デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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第三十四話

---泰寛たちが異界化した廃ビルを出て5時間ほど経過した時の、とある階層の部屋にて・・・

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

---ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

「ア、アリス・・・?ちょっと落ち着いて、ね?」

「ソ、ソウダヨ。機嫌ガ悪イノハ分カルケド・・・」

「・・・・・・・・・・お兄ちゃんたち全然来ない!なんで!?せっかくお菓子もお茶もできたてでおいしいのたぁ~~っくさん用意したのにぃ――――!」ジタバタジタバタ

「え、え~~っと・・・一応良い子は寝る時間だからね!きっとそのあたりを気にして帰っちゃったのよ!」

「ソ、ソウヨありすチャン!コッチダッテオ茶会ノコト伝エルノガ遅レチャッタンダシ、オアイコダヨオアイコ!」

「・・・・・・むぅ~~~・・・」プクゥーー

「・・・アリス、今日はちょっと都合が悪かったけど明日誘えばいいじゃない?また明日来るって言ってたんだし、ね?」

「ソウダヨ、マタ準備シテ招待シマショウ?」

「ウゥ~・・・ヤダヤダヤダヤダヤダヤダァ―――!お兄ちゃんたちに会いたいぃ――!」ジタバタジタバタ

「あ、ありす・・・イッタイドウシタラ・・・」

「・・・はぁ・・・美也子ちゃん、少しアリスを宥めといてちょうだい。」

「?ドコニ行クノ?」

「あの二人を探してここに連れてきてみるわ。」

「本気ナノ!?」

「しょうがないじゃない、それ以外に出来そうな事って他にないんだもの。」

「デモ・・・大丈夫カナァ?イクラアナタデモソレハ・・・・・・」

「大丈夫よ、あのごちゃごちゃした格好の子が空間の歪みを残して行ったからそれを辿れば追えないことはないわ。それに誰にだって油断する瞬間くらいはあるだろうし・・・・・・・今の私はあの子の味方よ。昔なら躊躇してたかもしれないけど今はなんだって出来るわ・・・」

「・・・気ヲツケテネ。」

「わかってるわ、ありがとう。」

「ウワーーーン!!」

 

 

 

---お茶会の用意がされた席に着いて泣きじゃくっている少女とそれをヒヤヒヤしながら眺めている半透明の存在達の姿、やれやれといった感じで見ている少女がいたとかいなかったとか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

AM 6:40

side:矢島 敬一郎

「あぁ~~・・・眠い。いろいろ有り過ぎて寝つけなかった・・・」

 

昨日の騒ぎから一晩、とりあえず梶原と一緒に廃ビルから出た後、梶原をあいつの部屋に直接転移魔法で送った俺は自分も転移魔法で帰ってベットに横たわった。

まあさっきも言った通り、いろいろといっぺんに問題が起こったせいであんまり寝られなかったけどな。チンクに新しくとらえた悪魔を渡すためのメールを送るのも忘れてたし。

 

「さて・・・とりあえずやることやらないと・・・」

 

ベッドから起き上がって机に置いてある紙・・・昨日の帰りに梶原がかなりのスピードで書き込んで押し付けてきたメモ帳を手にとり、またベッドに寝転がりながらそれを見る。

参考までに見てくれとは言われたけど・・・何が書いてんだ?

 

「{パラパラ}え~と、何々・・・へえ、良いこと書いてくれてるじゃんか。」

 

内容は悪魔召喚プログラムのおおよその設定や、注意点に関することなどだ。実のところ、女神転生に関しては梶原がやってるところを横から見てたのとニ○ニ○動画で実況を少し見てた程度だからすごく助かる。

昔過ぎてうろ覚えなんだよねェ、冗談抜きで・・・

 

「敬一郎!そろそろご飯ができるわよー!早く起きてらっしゃーい!」

「わかったよ!」

 

やれやれと思いながらメモ帳を持ってリビングに行く。

これは飯食ってる間に読んでおこう。

 

「いつもより早いじゃない。ほら、ご飯が冷めないうちにさっさと食べちゃいなさい。」

「へーい。」

 

母さんに言われるままリビングの椅子に座り、テーブルに並べられているご飯と焼き秋刀魚を口に入れ・・・

 

(さぁ~て、なにが書いてあるかな。)

 

さっき記録しておいたメモを見ていく。

えっとなになに・・・

 

 

『悪魔召喚プログラム(通称COMP)とは、手順、術式、祭具などの道具、召喚に必要な空間設定などの様々な条件をデジタルデータとして入力し、悪魔召喚儀式の際に造り上げられる複雑でかつ偶然の上で成り立っている空間をプログラム上でエミュレート、メモリ空間にそれを構築してその中で悪魔を召喚してしまうという代物である。大掛かりな儀式を必要としない上に、理論上ではどんな悪魔でも地上界に召喚する事を可能とする。このプログラムで悪魔と契約する際は、契約した証である召喚呪文を入力するか、悪魔そのものをデータ化してCOMP内に収納・・・』

 

「へぇ・・・ふむふむ・・・なるほどなるほど・・・・・」

 

即興で書いた割には詳しく書いてあるな。まるで説明書でも見ながら書き写したみたいな・・・ん?注意事項?

 

『注意事項

1.あくまでも悪魔を「召喚」するプログラムであり、「制御」は別問題である。自分の力量以上の悪魔を召還、もしくは契約しようとした場合、その悪魔に取り付かれたりそのまま殺されてしまうこともあるので自信が無い場合はそれ用のアプリなどを作ってどうにかするべし。

2.召喚プログラムを悪魔に乗っ取られる、またはコピーペーストされて悪用されるなんてことがない様にセキュリティーは厳重にしておくべし。

3.デジタルデータから現実に顕現した悪魔は通常よりも現実に馴染みやすくなっているので意味もなく出しっ放しにするのは大変危険です。用が無い時は早急に元の世界にお帰り頂きましょう(思想がLAWかCHAOS属性、性格がDARKタイプの悪魔は特に。)

以上のことに気を付けながら、安全なCOMP製作に取り組んでくれ。

 

 

 

ちなみに初代のCOMPはBASIC言語でだいたい10MBくらいで組まれたものが北欧神話のトリックスターこと「ロキ」を呼べたよ。』

 

「ま、マジか―・・・」

 

たった10メガでそんなもん呼べるとかマジで半端じゃねえな。それを考えると確かにセキュリティは厳重にした方がいいかも・・・

 

(とりあえずシミュレーターで骨組み組むところから始めるか。後は授業と休み時間中にセキュリティをくんで・・・で、夜にまたあそこに行って契約して終わりっと・・・それじゃあ、始めるか。)

 

予定が決まった所で味噌汁をすすりながら、GUNDAMのメモ帳機能と能力を使って地道に組んでいく。

はてさて、どんなものが出来る事やら・・・

 

 

 

 

 

 

 

「気を付けて行っていくのよー!最近何かと物騒だからね!」

「ハイハイ、行ってきまーす。」

 

飯を食い終わって学校の準備をし、チンクにメールを送ってから何時ものバス乗り場へと歩いていく。

・・・え?何?プログラム?組めたよ、若干の頭痛に耐えながら・・・・・・開 始 五 分 で!

いや、確かに最低限の機能を果たすだけのものではあるよ?でも本当に10メガ以内で組めるって・・・これの最初の製作者って本当に何者だったの?文字通りの天才だったの?

途中でヘブライ語とかよく分からない言語や魔術知識と魔方陣をプログラムに組み込むことになってすっげえめんどくさいことになったし、いやぁほんと分からない物を使うのはつかれるというかなんというか・・・マジでこの能力があってよかった、俺・・・

 

(・・・後はここからいかにアップデートするかが問題だな。)

 

メモにあった注意事項とか、妙な悪魔が勝手に契約しない様にとか・・・ジャックフロストたちはあんまりそう言うあくどい真似はしそうにないが他のことも考えるとここから色んな改良が必要になってくる。

・・・授業と休みの時間できっちり考えておくか。

 

(あ、もうすぐ停留所だ。)

 

気が付くといつもの停留所が見える位置まで来ていた。

よく見るとなのは、すずか、アリサの姿も見える。

・・・なんか離れたところに見覚えのある馬鹿が転がってる気がするが気のせいか?

 

「あ、おはようケイイチ君!」

「あら、今日は早いじゃない。」

「おう、みんなおはようさん。」

 

俺の姿を確認した三人の挨拶に返事をしながらそのままバス停まで歩いていく。

転がってる奴は・・・気ノセイガヨカッタナー

 

「ねえケイイチ、今日すずかの家でゲームをするから泰寛と一緒に来なさいよ。」

「いきなり言ってもケイイチ君が困っちゃうよ、アリサちゃん。」

「まったくだ(笑)藪から棒過ぎるぞ。」

 

まあ行動を起こすのは夜だからできないこともないと思うけどなぁ。

 

「にゃははは・・・どうかな?ケイイチ君。」

「泰寛には確認を入れないとわからないけど俺は問題ないぞ。」

「じゃあ決まりね!」

 

アリサはガッツポーズを決めて喜ぶ。

すずかも大きく態度に出ることはないがとてもうれしそうだ。

 

なのは?普通に喜んでいるな。

---ブゥ――――ン・・・

 

「あ!バスが来た・・・ッ!?」

「おう、そうだ・・・?なのは、どうかしたのか?」

「・・・・・・う、ううん。なんでもないよ。」

「ちょっと、大丈夫なのなのは。」

「さっきもそんな感じじゃなかった?」

「う、ううん!本当に何でもないの!さ、早く乗ろう!」

「「「う、うん(お、おう)」」」

 

その後はバスに乗ってからも皆と笑いながら話し、いつも通り皆と学校に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

---キング・クリムゾン!!午前の授業時間という過程は消し飛び、昼休み直前まで授業を受けたという結果だけが残るッ!!

 

 

 

 

 

「・・・次にここの問題を・・・なのはさん、前に出て黒板に書いてください。」

「あ、はい・・・」

 

(・・・え~っと、次にここをこうしてッと・・・)

う~む・・・ここをこうすればあとは・・・

 

「{カキカキ}・・・・・・で、出来ました。」

「はい、よく出来ましたね。ここの公式は・・・」

 

ここがこうで・・・ここをこうで・・・よし!あともう少し・・・・・・・・・・・・・・!!

(よっしゃああ!出来た!)

 

---キーンコーンカーンコーン・・・

 

(あらら?もう昼休みか。時間が経つのって速いな・・・)

 

「おや、もうこんな時間ですか。それではみなさん、また次の授業でお会いしましょう。日直の方はご挨拶を。」

「はい!起立、礼、着席。」

 

---ザワザワ・・・ザワザワ・・・

 

午前の授業が終わり、皆が昼食をとるために席を移動し始める。

俺も弁当の準備をするか。

 

(GUNDAM、COMPの動作確認をしておいてくれ。)

(かしこまりました。)

 

GUNDAMに動作確認を頼み、俺はカバンから弁当を出して机に置く。

ん?アリサ達がこっちにくるな。

 

「ケイイチ君、今から皆と屋上食べるんだけど一緒にどうかな?」

「お~、OKOK。俺も一緒に行く「はぁーっはっはっは!!嫁たちよ!俺と一緒に飯を食おうじゃないか!」・・・まただよ(笑)」

セリフの途中だというのに、黒板側の扉から(頭にタンコブのついた)あの馬鹿が姿を現して走ってくる。

「ハァ~~~~~~~、いい加減にしなさいよこの馬鹿!アンタはお呼びじゃないのよ!」

「ハハハハハ!相変わらずアリサはツンデレだな♪まあいい、早く屋上に行こう!」

「っ!やめて!」

 

はあ、全くめんどくせえ・・・ん?

 

「・・・・・・・・・・・」ポケーーー

 

まぁ~~たなのはの奴ボォーッとしてやがる。

授業中は全く見てなかったけど休み時間の時は何度かあんな感じだったな・・・

 

「ん?どうしたなのは、俺に見惚れているの・・・」

---ボゴォッ!!

「アギャア!?!」ドサッ

「・・・大丈夫みたいだな。」

 

肩を掛けて抱き付こうとした馬鹿に反射というにはあまりにも腰の入ったアッパーカットを叩き込んだなのはを見て、自然とそんな言葉が漏れる。

あれだけいいものを叩き込めるなら体調は問題ないだろう・・・・・・タブン

 

(マスター、COMPの正常な動作を確認いたしました。)

(お?よっし。これで何時でも迎えに行けるな。)

「ナイスよなのは!さ、いまのうちにいきましょう!」

「そうだね。二人とも、早く行こう。」

「だな。」

「う、うん。わかった。」

 

気絶している馬鹿を再び放置し、俺達は屋上を目指す。

そしていい感じの所を見つけ、その後はみんなで食事を始めた。

 

 

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・ねえなのは、アンタ今朝からどこか変じゃない?たまにぼけっとしちゃってさ。」

「え?そ、そうかな?」

「うん。偶に具合悪そうにしてたり、ボーっとしてたり、なんだかいつもより元気がないっていうか・・・」

 

(・・・そう言えば朝のバスに乗る時も様子がおかしかったな・・・)

アリサの発言に、俺も若干思い当たる節がある。なにかあったのか?

 

「う~~ん・・・そう言えば昨日変な夢を見た気がするの、ひょっとしたらそれのせいかな?」

「変な夢?」

「うん、気が付いたら白い網みたいみたいなところで引っかかっててね、真ん中の方から女の人の声が聞こえてくるの・・・それで良くわからないんだけど、その声の人に捕まったらいけないって思って、夢の中でもがきながらずっと逃げ続けてたの。」

「で、それのせいでよく眠れなかったと?」

「うん・・・それだけじゃないの。なんだか偶に、夢で聞こえてた女の人の声がどこからか聞こえてくる気がするの。」

「ちょっと、本当に大丈夫なのアンタ?」

「先生にも偶に注意されてたし、辛かったら保健室に行った方がいいよ?」

「うん、ありがとう・・・でも大丈夫だから。」

「・・・・・・」

 

変な夢ねぇ・・・最近の事を考えると若干看過できないことに思えるんだが・・・・・・う!?

 

「わり、ちょっとトイレ行ってくるわ。」

「ちょっ!そう言うのは黙っていきなさいよ!」

「ま、まあまあアリサちゃん・・・」

「スマソwwちょっといってクル―。」

 

やばいやばい、これは間違いなくでかい方だ。漏れる前にダッシュで行かなくては!

 

「お、良い所にあった!」

 

廊下に出て一、二分走った辺りで見つけることができた。俺はそこにすぐさま駆け込む。

 

 

「・・・・・・・・{フキフキ ジャァ――}ふう、これで安心安心♪」

 

さぁ~て用も足したし、皆の所に戻らないと・・・

 

「ねえ、ちょっと待ってもらえる?」

「ファ?」

 

トイレから出てまた屋上に行こうと歩き始めた直後、後ろから声を掛けられて俺はその場を振り返る。

すると・・・

 

「・・・アリサ?」

 

何時の間にいたのか、アリサが俺の出てきた男子便所の入り口の横に佇んでいた。

 

「あら、あたしの名前を知ってるの?」

 

「は?知ってるも何も、何時もツンデレ発言全開なあのアリサでしょう?というか・・・・・・・・・アリサ、いくらなんでも男のトイレを覗きに来るのは無いんじゃない?さすがの俺もドン引きよ?」

 

男のトイレを追跡するとか・・・ちょっといつものアリサらしからぬ行動だな。

 

「まあそれはそうと・・・」

「無視ですかそうですか・・・」

 

ちょっとションボリ(・ω・`)・・・

 

「あなた・・・昨日廃ビルに来てた男の子でしょう?」

 

!?なんでアリサがそのことを!?

 

「ちょ、どこでそれを聞いた「ドルミナー」・・・え・・・」

 

---グニャァァ・・・

 

・・・あれ?そう言えばこいつ、髪の毛とか雰囲気が・・・いつもと・・・・違う気が・・・

・・・・あれ・・・ナンカ・・・・・す・・・・ごく・・・ね、眠い・・・

 

---ドサッ

 

「・・・・ごめんね、あなたに恨みは無いんだけど・・・これもあの子のためだから・・・」

「・・・次は確かあの家よね。この子をアリスに届けた後で招待状でも送ればかしら。」

 

side out・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side:梶原 泰寛

 

---キーンコーンカーンコーン・・・キーンコーンカーンコーン・・・

 

「起立、礼、着席。」

「それではみなさん、最近何かと危ないことも多いです。気を付けて帰って下さい。それではさようなら。」

「{ドサドサ}ふぅ~~、今日もお勤めご苦労さんっと・・・」

 

昨日の疲れをパール・ジャム入りの料理で全快し、今日も今日とて学校の授業を終えた。

これであとは夜まで自由時間だな。

 

(矢島は今頃悪魔召喚プログラムを組んでるんだろうか。一応メモがあるからプログラムのコンセプトはおおむね理解してくれるだろうし・・・)

 

ちなみにどうでもいいかもしれないが、メモに関しては昔衝動買いしたメガテンの設定集を必死になってなんとか掘り起こし、その内容を血眼になって書き纏めたものだ。

あれは我ながらいい判断だったと思う。

 

(となれば・・・あとは羊羹でも食べながら倉庫内のコレクションを眺めているのが最良・・・いや待てよ、確か今日は4時半からタイムサービスが始まるスーパーがあったはずだ。)

 

時間は・・・3時半か。わりと離れた所だったとは思うが・・・いや、逃す手はないな(使命感)

 

「しょうがねえ、ちょっくらいってきますか。」

「え?どこに行くの?」

「スーパーのタイムサービス。」

「主婦かお前は。」

「いえ主夫です。」

 

友達といくらか話をした後、俺は校門から直接例のスーパーまで向かう。

え?荷物?時間が惜しいから後でな(倉庫にしまいながらの発言)

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「よっしゃ着いた―!」

(時間は・・・4時15分。ははは、余裕で間に合ったな。)

 

入口で籠を取り、店員に聞いてタイムサービスの行われる場所まで向かう。

よしよしよし、まだそこまで列は並んでないな。さっさと並んでしまおう。

 

「久しぶりだなぁ我が嫁たちよ!こんなところで会うとはやはり運命か!」

「げえ!?またあんたかい!?シャマル!はよ逃げてやー!」

「そ、そんな!?無理ですよぉ~~!」

「・・・・・・」

 

(あっれれぇ~~?誰が騒いで・・・というかどっかで聞いた声とフレーズが・・・)

 

ものっすごく嫌な予感を覚えながら、騒ぎの起きている方を向いて騒いでいる奴らを探してみる・・・いた、あそこだ。

 

「ははは、どうした二人とも!そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃないか!」

「ちょ!こっちにくんなゆうてるやろうが――!!」

「そうです!というか周りに迷惑だからどこかに行ってください!」

「はっはっは!まったくしょうがない奴らだなー!」

「・・・・・・・・」

 

 

ま た や つ か ! !

 

 

(・・・もういい、あれは見飽きた。)

 

ポケットから指弾用のビー玉を取り出して回転を加え・・・

 

---ビシィッ!!

 

あの馬鹿目掛けて弾く。

 

「さあ、こんな所よりも俺と{ドゴォッ}がは!?」

 

よっしゃ、ばっちり当たった!

 

「?なんや今の?ビー玉・・・は!?シャマル!」

「!は、はい!」

 

界統が怯んでいる間に奴に絡まれていた車椅子に乗っている少女と色々と立派(意味深)な女性が俺のいるタイムセールスの列に並ぶ。

 

「ま、待て{ギャルルルルルル}がぁ!?な、何だこれ・・・」

 

そしてそのまま自分の服に締め付けられる界統。まったく憐れみを感じないな。

 

「それではこれより、タイムサービスを行います。まずは鳥のもも肉、100グラム68円で・・・」

「あ、始まった。」

 

行列とともに俺も前に進み始める。

 

「はい、ありがとうございます。」

 

最初の方に並んでいたおかげでもも肉は割とすぐに手に入った。

後はいろいろと安くなっている食材やお菓子などをたくさんかごに入れ、レジで会計を済ませてからスーパーの外に出た。

 

「ふう、結構いろいろと買えたな。さてと・・・」

 

人目のつかない所に移動してエニグマの能力で紙にし、ポケットにしまい込む。

フフフ、これでまた一段と増えてしまったな・・・全部いざって時の為の、俺個人の備蓄だけど。

さあて、いよいよやることもないしとっとと帰るか。

 

「~~~~♪」

 

 

 

---ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ・・・

 

「ん?だれだ?」

 

家の近辺に来たあたりで不意にポケットのPCが鳴り出す。

 

「はい、もしもし。」

『やあ、泰寛君。ひさしぶりだね。』

「その声は・・・博士か?」

 

かけてきたのはどうやらスカリエッティ博士のようだ。

前は矢島に頼んでおいたけど実はこの人とも連絡先を交換したからな・・・というか急にどうしたんだ?

 

「急にどうしたの?なにかあった?」

『ふむ、実はケイイチ君から例の謎のアストラル体・・・ああ、君たちが私に調査を依頼したあれのことなんだがね、あのサンプルの追加を一時間ほど前に受け取るはずだったのだが・・・なぜか時間になっても約束の場所に現れないのだよ。私の方で連絡を取ろうにもなぜか繋がらないし・・・何か知らないかい?』

「矢島が?」

 

妙だな・・・そんな大事な約束をあいつがわざわざすっぽかすわけはないし、魔導師のデバイスはかなりの通信強度を誇るって言ってたのにまったく繋がらないってのは妙だ・・・というか・・・

 

「いや、残念だが俺も分からない・・・というかそれをなんで博士が?チンクも俺の連絡先は知ってると思うんだけど・・・」

『そのことかい?ははは、実は最近このあたりの次元世界で可笑しな現象が起こっていると聞いてね、興味深いから近辺に拠点を構えておいたのさ。また暇があれば君たちにも話したいが・・・ふむ、そう言うことなら仕方がないな。』

「良かったら俺からも連絡を入れておくよ。ひょっとしたらなんかやばいことに巻き込まれてるかも・・・」

『ふ~む、その可能性はあるかもしれないね・・・わかった、サンプルはまた今度もらうことにするよ。』

「ああ、すまないな。」

『構わないさ・・・・・・まさか高純度の生体磁場にこれほどの可能性が眠っていたとは・・・ククククク!これだから研究者はやめられない・・・!!』

「・・・じゃあ切るぞ。」

 

通話を切って再び家に向かいながら、矢島に連絡を試みてみる。

 

---トゥルルルルルッ トゥルルルルルッ トゥルルルルルッ トゥルルルルルッ

 

「・・・・・・・・・・・・本当に出ないな。」

 

五分ほどこちらから発信してみたものの、まったく繋がらない。

まさに箸にも棒にも引っかからないレベルだ・・・マジでなにかあったのか?

 

「・・・とりあえず準備だけはしておくか。」

 

家の前に来たあたりで通信を切り、郵便受けの中身を確認する。

 

「えっと・・・何か入っているな。」

 

中に入っている一枚の便箋を手にとり、それを持って家に入る。

 

(なんだこの便箋・・・デザインは随分と可愛らしいが宛名も住所も書かれてない・・・)

 

実に奇妙なものではあるが、一応便箋を切って中にはいっている手紙を見る。

えっと、なになに・・・

 

 

 

 

 

===こんにちわ、とっても強いお兄ちゃん!きのう下の階でたたかってるお兄ちゃん達・・・とってもかっこよかったよ!えへへ♪

実はきのう、お兄ちゃんたちをおむかえするためにお茶会の用意をしてたんだけど、お兄ちゃんたちがとちゅうで帰っちゃったからとっても悲しかったんだよ!さびしかったんだよ!(○`ε´○)プンプン

だから・・・ね?今日はちゃんとここに来て!アタシたち、みんなでちゃんとお迎えするから・・・先に来てくれたお兄ちゃんのお友達と一緒に、楽しいお茶会になるようにするから・・・だから、今度はちゃんとアリスたちの所まで来てね!ずっと待ってるよ♪===

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・なんだこれ?」

 

昨日の戦い・・・下の階・・・・・・ひょっとして俺たちのことを見てたやつが上の階にいたのか?そしてこれを送ってきたと・・・

・・・というか幼稚な書き方だな。いったいどんな奴が書いたのやら・・・

 

---パラッ

 

「?これは・・・写真か?」

 

ふと、便箋から写真のようなものが落ちる。

 

「なんだよ、いったい何が写って{ピラッ}・・・・・・」

 

それを拾い上げて何が写ってるかを見てみると・・・

 

 

 

楽しそうにお話をしている金髪の美少女と、そいつを取り囲んで愉快そうに話している老若男女・・・そして・・・・・・

 

 

 

「ぶふぉおっ!?!」

 

 

 

・・・・・・・・・そいつらに紛れてお茶を飲んでいるもう一人の美少女と・・・レイプ目の親友(矢島)の姿が・・・写っていた・・・

 

 

「な、な、な・・・・・・何やってんだあんのバカヤロオオオオオオオオオオオ!?!?」

 

まさか・・・まさかとは思ってたけど・・・・・・ええ!?マジで?マジでか?マジでそう言うことになってたんかいィィイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!

 

「オイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイ!マジで洒落になってないだろうがよぉっ!くそ!夜なんて待っていられねえ、今すぐ出撃だ!!」

 

即行で戦いの用意を整え、アクトゥン・ベイビーとザ・フール、ウェザー・リポートを装備して身体を透明にし、突風を巻き起こして空を滑空しながら例のビルに向かう。

 

 

 

 

 

「まったく、余計な手間を増やしやがって・・・・・・あの馬鹿野郎!待ってろよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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