デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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すっかり遅くなってしまった・・・これもクレヨンしんちゃんが悪いんや・・・劇場版がすごく面白いのがいかんかったんや・・・


第三十六話

―――泰寛たちがアリスの機嫌を取り、何とか廃ビルから脱出した日の翌朝、高町家にて・・・

 

---ガチャッ

 

「なのは、調子はどうかしら?」

「あ、お姉ちゃん。」

 

自室のベッドで疲れた表情をしながら横たわっているなのはの元へ、彼の実の姉である高町美由希が訪れる。

 

「うん、今は大丈夫だよ。」

「本当?もう、今朝急に倒れてびっくりしちゃったわよ。」

 

美由希はなのはのベッドに座りながらそう言うと、なのはは気にし過ぎだと笑う。

しかしその表情にはまだ疲労が目に見えていた。

 

「まったく強情なんだから。誰に似たんだか・・・」

「にゃ、にゃはは・・・」

「とにかく、学校の先生には連絡入れておいたから今日はしっかり休んでおきなさい。」

「うう、はーい。」

 

美由希はその後、なのはをベッドに寝かせて部屋から出て行く。

 

「・・・・・・はあ、なんか昨日から変だなぁ・・・」

 

(夢の中で見えてた人影や声がだんだん近寄ってきてて、昨日はあんまり眠れなかったなぁ・・・何なんだろ、いったい・・・)

 

なのはは自分の状態にため息をついて、寝ころびながら天井を見つめる。

 

「ちゃんと寝て休まなくちゃいけないのに・・・寝たくないなぁ・・・」

 

しかしそんなことを言いながらも数十分後には意識が落ち、そのまま寝息を立てて寝てしまった・・・

 

 

 

 

 

 

 

『フフフ、良いゾォ・・・アトもう少しでコノ娘と、コノ娘ノ持つ大量のまぐねたいとハ我がモノに・・・フフふ、ハハハはアハはハハハ!』

 

自分の中で、知らないうちに巣食っている『ナニカ』に気が付かないまま・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

side:梶原 泰寛

 

---キーンコーンカーンコーン・・・キーンコーンカーンコーン・・・

 

{カリカリカリカリカリ・・・パタンッ}・・・ふう、ようやく昼休みが来たか。これでようやく授業中に思い付いたことが確かめられる。

 

「それではみなさん、放課後に渡辺先生からプリントが渡されますから次の授業までにやってきてくださいね。西さん、挨拶をお願いします。」

「はい。起立!礼!着席!」

「「「「ありがとうございました!」」」」

 

日直の挨拶と全員の号令により授業の終わりが告げられる。

そして先生が教室から出て行った直後、皆が自分の昼飯を取り出して思い思いの食事をし始める。

 

「さて、そろそろ俺も準備を{ピリリリッピリリリッ}ん?」

 

なんだこれ?メール?なになに・・・

 

『  た  す  け  て  』

「・・・・・・・・・」

・・・・・・見なかったことにしよう・・・

 

「ヤスー、俺らも一緒に食おうぜー!」

「そしておかずの交換ギボンヌ!」

「おー、ちょっと待ってくれ。先にトイレ行ってくるわ。そしてヤスはやめんかい。」

「わかった。」

 

俺は森山と猪口の返答を聞いた後、皆の所に行く前にトイレ・・・・・・・ではなく、校舎裏の人目につかなそうなところまで移動する。

 

「さてと、この辺りでいいかな・・・」

 

念のため周囲の安全確認をしてから、俺は倉庫からアンダー・ワールドとハーミット・パープルのディスクを取り出して装備する。

 

「さてと・・・・・・チッ、まだ奴は来てないか。となると・・・」

 

俺は欲しい情報をアンダー・ワールドの能力で検索し続ける。

 

(今回の主犯格の記録は、この市内のどこかに異界を作るための術式を施したと言った。ならば本命を打つ前にその下準備をある程度切り崩していけばあるいは・・・)

 

これは・・・違うな。これも違う・・・ならもう少し検索を絞って・・・・・・・・・・・よし、ヒット!後はハーミット・パープルでPCに念写して・・・・・・記録を取って・・・・おっし、次に調べた内容をメールに添付して送信と・・・・・・よっしゃ、これで完了だ。

後は放課後辺りに近い場所から探索をするか。悪魔がすでに出現してたら矢島を呼ぶって形で。

 

「さ~て、俺もとっとと飯にするか。昼休みもそんなに長くないし。」

 

ディスクを倉庫に直し、俺は自分の教室に戻る。

教室の一角では森山達が楽しそうに弁当をつついていた。

 

「おいーっす、戻ったぞ。」

「お!来た来た!」

「ホラ、ここに入って!」

「おう、ありがとな。」

 

クラスメイトの開けてくれた場所に弁当と椅子を持って入り、俺も弁当を広げる。

ふふふ、張り切って作った豚の生姜焼きと甘酢餡のかかった唐揚げが見るだけで食欲をそそる・・・

 

「お!今日もなんかうまそうなおかずが・・・いただきぃ!!」

「うおおおおおおそれをよこせぇえええ!!」

「ちょ!勝手にとるなっていうww」

 

そんなこんなで暫くの間、メインのおかずを死守するのに時間を費やしてしまった。

やれやれ、こういう平和はいくらでもあって欲しいもんだ・・・

 

side out

 

 

 

side:矢島 敬一郎

 

拝啓 梶原君 そちらは元気にやっているのでしょうか。

僕はとても元気にやっております。

昨日僕が昼休みに連れ去られた件についてですが、帰宅途中で何とか無い知恵を振り絞ることにより作れた催眠魔法で家族と教師の人たちは何とか誤魔化すことが出来ました。

唯一魔法を知るなのはに極力ばれないよう使った上に、今日はなのはが風邪で休んでいるおかげで世間体だけは今のところ問題ないです。

スカリエッティさんたちについてもバス停につく前に転移魔法を使い、彼が新しく建てたらしい研究所に直接お詫びを入れにいったため問題はありません。

収拾した悪魔を渡すのも、必要な物の頼みごともすでに終了・・・問題は順序良く解決することが出来ました。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・ただ・・・

 

---ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

「{ニコニコ}ねえ、ケイイチ・・・あんたなんで昨日いなくなってたのかしら・・・」

「{ニコニコ}黙ってないでちゃんといってよ・・・私達、怒らないから・・・ね?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

(ふふふ、今日はやけに良い天気だな・・・誰かのために戦うというのがこんなにも清々しい物だったなんて・・・)

---ガシッ ミシミシミシミシミシ

「プギャァアアアアア!か、肩が!肩がぁあ!?」

「呆けてないで答えなさいよ、ネ♪」

「も、もう無理逃避が追い付かなアババババババババババババババ!」

 

目の前の友人二人がかつてないほど怖いです・・・!

 

「ケイイチ・・・私もね、別に無理やり聞くのは趣味じゃないのよ?でもね、いくらなんでも何事もなかったように登校してくるのはさすがにないと思わない?」

「そうだよ。さすがに今回くらいは教えてくれる・・・よね?」

(やべ―!めっさコエ―!昨日のアリスとか目じゃないくらいやべ―よこれ!!)

 

もういっそ何もかもぶちまけたい・・・!けどそんなことしたらよけい大変なことになりそうで言えない・・・!!

 

(もういっそのことばらしちゃったほうがいいんじゃないかホ?)

(んなわきゃねえでしょ!悪魔に誘拐されたとか常識的に考えて言える訳が無い!)

 

COMPから話しかけてくるジャックフロストの提案を速攻で撥ね退けてまた手を考えるが、全く持っていい手が見つからん。

 

「さあケイイチ、観念してはいちゃいなさい・・・」

「ちょ!無理やりはラメ―!」

 

く!アリスのステータスを見た時並みの子の絶望的状況、さすがにこいつらに魔法を使うのは躊躇われるしどうすれば・・・!

 

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

 

お互いに黙り込んだまま、暫くの間睨み合いが続いていく。

・・・ヤバイ、正直言って間が持たない。クソォ、なぜこんな時に限ってなのはが来ていないんだ。あいつが来ていればギャグ一直線から誤魔化しがいくらでも聞くっていうのに・・・!

 

「・・・なによ、そんなにあたしたちに言いたくない訳?そんなにあたしたちが信じられないの!?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

・・・とはいえこれ以上の現実逃避は・・・もう無理か?こいつらは下手なやり方では誤魔化せない・・・

 

 

 

 

・・・・・・けど・・・

 

「・・・・・・わりい、信じる信じないに関係なく今はまだ話せない。」

「まだってどういうことよ・・・」

「まだ終わってないってことだ。」

「・・・危険な事なの?」

「ああ、知らない方が・・・いや、知ってる方が逆に危険だな。」

「・・・そう・・・」

 

アリサは一言そう答えると、背を向けて扉の方へと歩いていき・・・

 

「・・・・・・終わったらちゃんと説明してもらうからね!覚悟しときなさいよ!」

 

そう叫んで教室を出て行った。

 

「・・・相変わらずのツンデレ発言、とでもいえばいいのかね。」

「は、ははは、ちゃんとわかってるんだね・・・」

「当たり前だろ。何年お前らと友達やってると思ってんだ。」

 

あいつ自身が良い奴だってことは今までの付き合いで十全に知っているし、今回ばっかりは俺も悪いからな。

ちなみに知りもしない他人のリアルツンデレなんてものは個人的に腹立つだけだ。それだけは断言してもいい。

 

「ケイイチ君、私達が知ってもどうにもならないのかも知れないけど・・・それでも・・・」

「・・・話してほしければ話すよ。終わった後ならいくらでもな。」

「・・・うん・・・」

 

・・・はあ、こんな事になるとは・・・あ。

 

「すずか、アリサの奴大丈夫か?」

「?何が?」

「いや・・・」

 

---キーンコーンカーンコーン・・・

 

「もうすぐ次の授業が・・・」

「・・・・・・あ。」

 

・・・そこまで時間経ってないし、大丈夫だよね?

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ふう、ようやく終わった。」

 

放課後になり、みんなが教室から出て行く。

 

(チンク達の要件は終わってるから問題はない。後は梶原からきてたメールをあいつと一緒に検討して・・・)

 

はっはっは、まだまだやることがいっぱいだなぁ・・・さすがにちょっと休みが欲しい(^^;)

 

「あ、ちょっと待ちなさいよ。」

「ん?」

 

教室から出ようとしたところで、アリサに呼び止められる。

 

「今日なのはが休んじゃったでしょ?良かったらお見舞いに行かない?」

 

・・・ああ、そう言えばそんなこともあったな・・・転移で行けば距離は関係ないし、あいつ案外寂しがり屋だからいっておくか。

 

「わかった。けど親に頼まれてたことがあったからそれが終わったら行くよ。」

「わかったわ・・・じゃあいきましょう。」

「うん。」

「おう・・・あ、そう言えば・・・」

そんなに時間はかからんだろうけど一応梶原に連絡入れておくか・・・

 

(『なのは今日風邪で休んだお。今からお見舞いに行ってクル―≡≡≡ヘ(*--)ノ』っと、これでよし。)

 

すずかたちと一緒に学校を出て行き、俺はバスに乗って自宅の方へと向かっていく。

 

「じゃあまたな。」

「うん、また明日。」

「・・・・・・・・・」

(やれやれ、しばらく機嫌は直りそうにないな。)

 

肩をすくめながらバスを降り、俺は自宅の方へと歩いていく・・・・・・

 

「・・・・・・このあたりでいいか。」

 

・・・と、見せかけて人目につかない所に移動し、人避けの結界を張ってそれごとなのはの家の前に転移魔法で直行する。

 

「{ピーンポーン}すみませーん、なのはちゃんはいますかー。」

 

玄関のチャイムを鳴らして呼びかけてみる。

暫くすると・・・

 

「はーい、どなたですか・・・ケイイチ君か、どうしたんだ?」

 

玄関を開けて恭也さんがお迎えしてくれた。

 

「こんにちわ。なのはが風邪をひいたって聞いたからお見舞いをしに来ました。」

「そうか、それはよくきてくれたね。ホラ、なのはも今なら起きてるしあがりなよ。」

「失礼しまーす。」

 

恭也さんに案内され、なのはの部屋に静かに移動する。

 

「あれ?ケイイチ君・・・」

「ういーっす。お見舞いに来ちゃったよー。」

 

部屋の中に入ると、若干疲れた様子のなのはがベッドに寝ていた。

 

「にゃはは・・・ありがとうね。」

「おう、つっても思ったより元気そうだな。」

「うん。もう、みんな大袈裟なんだから・・・」

「おいおい、皆の前でぶっ倒れておいて大袈裟な訳ないだろう?」

「お、お兄ちゃん!」

 

恭也さんのツッコミに対してなのはは恥ずかしがって声を荒げる。

見た目よりよっぽどヤバかったみたいだな・・・

 

「まあ元気そうでなによりだ。多分後からすずかやアリサ達も来ると思うからそっちにもよろしく言っておいてちょうだいよ。」

「あれ?もう帰っちゃうの?」

「おう、これからちょっと予定が入ってるからな。」

「そっか・・・それじゃあまたね。」

「おう、じゃあな。」

 

別れの挨拶をしてなのはの部屋から出て行く。

さ~て、また忙しくなるぞ~(^ω^;;)

 

 

『・・・・・・ヒホ~~、なんか変だホ。』

「ちょ!?こんなところで声を出すなし!」

 

不意にジャックフロストの声がデバイスから放たれ、俺はデバイス越しにジャックフロストに注意する。

仲魔とのコミュニケ―ションは大事かと思ってつけた会話アプリだが、せめて繋げるかどうかの確認機能もつけるべきかもしれんね・・・

 

『ケイイチ、さっきの子供の所まで戻って欲しいホ。なんか見知ったニオイがプンプンしたホ。』

「え?もう別れの挨拶もしちゃったんだけど・・・」

 

あんだけ綺麗に別れの挨拶しておいて今更やっぱり帰らないとかなにそれ恥ずかしい。

 

「だいたい見知ったニオイってなんだよ、嗅ぎなれたニオイの間違いじゃないのか?」

『そうともいうホ。』

「そうとしか言わないと思う・・・で、その匂いってなんだよ?」

『えっと・・・』

 

---ガシャァアアンッ

 

「!?なんだ!」

 

突然なのはの部屋の方から陶器の割れるような音が鳴り響き、俺は走って向かう。

 

「{ガチャッ!}おい!どうし・・・なんだこりゃ!?」

 

部屋の中にはいってみるとベッドの傍にあった窓が割れていて、恭也さんは咳込みながら床に倒れていた。

 

「ちょ!恭也さん!これいったい何があったんすか!?」

「ゲホゲホ・・・すまないケイイチ君!なのはを追ってくれ!」

「なのは・・・もしかしてこれなのはが!?」

 

いったい何があったらこんなことに・・・

 

「そうだ、いきなり苦しみだしたと思ったら突然・・・くっ!なのは!」

「あ!・・・クソ!とりあえず追跡しないと!」

 

(えっとなのはの魔力反応は・・・いた!そこまで遠くはないな!)

 

なのはの魔力反応を探知し、俺も靴を履いて追跡を開始する。

 

「ジャックフロスト!さっき匂いがどうとか言ってたよな!あれってどういう意味だ!」

『ヒホ?ヒホ~~~・・・なんて言うか、オイラタチみたいな悪魔の匂いが人間の匂いに混ざって匂ってた気がするホ。』

「・・・考えられるなのはの状態を簡潔に説明してくれ。」

『悪魔に憑りつかれたホ。』

「・・・・・・あれ?結構やばくない?」

『多分かなり悪魔に乗っ取られかけてるホ。言うまでもなくやばいホ。』

「・・・助けられないとどうなる?」

『悪魔に乗っ取られた人間の末路なんて最後は悪魔の餌以外ないホ。あの子かなりマグを持ってたからきっと格好の的だったんだホー。』

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

  ま  ず  い  ! !

 

 

「いそげぇぇええええ!!」

 

なんてこった!まさか知らない所でこんなことになってるとは!!

 

「{タッタッタッタッタッ}・・・!みぃつけたぁぁああああ!!」

 

そこまで時間が経ってなかったおかげですぐになのはの姿を見つけられた。

近所の空き地か、人目につかない所なのはいいが・・・

 

「う、ううう・・・」

 

やべえ、さっきと比べ物にならないくらいやつれてやがる・・・!!

 

「なのは!しっかりしろ!」

「け・・・ケイイチ、君・・・」

 

念のためプロテクションの準備をしながら、用心深く近寄っていく。

 

「だ、ダメ・・・こっちに来ちゃ・・・あ・・・」

「あ、おい!」

 

あとちょっとで手が届くというところで、不意になのはが地面に座り込む。

 

「おいジャックフロスト・・・憑りついた悪魔と無難に剥がす方法ってないのか?」

『一番都合がいいのは悪魔自身が離れることだホ。けど・・・』

 

ジャックフロストが言葉を切ったところで、下を向いていたなのはが顔を上げる。

 

「・・・・・ふ、ふふふ・・・ふふふふふふふ。」

「・・・・・・・」

 

な、なぁ~んか嫌な予感が・・・

 

「あの時はまんまと騙し遂せたと思ったが・・・存外腕はあるようだな、若きデビルサマナーよ。」

『そんな甘い話はないホ。』

「デスヨネー。」

 

ジャックフロストのごもっともなセリフとデビルサーチャーの強い反応、名のはのなのはらしからぬ発言にそんな言葉が漏れる。

 

「お前、何者だ?」

 

俺がそう聞くと、憑りついている悪魔はなのはの顔を歪ませて不機嫌そうになる。

 

「無礼者が!相手に名を聞く前にまず自分から名乗るのが礼儀というものだろう!」

「・・・俺は矢島敬一郎、一応新米のデビルサマナーだ。」

「ふむ・・・まあよいだろう。我が名はデカラビア。サマナーよ、この私に何のようだ?」

「分からないわけじゃないだろう・・・その子を今すぐ解放してもらおうか。それも無事にだ。」

「ふむ、まあ先ほどの会話からしてその要求は自明の理よな。」

「それじゃあ・・・」

「断る!より力を得てこの世界に出るチャンスを、たかだか小娘一人と雑魚一匹のためにわざわざ潰す意味もないわ!」

 

声高々とそう宣言する悪魔・・・デカラビア。

まあ予想通りと言えば予想通りか。なら・・・

 

「ならどうすればそいつから出て行くんだ。こういっちゃなんだがマグネタイトもマッカも結構持ち合わせはあるぞ。」

 

何とかして交渉に持ち込もう。俺らにその手が無い以上自主的に出て行ってもらう他はない!

 

「ほう?この私と交渉しようというのか。」

「まあな、無理やり出そうとしたらなのはに負担がかかるだけだし。」

 

俺がそう言うと、デカラビアは興味深そうに俺を見る。

 

「クックック、殊勝な判断だな。いいだろう、興が乗ってきた。その交渉に付き合ってやる。」

 

デカラビアはそう言うと顎に手を当てて考え始める。

 

「ふむ、そうだな・・・10万MAGよこせ。そうすればこの娘から出て行ってやろう。」

「10万か・・・」

 

えっと今もってるマグの量は・・・うわ、ちょうどぴったりだ。

 

「一つ聞くが・・・10万MAGもらったら本当に出て行くんだよな?一回で手からもう一度憑りつく、なんてことはないよな?」

 

「安心しろ、それだけ得られればこんな小娘に拘る必要もない。さあどうする?今ならこの娘の命は助かるぞ?クックック・・・」

 

なるほど・・・なら大丈夫・・・か?襲われたとしても逃げる気力はあるし・・・

 

「OK。きっちり10万MAG渡そう。」

「・・・ほう、出任せなら承知せんぞ小僧。」

 

俺はデバイスの腕輪をデカラビア(が憑りついたなのは)に向け、マグネタイトを渡そうとする。

ふぅ~、これでようやくなのはが戻る・・・

 

 

 

 

「見つけたぞ!我(俺)の嫁よぉ――!!」

 

---ヒュゥウ――――・・・ザンッ!!

 

「「・・・・・・・・・・・・・は?」」

 

なぁんか聞き覚えのあるセリフとともに、俺とデカラビアの間になにかが土煙を巻き上げながら着地した。

こ、この後ろ姿はまさか・・・

 

「話はきかせてもらったぞ我が嫁よ!病気にかかっているというのにそんなことをしていても治らない!さあ今すぐ俺の胸に飛び込んで来い!俺の熱でお前の病気などたちどころに治してくれようぞ!」

「な、何だ貴様!いきなり現れて無礼だぞ!くそ、寄るな気色悪い!」

 

ああ、間違いない・・・このいつものウザったい口調にウザったい態度・・・デカラビアのこの反応・・・

奴が来てしまったか・・・

 

「界統・・・こんなタイミングで出てくるのかお前・・・」

「おーい!ケイイチ君!」

 

そしていつの間にか、恭也さんまでこちらに駆けつけてきた。

なんつータイミングで現れるんだアンタ・・・

 

「はぁー、はぁー・・・いったい何が起こっているんだ?界統君はいつも通りとしてなのはの雰囲気が異常だぞ!」

「エー、あー、自分でもなんていったらいいのか・・・」

 

こういう時、ホントになんていったらいいんだろうな・・・正直にそのまま話してもただの変人奇人だろうな、間違いなく。

 

「ハハハ!相変わらずツンデレ具合が光っているなーなのh・・・グフォ!」

「ええい!いい加減はなさんかこの無礼者が!おい!この気持ち悪い男は貴様の差金か!?」

「失礼なことほざいてんじゃねえ!そいつとは無関係だ!」

「お、おう・・・そうか。」

 

まったく、なんて失礼なことをほざくんだこの野郎・・・てそんな場合じゃねえ!

 

「なのは・・・じゃないな、何者だお前は。」

「ふん、最近は礼儀のなっていないものが多い・・・ええいうっとおしい!寄るなこのゴミめが!」

「な!?いくら嫁といえど許さんぞ!」

「こ、この小僧が・・・人間の餓鬼風情がこの私にここまで無礼を・・・・・・もう許さないぞ!娘は返さん!貴様ら全員ここで食らってやるぞ!!」

 

・・・え?嘘・・・

 

---ブォッ

「は?{ドボォ!}ぐぇふ!?」

「な、なのは!?」

「何やってくれてんだあの馬鹿やろう!!」

 

やばいやばいやばい!!なのはの背後に一つ目のヒトデみたいなのがぼんやり出てるし威圧感が半端じゃねえ!!

本当になんてことしてくれてるんだあの野郎!折角うまくいきそうだったのに!

 

「ケイイチ君、これはいったい・・・」

「言ってる場合じゃありませんよ!恭也さんはその馬鹿捕まえて逃げて・・・」

「逃がすと思っているのか貴様ら!アギダイン!」

「うおあ!?」

「プ、プロテクション!!」

 

咄嗟に馬鹿と恭也さんを掴んで引き寄せ、デカラビアから放たれた複数の巨大な豪火球に向けてプロテクションを張る。

 

---ドドドドドドドォン!!

 

「{ビキビキビキ}ぐぉおおおおおおおおおお・・・・・・らぁっ!!」

 

フルパワーのプロテクションに大きく罅が入って内心ビビりながらも、プロテクションの向きを変えて火球を何とか逸らす。

あ、熱い・・・!!

 

「ふん、そこそこやるようだな小僧・・・だが次のは防げまい!」

 

!?なんだこの感じ・・・なにかがやばい!

 

「ケイイチ君!何がどうなっているんだ!なのははいったい・・・」

「アンタはいつまでそこにいるんだ!いいから行けって言ってんだろうが!」

「そう言う訳にはいくか!なのはがこんなことになっているんだぞ!俺一人でおめおめと逃げられるか!」

「アンタが敵う相手かよ!いいからさっさと逃げて・・・」

「話はもういいか・・・?」

「・・・・・・・・・・・」

 

・・・あ、ヤバイ・・・理屈じゃないがこの攻撃は防げない・・・そんな予感がひしめいてる・・・

 

「ククク、いいぞぉその表情。実に愉快だ。」

「な、何だこれは・・・」

 

これから起ころうとしていることを俺以上に察したせいか、恭也さんは青い顔をしている。

 

「チィ!バインド!」

「ん?なんだこれは?」バキバキッ

「・・・まぁじで?」

 

時間稼ぎのつもりで何重にもかけたバインドがあっさりと破壊される。

 

「もう遅いぞ小僧ども・・・この私に働いた無礼、死をもって償わせてやる!」

 

デカラビアは力を集中させたなのはの手をこちらに向ける。

 

(クソ、万事休すか・・・)

今まさに放たれようとしているそれに、俺は覚悟を決めて目をつぶる・・・

 

 

 

「その身で味わえ!カースエピタフ!」

「「ッ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」

 

あれ?全然来ない・・・結構時間が経ったのに・・・というか気配がどんどん薄れて・・・

 

「{チラッ}・・・あれ?」

 

「だ、誰だ・・・貴様は・・・・・・私が・・・きえ・・・・・・・・・私?私は・・・・・・・わた、死・・・ワレ?ワタシ?ワレ・・・ワレ・・・だ、れ・・・?」

 

なんだ?デカラビアの像が消えて・・・ていうか後ろにいるのは!?

 

「{ガシッ}やれやれ、たかが見舞い程度でこんなことになるなんて・・・こりゃますますゆっくりしていられないな。おい、二人とも大丈夫か?」

 

「お、お前は・・・お前は・・・!」

 

デカラビアの気配が完全に消え、気絶したなのはを優しく抱き留めた存在に、俺はどもりながら叫んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は・・・梶原 泰寛!!」

「Yes,I am!」

 

チッチッチ!

 

 

 


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