デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録 作:enigma
五分前・・・
Side:梶原 泰寛
『・・・・・・・・・・とまあここまでが俺の調べたこいつらの情報だ。ドゥー・ユー・アンダスタンド?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・マジで?」
「マジで。」
アンダー・ワールドを解除し、マン・イン・ザ・ミラーの鏡の世界からジェイル・スカリエッティのいる研究所を目指して約十五分・・・俺達はついに、その入り口前まで来ていた。
ちなみにその間に、矢島には俺が知った情報をほぼすべて教えておいた。
もっとも、管理局のブラックさが如実に表れている部分を聞き始めたあたりからずっと( ゚Д゚)になっていて、まるっきり心ここに在らずといった様子だったが。
「・・・その調べた奴が狂信的な下っ端だったとかじゃなくて?」
「ないな。コイツの扱いはどう考えても幹部クラスだし、性格はチンクの方はまあクールビューティで、トーレの方はなんというか・・・武人ッ!て感じだったよ。少なくとも盲信とは程遠い。」
「・・・嘘だろ!嘘だと言ってくれよバァーニィィィ――ッ!!」
「けど残念!これが現実・・・!これが現実!」
「何・・・だと・・・!」
それと今更だが、今の彼女たちは二人ともマン・イン・ザ・ミラーの脇に抱えられて中を浮いている。
こういっちゃあなんだが、機械を埋め込んでいるだけあるのかなかなか重い。
ちなみにまさかあの見た目で、俺達より年下だとは思わなかったと少し驚きもした・・・特にトーレという女の方は。
「まさかそんなにひどいのがトップだったなんて・・・こんなんじゃオレ、管理局に入りたくなくなっちまうよ。」
「霧が出てきたな(^^;) それじゃあとっとと行くぞ。時間は待ってくれないんだから。」
「・・・おう・・・」
「おいおい元気出せよ。これが成功したら壊れた船の修理位しt「シャア行くぞオラァッ!!」って変わり身早ッ!?!やれやれ・・・」
---カツカツカツカツ・・・
『・・・・・・・・・・本当ニヨロシインデスネ?』
(なにがだ?)
『・・・私相手ニトボケタッテ意味無イデショウニ。少ナクトモアナタハ・・・アノ体験ヲ話スコトダケハ、例エ相手ガ血ヲ分ケタ肉親デアロウト、親友デアロウト異様ナマデニ毛嫌イシテイラッシャル。信ジラレルワケモナイト、知ッタトコロデ何ニモナラナイト・・・精神ノ現身デアル私ノ姿ニマデハッキリト顕レルホドニ、アナタハアノ過去ヘノ理解ヲ欲シテハイナイ・・・ヒョットシタラ、矢島ニハ何カ感ヅカレルカモシレマセンガ本当ニヨロシイノデスネ?』
(・・・ああ、いいんだ・・・確かにこれを見過ごせば俺の平穏は約束されるだろうよ。けど俺の人生は、おそらくだが普通の人間のようには終われない。どう足掻いたところで、あの神が言ったような原因が俺自身から無くならない限り輪廻の輪には入れないだろう。そうすると俺は・・・多分自分で自分を忘れない限りほぼ永久的に俺として・・・『梶原 泰寛』としての道のりを歩んでいくことになる。今のところそんなことする意味もないからさ、いっそのこと明日の自分にぶん殴られない様な生き方をする方がいい。それに・・・)
『ソレニ?』
(平穏は大切だし重要だけど・・・それ以上に納得するということの大切さは身に染みて知っているし、俺自身も納得して終わりたいからさ、必要なこととして割り切るつもりだよ。・・・・・・・・・・{ボソッ}まあ限りなく暈すけど・・・)
『結局平常運転ジャナイデスカァー!ヤダー!!・・・・・・マ、私ハドコマデモツイテイキマスヨ。』
(ありがとさん、これからもよろしく。)
『イエイエ・・・』
俺は今、椅子の後ろに置いた鏡から現実世界に戻り、驚いた様子の白衣を着た男・・・ジェイル・スカリエッティと対面していた。
ちなみに出てくる前に鏡を椅子において、姿だけ見せたのは単なる茶目っ気なのでお気にナサラズ。
「フム・・・私に話しかい?だがその前に、私も君に聞きたいことがあるんだが・・・」
「それはあんたの『娘達』の事か?それなら安心するといい、今返すからな。」
「何?」
怪訝な表情を浮かべる二人を尻目に、マン・イン・ザ・ミラーの能力を解除する。
「うお!?またこれか!」
すると俺と椅子を挟む位置に矢島が出現し・・・
「え!?トーレ!チンク!」
その足元に、未だに気絶している戦闘機人の二人が横たわったまま現れた。
・・・既にヘブンズ・ドアーの『安全装置(セーフティロック)』は外してあるのによく寝てるな。
「これは驚いたね・・・これも君の能力かい?」
「黙秘権を主張させてもらう!・・・まあというわけで、特に何もしてないんでどうぞご自由に。」
「フム・・・分かった。其処の君、少しそこから離れてもらえるかな?」
「うん?まあいいですけど・・・」
矢島が二人が寝ている場所から離れてこちらに来ると、スカリエッティは手元に洗われたホログラムディスプレイを操作する。
すると・・・
---ウィ―――ンッ!ガシャンガシャンッ!
「「!?」」
数秒後に近くの壁が突如として開き、そこから二体の奇妙なロボットが現れた。
「二人を調整用の部屋まで連れて行くように。」
---ピピピッ ウィ――ン ガシャンガシャンガシャンガシャン・・・・・・・・・
ロボットはスカリエッティの命令を了承し、床で寝ている二人を連れて入ってきた壁の向こうに消えて行った。
「さて、私に話があるんだったね。」
「ああ、まあぶっちゃけて言うと要求に近いんだが・・・」
少し間を開け、ここに来る前に装備した『アトゥム神』を隣に出して言う。
「単刀直入に言うとだ、管理局がアンタにとりつけた『枷』を外す代わりに俺達のことと、この世界で俺達がやることを誰にも知らせないでもらいたい。無論この要求はアンタの部下一同を含めてのものだ。」
「!?何故そのことを「落ち着きたまえ、ウーノ。」・・・はい。」
ウーノという女性をいさめ、スカリエッティは話を続ける。
「ふむ・・・どうしてそのことを知っているかはともかくとして、君たちはこの枷を外す方法に心当たりが有るのかい?」
「なけりゃ最初からこんなことは言わないさ。というかアンタのOKがあれば今すぐにでも出来る・・・で、どうするね?このまま犯す意味も価値もない罪を管理局に背負わされ続ける道を取るか、それとも今ここで自由を手にし、自分の意志で自分の未来を選択する道を取るか・・・・決めるのはアンタだ。」
「・・・・・少し待ってもらえるかい?」
「どうぞ。質問があれば答えられる範囲で答えさせてもらう。」
俺がそう言うと、スカリエッティは俺と矢島を見極めるようにじっと見る。
「・・・・・・・・其処の君、ええと・・・」
「ん?俺か?ちなみに名前は矢島 敬一郎だ。」
「そうか・・・では矢島君、君たちはどうやって私たちのことを知ったんだい?私の娘たちを打ち負かすほどの実力者で、尚且つ次元世界を渡れるほどの人材なら管理局の目に止まらないはずがないんだが・・・」
「ああ、そのことか・・・最近まで俺達は次元世界の存在そのものを知らなかったんだよ。地球と呼ばれる世界出身と言えば調べればわかると思うぞ。」
「『地球』?確か第97管理外世界の名前がそうだったと・・・待てよ?ウーノ、最近のロストギア関連の事件でその名前が無かったかい?」
「少々お待ちを。」
ウーノは手元のコンソールを操作し、いくつかの画像とデータを表示する。
「・・・・・・ありました。少し前、このあたりで遺跡発掘を行っていたスクライア族の輸送船が事故に会い、結果的に地球の海鳴市と呼ばれる街に21個の次元干渉型ロストロギア、『ジュエルシード』がばら撒かれたそうです。その後、報告では現地の協力者3名とスクライア族の少年、到着した管理局の職員たちによって無事回収されたとされています。」
三人・・・矢島になのは、界統か。ククク、いいぞぉ・・・間違いなくかけておいた『保険』が効いている・・・
「ふむ、となるとこの時に次元世界というものを知ったということか。」
「そういうことだ。ちなみにあんたのことだけど・・・ぶっちゃけ知ったのはついさっきなんだよ。攻めてきたあの二人を迎撃した後こいつが情報を集めてアンタらの事情を把握・・・その後こいつが解除できるかもって言ってそのままここまで来たんだ。」
矢島がここに来るまでの事情を細かく説明し続ける。
「なるほど、事情は大体わかったよ。それじゃあ条件を飲むから頼んでもいいかい?」
「(嘘は・・・ついていないな・・・)グッド!!それじゃあさっそく準備を始めよう。」
「ドクター!?」
「いいんだ、ウーノ。これ以上皆に罪を負わせるわけにはいかない。それに・・・私にはこの子たちが嘘をついているとは思えないよ。」
「ッ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・畏まりました。」
ウーノは長い間を置いた後、スカリエッティの決断に渋々とだが納得してくれたようだ。
「それじゃあ少し待っててくれ。今必要な物を取り出してくる。」
二人にそう告げ、俺はアライブが口にくわえている鍵に触り、倉庫の中に入り込む。
(さて、コレとコレと・・・アレはどこにしまったっけな・・・)
「・・・・・・よし、これでそろったな。」
十数秒後、用意した三つの物・・・『タスクact3のディスク』『タスクact4のディスク』、『中身が入ったホルマジオのビン』『完成された聖人の遺体』机の上に並べる。
(しかし、まさかこの二つまで使う日がまた来るとは思わなかったな。やっぱ人生ってのは分からないものだ。)
並べたものを見て思わず感慨に耽ってしまう。
確かこれを手に入れたのって、
懐かしいなぁ~、一巡後の世界から帰った後何時の間にか酒場にいたスティーブン・スティールに声をかけて、それからS・B・Rレース(という名前のダンジョン)をまたしてもピザ一枚だけの状態から支給された馬で駆け回って・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・そっから・・・なにがあったっけな~・・・確かスタンドディスクが射撃系以外ほとんど手に入らなかったり、水が全く手に入らなくて水分不足で死んだり・・・いきなりサボテンの棘が飛んできたり・・・並行世界の自分と衝突して消滅したり・・・掠り傷が心臓に達して死んだり・・・act4が使えないと大統領倒せなくて絶対に先に進めなかったり・・・ようやく完成できるかと思ったら馬に蹴られた時怪我しすぎててそのまま死んだり・・・完全消滅しかけたり・・・
『何時マデソコニイルンデスカ?皆待ッテマスヨ?』
「ハッ!?」
どうやらアライブの声で現実に引き戻されたようだ。
「・・・・・やめよ、良かったことの方は質は良くても数が圧倒的に少なすぎて思い出すだけ鬱になるわ。」
精神衛生の為にも、最後に思い出してしまったact4との逃走劇を記憶の隅に追いやってディスクを頭に差し込む。
(・・・今思ったけど、俺今の状態でこれを撃てるんだろうか?)
嫌なことを思い出してしまったためか、ふと、急に不安な点が一つだけ頭に思い浮かんでしまう。
俺が普段使う、さっき装備したact4を含めたスタンドディスクは、実際は本来の物とは少し違う。
もともと内蔵されたエネルギーを元に能力を使ったり、漫画本でエネルギーを蓄積してパワーアップしたり、『ウェザー・リポート』と『へヴィー・ウェザー』のようなもともと一つのスタンドであるにも拘らず、それぞれが分離して存在しているものもあったりとオリジナルとは結構違った特性を持っているのである。(なお、さっき言った別れて存在するスタンドは、一部を除いて合成することで一つにまとめ直せる。タスクact4はまとめ直せないものの一つだ。あまりにも性質が突出しすぎているからか?)
そしてこれらのスタンドディスクなのだが・・・無論訓練を積んで理解をちゃんと深めた状態という前提はあるが、実は本来特殊な条件がいる物でも必要なスタンドエネルギーだけつぎ込む事が出来れば本来の力を引き出せるという特性もある。(ひょっとしたら、もともとそれを使うための条件がある程度クリアーされた状態でディスク化しているのかもしれない。メイド・イン・ヘブンとか、タスクのバリエーションとか・・・)
act4ももちろん、その例から漏れない。本来は特殊な条件下でのみ使えるがここのディスクとしての場合は上記の特性にあてはまる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、燃費は他のディスクの比じゃないけどな。俺自身のレクイエムを使えば話は別だが、馬がいない+素の状態で本来の力を引き出そうものならへヴィー・ウェザーの完全制御と同じくらいかそれ以上に持っていかれるほどだ。
そして・・・現状馬は無し、長い日常生活で日和っていたせいか全盛期にはまだまだ遠く、多少とは言え消耗もしている。正直なところ、一発撃つことが出来ればいい方だと思う。
「・・・・・・・・気にしてる場合じゃないか。スペアもあるんだから最悪ディスクのエネルギー使って撃てばいいだけだし、まあどうってことはないだろう。」
『・・・チュミミ~~~~ン・・・』
「・・・あと味方だからいいけど、敵だった時にこれ聞くと心臓止まりそうになったな・・・どうでもいいか・・・」
隣に出た、俺の知る限り最恐の一つであるスタンドのビジョンを確認しながらビンと遺体を持って元の世界に出る。
「おや、帰ってきたようだね・・・なんだいそれは?」
「アンタの枷を外す手段の一つだ。不安なら説明をするけど?」
「フム・・・それじゃあ聞かせてもらえるかい?さすがに何の説明もなしというとウーノ達が心配するからね。」
「ドクター・・・」
「・・・その言い方だとアンタは心配してないように聞こえるんだが・・・」
「なに、これでも人を見る目は確かなつもりなんでね。まあ欲を言うと私も一研究者としてすごく興味があるからぜひとも聞かせてほしいというのもある。」
ハッハッハッと清々しく笑うスカリエッティに、若干毒気を抜かれたような感じになりながら苦笑してしまう。
「わかった、それじゃあ説明しよう。まずこの遺体についてなんだが・・・これには持つ者にとって幸福、有益といったプラスになる要素を引き寄せると同時に不幸、害といったマイナスの要素をこの世のどこかに吹き飛ばす力が備わっている。今回俺が使う策は、この遺体を主軸にしてあんたにかかっている『枷』という『不幸』を別の所に吹き飛ばすというものだ。」
「・・・なんだか急に胡散臭い話になってきてないかしら?」
俺の説明にウーノが訝しむ様な表情を見せ、俺はそれに苦笑しながら答える。
「言いたいことは分かるよ。けどこの遺体のパワーは間違いなく本物だ。厄介になってた俺が一番よく知っている。(良い意味でも悪い意味でもな・・・)」
「なるほどね、それじゃあ続きを頼むよ。」
「ああ、そしてここからが重要なんだが・・・この遺体が幸福を引き寄せたり不幸を吹き飛ばす際、必ずどこかで誰かがその分の不幸を背負わなくちゃならないという特徴があるんだ。」
少し言葉を区切り、俺はホルマジオのビンの蓋を開けて入っているものを一つだけ床に落とす。
その次の瞬間・・・
「え!?」
「「!?」」
中にはいっていた物・・・汚らしい姿の浮浪者は一瞬で元の大きさに戻った。
それを見た矢島、スカリエッティ、ウーノは驚愕する。
「ぐ・・・この野郎・・・ぶっ殺してやる・・・」
「ほざいていろ、カスが・・・というわけでその点を、今回はコイツに補ってもらう必要がある{カツカツカツ ガシィッ!}・・・なんだ矢島、まだ説明の途中だぞ。」
「・・・んなこたぁどうでもいいんだよ・・・梶原ッ!見損なったぞテメェ!散々吹かしといてまさか浮浪者を身代りに立てようなんてッ!!」
事情を間違って理解したらしい矢島が、何を勘違いしたか俺の襟首を掴み上げてそう怒鳴り立てる。
「・・・・・・」
---ガシッ ギギギギ・・・
「ぐっ?!ううう・・・」
俺は矢島の手を掴み、無理やり襟首から離させる。
「落ち着けって言ってんだよ、矢島。俺だって本物を身代りにするわけないだろうが。今からちゃんと説明するから黙って聞いてろ。」
「くっ・・・・・・・{バッ}分かったよ・・・」
まだ納得はしていないようだが、一先ず落ち着いた矢島は渋々俺から距離を取る。
「よし。それじゃあそこの二人とも、大方矢島と同じことを考えているかもしれないがとりあえず聞いてもらうぞ。」
「ああ、分かった。それで、そこの彼は一体何者なんだい?」
「そうだな・・・とりあえず論より証拠ということで・・・」
俺は隣で座っている浮浪者に向き直り・・・
「ジャアッ!」
---ゴシャァ―――ッ
「「「・・・は?」」」
ホルスターに収まっている鉄球を取り出して力いっぱいその頭に投げつける。
浮浪者はそれが致命傷だったようで、頭部から明らかに出てはいけないものを出してその場に倒れ伏す。
「お、おい梶原!お前さっきから何をして「いいから見ていろ!」・・・・・・・・・な!?」
しばらくすると浮浪者の体がだんだんと薄くなっていき・・・・・最後には最初からこの世にいなかったかのように消え去ってしまった。
それを見た全員が驚愕する中、俺はホルマジオのビンからもう一体の浮浪者を出して淡々と説明を再開する。
「・・・非常に・・・非常にだッ!!言いたくないことではあるがッ!!・・・『納得』してもらうためだ。少しだけ話すとしよう・・・・・・・・・・・俺はかつて・・・ある事情が原因で、違う世界へと飛ばされたことがある。其処であった『敵』ともいえる存在の一例がこいつらだ。こいつらは・・・極論で言うと人間じゃない。もっというと、魔導師が使う使い魔とかそう言う類のものですらない。
どこからやってくるのか、どういった目的で存在するのか、長年携わっていて未だにはっきりと、具体的に言えたものじゃないが・・・ただ言えることがあるとすれば、こいつらはそのとある世界に存在し、一部の例外を除いて其処に踏み込んだものを確実に殺しにかかってくるということと、同じ姿をしたものが無限に存在するということ、それから倒すと今の様に何事もなく消えてなくなるということだ。
さっきの奴やこいつだって、俺が返り討ちにして何かに使えるか検証するために制限をつけてこの中に封じ込めていただけで、もともとその世界でただ探索するために踏み込んだ俺を容赦なく殺しにかかってきたやつらだ。制限を外せばすぐにでも生きている者たちを襲うだろう。だからはっきり言って慈悲は要らん・・・まあ実際にその状況を体験しない限り俺の言っている意味を正しく理解できるとは思えないけどな。」
「「・・・・・・・・・・・・・・・」」
「クックック、実に興味深い話だ。私もそこに行くことは可能かね?」
「さあな、それは分からない。俺もどういう理由が合ってあそこにたどり着けたかは結局、皆目見当もつかなかったからな。今でもそうだ。」
「そうか、それは実に残念だ。」
本当に残念そうにしているスカリエッティとさっきから驚きっぱなしの矢島とウーノを見ながら、再度話を続けて行く。
「・・・話を元に戻すぞ。次にこの方法だが・・・もう一つ必要な要素がある。」
俺は装備しているタスクのact3の方を使い、右手の人差し指の爪を指を軸にして回す。
「この爪の回転に使うエネルギーはある種の重力を支配するパワーを持っている。このエネルギーをスカリエッティの『枷』のシステムに浸透させることでどこに『枷』が吹き飛ぶかを明確に決めることが可能だ。」
「ほほう、それで実際にはどのようにそれを行うのかね?」
「出来れば回転している爪をあんたに直接撃ち込むのが望ましいな。(まあ見当違いの所に撃っても出来ることは出来るけど。)」
「・・・それは安全なのかしら?間違ってドクターに何かあったら・・・」
「言いたいことは分かるよ。こんなもん撃ちこむなんて真っ当な奴なら認める訳もない。けど・・・」
---スッ ドギャッ!
「え!?」
ウーノは自分の眉間に向けて爪弾を打った俺を見て驚愕する。だが問題はない。
---ギャルギャルギャルギャル・・・
眉間に出来た爪弾の弾痕は、みんなが見ている前で何事もなく回転し続けていた。
「ほらな、さすがに攻撃目的で使えば間違いなくやばいけどそれ以外でならこんな感じで別に問題はない。」
さすがに回転が止まるとまずいが、逆に言うと止まるまでならば何も問題はないのだ。
「・・・分かったわ。」
ウーノが納得してくれたのを確認し、俺は額に手を当てて穴を移した後、その手を床に置いて回転する穴を地面に移す。
ある程度時間が経つと、穴はスパァンッ!という音とともに回転を止めた。
「それじゃあ二人とも、説明は以上だが覚悟はいいかな?」
「ああ、問題ない。遠慮なくやってくれたまえ。」
「グッド!それじゃあこの遺体を持っていてくれ。」
スカリエッティに近寄って、手に持っていた遺体を渡す。
そして抱えるように指示し、俺はコートの内側で紙を広げ、黄金長方形の見本となる花を取り出しながらスカリエッティと遺体が対角線上の位置になるように移動する。
「それじゃあ始めさせてもらうぞ。フゥ―――・・・・・・・」
深く深呼吸をして、花を視ながらスタンドパワーを集中させる。
そして・・・
「!!ぐぅうう!?!」
タスク・・・act4の方に意識を裂き、一気に全身から爪にかけてスタンドパワーを廻らせ始める。その途端、一見回転しているだけに見える爪から一気に全身の力という力を、予想以上のスピードで一気に奪われていく感覚に襲われ始めた。
「ぐぉぉおおおお!!」
それに並行して、隣で浮かんでいるact4のビジョンに着実に完全な黄金の回転パワーが出来上がっていく。
『チュミミ~~~~~ン』
「ぐ・・・・・・・・・おおおおおおお!」
あと少し・・・あと少しで完成する・・・・・・・・・・・・・・・!
「・・・・・ジャアァアアッ!!」
---ドギュンッ!
視界がブラックアウトしそうになるのを何とかこらえ、やっとのことで完成した爪弾をスカリエッティ向けて撃ち放つ!
『チュミミ~~~~~~ン』
---ドギャッ!
act4のビジョンは爪弾とその軌跡に追いつくように後を追い、爪弾の着弾と同時にスカリエッティの中に染みこむように入っていった。
「ぐ!?」
スカリエッティは一瞬だけうめく。だが、明確な反応はそれだけだった。
---シルシルシルシルシル・・・シルシルシルシル・・・シルシルシル・・・
スカリエッティに空いた爪弾の弾痕と、act4が入っていった証である体内の回転現象は少しずつだが消えていき・・・
「がああああああ!?な、何だこれはあああ!?」
代わりに、少し離れたところにいる浮浪者が悲鳴を上げ始めた。
そして・・・
---スパァ―z__ンッ
「ウゲええあ?!」
完全にスカリエッティからそのエフェクトが消えたと同時に、浮浪者の体にスカリエッティが爪弾を受けた位置と同じ場所に弾痕ができ・・・
---ドサッ
浮浪者は急に苦しみだしたかと思ったらそのまま床に倒れ、さっき始末した奴と同じように消えてしまった。
・・・・・・これで完全に受け渡しが終わったと思うんだが・・・
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・・・・ど、どうだ・・・スカリエッティ・・・」
俺は疲労困憊の状態でスカリエッティに尋ねる。
というかマジで疲れた・・・!今にもぶっ倒れそう・・・!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・?お、おい!どうした?」
スカリエッティは爪弾を受けた時の姿勢のまま、下を向いてまったく動かない。
おいおい・・・まさかこれで失敗したなんてことはないだろうな。ちゃんと完成版を撃った感触はあったんだぞ。
「ど、ドクター?大丈夫ですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ピクリとも動かないスカリエッティを心配したのか、ウーノはスカリエッティに近づいて肩を揺らしながら声をかける。
が、それでもまだ動かない。
「ドクター、しっかりしてください!」
ウーノは反応しないスカリエッティに対し、再度声をかけ続ける。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フフフ・・・・・」
「!?ドクター!」
そしてそのまま十数秒ほど経過した頃、ようやく声を漏らしたスカリエッティは・・・
---ガシィッ!!
「?!」
「・・・フッフッフッフッフ・・・ア――――ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!」
突如としてウーノの肩を掴み、大声で笑い始めた。
「フフフフフフフ・・・ウーノ、今私は・・・とても愉快でたまらない!何故だか分かるかね!?ククク・・・ハッハッハッハッハッハッ!!」
「ドクター・・・まさか!」
「クククククク・・・そうさ!消えたのだよ!この世に生まれ出て幾年月!常に私を縛り付けていたあの呪縛が!常に付きまとっていたあの不愉快な感触が!!どれほど頭を悩ませても、決して逃れることができなかったあの『枷』がッ!!」
スカリエッティはその場で狂喜乱舞し始める。
「・・・あ、おい!落とすなよ!」
その時、落としそうになった遺体は俺が寸でのところでキャッチした。
「調べなくても直感でわかる!この今までになかった身の軽さ!解放感!・・・ついに私は解き放たれたッ!本当の自由を私は手に入れたのだよッ!!アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!」
「・・・取り敢えずあとかたずけしとくか。」
嬉しさが天元突破しているスカリエッティを放置し、アライブの能力を完全に解除する。
すると、能力でぎりぎりこの世界に存在出来た瓶や遺体、スタンドディスクは瞬時に鍵の宝石に飲まれ、そのまま向こうの世界の倉庫へと帰っていった。
・・・・・・・・・ <(; ̄ ・ ̄)=3フゥ・・・
「・・・策は成功したようだな。それじゃあ矢島、俺はしばらく休んでるから・・・後のことは頼んだぞ・・・」
「おう、後は任せとけ・・・・・・いやぁそれにしてもこれ、イイハナシダナーと思うけどどうやって話に持ち込めば「知らん。」・・・デスヨネー(´・ω・`)」
「ア――――ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!」
高笑いを続けるスカリエッティ、彼ほどではないにしろ喜ぶウーノ、空気的に絶対水を差せずオロオロしている矢島を背に・・・
「それじゃあお休み・・・」
エニグマでファイルした寝袋を出して、俺はぐっすりとその中で寝た。
今回のスタンドの使い方を見て、ん?と思った皆さん。
前に私が書いた小説の設定を見直すとわかるかもしれません。
それではまたお会いしましょう!