止めるためアンダー・ワールドと使おうとした直後、上の方から爆発音のようなものと大きな揺れが発生した。

俺は即座に警戒を強め、ホルスターに入っている鉄球に触れながら周囲に意識をめぐらせる。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

時間にして約二十秒、じっとその場で立ち続けるも周囲に変化は見られない。

 

(さっきの大きな音、何かが爆発するかのような音だった。落雷にしてはいくら近くで落ちても地面があんなに震える訳が無いし、まさか・・・)

 

確か俺達が入ってきた穴の近くに船を置いてあったから・・・やばい、かなり嫌な予感がする。

他に目新しい変化も見られないし、さっきやろうとしたことだけどここは一度矢島と合流した方がいいな。

 

「えっと、矢島のいる場所は{ザクッ}・・・なるほど、ここか。」

 

アンダーワールドで記録を掘り起し、場所を確認してから再度移動を開始する。そして、同時に祈った。

 

(頼む、せめて移動手段の大破は勘弁してくれ・・・!)

 

自分たちの帰りが、来る時と変わらないものであることを。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「{ウィーンッ}おい矢島!ちょっときてくr・・・なにがあった?」

 

目的の研究室と思われる場所に入ると、床に散乱した書類と倒れた本棚、そして足の先を抑えながらジタバタと悶絶している矢島が目に入った。

 

「ぐおおおお・・・か、梶原か。すまん、ちょっと手伝ってくれ・・・急に地面が大きく揺れたかと思ったらこれが倒れてきて・・・避けたまではよかったんだけどそこの机の角に小指が・・・」

 

「あ、ああ、そういえばさっき爆発音と一緒に一瞬だけ揺れたけど・・・まあいい、ちょっと待ってろ・・・{スタスタスタスタ}コオオオオオオオオ・・・・・・ヨイショ!」

 

まずは倒れている本棚を波紋の呼吸で強化してから起こし、クレイジー・ダイヤモンドのディスクを頭に刺し込む。

 

『ドララララララララララララララララァッ!』

 

そして落ちているファイルや書類に目を向け、それらに手早く触っていく。

 

---パラパラパラパラパラ・・・・・

 

触ったファイル書類は、それぞれクレイジー・ダイヤモンドの直す能力によって元の場所に戻っていく。

数秒経つと、ほぼすべての全ての書類とファイルが元の場所に戻り、本棚も一通り埋まった。

 

「良し・・・おい、とりあえず座れるか?」

「ちょ、ちょっと待て・・・まだ痛みが・・・ぐおおおおおおお・・・・」

「オイオイまさか折れてないだろうな・・・ちょっと足を出せ。ほれ。」

 

爪先を抑えている手をどけ、クレイジー・ダイヤモンドでそこに触れる。

 

「・・・お、おお!痛みが一気に無くなった!すまねえな。」

 

さっきの痛みが完全に引いたのか、さっきまでの呻き声が嘘だったかのように元気よく立ち上がる矢島。

 

「矢島、こっちの方は収穫無しだ。それとさっきの爆発音みたいなのは聞いたよな?」

「勿論だ。やっぱりお前も?」

「ああ、そこでいったん作業を中断して地上に戻ろうと思う。なんだかものすごく嫌な予感がするんだよ。確か俺たちの船ってこの近くにあっただろ?」

「・・・・・・そう考えると俺もやばい気がしてきた!急ぐぞ!!」

「おお!」

 

話がまとまり、一先ず研究室の出入り口に向かう。

 

その時だった・・・

 

「!待て!誰かがこっちに向かってきてる!」

 

廊下側から足音のようなものを聞き取り、とっさに矢島を止める。

 

「なんだと?・・・確かにセンサーに反応がある。誰だ?」

「注意しろ、この感じ・・・再現された記録じゃない。」

「分かった。GUNDAMセットアップ!」

『Yes,ser.』

 

俺はホルスターの鉄球に手をかけ、バリアジャケットを装備した矢島とともにドアのあたりを注視する。

 

「「・・・・・・・・・・・」」

 

 

---・・・・・・カツン カツン カツン カツン カツン

 

(歩き方に迷いがないな・・・だんだんと足音が近づいてくる。反響の感じからして来ているのは二体だけ、音の間隔からしておそらく二足歩行の人型、大きさは・・・まだわからないな。)

 

オアシスやゲブ神を使っていたころの経験をもとに、こちらに来る存在のイメージを大まかに組み立てていく。

もっとも今はゲブ神がないし、俺はンドゥールやセッコ(本職)じゃないからそこまで正確じゃない。今の距離だとわかるのはここまでだ。

 

---カツン カツン カツン カツン カツン・・・・・

 

(・・・・・・扉の前で止まった。すぐに開けない所を見ると俺達に気がついているのか・・・)

 

続けて先ほどと同じように、扉の方を注視し続ける。

そして数秒が経過した時だった・・・

 

「「!」」

 

---ウィ―ンッ

ついに扉が開かれ、

 

「何者だ貴様ら、管理局の者か?」

 

その向こう側にいた存在が姿を現した。

 

 

 

 

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