デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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第三十五話

side:梶原泰寛

「{スタッ}よっしゃあ!着いたぞぉ!!」

 

ウェザー・リポートで起こした突風を操作してスピードで宙を滑空し、10分程時間を使って昨日来た廃ビルの入り口前に着地する。

辺りは季節の関係もあって日が沈みかけている。

 

(急がなくては・・・写真に写ってた矢島のあの眼は明らかにやばい状態だしな・・・あ、そういやあいつがいないから光もない!まったく、困った話だ・・・!)

 

取り敢えず倉庫から災害用のランタンライトを取り出し、それを点灯する。

そして腰の閻魔刀に手を掛けてビルの中に入り、急ぎ足で廊下を歩いた。

 

 

 

---カツ カツ カツ カツ カツ カツ カツ カツ カツ・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・ん?あれは・・・

 

「ヒホ―!ヒホ―!オイラたち強いホ―!」

「ヒーホー!でもオイラたち、これからもっと強くなれるホー!」

「「ヒホ、ヒホ・・・ヒーホー!」」

 

ジャックフロストとジャックランタンたちか。タイミング的にも光源的にもちょうどいい。

 

「おーい、そこのジャックブラザーズ!」

「ヒホー?あ!ヤスヒロだホ!」

「やっと来たホー!・・・あれ?ケイイチはどこにいるんだホ―?」

「・・・あれ?本当だホ、なんでケイイチはいないんだホ―?」

「は、ははは、あ――・・・すまん、ちょっと上にあがりながら事情を説明していくよ。取り敢えずついてきてくれないか?」

「「ヒホ―、分かったホ。」」

 

俺はジャックブラザーズを連れ、皆で上の階へとあがっていく。

 

「えっと、実はな・・・{スタンド使い説明中}・・・・・・・・・・・と、言う訳なんだ。」

「ヒホ!?それは本当なんだホ―!?」

「一番上にいる悪魔に連れ去られたって・・・かなりやばいホ―!早く行かないとケイイチが死んじゃうホー!」

「分かってるホ!ほら!早く早く!」

「ここから先に行くんだホ!急ぐホー!」

「おいおい!それは分かってるが周囲への注意も怠るなよ!」

 

まあ何はともあれ、やる気を出してくれたことは非常に好都合だ。

相手がこいつらよりも強いとわかっている以上、足りないものはやる気でカバーしてもらわないと・・・

 

「ケイイチたちが言ってたあれが無いとオイラたちは強くなれないホ―。」

「ヤスヒロがいれば別にいい気もするけど今はそっちも気になるホ―。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

(う、うん・・・やる気は・・・とっても重要・・・・・・うん・・・)

 

矢島の扱いを若干不憫に思いながらも、俺達は走って上を目指す。

 

 

 

 

「見えてきたホー。あれが最後の階段だホ―。」

「あれがそうなのか。」

 

暫くの間何度か階段を上がり、長い廊下を渡り歩いているとジャックフロストがそう言ってくる。

それを聞いて前を向くと、確かに上へ行く階段が数メートル先にあった。

 

「そんじゃあ二人とも、覚悟決めていくぞ。」

「OKだホ―!」

「任せてほしいんだホ―!」

 

ジャックブラザーズに確認を取り、階段を上がる。

 

「・・・・・・!」

 

最上階の通路に出ると、十五メートルほど先に妖しい光で照らされた空間が見えた。

ランタンライトを突きだしてよく見ると、両脇を青い電灯で照らされた扉が見える。

 

(さて、優先順位は矢島の救出。その次が中にいる悪魔に対し何らかの対処を行う事だ・・・)

 

となると倉庫から出すディスクは・・・・・・そうそうこれと・・・あとこれと・・・

 

「?ヤスヒロ、その鍵と円盤みたいなのはなんだホ?」

「これか?これは俺の商売道具さ。そん所そこらの悪魔よりよっぽどオッカナイ代物だよ。」

「ヒホ―!?それはオイラタチに対する当てつけかホ!?オイラ達だってやればできるホー!」

「分かってるよ。もちろん二人の向上心には期待している。さて、これは・・・違うな、えっと・・・」

「「・・・・・・・・・・」」

 

あとはこれとこれで・・・よし!

 

「{ズブズブ}二人とも、使えるスキルが増えたとかはあるか?」

「(え?それってそう使うのかホ?)あ!オイラは昨日のお給料でメパトラとアイスブレスと氷の魔法が強くなるスキルが増えたホ!」

「(訳わからんホ・・・)オイラは同じ理由でタルンダを新たに覚えられたホ。」

「よしよし・・・ジャックランタンは戦闘になったら一番強そうなやつにひたすらタルンダをかけてくれ。ジャックフロストは相手が耐性持ちじゃなきゃひたすらブフーラかマハブフで。」

「「OKだホ!」」

「よし、それじゃあ行くぞ。」

 

準備ができたところで、目的の扉の前まで歩いていき・・・

 

「(まずは内部の状態を確認しなくては・・・)スキャン。」

 

まずは鉄球で中の状況確認から始める

 

---ギャルギャルギャルギャル・・・

 

(・・・・・・・・・・?なんだこりゃ?)

 

壁一枚向こう側から先が、まるで何もないかのように分からない。

 

反響してくるものが無い?・・・・・・ひょっとしたら結界でも張られているのか?

 

(どうしたんだホ?さっきからじっとして・・・)

(いや、それが・・・)

 

---キィー・・・

 

「!」

 

フロストたちに説明しようとした時、扉が不意に開いて・・・

 

「さっきから何やってるのよ、あんたたち。こっちはもうずっと待ってたのよ?取って食べたりしないから早く入ってきなさい。あの子たちも待ってるんだから。」

 

中から女性らしき声が響いてきた。

 

「ど、どうするホ?」

「・・・・・・・・」

「・・・まあ気持ちは分からなくもないわよ。事情が事情とは言えこっちはあなたのお友達を拉致しちゃったんだし・・・」

「良くわかってるじゃねえか、もともとこっちにこようとしてたのにくだらねえ真似しやがって・・・」

「・・・それについては悪かったわ。けどあの子も私達も決してあなた達を害したいわけじゃないわ。あの子がどうしてもあなたたちと遊びたいって言うからちょっと強引な手を使わせてもらっただけよ。」

「その強引な手って辺りがもうダメだろ!・・・まあいい、矢島は?テメーが攫ったやつは今どうしてる?」

「皆とお茶会の真っ最中よ。どう?あなたも一緒に。」

 

・・・はあ、ここで手をこまねいていても仕方ないのは確かか。

 

「・・・そうかい、じゃあ一先ずお邪魔させてもらうぞ。」

「ええ、いらっしゃい。」

 

鉄球をホルスターに収め、扉を開けて中に・・・俺のランタンライトとジャックランタンの火の光が意味をなさないほどの暗闇の中にジャックブラザーズたちとともに踏み込みこんでいった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・う?」

 

ドアに入って2,3分ほど歩き続けたころ・・・ある時目の前を白い光が包み、気が付くと昔の貴族が使うような洋館の様な場所で仲魔とともに立っていた。

・・・ここがあいつらの住処か。

 

「{バタンッ}いらっしゃい三人とも。歓迎するわ。」

「!」

 

自分たちの状況が呑み込めた直後、扉の閉まる音とともに後ろからだれかが声が掛ける。

俺は声の主を確認するために、その場で振り返った。

 

「・・・・・・・・・・・・あ?」

 

そして、声の主を確認して・・・・・・・・思わずそんな声を漏らしてしまった。

 

「まずは自己紹介でもしましょうか。私はアリサ・ローウェル、この異界の住人よ・・・ああ、一応言っておくけど私、こう見えて人間じゃないからそのあたりは理解しておいてね。」

「・・・なん・・・だと?」

 

かつて俺が、二度にわたってその命を救った少女・・・アリサ・ローウェルその本人が平然と人外発言をしたのだから。

 

「お前・・・・・・なんか呪われてるの?円環の理から厄介ごとに巻き込まれることを強いられてるのか?」

「は?急に何言ってるのよ?」

 

イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ、なんでお前がそうなってんだよ!?何?なんか呪われでもしてんのお前!?三回目よ?俺がこいつと厄介ごとであった回数、これで三回目!

二度ならまだいいけどこれで三度目よ三度目!しかも今回で人間やめちゃったってアンタ・・・もう人生の根底から呪われてるよねそれ!前世で何やらかしたのってレベルの話だよ最早!

 

「・・・変なやつね。まあいいわ、とりあえずこっちにいらっしゃい。あ、その変な仮面は外しておきなさいよ。」

「・・・・・・ああ、分かった・・・(まさかこいつがここの・・・いや、まさかな。こいつはそこまで強くない・・・)」

 

ローウェルが閉じた扉はいつの間にか消えていて、すでに後戻りが効かない状態になっている。

色々と言いたいことをぐっと飲み込み、まずは矢島の元へ行くためにローウェルの後から付いていく。

 

「ヒホ―、なんかだんだんいい匂いがしてきたホ。」

「これは・・・出来立てのクッキーの匂いだホ!」

 

確かに・・・これはいい匂いだ。

 

「{ガチャッ}アリス、もう一人もつれてきたわよー!」

「え!?本当に!?早く入って!」

「と、いう訳よ。さ、どうぞ。」

「・・・失礼するよ。」

 

中から響く声に促され、ローウェルとともに部屋に入る。

扉を越えた先には、あの写真に写っていた金髪と赤い瞳が特徴の幼女が立っていた。

 

「こんにちわ、お兄ちゃんたち♪あたしはアリス!よろしくね♪」

「こんにちわ、俺は梶原 泰寛。先にここに来ていたお兄ちゃんの友達だよ。後ろにいるのは現在の俺の仲魔のジャックランタンとジャックフロストだ。」

「よろしくだホ―♪」

「だホ―♪」

「うん、よろしくね♪ホラ、こっちきて!早くみんなと一緒にお話ししましょう♪」

「おいおい、引っ張ったら危ないって。」

 

アリスと名乗った幼女に服を掴まれ、お茶会の席であろうところまで連れて行かれる。

部屋には綺麗なテーブルや椅子、調度品、お茶の入ったティーポットやお菓子の乗った皿などが並べられ、見た目子供から大人まで様々な人?が楽しく会話をしていた。

 

・・・・・・あ!

 

「よう梶原!お前もここに来ちまったかはっはっはっは!」

「あ、ちょ!何やってんだテメーは!」

 

その中から、矢島が席を立ってかなりのスピードで俺を掴む。

そしてそのまま、部屋の外まで一気に連れて行かれた。

 

「お前・・・今の今まで何やってたんだ。」

「すまん、ほんっとうにすまん・・・あそこのアリサに似たお嬢ちゃんに眠らされたと思ったらいつの間にかここに座ってて・・・それでいろいろやり尽くして途方に暮れていた頃にお前らが来たというかなんというか・・・」

「いろいろやり尽くしたって・・・デバイスも取り上げられてる訳じゃないのになんでお茶会に参加することになってんだよ。博士から連絡されたぞ。」

「仕方がないだろ!俺だって出口を探そうとしたさ!けど行けども行けども同じところを回るわようやく出口らしいところに近づいたと思ったらまったく知らない所に飛ばされてるわ、空間跳躍は結界に阻まれてどうしようもないわ、むしろこっちが泣きたいわ・・・」

「マジか・・・・・・あれ?無理やり出てくるという手段は・・・」

「{ピッピッピッ}これを見てみろ・・・」

「ん?」

 

矢島のデバイスから空中に映し出されたディスプレイを見る。

 

 

 

人間 矢島 敬一郎

Lv.39 Neutral-Neutral

HP.100%

MP.100%

力-19 知-34 魔-50 体-20 速-30 運-18

物-  銃-  火-  氷-  電-  衝-  破-無 呪-

 

 

「・・・なんだこれ?」

 

「今日の昼ごろやっと完成した召喚プログラムのアナライズ機能で取ったデータだ。ちなみにこれは俺のな。」

「なるほどな・・・」

矢島は魔力タイプか。思想から耐性まできっちり表示できてる辺り出来はかなり良いだろう。

 

「で、これがどうかしたのか?」

「・・・・・・これが・・・さっき部屋の前でお前を迎えた幼女のステータスだ。」

「?」

 

矢島が若干震えながら次に表示したディスプレイを疑問に思いながら見る。

どれどれ・・・

 

 

 

 

魔人 アリス

Lv.99 Dark-Neutral

HP.?????

MP.?????

力-76 知-66 魔-計測不能 体-68 速-62 運-66

物-耐 銃-反 火-耐 氷-耐 電-耐 衝-耐 破-無 呪-吸

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・えっと、これは?」

「幼女のステ、おk?」

「・・・mjk?」

「mjd。」

 

ああ、なるほど・・・・・・・・・・・・・・・・・・こりゃ無理だ。

だって全然違うもの、格が。ほぼ全てのパラメータに3倍から5倍以上の差があるもの。

仮にこれがゲームで女神転生だとしてもレベルと耐性に絶対的な差があるもの。魔力に至っては計測不能って出てるもの。

無理無理、よっぽどの奥の手でもない限り力尽くとかまかり間違っても出来んわこれ。

 

「すまん、俺が間違ってた・・・拉致られたのはともかく。」

「うん、分かってくれればそれでいい・・・拉致られたのは不可抗力です。」

 

・・・というかホントにひっどいステータスだな、レベルもそうだけどこれ絶対魔力カンストしてるぞ。

耐性に関しては俺はほとんど関係ないけど使えるスキル次第では・・・ゾッとする。

それに・・・・・・この『アリス』という名前にははっきりとはしないが嫌な予感がする。

昔過ぎてはっきりと思いだせないし、マッカビームやモト劇場とまではいかないが、割と嫌な予感が・・・

 

「どうする?時間を掛ければばれないように出口を作れないこともないが・・・」

「やめとけ、ばれたらお前ら絶対に消されるぞ。ワンパンとまではいかなくても魔法一発で即KOだこんなもん。」

「デスヨネー。」

 

アバチュの人修羅よりはましかもしれんがこの魔力で呪殺系でも持ってたら間違いなく洒落にならない。

それに俺達が入って来た出口は無くなっている。下手なことをすれば相応の犠牲を払わなくちゃならないということも・・・

半泣きになりかけている矢島を見ながらそう考え、思わずため息が漏れる。

とりあえず様子見もかねて・・・{ガチャッ}ん?

 

「ねえなにしてるの?早く来てよ!」グイッ

「うお!?ちょっと待って・・・!」

「ほら!そっちのお兄ちゃんも・・・」グイッ

「おいひっぱるなって!」

「ヤッホー!お菓子がいっぱいだホ―!」

「ヒホ―!」

 

ジャックブラザーズは既に空いている席に座るよう促され、嬉しそうに席について皿のクッキーに食いついていた。

 

「あいつら・・・」

「というか連れてきてたんだな。まあちょうど契約も果たせるし良いんだけど・・・」

「フフフ、さあみんな、お茶会を再開しましょう。泰寛お兄ちゃんもケイイチお兄ちゃんも、ほら♪」

(・・・しかたない。おとなしく座るか。)

(だな。下手に動いても機嫌を損ねるだけだし・・・無限ループはもう勘弁。)

 

アリスに空いた席のティーカップへと紅茶を注がれ、渋々と席に着く。

少なくとも今は隙がない。感づかれて機嫌を損ね、出れなくなるなんて事になるのも面倒だ。

・・・まあ最悪の場合はこいつら全員を始末してから異界そのものを消し去るという手もあるが。

 

「それじゃあお茶会を再開しましょうか♪」

 

こうして俺とジャックブラザーズを新たに含め、お茶会は開かれることとなった・・・

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

お茶会の再開からかなりの時間が経った頃、そろそろ頃合いということで本日のお茶会は終了となった。

結構手間はかかってしまったが、おかげでこいつらのスタンスとかアリスの気心も知れたし、結果的に無駄ではなかったと思う。

・・・帰ったら下の階層の異界をどうにかする手立てを考えるか。ここはよくても他に現界してくる悪魔が安全とは限らんし・・・それから徐々にここの外堀を埋めていって・・・

 

「んん~~~~!今日は楽しかったぁ~~!」

「ええ、そうね。それじゃあ私たちはあとかたずけに行くから。」

「うん!お兄ちゃんたちも今日はありがとうね。」

「ああそうだな。それなりに楽しかったな、なあ矢島?」

「そうだな。ありがとうアリス。」

「うん!どういたしまして!」

「ケイイチ、あっさりつかまっててかっこ悪いホ―。」

「ぐっ、反論できない・・・」

 

嬉しそうに答えるアリスと項垂れる矢島の対比が何となくシュールだ・・・

よし、矢島はこの際どうでもいいがとりあえずアリスの機嫌は良いみたいだしアリサやほかの連中はあとかたずけにいった。丁度一番上の階まで調べ終わってるし、このままずらかることもできる。

それに・・・ここの奴らはどうやらアリスを第一に考えてる節がある。こいつさえ説得出来れば・・・

 

(矢島、今の内に説得するぞ。)

(OKだ。)

 

「なあアリス。」

「なぁ~に?」

「俺たちさ・・・そろそろ家に帰らないといけないんだ。この辺りで外に出してもらえないかな?」

「・・・え?なんで?」

「俺達もさ、あんまりここでゆっくりしてると家族が心配するんだよ。俺もできる限り心配させたくないんだ。だから・・・」

「・・・いや。お茶会は終わったけどアタシ、お兄ちゃんたちともっとお話ししたい。」

 

矢島と一緒にやんわりと話すものの、やはりというか予想通りの回答が返ってきた。

お茶会での会話である程度分かった事だが、アリスの精神年齢は見た目通り見熟もいいところなお子様だ。

根気よく説得していく必要があるだろう・・・だから落ち着け俺。ヘブンズ・ドアーは最後の手段だ・・・!

 

「けどそれだと俺達も困るんだよ。」

「そうそう、俺達にも生活ってものが・・・」

「じゃあここで一緒に暮らそうよ。アリスたち、お外はあんまり歩けないし、出ても疲れるばっかりだし、つまんないことばっかりだし・・・ここならずっと楽しく遊んでいられるんだよ?そっちの方が絶対に良いよ!」

「いやいや、君らはそれでもいいけど俺達はそうはいかないんだよ。」

「それに君にとっては楽しくないかもしれないけど、俺達にとっては楽しいことも大切な事もたくさんあるんだ。だから向こうでの生活をないがしろにするわけにはいかない。」

「えぇ~、でも・・・」

「それにまた来ないとは言ってないじゃない?また今度来てあげるから今日はこの辺りってことで・・・ね?」

「むぅ~~~~・・・・・・」

 

アリスは膨れっ面になりながら答えを渋る。

出来れば理解してほしいが・・・答え次第では・・・

 

「「・・・・・・・・・」」

「・・・・・・じゃあいいよ、出してあげる。」

 

!よし!

 

「その代わり、次もちゃんと来てね。約束だよ?」

「も、もちろんさ!な?」

「ああ、もちろんだ。約束させてもらう。」

 

矢島とともにアリスの条件を飲んで返事を出す。

 

「そう・・・じゃあ二人とも、こっちに来て。」

 

アリスはそう言うと、さっき入ってきた扉から廊下に出て行く。

俺達はそれに続いて歩いていく。

 

 

「{コツコツコツコツ・・・}はい、ここが出口だよ。」

 

少しの間歩くと、目の前に俺達が入ってくる時と同じような扉の元までたどり着いた。

アリスはポケットから鍵を取り出すと、それを扉のカギ穴に差し込んで鍵を開け、扉を開く。

扉の先には、来る時と同じような暗闇が広がっていた。

 

「ここをずっと歩いていけばお外に出られるよ。」

「そうか。」

「ただ、途中で何があっても絶対に振り向いちゃだめだからね。振り向いたら・・・」

 

永遠に現実に戻ってこられないんですね分かります。気分を害さない様に口には出さないが。

 

「あ、でも皆みたいにオトモダチになってくれるなら振り向いてもいいよ。よかったら今ここで・・・」

「「何があっても絶対に振り向かないことを天地天明に誓わせて頂きます!」」

「えぇ~~~?」

 

えぇ~じゃねえよ。俺はゾンビなんて絶対ごめんだ。

・・・吸血鬼になら一時的になったことはあるけど。

 

「それじゃあここらで行かせてもらうわ。」

「またね、アリスちゃん。ほらそこのブラザーズ!早く行くぞ!」

「せめてジャックをつけてほしいホ!またねー!」

「今度もおいしいお菓子を期待してるホ―!」

「うん、またねー。」

 

やれやれ、これでやっと帰れる・・・{ガシッ}あら?

 

「どうしたよ、アリスちゃん?」

 

他の三人が扉の先の暗闇に消え、俺も扉をくぐろうとした瞬間、アリスに手を掴まれて聞き返す。

どうでもいいがひんやりしてて結構不気味だ。

 

「ふふ、アリスね、約束護るひとは好きだよ?嘘つきは大嫌いだけど・・・泰寛お兄ちゃんはどっちかな?」

「なんだ急に・・・約束は守る方だぞ。出来ない約束はしないがな。」

「ふふふ、そっかー・・・アリスはね、正直な人も好きなんだよ。」

「・・・そうか。」

 

含みを持たせたセリフに、俺は変に気に入られても後が面倒だと思いながら端的に返す。

まあ若干手遅れと言えなくもないが・・・

 

「また来てね、絶対だよ?」

「ああ、また来るよ。」

「・・・・・・絶対、だよ?」

「分かってるよ。」

 

しつこく念を押すアリスにそう返し、俺は先に行った三人と同じように扉をくぐって歩いていく。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・フッフッフッ、やはり子供だな。いつ来るかを明言したわけじゃないから来るタイミング自体は俺次第だということに気が付いていない!はっはっはっはっはっは!

まあいざって時に躊躇してしまう要因は出来るだけ増やしたくないし、これも一つの策ってやつだよ!ハッハッハッハ・・・

 

「・・・不思議なお兄ちゃん、あんまり来るのが遅いとこっちから遊びに行っちゃうから・・・そうならないようにしてね。アリス、嘘つきは大嫌いなんだから・・・」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

(・・・・・・あっるぇ~~~~?これひょっとしてひょっとする?)

 

底冷えするような声ととてつもない殺意、悪魔特有の不気味な気配を背中にヒシヒシと感じながら、俺は真っ暗な道をひたすら歩いて行った・・・

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「ねんがんの そとに でられた!」

「ころしてでもひきもどす!」

「やめい!・・・どうした、さすがに疲れたか?」

「まあそれもあるが・・・いや、子供ってみるべきところはちゃんと見てるんだなぁ~って思って・・・」

「?」

 

やれやれ、にしても今日は疲れた。時間は・・・八時前か。もう少し経ってると思ったが存外そこまでかかってないな。

 

「・・・あれ?そういえばジャックブラザーズは?」

「お前が出てくる少し前に契約して別れたよ・・・あ、やべ!」

「どうした?」

「俺、よく考えたら昼休みに拉致されてた・・・ひょっとして無断で早退してる感じ!?」

「そんなに前から拉致されてたのかよ。大変だな・・・」

「いったい皆にどう説明すれば・・・このままじゃ間違いなく怒号が飛んで来る・・・!!」

「ハハハワロス。ついでに博士への連絡も忘れるなよ。」

「・・・梶原、ヘブンズ・ドアーってあったよね?」

「いったい何人にかけると思ってんだそれ。明日は普通に学校あるしどうあがいても無理だ、甘んじて受け入れろ。」

「なん・・・だと・・・」orz

 

その後は、適当にダラダラしながら帰路を歩いていく・・・・・・

 

 

 

「・・・あ、そうだ矢島。博士にひとつ頼み事しといてくれない?」

「?いったいなんだ?」

「ああ、ちょっとな・・・」

 

俺は矢島に、おそらくこれから必要になってくるであろうものの説明をする。

 

「・・・・・・・・・・・・・・なるほどな、俺一人だとそろえるのは一苦労だし妥当っちゃ妥当か。いくつくらい要りそうなのよ、それ。」

「う~ん・・・まあとりあえず市内全域を覆えるくらいの効果範囲が欲しいからそのあたりは応相談で。」

「おkおk。よく話し合っとく。」

 

・・・・・・さて、俺の家はこっちだから・・・そろそろ別れるころか。

 

「それじゃあ家こっちだから、じゃあな。」

「おう、説得頑張れよ。」

「トホホ、つらいなぁ~~・・・」

 

その後は冗談を交えながら、矢島と別れて俺は自宅に帰った。

 

 

 

 




ステ振りは真女神転生SJを参考にしております。

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