デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録 作:enigma
堕天使 デカラビア
Lv.58 NEUTRAL-CHAOS
HP:450
MP:240
力-37 知-47 魔-55 体-43 速-30 運-30
物- 銃-耐 火-耐 氷-耐 電-耐 衝-耐 破- 呪-無
[スキル]
アギダイン
マハラギダイン
マインドチャージ
カースエピタフ
アナライズ
テトラカーン
スクカジャ
ヘルズアイ
永眠の誘い
トラフーリ
メギド
それでは本編をどうぞ!
side:梶原 泰寛
「じゃあまた明日ねー。」
「おーう。」
学校の授業も終わり、俺はいったん自宅へと足を運ぶ。
今頃矢島の方は、スカリエッティといろいろお話をしている頃だろう。
「{コツコツコツコツコツコツコツ}・・・・・・・・・ん?」
曲がり角を曲がった先の大通りで、結構な規模の人だかりができているのが目に入る。ついでになんか焦げ臭い気もする。
「(なんだこの人だかり。なにかあったのか?)すみませーん、なにかあったんですか。」
「ん?ああ、二、三十分か前にこの辺りで自動車事故があったんだ。」
「事故?」
「ああ、十台近い数の自動車が一気に起こってな・・・幸い死人は出なかったみたいだが自動車同士の正面衝突やら其処ら辺の建物やらにぶつかったせいでこの辺りがめちゃくちゃなんだよ。」
んなことがあったのか・・・あ、ほんとだ。よく見ると車とか建物がメチャクチャになっとる。家があるとこ近いのにあっぶねえな。
「なんでこんなことになったんですか?いくらなんでも十台一気はおかしいと思うんですが・・・」
「さあなぁ・・・意識の有った奴の話だと道路の植込みの部分を猛スピードでバイクが通り過ぎたらしいんだが・・・」
はあ?誰だそんな馬鹿な真似したやつ。昔の暴走族でも昼間っからどそんなところ走る命知らずはいなかったと思うが・・・
「・・・実際にきたら驚きますね、それ。」
「ハハ、確かにな。でも事故起こした連中の話じゃどうもそれだけじゃないらしいんだけどな。」
「?それだけじゃないっていうのは?」
「いやな、そのライダーってのがどうも・・・乗ってる奴の顔が骸骨で、バイクの車輪が炎で覆われてるって言われてるんだよ・・・」
「・・・ハイ?」
あれ?俺のことじゃないよな?前に二、三回フルフェイスマスクをつけてキックボードで駆け回ったことがあったけど俺じゃないよ?
「ははは、まあそうなるよな普通。俺も又聞きしただけだから詳しいことは知らないんだけどさ・・・ホラ、見てみろよあそこ。」
「?」
俺は話していたお兄さんにそう言われて前の方に出る。
「よいしょ・・・なんだこれ?」
路上をよく見てみると、道路の真ん中にある植木の部分とその周辺部分がかなりの距離分ボロボロになっていて、燃え残った部分が微かに燃えながらパチパチと音を立てていた。
「見れたか?」
「ええ、まあ・・・何なんですか、あれ。」
「さあな~、でもわかっただろ?あれが噂に拍車をかけてる原因さ。いやぁ~ホント怖いよねぇ~。」
「・・・・・・」
怖いとかそんなレベルの話じゃないと思うんだが・・・ていうかこれもしかして・・・
「目撃者は他にはいなかったんですか?通行人とか・・・」
「いや、俺も事件に鉢合わせたわけじゃないからな・・・」
「そうですか・・・」
・・・このことはあとで検証してみるか。
「失礼します。」
「ああ、気をつけろよ。」
野次馬のお兄さんと別れて俺は再び歩いていき、家路につく。
「さてと・・・アンダー・ワールド。」
荷物を置いてから庭に行き、俺はアンダー・ワールドでさっきの事件の記録を掘り起こす。
『ヒィ――――ヤッハッハッハッハッハッハッハッハッハァ――――!!良いぜェこの感じ!!魔界の風も最高だがこっちの風も良いじゃねえかァア!!ハッハァ――――――!!』
「・・・・・・能力解除。」
---フッ
掘った穴から飛び出してきた、さっきのお兄さんが言ってたような骸骨のライダーの記録を能力を解除して消す。
(・・・間違いねえ、日常に悪魔が侵食して来てやがる・・・まさか知らない間にここまで・・・)
しかも今の奴、異界でもないのに外で暴走してやがった。早く片を付けなければさらにとんでもないことになっちまう!
「あれはさっさと始末する必要があるな・・・えっと、ハーミット・パープルは・・・」
---ピピピピッ ピピピピッ
「ん?メールか?」
こっちも割と暇じゃないんだがな・・・矢島からか。一応確認しておこう。
「えっとなになに・・・なのはの見舞い?」
(あいつ風邪にかかったのか・・・まあ時間が無い訳じゃないし、どうせだから矢島と合流もかねて調べる前に行っとくか。)
掘り返した地面を元通りにし、玄関にカギをかける。
「さて、とっとと行きますかね。」
キックボードに乗り、なのはの家まで急ピッチで向かう。
そして約三十分ほどの時間をかけ、なのはの家に到着した。
「{ピーンポーン}すみませーん、なのはちゃんのお見舞いに来ましたー。」
・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?誰も出ない・・・
「{ピーンポーン}すみませーん・・・・・・妙だな、誰も反応しねえ。」
つうか・・・人の気配がない?なのはは寝てる可能性があるから何とも言えないが他に誰もいないのか?
「・・・・・・あんまりチャイム鳴らしても煩いし、今日は帰るか。」
今回はあきらめて、なのはの家に背を向ける。
まったく、無駄骨だったな・・・
---ドォオオ―――――ン!!
「!?なんだ!」
キックボードに乗って地面を蹴ろうとした瞬間、突然凄まじい音が鳴り響き、反射的のその方角を見てしまう。
(場所はそこまで遠くない・・・何が起こってるんだ!?くそ!)
現場を確認するため、スタンドと連動して走った。
(まったく、次から次へと問題が起こりやがって・・・!!)
「とまあ、そんなこんながあってなのはの後ろから合流できたってわけだ。」
なのはの家から少し離れたところで俺と矢島は、道を歩きながらお互いに今までの経緯を説明し終わる。
ちなみになのはと恭也さんは(恭也さんの方は記憶を消した状態で)先に家に帰してある。
あとなのははかなり疲労がたまっていたものの、記憶も精神も異常が見られなかったから足を少々洗ってベッドに戻してきた。
「いやぁ、マジで助かった。あれ止められなかったら本気で死ぬとこだった・・・」
矢島は未だに青い顔をしながら、俺の隣を歩きつつそう言う。
まああの悪魔、後ろから見た感じ呪殺系の魔法を唱えようとしてたからな。即死の可能性があった以上当然の反応だ。
『・・・あれ?けどどうやってあれを倒せたんだホ?あの状態から引き剥がすのはほぼ不可能なのに・・・』
「(あれ、ジャックランタンの声・・・ああなるほど、COMPから話しかけてきてんのか。)ああ、それはな・・・」
俺はさっきなのはの体から抜き取ったものを取り出し、矢島に見せる。
「なんだそのディスク?いつものあれか?」
「いや・・・あの悪魔の記憶と精神だ。」
「『『・・・え?』』」
「いやだから、なのはに憑りついてた悪魔の記憶と精神だ。呪殺魔法のタメをしてる間にホワイト・スネイクをそう・・・もとい出してたんだよ。そんで唱えてる間にこう、シュパッとな。」
今まで出てきたのよりは相当強そうだったが、なんか人間のに比べて自我が薄いしもともと肉体やなのはの精神と拒絶反応を起こしていたおかげなのか普通の人間のそれを取り出すよりも遥かに簡単だった。
悪魔なんてもともと概念の存在だし、やろうと思えばこんな物なのかもな。
『ほわいとすねいく?しゅ、シュパッと?』
『よくわかんないけど・・・そ、そんなスリみたいな感じでうばっちゃえるものなのかホ・・・』
ま、あくまでもホワイト・スネイクあっての結果だけどな。
「へぇ~、なんにしてもよかったよ。しっかし・・・まさかなのはが悪魔に憑りつかれるとは思ってもみなかった・・・しかもあの悪魔メチャクチャ強かったし・・・」
「確かにな・・・思ってたより事態は深刻だよな・・・」
なのはという強力な力を持った者に憑りつき、それを吸収したからこそあそこまでになったとはいえ、あんなものが出てくるほどこの街にはその要素が渦巻いているということだ。
出来れば今すぐにでもその要素を排除したい。そのためにも・・・
「今から行くか、他の異界に。」
「あ、やっぱり?」
「当たり前よ。えっとまずは・・・」
ハーミット・パープルを取り出して、さっき調べようとしていたあのライダーの悪魔の場所をPCに念写する。
「・・・よし、出たぞ。」
「あれ?術式を組んだ場所は・・・ああ、さっき話してた悪魔と並行していくのか。」
「そゆこと。えっと場所は・・・丁度良い、術式が組まれたところの一つにいる。」
若干画像の景色がおかしいのは異界にいるせいだろうか・・・・・・にしても分かりやすい場所だな。ある意味ピッタリじゃねえか。
「さて皆、これから俺達はこの街で行われようとしている魔界を現実世界に顕現させる儀式を止めるため、奴らが現れる限界まで小細工と仲魔であるジャックブラザーズの強化をしに行く。」
「『『・・・』』」コクッ
「調べた結果によると、今回の事件の元凶はこの街の七か所にマグネタイトを集め続け、異界を発生させる術式を施したそうだ。恐らくそれらの、俺たちの目的とする場所はマグネタイトの濃度が最も濃い所にあると思われる。当然出てくる悪魔などもそれに比例して強いだろうが・・・俺達全員の力を合わせれば打ち勝てない物なんてないだろう。」
「『『・・・』』」
「道程は困難かもしれない。途中で本当に命を落としかねないかもしれない。それでも・・・各々の目的のために、ひいては俺たち自身の未来のために全力を持って戦おう。」
「おう!」
『上等だホ―!』
『やってやるホ!全力全開だホ―!』
良し、ちょっとベタな演説だったけど皆のやる気も十分上がった。
「それじゃあ行こうず。」
「アイアイサー。」
『『アイアイホー!』』
皆を引き連れ、俺は目的地へと向かい始める。
「ようし、ついたぞ。」
「ここが例の場所か?」
「ああ。」
三十分ほど時間をかけ、俺達は目的の場所・・・高速道路の入口前にたどり着く。
「よし、それじゃあまずは異界への入り口を探すぞ!ちゃんと姿は隠せよ。」
「OK。」
『普通の状態じゃ悪魔は人間に見えないから問題なしだホ―。』
皆で気合を入れ、異界への入り口を探す。
「えっと、空間の歪み空間の歪み・・・」
『あ、ここから入れそうだホ!』
「よくやったジャックランタン!」
俺は異界の造詣に関しては深くないから、こういう時仲魔がいると本当に助かる。
「{シュパッ}うっし!行くぞ皆!」
「『『おう(だホ)!』』」
ジャックフロストが示した空間を閻魔刀で切り裂き、開かれた切れ目から異界の中へと突入した。
---一方その頃・・・
『こ、この小僧が・・・人間の餓鬼風情がこの私にここまで無礼を・・・・・・もう許さないぞ!娘は返さん!貴様ら全員ここで食らってやるぞ!!』
(やめて・・・・・・)
『逃がすと思っているのか貴様ら!アギダイン!』
(やめて・・・!)
『もう遅いぞ小僧ども・・・この私に働いた無礼、死をもって償わせてやる!』
(動いて・・・動いてよ私・・・止めて・・・誰か・・・・・・!)
『その身で味わえ!カースエピタフ!』
(やめて・・・お願いだから・・・)
「やめてぇぇええええええええええええ!!」
---ガバッ
「・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、あれ・・・夢?」
泰寛たちが立ち去った高町家・・・その自室にて、なのはは自分のベッドで寝言とともに目を覚ました。
『マスター、御無事ですか?どこか問題があったりはしませんか?』
「レイジング・ハート・・・?えっと・・・私、確かケイイチ君が部屋から出て行った後・・・{ズキッ}!?そうだ!私確か・・・」
なのははベッドから起き上り、辺りを見渡す。
(窓・・・何ともないみたいだけど憶えてる。自分じゃない何かに操られるみたいに体が動いて、その後すぐに身体に何かがぶつかった感じと、遠くの方でガラスが割れる音がして・・・それで・・・)
そして、悪魔が自分の体を乗っ取った直後の記憶をうっすらと、少しずつ思い出していく・・・
(それで・・・少し意識が飛んだ後、なんか嫌な感じがしたと思ったら、ケイイチ君やお兄ちゃん達の声が・・・それで・・・・・・気が付いたら目の前で・・・)
記憶を半端に思い出したなのはは、机の上に置かれているレイジング・ハートを手にとって何が起こったのか聞く。
「レイジング・ハート、私、あれからどうなったの?どうしてここに戻ってこれたの?」
『ええ、実はマスターが急に外へと飛び出してしばらくした後、ケイイチ様と泰寛様がお二人を連れてここにいらっしゃいました。』
「え!?泰寛君も!?」
『ええ、マスターと恭也様を一通り手当てした後、「二人はもう大丈夫」と言ってそのまま帰っていきました。』
「そう・・・だったんだ・・・」
「・・・そういえばレイジング・ハート、なんで私がそうなったのか二人は話してた?」
『いえ、それは・・・私も聞いたのですが二人とも詳しいことはよくわからないとの事で・・・』
「・・・そっか・・・」
若干不安は残るものの、なのはは事情を呑み込めたのか落ち着き、レイジング・ハートを持ったままベッドに座る。
『マスター、本当に具合はよいのですか?』
「うん、私は大丈夫だよ。むしろねてた時よりも調子いいかも。」
なのはは軽く腕を振り、自分が元気なことをレイジング・ハートに見せつける。
『そうですか・・・あの時のマスターは尋常じゃない様子でしたので、でもよかったです。』
「そ、そうなの?」
『ええ、まるで何かに憑りつかれた様な状態でした。』
「・・・・・・・・・」
(何かに憑りつかれた様な、か。結局あれってなんだったんだろう・・・前にクロノ君たちが、この辺りの世界でおかしなことが起こってるって言ってたけど、それと私がおかしかったことと関係あるのかな?こんな時、ユーノ君やみんながいれば相談できるのに・・・)
なのはは頭を抱え、自分の身に起こったことを考える。
しかしどれだけ頭を抱えても、彼女には自分の体を自分じゃない何かが支配していたことくらいしかわからない。
『マスター・・・・』
「う~ん・・・無理!私だけじゃわかんないよ!」
『ええ、今は情報が少なすぎます。今の状態で正確な答えを出すことはほぼ不可能でしょう。』
「うう~・・・そうだね。」
なのははそう言うと再びベッドに寝転び、どことなく胸騒ぎを感じながらぼんやりと天井を眺める。
すると・・・
---キィンッ
「・・・え!?この感じ・・・」
『マスター、強い魔力反応を感知しました!恐らくケイイチ様の物ではないかと。』
「うん、私も今わかった!」
突然遠くの方で、よく知っている魔力の反応を感知したなのはは何事かとベッドから跳び起きる。
「(この感じ、練習で使うレベルじゃない!なにかあったの?)行くよ、レイジング・ハート!なんだか嫌な予感がする!」
『了解しました、マスター。なるべく早く駆けつけましょう。』
なのはは出かける用意をして、未だに自分の部屋で寝ている兄にそっと挨拶をしてから外に飛び出す。
「ジャックランタン!とどめよろしく!」
「アイアイホー!アギラオ!」
---ドォオオン!!
「グァアアア!!」シュォオーーー
「矢島、MAG回収頼むわ。」
「言わずもがな!」
異界の中に入って30分・・・俺達はカモを見つけたと言わんばかりにひっきりなしに現れる悪魔を駆逐しながらまたしても迷路のようになっている異界の中の高速道路を着実に進んでいってた。
「ヒホホー♪オイラタチレベルアップだホ―♪」←ジャックフロスト
「順調すぎるくらいに順調だホ!」←ジャックランタン
マグネタイトの回収もしっかり進み、ジャックフロストやジャックランタンたちは着実にレベルアップを重ねている。
「こっちのMAGも・・・よし、回収終わりだ!」
「俺の方も終わったぜ。さあいくぞ。」
もう集められそうなものが無いことを確認し、皆に声をかけて再び探索を開始する。
「しっかし悪魔も色んなもん持ってるんだな。特にこの宝玉とか結構高く売れそうじゃね?」
「ちゃんと売るためのルートが確立できてればそれでもいいんだけどな・・・というか俺はこんな物より現金の方が遥かに欲しい。」
女神転生の世界ならこの手の物を売る手段もあるだろうが、それが無いこの世界ではちょっと使えるアイテムくらいの認識しか持てない。
あの妙な塔で手に入れた拳銃くらいの物なら話は別なんだがなぁ~。
「オイラタチとしては回復手段はなるべく持っておいてほしいホ。」
「ああ、うん、そういえばこれで回復するんだったよなお前ら・・・ん?」
「どうした梶原・・・!あれは・・・」
無駄口を叩きながら歩いていると、道路の端に誰の物か分からない白骨がいくつも転がっているのを見つけてしまった。
地面の所々に血の跡がついていることから、これの持ち主がどうしてこうなったのかが容易に分かる。
「・・・原因は必ず取り除きます。今はせめて安らかに眠って下さい。」
「・・・・・・」
白骨の前で膝をつき、二人で静かに黙祷する。
「・・・・・・矢島、マグネタイトが一番濃いところまで後どれくらいかかる?」
「後もう少しだ。それと・・・エネミーセンサーに強い反応がある。」
「そうか・・・行こう。」
「ああ。」
暫く黙祷した後、落ちている白骨を避けて先を急ぐ。
「・・・・・・!おい、あれ・・・」
「・・・ああ・・・」
そして歩き続けた先で、突如矢島が指を刺した方向には・・・
「ようやく見つけた・・・これが術の中心か!」
数十に及ぶ白骨の下に描かれた、赤黒い魔方陣が存在した。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・それでどうするんだホ?」
「・・・・・・ここまでくれば今度から俺の転移魔法で来れる。後は梶原の言う『街に出た悪魔』を狩って終わりにしようとも思ったんだが・・・」
「・・・・・・それらしい気配が今のところねえな。」
こっちの気を窺ってるのか、はたまたタイミングが悪かっただけなのか・・・
「矢島、エネミーセンサーの方は・・・」
「う~む、今のところそれらしい気配はねえな。」
「・・・タイミングが悪かっただけか。」
「多分な。」
しょうがない、他の異界を調べに行くにはちょっと中途半端だし念写しながら張り込みでもしてるか。
「とりあえずいったん引き返してみねえか?目立たない所にこのマーカーさえ貼り付けときゃ強い悪魔が来たことくらいは分かるぞ。というか俺は腹が減ってきた。」
「しょうがない、ここはとっておきのアンパンと牛乳で手を打とうじゃないか。」
「張り込みフラグなんですね分かります。」
「シカタナイネ。」
倉庫のエニグマの紙(ダンジョンに落ちてる方じゃない)を取り出し、ネタで持ち合わせてた牛乳(パックタイプ)とあんパン(できたて)を二組ずつ取り出す。
「ヒホ~、いいなぁ~。」
「オイラタチもほしいホ!」
「・・・悪魔ってこういうの食べられるの?」
「食べられなきゃお供え物自体がないと思うホ。」
「・・・なんか違う気がするけどまあいいか。ハイこれ。」
「「やったホ―!」」
仕方なく先に取り出した牛乳とアンパンをジャックブラザーズに渡し、彼らが喜ぶ様子を微笑ましく思いながらもう二組ずつ取り出して一組を矢島に渡す。
矢島は顔の部分の装甲を部分的に解除して牛乳とアンパンを受け取り、俺も同じく食べ始める。
・・・本音を言うともっとましなところで食べたかったな・・・
「そんじゃあちょっと早いけどいただきまーす。あむ・・・」
「いただきまーす・・・お、これ結構うまいな。どこで買ったのよ。」
「近所に最近できたパン屋。なんか店長がいろんなとこで修行してたとかでほんとに色んな種類のパンがあってさ、しかもどれも文句なしにうまいのよこれが。」
「へぇ~、なかなか良さ気だな。今度俺も行ってみよ。」
「ハグハグハグ・・・すっごくおいしいホ!こういうがあるから人間の世界に来るのはやめられないホ!」
「まったくだホ!ガプガプゴクゴク・・・」
ジャックフロストたちにも満足してもらえて何よりだ。
今度はナンを買ってくるのもいいかもしれない。
---ブォォォオオオ・・・
「「・・・ん?」」
最後の一口を食べようとした瞬間、どこからか単車の排気音が鳴り響いてくる。
「!きたホ―!」
「物凄く強い力だホ!」
「やっぱりか・・・{モグモグモグモグ・・・ゴクンッ}ごちそうさま。」
「{ゴクッゴクッゴクッ・・・ゴクンッ}プハー!さ~て仕事だ仕事!」
空になった牛乳パックを始末し、排気音のする方を見た。
---ブォンブォン!ブォオンッ!!ブルォォオオオオオオオオオオオオオオオ!!
遠くの方からタイヤに炎を纏った一台のハーレーが地面を燃やしながらこちらに走ってきているのが見える。
ハーレーは俺達を跳ね飛ばすといわんばかりに、ものすごいスピードでこちらに走ってきていた。
「{キュィーンッ}間違いない、あれ悪魔だぞ。骸骨頭のライダーなんてここではあれくらいなもんだ。」
「お、おう(震え声)・・・俺と矢島とジャックフロストはそれぞれの射程範囲に入った瞬間総攻撃。ジャックランタンは炎が効かなそうだから倒しきれなかった場合にのみラクンダで敵の防御を弱めてくれ。」
「わかった。」
「「分かったホ!」」
さ~て、この距離なら拳銃が有効だな(暗黒微笑)
---ブォンブォン!ブルォォオオオオオオオオオオオオオオオ!!
「・・・ム!?こんなところに生贄候補か?」
!こっちに気が付いたか。だがこの距離なら・・・!
「ステンバーイ・・・ステンバーイ・・・ファイア!」ドンドンドンドンドンッ
「なに!?{ギャルルルルルルッ ギュィンッ}ぐぉお!?」
(チッ、なかなかいい機動力だな!)
相手がこっちの銃撃をいち早く察知したのか、ハーレーではありえない動きで躱されて片足と前輪の炎(というよりはむしろ炎で出来た前輪)を撃ち抜くことしかできなかった。
しかも悪魔はかろうじで姿勢を持ち直し、前輪を直してこちらに走ってくる。
「お次は俺の番だ!全砲門用意・・・くらえ!」
悪魔が持ち直した直後、今度は矢島がドラグーンを含めた銃口を向けて発射する。
「チィッ!この程度ならぁあ!」
「なにぃ!?」
悪魔は必要最低限の砲撃のみかわし、どうしても当たるものは無視だと言わんばかりに突っ切って向かってきた。
「ヒィィイイイイッハッハッハッハッハァーーー!!なかなかいい攻撃じゃねえか!!今度は俺のも受け取ってくれるよなァアアア―――――!!」
「ヒホ―!?真っ向から突っ込んでくるホ!」
「落ち着け!ジャックフロストはブフーラ!ジャックランタンは限界までラクンダ連打!俺と矢島は二人を担いで回避行動!」
「わかった!{ガシッ}何時でもいいぞ!」
よし、あとは引き付けてぇ―、引き付けてぇ―・・・・・・
「・・・ここだホ!ラクンダ!」
「OKだホ!カチコチになっちまえホ!」ピキピキピキッ
「ぬぅ!?」
よし、速度が収まった!
「今だ!距離をとれ!」
「おう!!」
俺がジャックランタンを、矢島がジャックフロストを抱えて反撃を見切れる位置に立つ。
「こんぬぉお・・・こんなもんで止められるかぁ!!『ヘルエギゾースト』!!」
「!防御態勢!」
---ギュオンギュォオオンッ!!
「え、ちょ、{ギシビシッ!!}がぁ!?」
「くそ・・・グハッ!?」
氷によって動きの鈍った悪魔から放たれたエギゾースト音に嫌な予感がして、すぐさま防御をしたものの全員がその反動で吹き飛ばされる。
「{ドンッ}~~~~~!?なんだ今の・・・」
「た、たぶん衝撃系の技だホ・・・死にそうだホ・・・」
「排気音が衝撃波になるのかよ・・・すさまじいな・・・」
けど・・・勝てないレベルじゃあない。ジャックフロストたちもさっき拾った宝玉を使えば復帰は可能だ。
「ほう、俺の魂のビートを受けて立ち上がるのか・・・やはりただの人間じゃなさそうだな。」
「{ザッ}はぁ?魂のビート?表現の割に随分と軽い音だな。蚊の羽音の方がよっぽどストレスがたまるってもんだぜ、なあ矢島君。」
「{キュイーン}まったくだ。喧しいのには変わりないが大したことはねえ。テメーはまず道路交通法とマナーを学び直してから出直してこいや。」
「ほざきやがる・・・そんなに行きたきゃ連れてってやるぜ。このヘルズエンジェルが!スピードの向こうへとよぉぉおおおおお!!」
---ブォンブォン!ブルォォオオオオオオオオオオオオオオオ!!
「来るぞ!」
宝玉でジャックブラザーズを回復した途端、ヘルズエンジェルが排気音を鳴らしながら炎のタイヤを回して動き出す。
「まずはテメーだ人間!」
「ゲェ!こっち来たホ!とにかくラクンダだホ!」
「その調子で頼むぞランタン!そらよ!」
---ドンドンドンッ!
「ぐ!?なめるな!『ヘルスロットル』!!」ギュォオッ!
!?なんだ、急に動きが早く!だが・・・
「食らえ人間!『ヘルスピン』!!」
「当たるか・・・よっと!!」ダンッ
瞬時に加速した状態のバイクの突撃を俺はジャックランタンを抱えながらなんとか回避する。
すると、攻撃が空振ったヘルズエンジェルは元のスピードに戻った。
「{ピピピピピ・・・}アナライズ完了。ジャックフロスト!コイツ弱点らしい弱点がないから一時ラクカジャでのサポートに切り替えろ!」
「アイアイホー!ラクカジャ!」
ジャックフロストがそう言った直後、俺の体にいつも以上の力が漲ってくる。
これが現実で支援魔法を受ける感じか・・・悪くないな!
「さあココからがショウタイムだ!ドラグーン展開!」
---バシュッ!ヒュンヒュンヒュンッ!
矢島がそう言うと、背中のドラグーンユニットが展開されてヘルズエンジェルの周りを目まぐるしく飛び回り・・・
---ピュンッ!ピュンピュンピュン!ピュピュン!
「{ドギャドギャドギャッ!}ぐぉおおおおおお!!」
ヘルズエンジェルを四方八方から狙い撃っていく。
ヘルズエンジェルは逃げ道を塞ぐように的確に放たれるビームに翻弄され、確実にダメージを負って行ってるのが分かる。
「グッ!ガッ!・・・くそったれ!『ヘルエギゾースト』!」
「「その手はもう食わねえよ!」」
苦し紛れに放たれる衝撃波も、今度はみんなきっちり回避行動をとって避ける。
「あ、そーれラックカジャ♪それラックカジャ♪」
「ラクーンダーもおまけだホ♪」
「こ、こいつら「ここだ!{ドギュンッ}」ぐは!?くそったれぇえ!!」
よし、ラクンダとラクカジャの効果が確実に効いているおかげで奴さんかなりボロボロになっている。
この分なら・・・
「矢島!ジャックフロスト!足止めよろしく!」
「OK!」
「お任せだホ!」
矢島のドラグーンによる変則攻撃とジャックフロストのブフーラにより、徐々にヘルズエンジェルの動きが制限されていく。
(ま、まずい!こいつら程度なら逃げきれなくもないがあれだけは・・・)
おやまあ、逃げる算段してるなあいつ。けど判断が遅すぎたな・・・
「まさかこの俺が・・・不吉と死の象徴たる魔人の俺が・・・こんな、たかが人間ごときに・・・」
「ここだ!」ドンドンッ
ヘルズエンジェルがバランスを崩した瞬間に、エンジンと乗り手の胸部目掛けて銃を撃つ。
---ドォォオンッ!!
銃弾を受けたヘルズエンジェルは、叫ぶまもなくそれぞれバイクと乗り手を木っ端微塵に粉砕された。
「やったか!?」
「そのセリフは言っちゃダメ!」
とは言えここまでやれば・・・
---シュォオオオ―――――・・・・・・
よし、残った破片が徐々にマグネタイトに変わって霧散していく。
これなら間違いなく倒せたな。
「・・・・・・まさか・・・人間がこれほどの力を・・・持つとは・・・」
「「!?」」
掠れた声のした方向を見ると、まだ霧散していない骸骨頭が俺の方を見ながら喋っていた。
さっさと消えてくれよ・・・
「・・・クク・・・ク・・・心してかかれ、クソ餓鬼ども・・・魔界の風は・・・す・・・ぐ・・・・・そこ・・・・・・」
---シュォオオオ―――――・・・・・・
「・・・なんて後味の悪いこと言って消えやがるんだあの野郎・・・」
やらせるわけねえだろうが・・・その為に動いてるんだからよォ・・・!!
「・・・・・・ど、どうするよ。とりあえずマグネタイトの回収は終わったけど・・・」
「・・・そうだな、今日の予定は一通り終わってる。後は悪魔を倒しながら各自帰宅ということにしよう。」
今のところ、出来そうなことはそれくらいだ・・・あれがこの世界の地面に足を踏み入れていない限りは。
「帰ろう。俺達に出来る事はそれくらいだ。」
「そうだな・・・ほれ、行くぞ皆。」
「了解だホ―。」
「ヒホ―!」
ハァ、今日も疲れた・・・
「・・・・・・ん?」
「?どうした矢島。」
「いや、なんか出口付近から見覚えのある人影・・・げぇえええええ!!」
「?なんだ、誰か迷い込んだのか?」
なんだいったい、誰が入って・・・来た・・・・・・
「そこの方、大丈夫ですか!・・・・・・・え?」
「・・・う、うそぉ~~~~ん・・・」
・・・神だか仏だか・・・どこのどなたか存じあげませんけど・・・
「二人とも・・・こんなところで何してるの?」
・・・これ、ちょっとまずくない?