デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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第二十八話

Side:梶原 泰寛

「フワァ~~~~~、スッゲェよく寝た・・・うわ、もうこんな時間かよ。」

 

倉庫のベッドで目を覚まし、傍にある時計を見てみるとすでに短針が十時を回っていた。

いくら精神的には成人を越えているからと言っても結局肉体は小学生のそれであることと、寝る前に馬鹿みたくはしゃぎ過ぎたことを考えればここまで寝続けたこともまあ当然というものだろう。

 

(やれやれ、やっぱり深夜まで起きてるものじゃあないな。)

 

ベッドから起きて軽くストレッチを済ませ、着替えを終えてから表の世界で紙にした焼き鱈子のおにぎりを一つとミネラルウォーターを取り出し、ブランチとしてそれらを食べていく。

時間的にこれだけ食べて昼食まで待つくらいがベストだろう。

 

 

「モグモグ・・・・・・・・・・よし、そろそろ出るか。」

 

倉庫を外と繋げてようやく外に出ようと、天井に手を伸ばす。

(いやぁ~楽しみだなぁ~、今日はどこで何を食べようかなぁ~~~)

 

 

---グニュ~~~

 

「・・・・・・・・・・・・ん~~ん?」

 

・・・・・・・・・・外に・・・・・・出ようとする。

 

---グニュ~~~~~~~

 

「・・・・・・・あ、あれ?」

 

普段なら天井に触れればすぐに外に出られるはずなのに、掌に奇妙な感触を感じるとともに何故か押し戻されてしまった。

 

(・・・ひょっとしてだれかがカギを拾ったのか?やれやれ、面倒臭いことになってきたな・・・)

 

とりあえずこのままいても仕方がないし、何とかしよう。

 

「まったく・・・アライブ、鍵の状況を確認して来い。」

 

外でつっかえている原因を解消するため、アライブを出して視覚を共有してから向こう側へと行かせる。

 

「さて、どうなっていることやら・・・!?」

 

 

 

 

外でつっかえていた要因・・・アライブが外に出てそれを確認した瞬間、俺は視界に映ったものに対し声こそ出さなかったが結構驚愕することとなった。

何故なら・・・

 

 

「「「「オォアァァ~~~~~!!?」」」」

 

「・・・何だこれ?」

 

腕の生えた影、動く巨大な手のオブジェ、何かの頭の様なものに冠が乗っているようなもの・・・そんな表現しかしようの無い何かが、明らかに寝る前とは違う場所で俺の鍵を取り囲んでいたからだ。

よく見ると、どいつもこいつも共通して仮面のようなものを身に着けているのがよくわかる。

 

「「「「「「アァァ~~~~~!!」」」」」」

 

「・・・状況は呑み込めないが間違いなくやばいってのは理解できた。やれやれ・・・とりあえず乗り切るか!」

 

訳の分からない物体共は何故か鍵から出てきたアライブを認識し、強い敵意を向けてくる。

無論これには俺もすかさず対応し、鉄球、ムラサマ、閻魔刀を装備して臨戦態勢に入った。

 

「アアァッ!」

 

数体の何かがアライブに突撃してくる。

 

「アライブ!」

『チッ!』

 

俺はアライブに鍵を拾わせながら真上にジャンプさせ、そのまま天井に着地させる。

 

「「「―――――!!」」」

 

ナニカ・・・もう面倒くさいから敵でいいか・・・敵の何体かは飛行能力を有していたようで、アライブの後を追って突撃を仕掛けてきた。

 

---バッ

 

「ウリィイヤァッ!!」ドシュドシュッ

 

俺はアライブに宝石部分を向けさせ、そこから二つのレッキングボールを向かってくる奴らに投げつける。

 

「「「「「!?{ヒョイ ドバドバドバッ ボグシャアッ}ギャ?!?」」」」」

 

鉄球はまとめ役の惑星と数十の衛星に分かれ、向かってくる敵や避けようとした敵を撃ち抜き、僅かに黒い靄のようなものをぶちまけながら奴らの動きを鈍らせる。

 

俺は敵が怯んでいるうちに外に出た。

 

(・・・なんだ?アライブの様子がおかしい。いつもよりも威圧感が・・・それにこの脱力感は一体・・・)

 

が、その時妙な違和感を感じた。倉庫の外に出た瞬間、アライブの威圧感がいつもより小さいことと、まるで空気の薄い高山にいるような感覚を覚えたのだ。俺はその現象を推測しようと思考をめぐらせ始めるが・・・

 

「「「「「「オォォオオォォ――――!!」」」」」」

「・・・ほう、予想よりダメージが少ないな。」

 

鉄球を食らったはずの敵は損傷部の靄が消えていき、何事もなかったかのようにまた襲い掛かってくる。

 

(考えている暇はないか、少なくともこいつらの殲滅が先だ。)

俺は一端思考を中断し、能力を倉庫の維持から重力操作に切り替えて天井に立った。

 

「(閉鎖空間でこの数相手、ダメージの感じも含めると鉄球は不利か・・・)めんどくせえな・・・アライブ!」

『ギルァララララララララララララァッ!』

 

---ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴッ

 

「「「ギェアア?!」」」

向かってくる奴らにラッシュを叩き込んで確実に迎撃する。

敵は迎撃された奴から順に地面に叩きつけられ、黒い染みの様になって消えていく。

 

「・・・・・・・・・・」

 

(・・・・・・・・やはりおかしい・・・何時もよりパワーが落ちている・・・)

 

「―――!」

 

向かってくる敵を一通り殴り倒すと、地面にいる敵の何体かが不気味な光を放ち始める。

それを見て何かやばいと思い、アライブを纏うように構えさせ、完全ではないが鉄球に黄金の回転とスタンドエネルギーを加える。

 

「「「――ッ!!」」」

 

---ドグォォ―――ンッ

 

「うお!マジかッ!?」

用意ができたと思った次の瞬間・・・雷、爆炎、突風、冷気の四種類の攻撃が一斉に敵から放たれ、ごちゃ混ぜになりながらこちらに迫ってくる!

 

「だがこの程度・・・」

『ギルァララララララララァッ!』

 

向かってくる攻撃に対し、防御の間に合わない雷は力場を纏ったアライブの拳で弾き飛ばし、残りの三種類の攻撃に回転する鉄球二つを向ける。

 

---ズァアア―――― ドドドドドドドッ

 

すると鉄球から放たれる螺旋状の重力場が、サンドマンの音攻撃を水中のジャイロが受け流したように残りの攻撃をほぼ完璧に受け流した。

 

「「「!?」」」

「無駄無駄無駄無駄・・・行くぞ!」

 

攻撃を全て受け流した直後、次の攻撃が来る前にゲートを開いて敵の中心地に転移する。

 

『ギルァララララララララララララララララララララララララァッ!』

 

---ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴッ

 

「「「「「「オォアァァ~~~~~!!?」」」」」」

 

そしてアライブのラッシュを届く範囲の敵全てにめいいっぱい叩き込んで吹っ飛ばし、距離が近い所の敵は木端微塵に破壊した。

射程範囲ギリギリだった奴も、壁に叩きつけられたり廊下の向こうに消えていっただけで完全に倒せた感じはしなかったが、手応えと見える範囲の奴の様子からしてもうそこまで気にする必要はないだろうと判断する。

 

(・・・一通り目視できる範囲内の一掃は終わったか。これであとは・・・・・・・うん、他には特にいそうにないな。)

 

見える範囲を確認した後、鉄球を回転させて床に置き、反響として戻ってくる波動を読み取って他に危険そうなものが無いこと・・・後ここが高層ビルの様なかなり高い建築物だということを再度把握する。

 

「・・・ハァ~~~!これでようやく一息つける!」

 

ようやく落ち着けることが分かって、俺は一先ずアライブを戻して声を漏らし・・・

 

(さて・・・とりあえず考えるべき事柄は、ここがどこなのか、はたして現実世界なのか、俺を襲ってきたあれはなんだったのか、そして・・・俺は元の世界に戻れるのか・・・おおよそはこんなところか。)

 

とっとと思考を切り替えて現状についての情報を整理し始める。

とは言えまだ何一つ情報が掴めていないこの状況だ、さっきの探知でおよその地形も把握したとはいえ、まずは探索するのが先決だろう。

 

(ふう、ただのグルメ旅行のはずが何だってこんな事に・・・)

「アアァ――{シュパッ}・・・カ、カカカ・・・{ブシュゥ――}」

「・・・何だって、こんな事になるんだよ・・・」

 

天井から染み出るように奇襲してきた敵を閻魔刀で容易く切り捨てながら、この状況を打開するために俺はこの真夜中のように薄暗い廊下を歩いて行く

ホント、今年の俺は厄年なのでは?

 

 

 

 

「{ザシュザシュッ スパッ}しかし、本当に訳の分からない場所だ・・・ここが連中の住処なのはわかるが・・・」

 

四、五分くらいたびたび襲い掛かってくる敵を蹴散らしたり、見つけた階段を昇ったりながら歩く中、ふとそんなことを呟く。

鍵があんな所に落ちていたことについてはあの化け物の内どいつかが勝手に持ち出したとして・・・問題なのはこの場所そのものである。

敵の殲滅ついでにあちらこちらで鉄球のソナーを使って分かったことだが、俺がいるこの場所は一本の巨大な塔のようなものだ。

それも、凄まじく巨大な・・・東京スカイツリーや、ニューヨークの摩天楼とかが比較にならないほどの巨大な塔。

こんな物が存在し得る場所・・・考えられるとすれば間違いなく違う次元の世界か、もしくは魔導師の使う時間の位相をずらした結界のどちらかになるだろう。というかそうじゃないと絶対誰かしらが気が付いているはずだ。

まあそこに関してはここを出た後、D4Cかact4を使って脱出すればいいだけのことなんだが・・・それに加えて、もう二つ奇妙なことがある。ここの空気・・・と言って良いのかはわからないが、どうもここはおかしい。

ここの光景や出て来る敵も然ることながら、倉庫からここに出た時からアライブの力が、この空間の持つ異様な何かによって押さえつけられている気がするのだ。おかげで何時ものようなパワーが出せない。評価にすればパワーがA上位からB上位くらいまでランクダウンしている感じだ。

加えて俺も、倉庫から出てから異様に息苦しく感じる。正直なところ、あまりここに長居はしたくない。

 

「早いところ出口になるようなものを見つけないと・・・・・・・・・・・・・・ん?あれは・・・」

 

それからまたしばらく歩いていると、曲がり角の向こうに光が漏れている壁を発見する。

良く見ると、光が漏れている部分は窓のような形状をしているのが分かる。

 

(ひょっとしたらあそこから出られるかも。あ、でも窓の向こうが一面赤い海だったってのは勘弁してほしいな。)

 

そんなふざけたことを考えながら、とりあえず窓に近寄ってみる。

まあ道の所々で血のように赤い水溜りがあったり、天井からその水が落ちたりしてたからぶっちゃけシャレになってないような気もするが・・・

 

「・・・!街だ、街が広がっている!」

 

まあそんなことはさて置き、窓の外を見てみると予想とは違って見慣れた人工物が織りなす光景が目に入ってきた。

スタンドに遠い所を見させると線路のようなものも確認出来る。

・・・ただ、線路で走っているはずのモノレールが駅についていないのにピクリとも動いていないことや、時間的には朝方のはずなのに今は夜な事、それなのに街に全く明かりがともっていないことは明らかな異常として感じられたが・・・まあそのあたりも、きちんと情報集めを行えばそれなりにわかることもあるだろう。

 

「とにかく今は、あの目の前に広がる街に繰り出すか。こんなところにいたって始まらない。」

 

そう結論付け、念のため下に誰もいないことを確認してから閻魔刀とムラサマで窓を切り裂き、外に出られるようにする。

 

「高さは・・・40~50メートルってところか。今の状態でも十分に下りられるな。」

 

下をもう一度確認し、降りられる高さだと判断する。

 

「よし、行くか。やれやれ、ひと段落したらまたはがくれのラーメンを食べたいね~。」

決断を済ませ、外に出るために意気揚々と窓枠だったものに足を掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・自分のいる階に現れようとしているものに、まったく気が付かないまま・・・

 

「な?!グハ!!」

 

窓枠から出ようとした瞬間、何かに襟を掴まれたと思ったら前から強い衝撃を受け、そのまま廊下の方に押し戻されてしまった。

窓枠もいきなり黒い靄が出てきたかと思ったら、数秒もしないうちに元の形に戻ってしまう。

 

「ぐ、何故いきなり・・・」

 

素早く体勢を整え、もう一度窓枠を壊そうと閻魔刀に手を掛ける。

 

 

 

 

 

 

---・・・ジャリ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「{ゾッ}・・・何だ、この殺気は・・・」

 

刀を抜き、窓に切りかかろうとしたその時・・・不意に、廊下の奥から金属がぶつかり合うような音が聞こえてきた。

それだけなら別に気にすることでもなかったのだが・・・問題はその直後に襲い掛かってきたとてつもない威圧感だ。

まるでダンジョンを歩いている時、あの邪悪な『絵』の罠をうっかり踏んでしまい、目の前にあの怨霊の化身どもが現れた時のような逼迫した雰囲気・・・死を体現したものが側に現れた時ような感覚・・・そんなものが、このフロア一帯を支配している気がした。

 

---ジャリ・・・ジャリ・・・ジャリ・・・ジャリ・・・

 

金属音は段々と大きくなっていき、徐々にだが何かがこちらに近づいているような気がする。

 

(何だこれは・・・!駄目だ!よく分からないがここにいてはいけない!)

急いでさっきの窓・・・いや、それだけでなくムラサマを持たせたアライブとともに目の前の壁をメッタ切りにする。

しかし肝心の壁はさっきまでと違い、ちょっとした切り傷ができる程度で、その傷も瞬時に修復してしまうから結果的にまったくの無意味となってしまっている。

 

---ジャリ・・・ジャリ・・・ジャリジャリジャリジャリジャリジャリッ

 

(!マズイ、段々音が近づいてきている!)

 

まるで俺のいる位置を特定したかのように、金属音はどんどん大きくなっていく。

このままチンタラしていたら間違いなくこの事態の元凶と鉢合わせしてしまう!

 

「クソ!こんなんじゃ埒が明かない!こうなったら・・・」

 

そういいながらアライブに倉庫を開かせ、中から二枚ほどディスクを取り出す。

 

(これでどうにもならなければ・・・ここで戦う他ない・・・!)

 

久しぶりに覚える尋常じゃないレベルの危機感がならす警鐘に従い、俺は金属音が聞こえてくる方の廊下に視線を向けた。

 

 

・・・・・・・・・そして・・・それはついに姿を現した・・・

 

 

---ジャリジャリジャリジャリジャリジャリ・・・・・・・ジャリ・・・

 

「・・・・・・・あれが・・・!」

 

廊下の角・・・そこから現れたものを目視し、俺は思わず生唾を飲み込んでしまう。

 

 

 

全身を覆う、真っ黒でぼろい、血染めのコート・・・その上から巻き付いた金属の鎖・・・顔を覆う覗き穴の開いた布袋・・・両手に持った、マキシンのような太い口径と腕と同じくらいの長さの銃身を兼ね備えたリボルバータイプの拳銃・・・

まるで死神を連想させるその異様な出で立ちと雰囲気は、窓から漏れる月明かりに照らされてより一層不気味さを増していた。

 

「・・・・・・・・・やれやれって感じだ。まったく・・・」

 

俺はすぐに分かった。今までの雑魚とは・・・文字通り『格』が違う、と・・・そしておそらくだが、ここを出るにはこいつを倒すほかない・・・とも・・・

 

「――――――――」

 

---ジャキンッ

 

「!マズイ!」バッ

 

怪物が両手の銃を構えようとしたのを見て、とっさに隣の廊下に飛び込む。その次の瞬間・・・

 

---ダンダンダンダンダンダンッ!

 

銃弾が放たれる音がした直後、俺がさっきまで立っていた床があっという間に粉微塵になってしまい、銃撃が終わるころには下の階の床まで完膚無いくらいに粉砕、十数階くらい下の床がかろうじで原形を留めている光景が目に入った。

 

「いやいやシャレになってねえよこれ!対戦車ライフルも真っ青な威力とかどうなってんだあの拳銃!!」

 

今のアライブじゃ絶対に防げないと判断し、急いでさっき出したディスクを頭に差し込む。

そして、装備したスタンドを隣に出して能力を使おうと・・・

 

---ブワァ―ッ

 

「ゲッ!?もう追いついてきた!?」

 

した瞬間、さっきの化け物があっという間に目の前に現れ、とてつもないくらいの熱と光を放つ銃口をこちらに向けた。

 

(間に合え!間に合ってくれ・・・!)

 

それでも持ち直し、何とか能力は発動させられた。

その直後・・・・・・・

 

---ドォォオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ

 

俺の目の前を、強すぎる閃光が埋め尽くした。

 

 

 

 

No side

 

「――――――」

 

泰寛がいるはずの位置に想像を絶する大爆発が放たれて十数秒、彼の前に突如現れた存在・・・・・人間が普段押さえ込んでいる負の感情が仮面と形を持って現れたシャドウ、その中でも『死神』のアルカナを持ち、実力もこの塔を徘徊する者の中では極めて上位に位置する『刈り取る者』は、自分が放った『メギドラオン』の後を、泰寛が消えてなくなったその場所をじっと見つめていた。

まるでこの状況こそが当たり前だと・・・この世において死が絶対的なように、自分という名の死から逃げられるものなど存在しないと言わんばかりに、唯々その場を見つめていた。

 

「――――――――」プイッ

 

だがそれも数秒ほど経つと、もう興味は失せたと言わんばかりにまた塔の中を彷徨い始める。

まるで次の標的を探すかのように・・・その死神のような容貌と力を持って、次なる生に絶対的な死をもたらしに・・・

 

 

---カチッ

「!?」

だが、それはもう叶わないことであった。このシャドウは甘く見過ぎたのだ。自分が殺しにかかった者を、その者の身の内に確かに秘められているものを・・・

 

---バグオォォ――z___________ンッ

 

こうして塔を徘徊する死神は断末魔をあげることすらなく、自らの存在の一部であった拳銃と血塗られたボタンを一つだけ残してこの世から完全に消滅することとなった。

 

「『キラークイーン』第一の爆弾・・・ククク、やはりこういう局面では使える。」

 

幾多の試練と苦難の果てに死をも覆した超人の手によって・・・『クリーム』の口から再びこの世に現れた、梶原泰寛とキラークイーンの手によって・・・

 

「しかし・・・本当に今回は死ぬかと思った・・・・・よっぽどの用でも無いと二度と来たくはないな、ここは。」

 

そんなことを言いつつも、ちゃっかりと戦利品の拳銃二丁(とあんまり欲しくもないボタン)を回収してアライブの口に放り込む泰寛。

どんなに役に立たなそうなものでも取り敢えず拾っておくというダンジョン仕込みの心構えというか、鉄則じみた何かが(ひとえ)に彼をそうさせるのだろうか・・・

 

「回収完了。さて、いい加減外に出させてもらうとするか。」

 

そう言いつつ、泰寛はクリームの口の中に入る。

そしてクリーム自身も、口の中に広がる暗黒空間に己の体を巻き込んでいき・・・

 

---バギバギッ バギベギッ・・・ガォン!

 

クリームの姿が完全に消えた瞬間、窓際の壁に巨大な穴が出来上がった。

クリームの口内に広がる暗黒空間の入り口が、その壁を突きぬけて外へ出た証である。

 

「まったく・・・ホント何でこんなことしなくちゃいけないのか。ただおいしい料理を期待しての旅行だったのに・・・」

 

こうして塔を脱出した泰寛は、本人の体感時間であと数分もしないうちに元の時間に戻れることも知らず、クリームの口の中でそんなことをぼやきながらそのまま地上へと降りて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・十日も過ぎていた・・・だと・・・?」

ついでに現実では、すでに寝る前から体感よりもずっと時間が経っていたことも、この時の彼には知る由もなかった・・・

 

 

 

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