デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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ニコニコの実況とか、つべで洋楽漁ってたら・・・気が付いたら二週間近く経っていた・・・
もうね、ポルポル君状態とか通り越してますよ、ほんとに・・・遅れて申し訳ないです。
それでは続きです。どうぞ・・・



第二十三話

Side:梶原 泰寛

「何者だ貴様ら、管理局の者か?」

「いいや、ただの観光客だよ。ちょっと変わり者のね(さ~て、出来れば話し合いだけで済ませたいけど向こうさんやる気だな。まずはどう動くべきか・・・)」

 

自動ドアから入ってきた二人に対し、俺は適当な返事を返しながら状況の確認に努める。

 

(小さい方はコートの裏から微かに金属音・・・おそらくナイフか何かを隠し持っているな。逆に大きいボディスーツだけの方はこれと言った物が見当たらない・・・俺の様に何か予想もしない方法で隠し持ってる可能性は否定しきれないが目の前にわざわざ出てきたんだ、下手な小細工を使うタイプじゃないだろう。)

 

まあ現状はニ対ニだ。装備ディスクがアンダー・ワールドのみで、位置取りはこちらが部屋の隅、唯一の出入り口は奴さん等が制しているとはいえ、いつも通り場合次第で何とかなるレベルだろう。

というか手札はあんまり見せたくないからディスクの入れ替えは絶対にしない。

 

「あくまでもとぼけるつもりか・・・まあいい、どちらにしろお前たちをこのまま返すわけにはいかないからな。」

「おいおい、ずいぶん物騒な話だな。俺達なんかしたっけワトソン君?」

「誰がワトソンだ。というか前も似たようなやり取りがあったような・・・」

「気のせい気のせい。」

「・・・ふざけているのか貴様ら。」

 

おや?相手方の声に若干苛立ちが含まれ始めている。

性格が真面目なのかね?

 

「まあ無駄口はとりあえずこれくらいにして・・・なあアンタら、さっき俺はここに来る途中かなり大きな爆発音を聞いたんだけど・・・まさか俺らの船ぶっ壊したってことは・・・」

「ん?ああ、あれの事か。あれは先ほど私が壊したぞ。逃走手段をわざわざ放っておく理由はないからな。」

 

(やっぱりか、ただでさえ時間があんまりないのにまた余計な手間が・・・ん?)

 

ふと隣を見ると、矢島が重い雰囲気を纏いながらorzしているのが見えた。

残骸が残っていれば俺も手伝えるから今は元気出してくれ。

 

「さて、念のために聞いておくが・・・このままおとなしく投降する気はないか?今なら痛い目を見ずに済むぞ?」

「アンタ、もし逆の立場になった時素直にOKだなんて言えるか?まして、人の移動手段をすでにぶっ壊してくれた相手にだぞ?」

「ちなみに俺はノーだッ!やられた分はやり返す!倍返しだッ!」

「落ち着け^^;」

 

ガンダムフェイスになっていて表情はよくわからないが、武装をフルオープンにしている激おこ状態な矢島を宥める。

 

「なるほど、ならば・・・」

 

そんなことをやっていると、相手から放たれる威圧感が、いよいよもって強くなった。

 

「ドクターからの命令はあくまでも『戦闘データの入手』だ。抵抗するというのなら・・・命の保証はしない。」

「そりゃこっちのセリフだ!俺があれ創るのにした苦労耳揃えて返してもらうぞ!」

 

矢島はそう言い、両手に構えたビームライフルを敵さん二人に向けて撃つ・・・ん?

 

---パシュンッ

 

「え!?」

「なに?」

 

矢島の放ったビームは、相手の5メートル手前で突如霧散してしまう。

そしてその直後に、俺たちのいる場所まで何か奇妙な感覚が広がり・・・

 

「これは・・・魔力が霧散する!?」

 

矢島のバリアジャケットがそれに応じて少しだけ薄くなっていた。

 

「・・・何かのフィールドみたいだな。俺には特に影響はないから・・・干渉してんのは魔力だけか。」

「そうだ。ドクターの開発した新型のAMF発生装置を使っている。それでは行くぞッ!」

 

小さい方はそれだけ言うと、コートの裏から複数のナイフを取り出してこちらに投げた。人間とは思えないほどのスピードで踏み込み接近してきた。

 

「チッ、ジャアッ!!」

 

---ガキィンッ!

 

俺はホルスターから衛星付きの鉄球を飛んで来るナイフ目掛けて投げつける。

 

「その程度では防ぎきれん!」

「甘いな!」

 

---ドバッドバッドバッ ガキキキキキキキキィーンッ!

 

「何だと!?」 

 

俺が防ぎきれないと思っていた小さい方は、鉄球から飛び出た衛星が他のナイフを叩き落としたのを見て目を丸くする。

 

「ジャアッ!!」

「「!チィッ!」」

 

その隙に、二人の間に向けてもう一個の衛星付きの鉄球を投げる。

二人はそれに気付き、鉄球のコースからそれぞれ左右に大きく飛び退く。

 

---ドバッドバッドバッ

 

「くっ!?なんだこれは!」ガキンガキンッ

 

「だが、!防げないわけでは、ない!」ギィン バキッ

 

その二人を追跡するように鉄球から半分ずつ放たれた衛星が二人を追撃するが、相手も場数を踏んでいるのか自分に直撃する分だけを即座に見抜いて迎撃する。

 

(だが甘いな、それじゃあ『コレ』への対処としては落第点だ!)

 

俺はさっきナイフを迎撃した分の鉄球を回収し、まずは自分から見て左にいる小さい方を再起不能にしに行く。

 

「馬鹿な、真正面から突っ込んでくるなど・・・{ドサッ}な!?こ、これは!?」

「ひ、左側が・・・無い!?馬鹿な?!どうなっている!?」

 

小さい方はナイフを構えようとするが、左手が全く力が入っていないかのようにダランと垂れ下がり、その場に崩れ落ちる。

大きい方も同様の効果があったようで、その場に座り込んでいた。

 

「まずはお前からだ!食らえ!」

 

衛星が無い鉄球を掴み、小さい方に向けて大きく振りかぶった。

 

「ランブル・デトネイター!」

「なに!?」

 

すると小さい方がそう叫び、同時に床に落ちていたナイフが奇妙な模様を描いて輝き始める。

 

(ま、マズイ!このナイフ、何かがやばい!)

 

投げるのをいったん中断し、アンダー・ワールドをナイフの落ちている方向に出してガードさせながら慣性に逆らって真後ろに飛ぶ。

 

「かかったな!くらえ!」パチンッ

 

---ドドドドドォ――ンッ!

 

「ぐおおおおお!?」

 

バックステップで少しだけ距離が稼げた直後、床に落ちていたナイフが小さい方の指パッチンとともに爆発を起こした。

俺は爆風と熱に思わず声を上げ、天井目掛けて思いっきり斜め上に吹っ飛ばされる。

 

「IS!ライドインパルス!」

「!がッ!?」

 

しかも攻撃はそれだけでは終わらなかった。

天井にぶつかり、そのまま床に落ちるだけかと思ったら今度は大きい方の女の声がし、俺はアンダー・ワールドを声の聞こえた方向に出した。

すると俺は脇腹の方に強い衝撃を受けて、今度は真横に吹っ飛ばされた。そしてそのまま、俺は研究室の壁に強くぶち当たった後、重力に従って床に落ちる。

 

「・・・~~~!~~~~ッ!!イッテェ~~~~~~!」

 

落ちて数瞬経ったと思ったころに、体に痛みが走る。

 

(あ、危なかった・・・特にあの爆発、防御が遅れてたら今ほど余裕は持てなかった・・・)

 

そんなことを考えながら、俺は目を開けて手元に視線を移す。

 

---シルシルシルシル・・・

 

其処にはさっき俺の投げようとした鉄球が回っており、その回転の軸から全身にかけて螺旋状のもようが俺の体に出来ていた。

 

「『皮膚の硬化』・・・間に合ってよかったぜ・・・」

 

ある程度痛みが治まってきたあたりで、体勢を立て直して立ち上がる。

脇腹のダメージも、アンダー・ワールドの防御と皮膚の硬化がちゃんと効いていたようで感じた衝撃ほどのダメージはなかった。

とは言えやはり、事前に戦闘用のディスクは装備しておくべきだったと今更ながらに思う・・・まあもうじき決着はつくがな。

 

「な!?馬鹿な!威力が落ちていたとはいえあれをもろに食らって立ち上がるのか!?」

 

大きい方は俺が立ち上ったことに驚く。

その右手と右足にはどういう訳か紫色に輝く光刃の様なものがあり、俺がさっき爆発を受けたあたりに立っていた。

さっきちらっとだけ見えたこいつの踏み込みの動作や今のあいつの立ち位置などから考えると、おそらくあの光刃と高速移動がこいつの能力なのだろう。

 

「さて、次はどうする?出来ればその効果が切れるまでに自主的に降参してほしいんだが?今ならまだそれほど痛い目を見ずに済むぞ・・・」

「「・・・・・・・・」」

 

俺の問いかけに二人とも黙り込む。

その姿からは、未だ諦めを感じさせないほどの気迫が目に見えるように感じられた。

 

「だんまりか・・・ジャッ!」

 

---ドシュドシュッ

 

取り敢えず邪魔されても困るから、二人の鳩尾目掛けて衛星が無い方の手球を投げつける。

 

「{ドゴォッ}ぐは!」

「チッ、ライd{ドギュゥンッ}がは!?{ボゴォッ}ぐは!?」

 

小さい方はさすがに右足だけでは避けきれずに当たり、大きい方はなんとか跳んで避けようとしたところを俺の右斜めから飛んできたビームに撃たれて硬直、すぐさま鉄球が当たってその場に倒れ伏した。

 

「{パシパシッ}ようやく復活したのか。」

 

鉄球は二人の腹から離れると、毎度お馴染みの螺旋模様が回っていて二人の動きを封じている。

それを確認しながら、俺はビームの飛んできた方向を見る。

そこには疲労を見せながらも、ビームライフルを構えて立っている矢島の姿があった。

 

「ふう、やっとまともに撃てるくらいにはなってきた・・・というか最近情けないとこばっかさらしてる気がするのは俺だけ?」

「まあ無事に終わった事だし、次は何とかできるようにすればいいさ。」

「情けないのは否定してくれないんですね分かります(´・ω・`)」

 

いやぁ~だって・・・ねぇ?役に立ったのって実質今の一撃くらいだし・・・

 

「く、この{ガッ}な!?」

「トーレ!何をしているんだ!」

「わ、分からん!勝手に体が動くんだ!それにブレードも戻せない!」

 

そんなことをしていると、大きい方・・・トーレと呼ばれた女が立ち上がろうとした瞬間、回転の影響で首に自分の腕の光刃を突きつけ、声をあげながらまた倒れた。

小さい方も驚きながら立ち上がろうとするが、全くそれができずに倒れたままとなっている。

 

「とりあえずこれで一安心か・・・けどこれからどうする?ここの場所は分かったし転移魔法だけでちきゅ・・・もとい元の世界に戻れないこともないけどよ・・・」

「そうだな・・・よし、一先ず書類の整理だけでも済ませておこう。お前は計画書を引き続きまとめといてくれ。俺はその間にこいつらから引き出せるだけ情報を引き出すから。」

「OK、頼んだぞ。」

「そっちもな。」

 

バリアジャケットを解除して本棚へ向かう矢島を見て、俺も敵二人に見えない様に、後頭部から新たに三枚ディスクを入れて装備する。

 

「ふん、何をするつもりかは知らんがお前たちに話すことは何もないぞ!」

 

未だ抵抗できない状態だというのに、トーレと呼ばれていた女は実に見当違いなことを言い出す。

 

「何勘違いしてんだ。俺はお前らから情報を『引き出す』とはいったが『聞き出す』とは一言も言ってないぞ。」

「・・・どういう意味だ?」

「答える必要はない・・・『ヘブンズ・ドアー』!」ズギュウゥーz_ンッ

 

---ドオォ――z__ンッ

 

ヘブンズ・ドアーのスタンド像が二人の顔に触れ、触った部分があっという間に『本』のようになる。

同時に本人たちは気絶していて、実に見やすい状態になった。

 

「さて、それじゃああんたたちの記憶を読ませてもらうぞ。」

 

まず初めにトーレと呼ばれていた方の女の記事を手にとり、その内容に目を通し始める。

 

 

(えっと、まずコイツの名前は『トーレ』、天才科学者であり同時に管理局に一級指名手配されている『ジェイル・スカリエッティ』の手によって三番目に開発、および完成した『戦闘機人』。彼女自身の特殊技能『インヒューレントスキル(通称IS)』は『ライドインパルス』、内容は機動力の全面強化で彼女自身の武器である両腕両足に装備されたエネルギー翼『インパルスブレード』はそれが発動している状態の物で武器としても十分使える、か。ここらへんはこいつ自身のプロフィールだな。)

 

プライベートでの知られたくなさそうな部分(かなり少なかった)以外を一通り読み終え、次の記事をめくる。

 

(なるほど、偶々ここの近くに研究所があって俺達がここにきたのを『管理局が自分たちの居場所を突き止めた』と勘違いしたわけか。)

 

限度はあるが勘違いならまあ仕方ないと思い、続けて記事を読んでいく。

他には、自分を作った科学者の性格、隣にいる小さい方の性格や能力、他にも同じような奴がいることや、こいつ自信が今までやってきたことが文面から読み取れた。

 

(・・・なるほど、一応指名手配されるだけのことはやってきたわけか・・・しかし・・・)

 

色々と読み進めていくうちに、俺はあることを見出す。

 

(こいつらの今までの犯罪行為・・・ほぼ全てが『管理局の上層部』の命令によるほぼ強制的なものと書かれている。ヘブンズ・ドアーで本にした者の記憶に嘘偽りはありえないし、ひょっとして管理局ってのは俺が考えてたよりもよっぽどブラックな組織ってことなのだろうか・・・)

 

より一層管理局への疑心を深めている最中、俺はある記述に目が止まった。

 

『ドクターの自由は・・・事実上管理局の掌にある状態だ。ドクターの体内には、生まれる以前の状態から非常に厄介な枷が取り付けられている。これは旧暦の時代、アルハザード時代に作られたという特殊な術式とナノマシーンを組み合わせた代物らしく、組み込まれた者は時間とともに組み込んだ者の操り人形となる。また枷を組み込んだ者は組み込まれた者がどこにいようと確実に始末できるそうだ。』

 

「・・・これは・・・」

 

俺は多少驚きながらも、その先の記述に目を通していく。

 

『なおこの枷はナノマシーンと術式がお互いに見張り合う形式となっており、ほんの誤差程度ならすぐにでも修復され、大きな改変がなされようものなら即座にプログラムが起動して本人を殺す。この枷はもはや、ドクター自身にもどうにもできないそうだ。』

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

『自分の無力さが死ぬほど腹立たしい。ドクターは確かにいろいろおかしい所はあるものの本来とても思慮深く優しい方だ・・・なのに、あの忌まわしい枷のせいで管理局のマッチポンプに付き合わなくてはならない上に時間とともにだんだんあの人があの人でなくなってしまう。何時もそれだけが歯がゆくて仕方がない・・・』

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

『このままではそう遠くないうちに、管理局に使い潰され私たちは駒として捨てられるかもしれない・・・だが私達もただで終わるつもりはない。いつか必ず、我々はドクターを救ってみせる。たとえどんな手を使うことになったとしても・・・』

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・チッ」

 

何というか・・・胸糞悪いものを見ちまったな・・・・・というか・・・

 

(・・・はァ、それにしても油断してた・・・まさかこんなところで管理局との関わりフラグがあったとは・・・本当に思ってたよりもブラックなとこじゃねえか管理局・・・)

 

襲ってきた二人の記憶を読み終わった俺は、その場で何とも言いようのない感情を抱いてしまう。

・・・とりあえず今の所は、こいつらの記憶を書き換えさせてもらおうとしよう。

掘り起こした記録が勝手にばらしたせいで、嫌なことにアンダー・ワールドの能力が具体的にこいつらにばれてやがる。

幸いこいつらは、何か特殊な結界を作り出す能力という認識を持っていたからそれをうまく利用させてもらうとしよう。

 

 

(これで良し・・・とりあえず落ち着け、まず第一目標は証拠の確保、その上でどう動くかだ。バイツァ・ダストは・・・あまり意味がないな。こいつらの記憶には俺たちがこの世界に踏み込んだあたりからこいつらの姉がすでに気付いていたとあった。多分この世界に入る時の空間の歪みそのものを観測していたのだろう。そして・・・例え時間を巻き戻したとしてもここに踏み込むことには変わりない・・・というかその点を除いてよしんば使ったとしても、今まさに作業してる矢島にこんな提案したら思いっきり殴られるだけだし、それにこれを放置していくのも気が引ける。)

 

かなり胸糞悪く、また納得のいかない事情を目の当たりにしてしまったが、それと同時にはっきりしたこともある。

 

俺は『こんなことをする連中』のもとでは絶対に働きたくはない、ということを。

 

けど本当にどうする?一番いいのはこいつらと和解することだが俺のことまで黙ったままにさせるとなるとかなり友好な関係にならないといけないし・・・第一そうなるにはこいつらを作ったドクターとやらに使われている枷が思いっきり邪魔過ぎる。

最終的に上層部の人形になられたら黙っていられるわけもないし、かといってどうにかするにしても・・・記事を見る限り、この枷とやらはもはや病気や身体異常というよりむしろ呪いに近く、『直す』というよりも『取り外す』とか『解除する』とかそういう感じになっている。

 

「ふう、思ったよりも手早くかたずけられたな。非常事態での集中力も結構バカにできないかもな。まあぶっちゃけデバイスの処理機能とシミュレーション能力をフル稼働にしただけだけど・・・おーい梶原、そっちはなんかわかったかー?」

「まいったな・・・マジでどうするよ・・・」

「え?」

 

特に手が思いつくこともなく、そのまま熟考を続ける。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「おーいどうした?また問題でも発生したのか。」

「・・・・・・・・・?何か言ったか?というかもう作業が終わってる?」

 

ふと声が聞こえたからした方を見ると、矢島がいつの間にか隣に立っていた。

よく見ると頼んだ作業は何時の間にか終了していたようだ。

 

「ん、まあな。というか返事もできないくらい没頭してたのかよ。」

「ああ、返事できなくて悪かったな・・・」

「いやまあそれは良いんだけどよ・・・これからマジでどうするんだ?ちなみに今更バイツァを使うとかいったら俺は本気の左をお前に使う。」

「デスヨネーw」

 

こいつ確か投影魔術があったはずだから、神様印のシミュレーション能力と併用して船の再現ぐらいは簡単にやってのけそうだしな。

それを考えるとやっぱり、巻き戻しの提案は余計に無理か。

 

「ちょっと待ってくれ、今考えてる。」

「そうかい、まあ早いとこまとめてくれよ。さもないとまた変なのが来るだろうし。」

「わかってるよ。」

 

倒れていた椅子を起こし、それに座る矢島を尻目に俺は再びやることを考え始める。

 

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・待てよ、『呪い』・・・?)

 

かなりの間考え続けた時、ふとさっきの自分の言葉に引っかかるものを感じる。

 

(呪い、呪い・・・なんだろう、何かが引っ掛かる・・・・・・・・・・・・・・・・あ!)

 

そうだ!確かこんな感じの展開がジョジョリオンであった!そしてその時確か・・・

 

 

 

(・・・・・・・・・・・・・・・よし、これならいける!あとは相手を信用に足るかどうか見極める必要があるがそこも問題はない!いける、いけるぞ!)

 

まずはハーミット・パープルを装備し、こいつらの研究所の場所をPCに地図として念写して割り出す。

そしてここからの距離と移動時間、こいつらの生みの親であるジェイル・スカリエッティと残りの部下たちの性格や、こいつらの持つ印象(出来るだけ誇張を除いた範囲)などから会うまでにかかりそうな時間、会った際の会話および結論に至るまでの時間のあたりをつけていく。

 

「(スッゲェ、俺なら脳筋思考で取り敢えず撃滅でおk?とかになるのにコイツここまで色んな事考えるんだな・・・その分徒労になったらマジでシャレにならんけど今のこいつなら何でもこなしそうな気がしてならないし・・・ある意味尊敬するぞ。)」

 

矢島が何か俺の顔をまじまじと見ているが、今はそれどころではない。

理想の未来へのロジックを、徐々に俺は組み上げていく。

 

そして・・・

 

(・・・・よし!この通り行けば十分バイツァ・ダストでのリカバリーが効く範囲内で動ける!矢島もこれなら文句は言ってこないだろう。問題は奴さん等の説得だが・・・どうにかするほかないな。)

 

ロジックが最後まで組み上がったと同時に、俺はヘブンズ・ドアーとアンダー・ワールドを解除する。

 

「おうッ!?!部屋がいつの間にかただの空洞になった?!・・・というか何か変なのがあるぞ?ロボットかこれ?」

 

驚く矢島の方を見ると、確かに矢島の言うロボットがあり、何やらこっちを見ている。

が、少なくとも今のプランでそんなものを気にする必要はないし、一先ず他のディスクに切り替えてすぐさまその一つを発動する。

 

「矢島、事情は向かいながら追って説明させてもらうぜ。それと悪いがもう少し驚いてもらうぞ・・・」

 

(『マン・イン・ザ・ミラー』!俺や矢島、それと不本意だがこの二人が入ることを『許可』しろ!無論デバイスなども『許可』するゥゥゥ――――ッ!!)

 

「・・・ん?え、ちょ、ま、アッ――――――――――!!」

 

心の中で呼び出したマン・イン・ザ・ミラーがそれに応じ、懐から出した鏡へと俺と矢島を含めた四人を引き摺り込んでいった。

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

泰寛たちが鏡の世界に入り、しばらく時間が経った頃・・・

 

「ウーノ、あれから何か変わったことはあるかい?」

 

例の研究所にて、ドクターと呼ばれていた男・・・ジェイル・スカリエッティは椅子に腰かけ、心配している様子でウーノに話しかける。

 

「いいえ、未だに何も・・・相変わらず次元を超えた反応はありませんし、この世界から逃げ出せたとは思えませんがかといって手がかりとなるものもありませんでした。唯一、ガジェットが残した映像を除いては・・・」

「ふむ、あれはなかなか興味深いものだったね。確かこれだったかな?」

 

男の前に画像が現れる。

そこに映っていたのは、トーレとチンクの前に、泰寛がアンダー・ワールドで掘り起こした施設でガジェットドローンが撮影した人や光景、そこにあった数多くの資料であった。

 

「この計画書・・・調べた結果、二十年以上前に行われていたヒュードラの開発に使われていた物だそうです。また、中で見つけられた職員たちも皆そこで働いていた者たちらしいのですが・・・後から調べてもあの周囲にそんなものは残骸はおろか破片すら見つからず、また確認できた職員は少なくとも駆動炉の暴走に巻き込まれて死亡しており、本来なら生きている訳が無いそうです。」

 

「ふむ、おそらくだがレアスキルの一種だろうね。内容は過去にあったものや出来事を限定的に現実に再現する能力といったところか・・・しかしまさかあの二人が捕まってしまうとは思わなかったよ。」

 

まったく酷い痛手だ、とスカリエッティは苦い表情でぼやく。

 

「それにどうやら私たちは思い違いをしていたようだよ、ウーノ。目的は未だにわからないが少なくとも彼らは管理局の手の者じゃない。」

「確かに、この事件も本来は管理局の闇の一つですからね。管理局の者ならわざわざこの事件を蒸し返すようなことは出来ないでしょう。」

「そういうことだ。しかし・・・本当にまいった。なんとか彼らが目的を果たしてしまう前に最低でもチンクとトーレ(娘たち)だけでもなんとか返してもらいたいが・・・」

「難しいでしょうね。そもそも粗相をしでかしたのは完全にこっちですし、最後の画像からして彼らも自己防衛のために最低限の対応をしただけでしょう。もっともその後に関しては分かりませんが。」

「なるようになるしかない、か。ウーノ、引き続きクアットロと一緒に捜索を続けてくれ。それと私も捜索に加わることにするよ。」

「了解。」

 

そう言ってウーノは自分の前に出ているディスプレイを見ながら、手元に現れたパイプオルガンの鍵盤ような物を操作し手作業を開始した。

 

(トーレ、チンク、無事でいてくれよ。)

 

スカリエッティはそう考えながら立ち上がり、自分もホログラムディスプレイを出して作業を開始する。

 

 

---キラッキラッ

 

(・・・ん?)

 

スカリエッティが画面を操作しようとした時、視界の端で何かがきらめく。

彼はそれに気が付き、ふとその方向を見た。

 

「これは・・・鏡?なぜこんなところに?」

 

そこにあったのは、一枚の鏡だった。

まるで初めからそこにあったかのように、一枚の鏡がスカリエッティの座っていた椅子の上に置かれていたのだ。

そして・・・

 

「なに!?これは!?」

 

その鏡に映っていた物を見て彼は思わず驚愕し、自分の後ろを振り返って見た。

 

「・・・気のせいか?今あの二人が映っていたように見えたが・・・」

「どうかされましたか?」

「あ、いいや、なんでもないんだ。続けてくれたまえ。」

「?かしこまりました。」

 

ウーノは怪訝に思いながらも自分の作業に戻る。

スカリエッティはそれを確認して自分の目をこすって再度椅子を見る。

其処にはもはや、彼が見ていた鏡すらも置かれてはいなかった。

 

「・・・気のせいだったのか?」

 

彼は幻覚でも見たのかと思い、椅子に背を向けてその場から離れようとした・・・その時・・・

 

「いいや、気のせいじゃあないよ。少なくとも、あんたが見ていたものはね・・・」

「!?だれかな。」

 

自分の背後から聞こえた効き慣れない声に、すぐさま反応して後ろへと振り向く。

ウーノもそれに反応し、作業を中断して声の聞こえた方を見た。

 

---カツーン・・・カツーン・・・カツーン・・・

 

そして・・・椅子の後ろから声の主が、ゆっくりと歩いて現れた。

一体どこから現れたのか・・・何時からそこにいたのか・・・それを理解できず、驚きを隠せない二人を前に、その声の主は口を開く。

 

 

「どうも、ジェイル・スカリエッティさん。今回はあんたに話があってきた。」

 

 

 

 

 


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