デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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ウチのカルデアにセイバー式さんが来てくれた記念と、久々の投稿ということで感覚を思い出す意味で書いてみました。今回の話は、もし梶原が神様転生をしなかった場合のルートの一つとなっております。
本編を楽しみにしていただいている方には申し訳ありませんが出来るまでもう少し時間を要すると思います。何とか今月中にあげられるように手を尽くすつもりです。

それではどうぞ。お楽しみください。




番外その二:もし神様転生をしなかった場合のルート
Fate/extra deadman


「おはよう!今日も気持ちの良い天気でたいへん結構!」

「ん?どうした、そんなに驚いた顔をして。」

「先週の朝礼で話しただろう、今日から学内風紀強化月間に入ると。」

「美しい規律は正しい服装から始まる。という訳で、風紀検査の陣頭指揮に当たっている次第だ。」

「無論、長年の友人であろうと例外は無い。面倒だろうが付き合ってくれ。」

「では制服から確認するぞ。・・・・・・襟よし!袖よし!ソックスも・・・・・・よーし!」

「次は鞄の中身だが・・・・・・・・・・・・ふむ、カバンの中にも違反しているような物は何も入っていないな。」

「爪も綺麗に切り揃えられていて、頭髪も特に問題はないと・・・・・・うむ、実に素晴らしい。何処からどう見ても、完璧な【月海原学園】の生徒の姿だ。」

「お前のような奴が運営側に回ってくれれば非常に頼もしいのだが・・・・・・」

「む。いや、無神経なことを口にした。生徒会など無理強いしてまではいってもらうものではなかったか。」

「では教室に向かってくれ。今日も悔いのない、良い一日を!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---カツ カツ カツ カツ カツ カツ・・・

 

「はぁ・・・はぁ・・・・・・・」

 

あれはいったい、いつからだったろうか・・・私は自分のいた世界に、自分の通っている月海原学園での日常に強い違和感を覚えるようになった。

何一つ、全くと言っていいほどに変わらない日常。誰もいない所に定型文で話しかける人形の様な同級生達。そして頭にノイズが掛かったような奇妙な感覚。自分が今いる全てに対して感じてしまう、現実味の無さ・・・

一体自分に何が起こっているのか、自分の周りに一体何が起こってしまっているのか・・・私はその疑念を何とか解消出来ないかと思いつつ、こうして校内を歩き回っている・・・

 

---カツ カツ カツ カツ カツ・・・

 

「!」

 

歩いている通路の先で、見慣れない制服を着た少年が階段を下りて行っていた。

彼は確か、レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイ・・・・・・数日ほど前、この月美原学園に留学してきた異国からの転校生だ。

その彼が視界に入った瞬間、私は強烈な違和感に襲われた。

締め付けられるような威圧感とでも言えばいいのだろうか・・・そんな感覚が、私の心を挫こうとしているように感じる。

 

「・・・・・・違う、それだけじゃない。」

 

・・・・・・・そうだ、この感覚・・・これはそれだけが理由ではない。

思えばこの学校を支配する違和感。レオからだけではなく、思い起こせば今までにもさまざまな空虚感があった。

 

 

思い出せ。

 

いるはずも無い人間、消えていく生徒。剥がれていく世界観(テクスチャー)。

 

 

 

「・・・行かなくちゃ。」

 

自分の心に従い、私は彼の降りて行った階段へと駆け出す。

真実とは何か。私の知る世界はなんなのか。

ここにいる意味はなんなのか。

知りたい、私は、知らなくちゃいけない!

 

---ドンッ!

 

「きゃっ!?」

「えっちょっ!?」

 

そう思っていた矢先、通路を曲がった先に階段の前で立っていた誰かとぶつかってしまい、私はその場で体勢を崩して・・・・・・

 

(・・・あ・・・)

 

走っていた勢いのまま、下り階段へと身体を投げ出すように自分の体が落ちていくのを感じた。

(そんな・・・こんなところで・・・・・・)

 

目を閉じることもできない刹那の時間、私は自分の不注意が齎した結果に無様に嘆くことしかできず・・・・・・・・

 

---ドギュ―ンッ!!

 

 

 

「・・・・・・え!?」

 

(今、私階段から落ちて・・・あれ・・・?)

 

踊り場の床と後少しで激突すると思った瞬間、何時の間にか自分は普通に廊下に立っていた。

 

(え?何今の?今確かにぶつかって、落ちて、え?え?)

 

「お嬢さん、何をそんなに急いでるか知らねえが、曲がり角を確認もせず走ってたらあぶねえよ?」

「え?あ?え?あ、はい。ごめんなさい・・・・・・」

 

混乱しながら自分の体とさっき落ちかけていた踊り場や階段を交互に見ていると、目の前に立っている私よりも背の高い男子に注意され、私は慌てながら咄嗟に謝る。

この人、さっき私がぶつかっちゃった人、だよね?

 

「ま、お互い怪我もないみたいだし、次からは気を付けなよ。」

「はい、本当にすみません・・・・・・あ!」

 

そうだ!あの転校生!早く追い掛けないと!

 

「あの!失礼しました!」

「あ、おい!またぶつかるなよ!」

 

後ろからまた男子の注意を受けつつ、私はあの転校生を探しに階段を駆け下りていった。

 

 

 

 

 

・・・それにしても、あの男子は一体誰だったんだろう。綿パンにロングコートなんて明らかに場違いな格好、葛木先生くらいしかいないと思ってたけど・・・

 

 

 

 

 

 

どうもみなさんこんにちわ。自由と平穏を愛し、理不尽と面倒を嫌う男【梶原泰寛】でございます。

え?そんなことはどうでもいい?(´・ω・`)ショボーン

いやまあそこは今は良いんですけどね・・・聞いてくださいよ。なんかね、公園で少年と話した後急に眠くなって意識が飛んだんだけど・・・それでふと気が付けばこの明らかに近所で見たことの無い学園の屋上で寝ていたわけですよ私。

それでね、あんまりにも奇妙な状況だからつい昔の血が騒ぎ、周囲の警戒をしつつ自分の状態を確認してたわけですが・・・まあこれがまたびっくりで・・・何かね、若返ってるんですよ、体が。ええ、大体十五、六歳ですかね?多分一番伸び盛りだった時期に体が戻ってるんですよなぜか。若干なんか現実味の無い感じこそしますけども。

なんだかますます謎が深まるばかり。

一応波紋はちゃんと練れることとスタンドがちゃんと出てきてくれること、あの状態が解除されていることにに安堵したおかげで何とか心を落ち着かせられて、とりあえず今は自分のいるこの学校の探索を行うことにしました。

 

(ここからは敬語が外れます)それで今の状況なんですが・・・

 

 

「・・・・・・ハァ・・・・・・」

 

俺は廊下の壁に背中を預けながら、腹の底から盛大にため息を漏らした。

屋上から出て少し歩いているうちに、俺は自分のいる学校…いや、自分のいる空間そのものに違和感を感じた。まるで自分が、作り物の世界に放り込まれた様な違和感を。

その次の瞬間、校内や窓から見える景色が一気にノイズだらけになったのだ。いや、最初は驚いたね。新手のスタンド使いでも現れたのかと思って窓から外に飛び降りて、即行で倉庫を開いて情報収集系のスタンドフルで使っちまったわ。

そんで調べたはいいが・・・その直後に更に驚くべき問題が発覚した。結論から言うと、俺はどうやらまた異世界に来てしまったかもしれない。

理由を説明していくが、まずどうやら俺は今、西暦2030年代の地球の傍にある衛星〔月〕にいるらしい。

それでこの月だが、俺の知る範囲では月というのは只管巨大な岩でそれ以上でもそれ以下でもなかったはずだが、今俺のいる月というのはざっくり言うと現実の月と全く同じサイズのスーパーコンピューターの様なものだということである。

そして俺の今いるこの学校のような空間はそのスーパーコンピューター内に構築された、某スニーキングゲームやライトノベル、御サルをゲッチュするゲームなどで有名なVR空間らしく、俺自身はここに精神のみが容れられた状態であの屋上にいきなり現れ、放置されていたという訳だ。

 

(・・・・・・・・・・・どういうことなのコレ・・・・・・・)

 

訳の分からない状況に辟易としつつ、俺はもう一度盛大にため息をついた。

まさかまたこんな状況に放り込まれることになるなんて・・・

いや、今はもうそこはどうでもいい。問題はここから先どうするかだ。

一応この空間や今いる月について更に詳しいことを調べようとしたのだが、何か強力なものによって妨害されたかのようにスタンドもろとも弾かれてしまった。

身体が本格的に鍛える前の状態だからなのか、昔なら余裕でできたはずの受け身を失敗して今背中がめちゃくちゃ痛い・・・・・・いやそうじゃなくて、自分はこのままここにいてもいいのだろうか。

なんとなく、ここにいたら自分は何か取り返しのつかない目に遭うと俺の中の直感が囁いている気がする。

勘かよ!と聞く人がいればツッコむかもしれないが、俺は昔迷い込んだある地獄のような場所から故郷に帰還するために只管命懸けの戦いをし続けてきたおかげで危機に対する直感にはそこそこの自信がある。

長らくの平和な生活と老衰のせいでいろいろと感覚が鈍ってはいるが、この異常な状況を考慮すると満更この感覚が間違いとは言い切れない。あり得る可能性の一つとして、頭の隅に置いておくべきだろう。

 

(・・・・・・)

 

全身に癌が転移して十余年、あの頃はもう死ぬのが怖いと明確に思うことはなかった。正直もう動くだけで全身が嫌というほど軋んでいたし、家事全般がアライブ抜きでは本当にどうしようもなくなっていた。殆ど意地と気力だけで命を繋いでいたようなもので、なんとなく、俺は死ぬべくして死んでいくんだと心のどこかで感じていたからな・・・

けど今俺は、五体満足・・・と言っていいかはわからないが、取り敢えず昔の様に何の苦も無くいくらでも動ける。(本格的に鍛え始める前の状態みたいだからそこそこ動きが鈍いがそこはご愛嬌)

そしてそのせいか今は、死にたくないと、生きたいという思いが強い。

・・・というかぶっちゃけなにがなんでも生きたいです。本格的に体にガタが来てて戦闘者どころかまともな一般人としてもやってくのが難しかった当時ならまだしも、こんなに不自由なく元気いっぱいに燥げる状態でわざわざまた座して死を待つだけの一生とかマジ勘弁。

足掻ける限り足掻き続け、倒れる時は前のめり一択。そんな人生を俺は過ごしたかった・・・そしてその思いは今も変わらん!!

 

 

 

---バシッ

 

「・・・うしっ!」

左手を拳にして右の掌に打ち付け、気合を入れ直すべく腹の底から一声出す。

方針はとりあえず決まった。考えるまでもなかったとは思うけど、いつも通り俺らしく足掻くスタイルで行く。

差し当たってやるべきは情報収集だ。スタンドを使ったものでは多分もう深く突っ込んだ情報は見つからないかもしれないが、校内には人がたくさんいる。

そいつらと話して一つでも多くの情報を集めていくとしよう。

 

「輝けるロードを目指して全速前進DAッ!」

 

軽くネタを入れて緊張を適度に保ちつつ、背中を校舎の壁から離してまず校内の探索を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つくづく異様だな、この場所・・・」

 

さて、張り切って校内を練り歩くことにしたわけだが、あらかたまわり終わって改めてここが異様な場所だと思い知らされた。

生徒の大半や教師たちはゲームのNPCの様に何を聞いても同じことしか話さねえし、生徒名簿はなぜかどれも白紙だったし、何故か学校の外には出られねえし、校舎は異様に硬くてアライブですら普通に殴った程度じゃ破壊出来なかったし、所々入れない場所はあるし、俺の話を聞いて急に頭を抱え始めた生徒はいきなり「思い出した」と言った途端どこかに向けて走り出していくし・・・

ちなみにその生徒に関しては追い掛けたものの何時の間にか姿を消してしまってそれ以上追うことが出来なくなった。あの男子生徒・・・思い出したっていうのは一体何のことだったんだ?恐らくこの空間について何かを知っていたんだろうが・・・くそっ!あそこで取り逃してなければ・・・!!鍛えていた頃なら絶対取り逃してなかったのに・・・!

いや、今はそんなことを言っても仕方がない。とりあえず現状最大の収穫と言えばこの・・・

 

 

   月海原学園新聞最終号

  『怪奇 視界を覆うノイズ』

 

 学園に残った生徒たちにお知らせデス。

 

 予選期間はもうすぐ終わります。

 

 早く真実を見つけ出してきちんとお家に帰りましょう。

 

 

 さもないと――――     一生、どこにも帰れません」

 

 

校内の掲示板に張られていた、明らかに意味深かつヤバ気な新聞記事位な物か・・・

まずいな。この新聞の通りなら、俺に残された時間は想定よりもかなり少ないということになる。

急がねえと・・・兎に角他を当たり、また同じようなのがいれば今度こそ逃がさない様にしよう。

そう考え、俺はひとまず上の階を目指して階段を上がっていく。

 

「・・・・ん?」

 

踊り場を回って二階へと上がろうとした辺りで、その辺の生徒とは違う制服を着た金髪の美少年が廊下の角から現れた。

俺は立ち振る舞いだけで貴族のような高貴な雰囲気と王者の風格を少年から感じ取り、少しだけ自然と警戒心を強め始める。

 

「!・・・・・・こんにちは。」

「ん?ああはい、こんにちは。」

 

片や少年の方は、こちらの姿を認めると一瞬だけだが驚いたように目を見開き、しかし次の瞬間には、少女漫画のイケメンもかくやというレベルの輝くエフェクトを幻視させる微笑を浮かべ、優雅に挨拶をしてきた。

俺はそれに誰がどう見ても普通としか言いようのない返事を返し・・・

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

 

それ以降は特に言葉を交わすこともなく、お互い何事もなく階段ですれ違っていく。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・いや、ちょっと待て、そういえば俺コイツには何にも話しかけていなかったよな・・・

それに良く考えればこいつ、他の生徒とは明らかに雰囲気が違うし、コイツからなら何か聞き出せるかもしれねえ。

 

 

「おいちょっと・・・あらら。」

 

声を掛けようと振り向いてみれば、さっきの少年はとっくに下の階へと降りていた。

このまま逃すのはまずいと考え、上ってきた階段を下ろうと足を踏み出し・・・

 

 

---ドンッ!

 

「きゃっ!?」

「えっちょっ!?」

 

後ろから誰かにぶつかられ、咄嗟にその場に踏みとどまる。

体勢を保ててよかったと安堵しかけたが、ぶつかった誰かが体勢を崩したようで階段から真っ逆さまに落ちていく姿が見えた。

 

(仕方ねえなぁ・・・・・・!)

 

---ドギュ―ンッ!!

 

 

 

「・・・・・・え!?」

 

目の前に立った誰か・・・・・・ここの学生服を着たどこか希薄な感じを覚える綺麗な少女は、いきなり起きた状況の変化についていけていないようで、言っちゃあなんだが間の抜けた表情をしていた。

俺は軽く咳払いをし、そんな彼女へと呼びかける。

 

「お嬢さん、何をそんなに急いでるか知らねえが、曲がり角を確認もせず走ってたらあぶねえよ?」

「え?あ?え?あ、はい。ごめんなさい・・・・・・」

 

少女はようやく意識が戻ったのか、混乱しながら自分の体とさっき落ちかけていた踊り場や階段、俺の姿を交互に見る。

 

「ま、お互い怪我もないみたいだし、次からは気を付けなよ。」

「はい、本当にすみません・・・・・・あ!」

 

苦笑いしながら言ったことに少女が再び謝罪して少し間が空いた後、少女は急に何かを思い出したように叫んで階段を急いで駆け下りていく。

 

「あの!失礼しました!」

「あ、おい!またぶつかるなよ!」

(やれやれ・・・・・・・あ、そういえば俺もあの金髪少年を追い掛けるんだった。)

 

少女が階段を下りていく姿を見ながら俺も目的を急遽思い出し、さっさと階段を下りて言って奴の姿を探す。すると降りた先にいたあの少女の視線の先・・・廊下の奥の曲がり角をあの金髪の少年と別の男が曲がっていくのが見えた。

あの奥は袋小路になってて特になにもなかったはずだが・・・兎に角俺は突き当りに言った二人を追うために走っていく。

少女も一足遅れて俺の後についてくる。

 

突き当り手前の曲がり角に行くと、さっきの二人は突き当り前に立ち、金髪の少年が何かを話していた。

 

 

「本当によく出来ていますね。ディティールだけじゃなく、ここは空気でさえリアルだ。ともすれば、現実よりもよっぽど現実らしい。ねぇ・・・・・・貴方達はどう思います?」

「・・・・・・・・」

 

あの小僧、間違いなくこっちに気が付いている。

それに改めて見てはっきりしたが、明らかにこいつ、纏っている雰囲気が違う。

その上コイツの隣・・・何かいるッ!姿も形もまるで見えないしわからないが、明らかに何か・・・何かとてつもないモノがいるッ!

迂闊なことをしてしまえば、間違いなくこっちもただでは済まなそうだ。

 

「・・・・・・・・・・」

 

その後金髪の少年はいくつか意味深なことを目の前に立っている学生の少年と俺達に言った後、壁に向かって歩き出し・・・壁の中へと文字通り消えていった。

そして金髪の少年の前に立っていた学生も同じように壁の方へと歩いていき、そのまま姿を消してしまう。

 

俺と少女は曲がり角から出て、二人が消えていった壁に近寄っていき、期せずして二人同時に壁に触れる。

すると壁だと思っていた物は、いつの間にか一つのドアへと姿を変えていた・・・いや、自分たちに壁だと思わせていた何かが消えただけで、きっと元からあった物なんだろう、これは。

 

「フゥー・・・やれやれだ・・・」

 

ふとため息とともにそう漏らす。

不思議なダンジョン式修羅の地獄旅行が終わり、望み通りの平穏な人生が終わったと思ったらこの奇妙な展開・・・俺の人生は果たしてどこに向かおうとしているというのか・・・

まあいいけどな。どこに向かうことになろうが俺は俺の心に従っていくまでだ。

 

「俺もそろそろ行くか。あんたはどうする?」

「勿論、行くよ。こんなところで止まっていられないから。」

「さよか。」

 

彼女の返事の後、二人で扉に手をかけ・・・俺達は扉を開けて中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扉の先は、物置のような場所になっていた。

いつの間にか隣にいたはずの少女がいなくなっていることに気が付いて警戒しがら内部を見渡すと、内部はさっきまでの校舎とはまた雰囲気が違っていて、ところどころから蛍の光の様なものが浮かび上がって辺りを薄暗く照らしているのが分かる。

ついでに気が付けば空間のノイズの様なものも無くなっている。さっきまでかなり煩わしかったからこれは純粋に助かったな。

 

 

「ん?」

 

部屋の真ん中へと歩いていくと、横の壁に赤い線や模様が入っている、明らかに関節の部分が繋がっているとは思えない様な構造の人形がもたれかかっていることと、進行方向の壁の一部がパソコンがバグを起こしたかのように壊れて、人一人が通れそうな穴になっていることに気が付く。

 

---ガチャッ

 

「!」

 

穴の方を見ていると、いきなり壁にかかっていた人形が動き出し俺はアライブの腕を構えながら人形を睨み付ける。

 

---ガチャッガチャッガチャッガチャッ

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

 

人形は不気味に音を立てながらこちらへと歩いてきて・・・四歩ほど手前で向きを変え、俺と壁の穴の対角線上に移動した後何もせず立ち止まる。

俺はしばらく警戒しながら人形を見ていて・・・・・・それ以上何の反応も見せない人形の存在に首を傾げる。

 

「・・・・・・・・なんだこれ・・・・・・・・・良くわからねえが先を急ぐか。」

 

どうやらこいつは何もしてきそうにない・・・放っておいても問題は多分ないだろう。

そう考え、俺はとりあえず壁に空いている穴へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どういうわけか一緒についてきた人形とともに穴の先にあった光る廊下を、途中で出てきたエネミープログラム(情報源はどっからか聞こえてきた譲治ヴォイス)を倒しながら進んでいると、大きなステンドグラスで作られたような広い空間へと辿り着いた。

どうやら道はここで終わっているみたいだが・・・どうするんだここから・・・

・・・・・・・というか、よく見ると部屋には異様な数の死体と思わしきものと、俺についてきているのと同じような人形が其処ら彼処に転がっているのに今更気づいてしまった。

いったいここで何があったのか・・・・・・非常に気になるところだが、多分今はそれどころじゃない。ここにいる連中には悪いが今は黙祷するだけに止めておこう。

 

 

 

 

---・・・・・・カタッ

 

「・・・・・まあ、当然俺にも来るよなぁ。」

 

右の方から聞こえてきた乾いた音の方へと、俺はそう言いながら視線を向ける。

視線の先には、さっきまでまったく動いて無かった他の人形の一体が音を立てて立ち上がり始めていた。

一先ず自分の人形に指示を出して前に立たせ、臨戦態勢を取らせると・・・立とうとしていた人形は完全に立ち上がって俺の方へと顔を向け、明らかにやばい雰囲気を漂わせながら跳びかかってきた。

 

感覚で人形を操作し、向かってくる人形が振りおろしてきた左腕を左に受け流させつつ横に避けさせ、隙が出来た人形の横っ腹に連続で攻撃させる。

敵は多少怯むが体勢を立て直して右腕を振るい、俺の人形を打ち払いながら距離を取ると俺の人形に飛びかかる。

人形を操作して跳びかかってくる敵にドロップキックを打ち込むと両者地面に倒れ込み、起き上がるように指示すると両者同時に起き上る。

敵の右ストレートを避けて足払いをさせ、人形を転ばせた隙に追撃で蹴りを撃たせようとするがこっちの人形も足を払われて転ばされる。

続けて人形の上へと飛びかかるが俺の人形が仰向けになってそいつを蹴り飛ばし、体勢を整えて蹴り飛ばした敵へと近寄り踏みつけにかかる。

敵はそれを転がりながら避け、四つん這いになってから両腕で大きく飛び上がって体勢を立て直す。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

---・・・・・・・・ダンッ!

 

暫く睨みあった後、今度はこっちから仕掛ける。

指示を受けた人形はダッシュで敵に近寄り、そのままの勢いで跳び蹴りを放つ。

身体の中心を狙ったその蹴りは、しかし敵が逆に向かってきて当たるか当たらないかのギリギリで身を屈めながらスライディングすることにより避けられる。

着地した人形は即座に進行方向を変えて人形を追い両腕で連撃を放つ。敵はそれを防御しつつカウンターを狙って反撃してくる。

俺はその拮抗している様子を、歯噛みしながら見ていた。

 

(見たところ性能は五分五分。知能があまりないのか反撃はそこまで難しくないはずだが・・・如何せん俺の方は指令してから反応までのテンポが若干遅い!何とか集中が続いている間にケリをつけたいところだが・・・)

 

何時の間にかお互いにお互いを捕まえたまま、力比べをする形になっていた。

よし、ここで相手を受け流して転ばせてやれば・・・

 

---ガンッ!!

 

「!?」

 

人形に指示を出した直後、足元に転がっていたはずの人形の一体が突然動き出して俺の人形の足を払った。そのせいで俺の人形が戦っていた一体とともに転がる。

その直後、足元から聞こえてきた乾いた音に嫌な予感を憶えて即座に離れてみると、別の人形が横ばいになりながら、後ろから俺の足を払おうとしていたかのように腕を振っている姿が見えた。

 

「マウントを取られないよう上手く立ち回れ!・・・・・・・そうだよな、他の人形も動き出さないとは限らないよな・・・」

 

---カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ・・・・・・

 

人形に指示を出して、顔を引き攣らせながら周囲を見渡せば、最初のあの一体と同じように不気味な音を立てて立ち上がり、不吉な気配を放ちながら俺の方へと向き直る人形たち。

その数、パッと数えて十五はくだらない。

 

 

 

 

 

---バババッ!

 

立ち上がった人形の半分が四方八方から一斉に飛び上がり、或いは疾走して襲い掛かってくる。

いずれもがその鋭く尖った腕を構え、確実に俺を仕留めにかかっている。

 

---チラッ

 

視線を少し動かすと、俺の人形が三体掛りで床に組み伏せかけられていた。今の内に防御の方に専念させといた方がいいか。

 

 

 

ハァ・・・・・・・・・・

 

 

(本当に、やれやれってやつだねこりゃ。)

 

跳びかかってきた人形の苛烈な刺突、或いは斬撃が、そう考える俺を躊躇なく襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しょうがねえ、こっからはマジだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記憶が戻り、偽りの日常から抜け出したマスターたちを試すために配置されていた人形・・・それの放つ一撃は、通常人間の霊子体が真面に受ければそれだけで瞬時にその命を絶つものである。

そんな攻撃が、八体以上から同時に行われる・・・普通なら確実に即死は免れないその現実を前に、泰寛は顔を顰めた後微塵もその場から動くことはしなかった。

そんな普通とは思えない行動について人形たちはそもそも考える知能自体与えられていないために、何ら躊躇することなく跳びかかって己の凶刃とすら言える腕を振るい、彼をこれまでのマスター同様抹殺しにかかる。

 

そして・・・・・・・・・

 

 

 

---バキンッ!! ドドドドドドドドンッ!!

 

次の瞬間、肉を引き裂いたとは物とは明らかに違う甲高い音とともに人形たちの振るった腕が消え、代わりに彼らが振るった腕と同じようなものがそれぞれの胸を突き破っていた。

否、よくよく見てみれば、中には両腕や頭までもが無くなっているものまでいる。

 

「しょうがねえ、こっからはマジだ。」

 

そんな人形たちに囲まれている肝心の泰寛は、人形の頭の一つと思わしきものをボールの様に真上に投げてはキャッチしながら、さっきまでのそれとは比較にならないほどの凄まじい気迫を放ちつつそう言う。

 

「ここまではあの人形を使って戦う経験がここから先活かせるかと思って敢えて手は出さなかったが・・・こうも数で来られちゃ俺もやらないわけにはいかねぇ・・・」

 

---ガチャガチャガチャガチャガチャガチャッ

 

ようやく状況に処理能力が追い付いてきたのか、3体ほど残して他の襲ってきた人形はその場に倒れ込む。

残っていた人形はガクガクと今にも倒れそうなほど体を震わせていたが、かろうじでその場に踏みとどまり、引き続き彼を始末しようと残った四肢で彼に襲い掛かる。

 

『ギィルァアアアアッ!!』

 

そしてそれぞれの攻撃が当たろうとした直前、彼の内側から突然湧き上がる様に現れた人形の異形がその場で回し蹴りを繰り出し、残っていた人形を全て形も残らないほどに蹴り砕いてしまった。

 

『ヒヒヒヒヒヒヒ、随分脆イジャアネェカヨ。』

 

異形・・・・・・彼の精神の具現であるその存在はその顔に宿る四つの眼光を自分が蹴り砕いた人形へと向け、嘲笑いながら彼の隣へと陣取る。

その様子をまるで自宅にいるかのような安心感とともに眺めていた彼は、ふと、自分の人形がさっきまで襲われていた場所を見る。

そこには自分の足元に転がっている人形と同じように胸から人形の腕を生やした別の人形と、敵から解放されてとっくに立ち上がっていた彼の人形の姿があった。

 

「俺の人形は問題なし。」

『サァテ、コッカラハサッサト片付ケルトシマスカイ。』

「ああ、人形の操作に慣れるとしても練習台はもうそんなにいらない。」

 

泰寛は異形の言葉に同意し、残っている自分の敵に最早物理的な殺傷力を持っていると言っても過言ではないほどの敵意と殺気を放つ。

その気迫を受けた残りの人形たちは、まるで周囲の空間そのものから圧迫されているかのように身体の関節からギシギシと悲鳴を上げ始める。

 

「さあ、消え失せろガラクタ共。」

『ア゛ァア゛ア゛ァァア゛ア゛ア゛ア゛アァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アァアァアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!』

 

その様子を見て、左手を向けながら一言そう言い放つ泰寛。

その直後放たれた異形の悲鳴にも似た叫び声とともに、人形たちの頭上がまるでその空間ごと落ちてきたかのように歪み・・・

 

---ドォオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!

 

次の瞬間、彼らのいた場所はその周囲とともに、深い奈落へと姿を変えた。

 

 

 

「・・・・・・・・・あ、しまった!練習台一体残すの忘れてた。」

 

異形の叫び声が止み、深い深い穴へと変わった場所を見て、後に彼が言い放った言葉であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ふう、やっちまったな。一体くらいは練習用に残しとく予定だったのに勢い余って全部潰しちまった。)

人形に戻ってくるよう指示を出しながら、俺は人形がつぶれて消えていった穴を見てそう考える。

しかし・・・やっぱりスタンドパワーの方は昔ほどとまではいかないみたいだな。なんとなくだが、長いこと平和だったせいで心のどこかにまだ日和っている部分があるように思う。

こっから先で何とか気持ちを切り替えて昔の勘を取り戻していかねえと間違いなくきついだろうな・・・

 

 

「さてと、あらかた片づけたはいいがここからどうするよ?見たところ道なんてどこにもねえし・・・」

『その心配には及ばんよ、聖杯を求めし新たなマスター。』

「!」

 

何処からともなく、道中で俺に戦い方をレクチャーしてきた譲治ヴォイスが響き渡る。

・・・というか、聖杯?俺の聞き間違いじゃなければなんか不穏なキーワードが聞こえてきたような気がするんだが・・・

 

『安心したまえ。私は単なる案内用NPCに過ぎない。私から君に危害を加えるようなことをすることはありえんよ。』

(その声で言われると異様に信じ辛いと感じてしまうのは果たして俺だけなんだろうか・・・)

 

譲治ヴォイスの言ったことにそんな感想を抱いていると、さて、と言葉を区切った後本題に入るかのように奴さんが話し始める。

 

『新たなマスターよ。その奮戦を称え、君に相応しいサーヴァントを送らせてもらう。さあ、受け取りたまえ。』

「なに?」

 

---ガシャァア―――ンッ!! 

 

「!」バッ

 

譲治ヴォイスに聞き返した直後、視界の隅で部屋に光を送っていたステンドグラスが勢いよく割れ、更にステンドガラスを起点に部屋を構成していた壁がガラスの様に割れて砕けていく。

その状況の変化に警戒心を上げていると、さっきのステンドグラスの方向から軽快な足音が聞こえ、俺はその方向へと顔を向けた。

 

 

 

そこに立っていたのは、一人の美少女だった。

身長は・・・130cmといったところか。身体は黒いフリルのある白いドレスを纏い、首には黒と白の布でできたスカーフを巻き、頭には同じ材質と思われる大きめのヘッドドレスを付けている。

髪の毛はどの人種の人間にも見られないような綺麗な紫色をしており、透き通るような、それでいて妖しい輝きを放つ髪の毛と同じ紫色の瞳は、値踏みするように俺のことを見つめていた。

俺はその少女の姿に、普段の自分では考えられないほど心を惹き付けられる感覚を覚え・・・同時にそんな自分に対して危うさを感じ、気持ちを落ち着かせて再度少女を見据える。

 

(なんだこいつ・・・パッと見はただの少女なのに放つ気配が明らかに人間とは桁違いだ!)

 

よく観察してみると分かる。こいつ、さっきまで戦ってた人形とは桁違いに強力な存在だ。

自然と額から冷や汗が流れ、顔を伝って下顎へと落ちていく。

本当に何者だこいつ・・・譲治ヴォイスはさっき俺にサーヴァントを送るだのどうだのとぬかしてやがったが・・・・んん?『サーヴァント』?

ちょっと待てよ、聖杯に、サーヴァント・・・・・・おいおいちょっと待て、じゃあまさかさっきのあの譲治ヴォイスの正体って・・・まさかこの展開って・・・

 

 

「ふぅん、なんか変な魂をしてるわね・・・けどよく見てみたらなかなか面白そうじゃない、貴方。」

「え?あ、はい、どうも?」

 

今までだんまりだった少女からいきなり声を掛けられ、つい気の抜けた返事をしてしまう。

 

「何よ、その間の抜けた。私を前にそんな態度をとるなんて、いい度胸してるわね?」

「・・・悪かったよ。色々と展開が急すぎて情報の処理が追いついてないんだ。」

「あっそ。まあいいわ。私はサーヴァント、アーチャーよ。月並なセリフだけど、貴方が私のマスター?」

「・・・・・・・質問を質問で返すようで本当に申し訳ないが、俺自身のこれからの心構えを決める上で最低限聞いて置かないといけないことがある。先にそれを聞いてからその問いに答えてもいいだろうか?」

「別にかまわないけど質問の内容次第ね、それは。」

「OK、俺が聞きたいことはただ一つ・・・ここで俺が、仮にだ、仮にマスターじゃないと答えた場合、俺は一体どうなる?」

 

そう聞くと、少女は明らかに不満そうに溜め息をついた。

 

「なにそれ、随分と詰まらない問いね・・・死ぬわ。聖杯戦争の規定に従い、あなたはこのSE.RA.PHから跡形もなく抹消される。」

「(うわぁい、これで確定かよこん畜生・・・)よし、ならさっきの問いに応えさせてもらう。俺はアンタのマスターだ。」

 

俺がそう答えると、少女は目を細め、口元を僅かに歪ませながら応える。

 

「そう・・・精々私を退屈させないでね、マスター?」

「ハッ了解だ・・・ッ!?な、なんだ?!」

 

左手に一瞬焼鏝を押し付けられたと錯覚するような尋常じゃない熱を感じて、痛みにこらえながら自分の左手を見る。

すると左手の甲に、何かの紋章の様なものが現れていることに気が付く。

ああ、これってやっぱり・・・

 

『手に刻まれたソレは令呪。サーヴァントの主人となった証だ。サーヴァントの力を強化。或いは束縛する、三つの絶対命令権。簡単に言えば使い捨ての強化装置だ。だが、それはこの戦争の参加資格でもある。努々使い果たさぬ様にすることだ。』

 

また、どこからともなく譲治ヴォイスが木霊する。それと同時に、俺や目の前に立つサーヴァント、アーチャーの姿が薄れていく。

どこかへと飛ばされようとしている・・・不意に、そんな考えが頭に浮かんだ。

 

『一先ず、おめでとう。傷つき、迷い、辿り着いた者よ。主の名のもとに休息を与えよう。取り敢えずはここがゴールだ。』

「休息があるのはいいが、あんまりのんびりする気にはなれないな。何分俺にとっては現状何もかもが分からん尽くしだ。」

 

気が付けば異世界のコンピューターの中にデータとして存在していて、何の因果かこのまま下手に逃げようとすれば十中八九死ぬかもしれないときている。そして唯一それから逃れる方法があの悪名高い聖杯戦争に参加して現状勝ち上がっていくしかないと・・・現状分かっているのがこの程度しかない。どういうことなの(困惑)

 

「フフフ♪」ニヤニヤ

 

気が付けば俺の隣に立って新しいおもちゃが見つかったかのように厭味ったらしく微笑むアーチャー。

デコピンでもしてやろうかこいつ・・・

 

『聖杯を求めしマスターよ。立ちはだかる障害を持ちうる力の全てを持って討ち果たし、見事熾天の玉座へとたどり着いてみたまえ。』

「ぐ、おおおお!?」

 

譲治ヴォイスがそう締め括ると、自分の視界が強い光に覆われて俺は思わず目を閉じる。

その直後気持ちが悪くなるようなショックと浮遊感に襲われ・・・俺は意識を手放してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐ・・・・・・・ウエェ、気持ち悪・・・・・・」

「チッ。」

 

あ、頭が、フラフラ・・・する・・・世界が揺れてる・・・・・

あ、あれ?確か俺、公園に散歩に行って、ベンチに座って、それから・・・

だ、だめだ・・・気持ち悪くて頭が働かん。とりあえず・・・今俺、どこにいる?あそこじゃ、なさそうだが・・・

 

「落ち着きなさい、そんな状態で立ち上がろうとしたところでまた倒れるのがオチよ。」

「ぬ・・・?」

 

覚束ない思考と気分のまま何とか起き上がろうとすると、目の前に見覚えのある少女が現れて俺を止めた。

コイツは、確か・・・

 

「アー、チャー?」

「ええ、そうよ。万人が愛し求め焦がれる女神(アイドル)にして貴方のサーヴァント、アーチャーよ。おはようマスター。よく眠れたかしら?」

「・・・ああ、そうだな。寝過ぎて逆につらいくらいだが・・・実際どれくらい寝てたんだ?」

「そうね・・・こっちに来てから一分もたってないんじゃないかしら?」

「なるほど、思ったより短かったな・・・後さっき舌打ちしてなかった?」

「気のせいよ。」

「あっはい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よし、だいぶ落ち着いてきた。よっと・・・」

 

気怠い体を起こし、周囲の状況を確認しにかかる。

どうやら今俺がいるのは、俺が最初にいたあの月海原学園の屋上・・・その最上段にある貯水槽の側だったようだ。

そしてその確認が出来たと同時に、さっきまで起こっていたあの非常識にもほどがある現象が徐々に思い起こされていく。

念のため肘の内側を指で弾いてみて・・・

 

「つ~~~~~ぁ~~~~~~~~~~~っ!!」ジィーーーーーーーンッ

 

夢では絶対にありえない痛みと痺れによって、現状がまぎれもない現実であることを嫌というほど再確認させられた。

 

「いきなり何やってるのよ貴方、ひょっとしてそう言う趣味があるの?」

「んなわきゃあない。ただ現状が夢だったらいいなぁ~~なんて思ってちょっと昔ながらの方法を試したただけだ。」

「何それ、意味わかんないわね。」

「・・・・・・それはそれとしてだ・・・アーチャー。この世界は一体なんなんだ?なんかSF系の創作物でよく見る電脳世界みたいなところにいるってのはかろうじでわかってるんだが、それ以外がさっぱりだ。一体全体何がどうなってるのやら・・・」

 

分かるのは俺があの聖杯戦争に某ブラウニー以上に奇怪な形で巻き込まれているくらいだが、それだけわかっているだけじゃいかんともしがたい。

・・・俺アニメのzeroとsnとカーニバルファンタズム、あとネットで使われてたネタくらいしか知らねえし、そこんとこも印象が深いのしか覚えてないからよくわからねえんだよなぁ・・・あ~あ、こんな事なら他のfateのプレイ動画でも見ておくんだった。

 

「・・・ちょっと待ちなさい、貴方ひょっとして記憶が戻っていないの?」

「記憶?」

「・・・その様子だと本当に記憶が戻ってないみたいね。はぁ~~、面倒な事になって来たわ・・・適当にショックでも与えたら治るかしら?確か斜め45度から殴ると調子が戻るって聞いた気が・・・」

「ねえよ!昔の白黒テレビか俺は!?おいこら手刀を構えるな!頭を掴もうとするな!」

「黙りなさい。私、煩い人は嫌いなのよ。」

「無茶苦茶抜かしやがるなテメェ!?」

 

===主従が若干揉めているようです。少々お待ちください。===

 

 

 

 

 

 

「な、なんでこんなところで疲れてるんだ俺は・・・」

「あら、私は意外と楽しかったわよ。貴方反応が面白いし、この分なら退屈せずに済みそう。」

「コ・イ・ツ・・・・・ハァ~~~・・・」

 

よし、いったん落ち着こう。コイツはあれだ、典型的な小悪魔系キャラなんだ。このままのペースで言ってたら日が暮れる。ここに太陽が有るかわっかんねえけど。

 

「まああんまりいじってるのもなんだし、そろそろ本題に入りましょうか。マスター、貴方聖杯は知ってる?」

「・・・その言葉が指すものが聖人の血を受けた器だっていうんならまあそこそこには。後は・・・ケルト神話の【ダグザの大釜】が元ネタなんじゃないかって言われてることくらいか・・・」

「あら、意外と知ってたのね・・・そう、端的に言えばその聖杯を取り合うために魔術師(ウィザード)たちが戦うのがあなたが参加しているこの聖杯戦争なのよ。そして今は忘れてるようだけれど、マスターも聖杯を奪いにこの世界に来た、れっきとしたの一人よ。」

(別に来たくて来たわけじゃねえけどな。後ここだとメイガスじゃなくてウィザードって呼ぶんだな、魔術師の事・・・)

 

そんな俺の内心とは関係なく、アーチャーの説明は続いていく。

 

 

サーヴァントという者の定義、割り振られるクラスの種類、この聖杯戦争の大まかな流れ、基本的なルール等々・・・大体は俺が知っている通りの物だった。

 

 

 

「説明はこれくらいかしら。聞きたいことはある?」

「・・・いや、今は特にはないな。」

 

本当はこの世界のことについてもっと聞きたいところだが、今はいい。多分これからやっていくではさして役に立たない情報だろうからな。

それにアーチャーの表情と態度からして、そろそろこの話題に飽きてきたと見える。おそらくここら辺で切り上げないと変に機嫌を損ねることになるかの知れない。

 

「そう、じゃあ最後に貴方の名前を教えなさい。貴方、いろいろと見所がありそうだから特別に名前で呼んであげるわ。」

「そいつはどうも・・・梶原 泰寛だ。よろしく頼むよアーチャー。」

「ええ、勿論。精々楽しませてねヤスヒロ。」

 

 

こうして俺は、この小悪魔的という表現が正しい笑みを浮かべるサーヴァントとタッグを組み、熾烈な戦いに身を投じていくこととなった・・・・・・・・・・・

やれやれ、厄介なサーヴァントを掴まされたな、俺。

 

 




当初の梶原のサーヴァント候補だった方々


ブーティカ姐さん:御馬さん要員兼お姉さん系ヒロイン
アステリオス:迷宮繋がり&良き相棒枠
黒髭:言わずもがな
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