デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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第四十六話

---チュンチュンッ チュンチュンッ 

 

「・・・・・・朝か。」

 

朝日の眩しさと、外で啼く雀の声で自然と目が覚めた。

 

「くぉぁ~~~~~~~~~~~~~~~・・・はぁ~~~、心地よい目覚めだ。心配事の種が一つなくなるだけでこうも違うなんてな。」

(さてと、まずは外で軽くストレッチをして、それが終わったら朝食の準備をするか。その後は・・・ストレッチでもしながら考えよう。)

 

そんなことを考えながらベッドから立ち上がり、窓ガラスを通して外を眺める。

 

(うんうん、何時もと変わらない平和な風景だ。良い天気だし外で過ごすのも悪くないかもしれねえ。)

「・・・・・・よし、そろそろ下に降りるか。」

 

朝日に照らされた平和な町の風景を十分に堪能した後は、カーテンを閉じて外に出る準備を整える。

それが終わったら下の階へと降りて行き、外に出てストレッチを開始する。

 

 

「1,2,3,4,5,6,7,8・・・」

 

(取り敢えず昨日の時点で残ってる問題を上げていくか。そんでその中から出来そうなことを今日はこなしていこう。)

 

まず一つ目・・・今現在残っている全ての異界だな。これについては方法は矢島に一存せざるを得ないから却下。

二つ目は・・・アリスの始末だな。理由はよくわからないが、昨日いきなり現れたアリスに遊びと称して生皮を剥がされかけたせいでこっちも迎撃せざるを得なかったからな・・・本意じゃなかったがあれはさすがに仕方がない。

まあそれはさておき、どういう理由はあれど一度襲ってきた奴を野放しにすることはできない。今は矢島に封印した状態で預けてあるが、次に会った時に処分してもらうとしよう。

そして次に三つ目だが・・・アリスを封印したことによって、アリスの力で動いていたと思われるアリサ・ローウェルを含む子供たちの確認だ。

まあ一応飯を食ったら、まずは廃ビルに行って様子を見ることにしよう。全員逝ってたら取り敢えず遺体をエニグマで紙にして人目のつくところに放置してれば、ちゃんとした葬儀も受けられるだろう。残っている奴がいたら・・・・・・その時は、害にならない程度に本人たちの意思を尊重するとしよう。

後は・・・

(あれなんだよなぁ~~~、なんでなのはにあれが見えていたのか・・・)

 

四つ目の問題・・・なのはがキング・クリムゾンの腕をうすぼんやりとは言え目視出来ていたことだ。

あの時なのはに腕のことを聞かれた時は適当なことを言って誤魔化しておいたが・・・

理由についてはなんとなく予想はつくが、一応万が一のことを考えて原因は調べておかないと。

 

「2,2,3,4,5,6,7,8・・・よし、こんなもんでいいだろう。」

 

準備運動をあらかた終え、朝食の準備をするために家の中に戻る。

冷蔵庫の中には何が残ってたかな・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「・・・ふう、こんなもんかな。」

 

冷蔵庫の中身を確認した結果、今日は茄子入りのミートスパゲッティとレタスを主軸にしたサラダを作ることにし、今ようやくミートソースと茄子、サラダの準備が整った。

パスタを茹でるお湯の準備もできたし、後は母さん達が起きてくるのを待つのみだが・・・

 

「おはよう、いい匂いがするな。」

「本当、今日は何作ったの?」

 

とか考えていたら、丁度いい感じで二人ともリビングに出てきた。

 

「あ、二人ともおはよう。今日はミートスパゲッティだよ。」

「ほう、そうかそうか・・・父さんのは大目で頼むよ。」

「三人前で我慢してください俺らの分がなくなるからマジで。」

「チッ・・・・・・・ははは、わかってるわかってる。」

「今の間はなんなんですかねェ?」

「フフフ。」

 

家族間での軽いジョークを終え、お湯に塩を一つまみと牛乳をちょっぴり入れてからパスタを投入する。

両親は先に席に座り、テレビの電源をつけて朝のニュースを見始めたようだ。

 

 

『・・・それでは次のニュースです。海鳴市で起きている連続行方不明事件、および殺人事件の犯人と名乗る女性が、先日未明、○○○警察署に出頭してきたとの事です。』

---ピクッ

『警察の調べによりますと、犯人と名乗った人物は身元不明の15歳ほどの少女で、先日警察署内で勤務中の警察官の前で自らを市内における行方不明事件、および殺人事件の犯人であると語った後、取調室で自分の犯行の手口などを克明に警察官に語ったとの事です。警察は少女の証言を一連の事件を照らし合わせた結果・・・』

 

「・・・そう、こんな少女が・・・」

「やれやれ、物騒な話だ・・・」

「・・・・・・」

 

『また、警察の取り調べは現在も続いているそうですが・・・!ただ今入ったニュースをお伝えします。先ほどお伝えしました一連の事件の班員と思われる少女についてですが、本日早朝から突如、牢屋内にて意識不明の状態で倒れていたことが分かりました。詳しい事情は不明ですが、早朝彼女の収監されていた牢屋を見回りしていた警察官が、彼女が牢屋内にて意識不明の状態で倒れている姿を発見し・・・』

 

「・・・・・・ま、概ね予想通りか。ぬ、そろそろ茹で終わりそうだな。」

 

湯切用の笊に鍋の中身を移し替え、湯を切ったパスタをお皿に移してその上に具を盛り付けていく。

三つの皿に盛り付けを終えたら、それらをリビングに持っていく。

 

「二人とも~、ご飯が出来たよ~~。」

「ああ、ありがとう。相変わらずおいしそうだな。」

「ふふふ、本当ね。」

「どうも、いただきま~す。」

 

二人にスパゲッティの乗った皿を手渡し、俺も席について挨拶をした後飯を食べていく。

 

「・・・・・・泰寛、今日もどこかに出かけるのか?」

 

暫く食べていると、父さんがスパゲッティを口に含みながら話しかけてくる。

 

「ん?うん、ちょっと友達の家に行ってくるつもりだよ。」

「そうか・・・まだまだ町は物騒なんだ。あまり遅くまで外には出るなよ。」

「・・・うん、ありがとう。気を付けるよ。」

「ああ・・・・・・{カランッ}ごちそうさま。」

「相変わらず早!?」

 

十分であの量を完食とか・・・凄まじい早食いだ。

 

「泰寛は自分のペースでいいからね。」

「お、おう(震え声)」

その後に十分ほどして、俺もようやく飯を食い終わる。

その後はみんなの食べた後の食器を洗って乾燥機にかけた後、母さんたちに出かける挨拶をしてまずは廃ビルを目指してキックボードで移動する。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「皆殺しだぁ!次元斬!!」

 

---シャキキキキキィンッ!!!

 

家を出て数十分が経過した頃・・・・・・現在廃ビルに到着し、中で襲いかかってきた悪魔を手当たり次第始末しながら全階層の四分の三くらいまで進んでいる。

つくづく思うけど小学生のやることじゃないね、これ。

 

「ナ、ナンデニンゲンガコンナニツヨインダ・・・」

「ニ、ニゲナクチャ・・・」

「漢に後退の二文字はねえぇ!!」

「ヒィィ!?バ、バレタ!」

 

倒した悪魔の死体をかき分けて逃げようとする雪男のような悪魔二体を発見し、俺がムラサマ、アライブが閻魔刀を持って駆け寄る。

 

「マ、マッテ・・・」

「逃げるなら、最初から歯向かうんじゃねェェェェェエイ!!」ザザンッ

 

命乞いをしようとする悪魔を真っ二つにし、それぞれの刀をしまってマグネタイトを回収する。

 

(しっかしまあここの悪魔ども、最初に来た時と比べて目に見えてレベルが上がってないか?やっぱり最初にここに来たのは正解だったのかもしれん。)

 

暫くして、ようやくマグネタイトの圧縮と回収が終わる。

 

「フゥ~~~~~、相変わらず道のり長い・・・・・・」

「{ガサ}隙あり・・・{ガシッ}へ?」

「俺の背後に、立つんじゃねェェェェイ!!」

「ウゲェ!?」

 

後ろの物陰から奇襲を仕掛けてきた、赤い服を着たロン毛の幼女のような悪魔を逆に掴み上げ、床に叩き付ける。

よく見ると、似たような奴が二、三体はこいつが出てきた物陰から後に続くようなポーズで固まっているのが確認できる。

 

「おい・・・」

「{ビクゥッ}ひゃ!ひゃい!?」

「今日の俺は紳士的だ・・・後ろを向いて消え失せるなら見なかったことにしてやる・・・」

 

正しくは紳士的になったんじゃなくて単に疲労が溜まって来たともいうが・・・

 

「・・・・・・て、抵抗しないという選択肢は・・・」

「ザンm・・・」

「魔法なんぞ使ってんじゃねえェェェェェェェェェェェェェイ!!」

「{ドグチャ}ブゲ!?」

 

地面に叩きつけた悪魔が魔法を使おうとしたから、唱えきる前にアライブの渾身の一撃を叩き込んで止めを刺す。

 

「「「・・・・・・・・・・・・」」」サァーーーーー

 

(・・・ね、ねえ。逃げた方がよくない?)

(い、いや・・・でも相手一人・・・)

 

---チラッ

 

『ハ―――ッ八ハッハッハッハッハッハ!!』

「はぁぁああああああああ・・・」ドドドドドドドドドドドド

「「「・・・・・・・・・・・」」」

(((無理無理無理無理無理無理!!絶対無理!勝てる訳が無いよ!)))

 

「・・・・・・さぁ・・・」ザッ

「「「!?」」」ビクッ

「鼠のように逃げ遂せるか・・・」ザッ

「「「!!」」」ササッ

「この場で死ぬか・・・」ザッ

「「「ヒッ・・・」」」サササッ

「どちらか選べェェェェェェェエエエエ!!!!」

「「「し、失礼しましたああああああああああ!!」」」

 

大声で怒鳴りつけると、幼女の悪魔達は尻尾を巻いて逃げだしていった。

 

「・・・そろそろペースを上げるか。これ以上はやってられねえ。」

 

それをため息交じりで見届け、俺は上の階を目指してまた歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと着いた・・・ホント悪魔多過ぎるだろうが・・・」

 

その後ヒーコラ言いながらも探索を続け、ようやく最上階のアリスの間だった扉の前に来た。

額の汗をぬぐい、俺は見る影もないほど威圧感の消えた扉へと向き直り、ドアノブも掴んで扉を開ける。

 

「お邪魔しまーす・・・・・・なんだこりゃ・・・」

 

入った先には、思わず鼻をつまみたくなるような腐臭とそれを出しているであろう遺体が数多く転がる広場のような場所が広がっていた。

予想通りと言っていいのかはさておき、あのお城の様な内装はもはや見る影もない。

 

「アリスの力で今まで持っていたのが、封印したせいで一気にメッキが剥がれたのか・・・お~~い、誰かいないのか?いたら返事でも物音でもいいから立ててくれると助かるんだが・・・」

 

気配は感じないが、一応部屋の内部で呼びかけをしてみる。何度か呼びかけてそれでも反応が無ければ、ここにある遺体はクレイジー・ダイヤモンドで出来る限り直した後、予定通り取り扱うとしよう。

 

「お~い、だれかいないのか?いたら返事をしてくれ・・・」

 

 

 

---カタ・・・

 

「!だれかいるのか?」

 

音のした方に駆け寄り、周囲を見渡す。すると薄暗い中に、一人分だけ体の動く奴を確認し、近寄ってそいつを抱き起した。

 

「お前・・・アリサか?」

「・・・あら・・・あなたが・・・来てた・・・・のね・・・・・」

 

残っていたのは・・・息切れがひどく顔がやつれたアリサ・ローウェルだった。

 

「ハ、ハハ・・・私だけ・・・魂がちゃんと残ってた・・・おかげかな、他の子たちよりは・・・長く持った・・・くぅう!?」

「おい、しっかりしろ!おい!」

 

苦しそうに呻くアリサに、気をしっかり持つよう呼びかける。

 

「・・・なんで・・・私、こうなるのかな・・・昔から・・・他人とは分かり合えなくて、変な奴に捕まったり、変な化け物に襲われたり・・・あの殺人鬼に殺されて、会いたい人は何時まで経っても会えなくて・・・挙句の果てにこうなって・・・」

「言っとる場合か!まだお前なんにも終わってないだろ!」

「馬鹿言わないでよ・・・知ってるでしょ?私は死んでるの・・・・・・あの日、アリスの友達になる前、殺人鬼に殺されたの・・・この、廃ビルで・・・」

「それは、腕にガントレットをつけた女か?」

「!?なんでそれを・・・」

「俺と仲間が昨日捕まえて、俺がそいつの始末を務めた。二度と迷い出られやしないよ。」

「ハハハ、そう・・・だったんだ・・・・・・私も、見届けたかったな・・・」

 

アリサはそう言うと少しの間だけ、胸の閊えがとれたように笑みを溢す。

 

「・・・さっきの続きだが、一応とある友人経由で人としてまた生きていく方法を持ち合わせている。これに関しては成功した前例もあるし、俺も最大限お前が幸福に生きられるよう努める。これが俺が出せる選択肢その一。」

矢島がアリシアの蘇生のために創った世界樹の葉の余りが手元に一枚ある。これがあれば(多少の問題はあるが)蘇生が可能だ。

 

「・・・他の、皆は・・・?ここにいる、人たちは・・・」

「・・・悪いが遺体の腐敗や損傷がひどすぎるし、持ち合わせが知り合いの分を含めても二つしかない。出来なくはないと思うが時間がかかるから今はどうしようもねえな。」

 

クレイジー・ダイヤモンドで損傷を直しても、そっちの用意ができるまでに相当な時間がかかる。

今は少なくとも無理だ。

 

「そしてもう一つは・・・このまま朽ち果てていくことだ。介錯や見取りがいるなら、俺で良ければ務めよう。」

「フフフ・・・口説き方が、なってないわ・・・そんなんじゃ、女の子には振り向いてももらえないわよ・・・」

「そりゃあ悪いな。こんな聞き方くらいしか知らないもんで・・・けど、この場で必要なのは生きる意志があるかないかだ。お前の意志で決めてもらわにゃ、俺が何をしてもお前に後悔しか残らないんじゃねえか?」

「・・・・・・・・・」

「まあ、何だ・・・難しいこと抜きにして、胸に手ぇ当ててちゃんと考えてみな。アドバイスになるかはわからんけど・・・生きるってさ、難しく考えるほどドツボにはまるけど根本はメチャクチャシンプルだから。俺みたいな元ヘナチョコ野郎でも悟っちゃえることだから間違いない。」

「どんな根拠よ・・・それ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

アリサの返事を、俺はひたすら待つ。

どうする?生きるか・・・死ぬか・・・

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ねえ、一つ聞いてもいい?」

「なんだ?」

 

長い沈黙の末、質問される。

 

「あなた・・・何年か前に・・・私に会ったことある?」

「!・・・・・・・・・・・ああ、ある。」

 

あんなことを昔言った手前、言いたくないことではあるが・・・この場で誤魔化すのはさすがに無理だ。なんというか、心理的に後でもっと後悔しそうだから。

 

「そう・・・そっか、そうなんだ・・・・・・ハ、ハハハ・・・そうなんだ・・・」

アリサは納得したように、目尻に涙を浮かべながらそう言う。ああ、これはばれましたわ・・・

 

「・・・・・・もうちょっと生きてみることにするわ・・・」

「・・・それでいいんだな?」

「ええ・・・少しだけ、やりたいことも見えてきたし・・・」

 

・・・なぜだろう、この異様に鋭い目つき。これ後で痛い目を見る気が・・・まあいいや、自業自得というべきだろうし。

 

「上等、それじゃあちょいと待ってな。今準備する。」

「ん・・・」

 

ポケットから紙を取り出し、それを広げて世界樹の葉、包丁、まな板、ガスコンロ、鍋、清水の入ったペットボトルを出す。

さぁ、始めようか。

 

side out

 

 

 

 

 

 

Side:矢島 敬一郎

「・・・・・・・・・・・」

(なるほどな、ようやく目処が立ってきたぞ・・・)

 

記憶の掘り起しやシミュレーション能力の使い過ぎで熱と頭痛に苛まれている頭に冷えピタを張り、頭を押さえながらそう考える。

 

(今回行われた儀式は、大量のマグネタイトを吊り餌にして召喚に応じようとした悪魔を現実世界に出る直前で即座に分解し、特殊な工程を加えた血文字の魔方陣に分解したものをプログラムとして定着させて魔界との橋渡しとなる疑似ターミナルに作り直す。そして魔界からマグネタイトを流入させ続け異界化の進行とともに魔界を加速度的に引き寄せ続ける・・・まあ当然ながら解除コードなんて用意されてねえやりっぱなしのブツ、力技で解決しようものなら空間の安定性を大きく損なってさらに事態が悪化するかもしれない・・・ホントに性質悪い。)

「だけど原動力がマグネタイト一択で人間界側のみでの働きかけなら問題はねえ。」

 

マグネタイトは魔界の構成要素、それが異常なほど集まるから魔界が引き寄せられる。

シミュレートの結果が間違いなければ、こっち側のマグネタイトを限界まで枯渇させ、それを長時間維持続ければ繋がりの薄まったそれぞれの世界は徐々に離れていく。

 

「後はそれができるよう準備していくか。装置はどんな設計にしよ・・・」

 

---フラァッ

 

「っと、ちょっと使い過ぎたか・・・」

(頭使い過ぎてイテェ・・・少し寝よ。)

 

ベッドを整えて横たわり、布団をかけて目を閉じる。

フゥ~~~~~~~~~、どんなふうに創るか・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ラァッ!!どうだ・・・どうだぁっ!!」

「う・・・この・・・ビチグ・・・・・が!」

 

・・・・なんだ?夢でも見てるのか?知らねえ声が聞こえる・・・

 

「なに・・・・・てくれてんのよ!・・・んなもん・・・すなんて!」

「知ったこ・・・・かよ、はな・・・・・やがれこの・・・アマが!」

 

・・・・・・・・やけにうるさいな、それに夢にしてはなんだか耳にちゃんと響くし、意識もはっきりしてるような・・・

 

「なんなんだいったい・・・・・・あれ?ここは・・・」

 

そっと目を開けてみると、目の前にあったのは見知った天井じゃなくてどこかで見たことのある真っ白い一室だった。

周囲をよく見てみると、今自分がいる場所もベッドの上じゃなくて部屋と同じくらい椅子に座ってることが分かる。

 

 

---ガキィンッ ガチャガチャッ ウィ―――ン・・・ガシャァアンッ!!

 

「!?なんだ今の音!?」

 

状況を理解しようと考え始めた途端、俺の眼前にある扉からとんでもなく馬鹿デカイ、機械の駆動音が鳴り響いてきた。

 

「お、おい待て!グラブレかそれ!?でかすぎだろ!さすがに死ぬぞ!」

「チッ、むこうはもう起きたか・・・今のところはこれで済ませておいてやるけどさ、次戻ってきたときは覚悟しとけよ・・・」

 

やべえ・・・壁一枚向こうで何かとんでもないことが起きようとしている気がする・・・

 

---ギャリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリッ

 

「待てぇええええええええええええ!!本当に待てぇええええ!!そんなものくらったらさすがの私でも・・・」

「消し飛べぇええええええええええええええええええ!!!!」

 

---バグォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!! ギャルルルルルルルルルルル・・・・・・・プシュウゥ――――――――――――――ッ!!

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

( ゚д゚)

 

 

 

(゚Д゚)

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・え?どゆこと?

 

 

 

 

 

 

---ガチャッ

 

「!?」

や、ヤバい!よくわからんが何かがやばいのがこっち来る!!こ、こうなったら・・・とうッ!

 

---バババッ

 

1! 素早く3歩ほど後ろに後退るべし!!

この時、1歩下がる毎に少しずつ前屈みになるのがポイントだ!

 

2! その場で正座をするべし!!

この時、手は相手を向くように少し斜めに傾け地面に着く!!

 

「{キィ~~}お待たせぇ~、やっと起きてくれたね・・・なにしてるの?」

 

3! 相手の1秒間じっと見つめ真摯さを伝えるべし!!

あまり時間が長すぎると逆効果なので長くても2秒以内に抑えるのだ!

そして・・・

 

「申し訳ございませんでしたあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

「・・・え?」

 

 

4! 大きな声で「申し訳ございませんでした!!!!」と、謝罪の言葉を伝えるべし!!

それ以外の言葉は必要ねええええええええええ!!!

 

5! 言い終わる刹那に頭を下げ、地面から1センチの高さで固定すべし!!

ポイント

※謝罪の言葉を伝えてから頭を下げるのがポイントだ! 順序が逆だと地面に向かって謝罪する形になってしまい、なおさら相手の神経を逆なでしてしまうぞ!

 

 

「え、えっと・・・」

 

「{バッ}申し訳ございませんでしたあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「ちょ、ちょっと落ち着いて・・・」

 

6! 相手から許しの言葉が出るまで姿勢を続けるべし!!

少し待っても相手から許しの言葉を頂けない場合、

一旦頭を上げ、再度手順3からの動作を繰り返せ!

相手が根負けして謝罪の言葉を口にするまで何回でも繰り返すのだぁ!!

 

これぞニッポン伝統の謝罪法!その名もDO☆GE☆ZAだ!!!

 

「{バッ}申し訳ございませんでしたあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「いやあの、ちょっと落ち着い・・・」

「{バッ}申し訳ございませんでしたあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「いやだから・・・・・・」

「{バッ}誠に・・・申し訳ございませんでしたあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「・・・・・・落ち着け!!」バシィッ

「ぶるぁあああああああああああああああああ!?!」

オワタ・・・俺の人生…こんなところでオワタ・・・

梶原・・・なのは・・・アリサ…すずか・・・皆・・・・・・・・・・・・・・・・さような

「だから落ち着きなさい。」ベシッ

「アイタ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いた?」

「落ち着いた^^ すごく落ち着いた^^」

「うんうんよろしい。」

 

俺を転生させた神様(笑)に強制的に落ち着かされて、真っ白いお部屋で談笑する俺達。

ハァ、怖かった。

 

「今失礼なこと考えたね?」

「ハハハハハ、ナニヲイッテイルノデスカ?ソンナコトアルワケガナイジャナイデスカァ~~~(棒)」

「フフフ、怒ってもいいかな?」

「すんません勘弁してくださいお願いします(ーー;」

 

青筋の立ったすさまじい覇気を伴う笑顔に、伝家の宝刀DO☆GE☆ZAが再び発動する。

これは怖い(確信

 

「まったくもう・・・・・・まあそれはいいわ。今回呼んだ理由についてはもう大丈夫よね?」

「邪神がここ担当の神に嫌がらせしたかった→メガテン系の特典持たせたキ印をシュウ―――ッ!!→肝心の神は妨害受け過ぎて今までorz→ようやく元凶捕まえて解除パスゲッツ!→解除したら全部終わってた\(^o^)/→仕方なく元凶ボコしてた」

 

ちなみにさっきの馬鹿でかい音は、某ロボットゲーの全てを焼き尽くす暴力の一端らしい。今度、そっち系の武器も作ってみようかな。今使ってるのとはまた違ったロマンがあるし。

 

「ええ・・・そうね・・・その通りよ・・・・・・{ボソッ}あの屑暫くサンドバッグにしよ。」

「スッゴイ怖いセリフが聞こえてきた様な気がするけど聞こえなかったことにしますハイ。」

「ええ、その方が身のためよ。さてと・・・お疲れ様、矢島敬一郎君。正直あそこまでいったらもうだめかと思ったわ。」

「労いアザァーッス!!結構やばかったけど結果的に何とかなってマジ良かったぜ。」

「本当よ、放っておいたらあの世界が世紀末まっしぐらだったんだから・・・本当に助かったわ。ありがとう。」

「感謝なんていらないっすよ。俺らみんな自分の未来のために戦ったんですから。」

「ふふふ、そうね・・・」

 

俺を転生させた神は、顔を綻ばせながらそう言う。

 

「ふぅ・・・それじゃあそろそろ真面目な話もさせてもらうわよ。まずあなたたちの世界に残ってる今の異界についてだけど・・・」

「!!」

「やり方はあなたの考えた方法でほぼ正解よ。マグネタイトは異界の大気であり、大地であり、空であり、そしてその全て。魔界を魔界とするそれらが現実世界から消えてなくなれば、おのずと魔界は人間界から離れていくわよ。」

 

ほ、よかったぁ・・・あれで間違ってないのか・・・

 

「後はその実際の手段の実行だけど・・・今回はこっちのミスっていう点が大きいからね、私の方で用意してあげる。」

「マジで!?」

「ええ、起きる頃にはデバイスに圧縮データとして入れておくわ。帰ったら確認して頂戴。」

「いよっしゃああ!」

 

これで楽できるぜ!ヒャッホイ!

 

「喜んでもらえてなによりよ・・・・・・・・で、もう一つ真面目な話があるんだけど。」

「?もう一つですか?」

 

なんだろうか、異界と悪魔がいなくなればもうこれ以上やばいなことも起きないと思うが・・・

 

「ええ、あなたにとっては少し悪い話だけど・・・聞く?」

「エ?俺?いやぁ~~あのぉ~~、そう言うのは出来ればなかったことに・・・」

「単刀直入に言うけど・・・「問答無用ですかそうですか(´・ω・`)」言・う・わ・よ!あなたの創造の能力だけどね、死者蘇生に関する部分だけほぼ全部カットさせてもらうわ。」

「あ、そうなんすか。」

「{ガクッ}ず、ずいぶん淡白ね・・・」

「いやまああんな命が限りなく軽くなるようなもんを、それこそ時間はかかるけどいくらでも創れるって言っちゃあなんですけど明らか問題でしょ。使えるから使っただけでむしろ今まであったことが十分驚きなんですけど。」

「お、おう・・・いや、うん、そうなんだけど・・・そうなんだけどさ・・・・・・あぁ~~もう調子狂う!!もっとこう、普通こういう制限つけられたらもっと慌てるもんじゃないの!?」

「知らんがな(^^;」

 

けど・・・そうか、いつかは来るんじゃないかと思ってたけどついに来たか。

そっかそっか・・・なんだか感慨深いな。使ったのって実質二回くらいなんだけど。

 

「くぅぉおお~~~~~~・・・・・・はぁ、もうなんかいいわ、とりあえずその制限と今ある世界樹の葉の回収したら今日は帰ってもらうから(もうなんかすでに一枚使われてるみたいだけど)、ついでに貴方の疲労回復の方もやっといてあげる。」

「またまたアザァーッス!!」

 

地味に辛かったからそれはマジで助かりますハイ。

 

「ハァ・・・{パチンッ}はい、これで出来たからもうお帰りなさい。わたしはこれからサンdちょっと用事があるから。」

「言いかけた言葉の中に抑えきれない殺意が・・・マジ怖ス。」

「フフフフ・・・さ、早く帰りなさい。今のあなたの現実に・・・」

「・・・」スヤァ

 

視界の端にマスブレードを出現させる神様の姿に戦慄しながら、意識が無くなった。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ン~~~♪ハァ・・・不思議、こんなにも清々しいって思う日が来るなんて・・・」

「・・・・・・・・・」

「ホラ、そんな不機嫌な顔してないで早く行きましょう。」

「不機嫌になる理由を作ったやつがぬかしやがる。」

「男の子が細かいこと気にするものじゃないわよ。」

「すんませんねぇ女々しくて。」

 

蘇生が終わった後の下顎への抉り込む様な正拳突きとシャイニングウィザード、花畑と綺麗な川を幻視させるには十分な威力だったぜ。

 

「さ、早く行きましょ♪まずはあなたの両親に御挨拶しないと♪」

「はいはい、その前に被害者の皆さんの遺体を送り届けるけどな・・・さっきまで尋常じゃないことになってたのに元気な奴。」

 

痛む顎を擦りながら、俺は元気になったアリサの後に続いて廃ビルを離れた。

 

 

 


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