デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録 作:enigma
第四十八話
===14:40l海鳴第一小学校===
「それでは皆さん、今日も寄り道せずにまっすぐお家に帰るんですよ。梶原君、号令をお願いします。」
「はい!起立、礼!」
「「「「「「さよーならー!」」」」」」
---ザワザワ・・・ガヤガヤ・・・ザワザワ・・・
「ふう、今日も一日頑張った。」
「梶原―、途中まで一緒に帰ろうぜー。」
「あいよー、ちょっと待ってくれ―。」
クラスメイトに返事をしてから、最近ベルトの部分が草臥れてきたランドセルを背負い、俺は自分の席から離れてクラスメイトと一緒に校舎の外へと向かう。
---ヒュォオ―――――ッ
「うぅ~~寒い寒い。急に冷えてきたよな最近。」
校舎の外に出た瞬間、自分の肌を撫でていく季節の風に身を震わせる。
「今の時期に半袖でいるの梶原君位だと思うよ。」
「皆衣替えが終わってるのにお前ときたら。」(^ω^;)
「正論過ぎてぐうの音も出ねえ。」┐(´-`)┌
クラスメイトの指摘に肩をすくめながら、俺は談笑しつつ校門をくぐって道を曲がった。
「こんにちわ泰寛。今暇?」
な ん か い る っ !!
「・・・こんなところで何やってるんですかねぇアリサさんよ。」
あんぐりと大口開けていたであろう顔を元に戻し、俺はなぜか校門を曲がったすぐの場所にいたアリサ(ローウェル)に質問を投げかける。
「あらあら、大切な人と少しでも長く過ごしたくて、こうして迎えに来たことがそんなにおかしいの?」
「貴方確か今中学生のはずだと思うんだけど・・・」
通常、小学校よりも中学校の授業が終わるというのはまずありえない。ましてや今日は平日・・・こいつ、さてはサボってきた?
---ガシィッ
「ん?」
「「ちょっと梶原君、この人についてkwsk。」」
「なんでさ。」
頭を抱えてそんなことを考えていると、両側にいるクラスメイトからそれぞれ肩を掴まれてしまう。心なしか掴まれているところが痛い。
「お前ら何か激しく誤解をしてないか?この人はたまたまその辺で知り合ったごく普通の友達でだな・・・」
「ぶっちゃけこいつのと関係は何ですかお姉さん!」
「すごく気になります!」
「おい聞けよ人の話を。」
「幸せにしてやるって言われたわ。」
「お前も悪乗りしてんじゃねえ!?」
聞いておきながら質問をアリサに移したクラスメイト二人に口角を軽くひくつかせていると、アリサは嘘では無いもののかなり際どい言い方で返しやがった。詳しく話すわけにはいかない内容とは言えそれはさすがにないだろおい。
「あなた達は泰寛のお友達なの?」
「あ、はい!こいつのクラスメイトの葉浦要一です。」
「美奈原沙月です。」
「葉浦君に美奈原ちゃんね。私はアリサ・ローウェル。この近くの中学校に通っているわ。」
口元をひくつかせながら微妙な顔をしている俺を置いて、アリサとクラスメイト二人はお互いに挨拶をする。
・・・良し。
「あ、そう言えば今日用事があったんだった!先に帰るねー!」
「あ!おい!」
「ちょっと梶原くーん!」
面倒臭い空気から逃げ出すため、俺は全力でその場を離れた。
「・・・ふう、ここまで来ればいいか。」
ある程度走った辺りで、俺はスピードを落としながら後ろを向く。
そろそろあいつも追いついてくるはず・・・よし来た。
「ちょっと、急に走り出さないでよ・・・」
曲がり角から息を切らしながら走って来たアリサは、こっちに駆け寄ってきて文句を言ってくる。
「面倒事はまず逃げるに限る。」キリッ
「キメ顔で言うことじゃないわよそれ。」
「ややこしい言い方でこじらせてくれた奴が突っ込んでいいことではねえよ。」
「あら?私は本当のことを言っただけよ?」
「ハハッ、殴りたいこの笑顔。」
互いに軽くジョークを交えた後、俺達はトボトボと歩きだす。
「どこに向かうの?家はそっちじゃないはずだけど・・・」
「矢島の家にだよ。今日はあいつの家で∀ガンダムの残り5話を見る約束してたんだ。」
「たーんえー?」
「ロボットアニメだよ。先週から何話ずつか纏めて見てるんだよ。」
「好きなの?」
「おう、最初見た時はガンダムの名を関してる機体がこのデザインってどうなの?て微妙に思ってたんだけどな、食わず嫌いもどうかと思ってちゃんと見てたらこれがまた面白くて・・・」
これは実は前世で見た分の感想だけどな。いやほんと、実際に動いてるシーン見ると凄いよあれは。
「ふーん・・・私も一緒に見ていいかしら?」
「別にいいけど時間が無いから今日は最初から見るのは無理だぞ。」
「構わないわ、行きましょう。」
「(途中から見ても内容わからんだろうに)・・・まあそう言うことなら。」
「ありがとう。・・・・ところでなんであなた半袖なの?」
「強いて言うなら鍛えるため。」
取り敢えずその場は納得し、俺は矢島に一報入れてからアリサを引き連れて向かって歩いて行った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「とりあえず何も言わず爆発しろ。いいね?」
「アッハイ、とでもいうと思ったかこの野郎。」
「こんにちわ啓一君。私も上がらせてもらっていい?」
「おうどうぞどうぞ。遠慮なく上がっちゃって・・・ところでお前寒くねえの?」
「わりと平気なんだよなぁこれが。」
(とは言えさすがに明日からはちゃんと着込むか。寒いのは確かだし。)
矢島に連れられ、俺達は玄関を上がって見慣れたリビングへと足を運ぶ。
テレビの前の机にはコップとお菓子が準備されており、俺とアリサはそれぞれ好きな所に座った。
「準備OK?再生するぞ?」
「いいわよ。」
「いつでもどうぞ。」
冷蔵庫から水とお茶とジュースを持ってきた矢島が確認を取り、テレビとDVDレコーダーの電源を入れて再生ボタンを押す。
俺達はそれぞれ好きなお菓子を開けて、テレビの画面を見始めた。
===アニメ鑑賞中・・・ロランと御大将の熱いやり取りの一部をご覧になりながらお待ちください・・・
『貴方がその力を守ってこられたのは、ディアナ様をお守りするという誇りがあったからでしょう!?』
『その誇りをくれたのがディアナなら、奪ったのもディアナなのだ!労いの言葉一つなく、地球へ降りたんだよッ!!』
---ギュオンッ ドシュゥウッ!!
『そんなディアナのために戦う貴様などに、この私は倒せんッ!!』
『倒す!倒します!!』
---ドシュゥウッ!
『遅い!!』
---ドシュウッ!! ゴガァアンッ!!
『純粋に戦いを楽しむ者こそ!!』
『自分を捨てて戦える者には!!』
---ギギギギギギギギッ!!!
『おのぉおれぇぇええ!!』
「やはりターンタイプの動きは素晴らしい。」
「まったくだな。∀のあの曲線美といい、第一印象は微妙だったけど実際見てみれば物語と見事にマッチしててかなり魅せられるものがあったぜ。」
「そして最終話のあの掛け合いよ・・・あれはマジで鳥肌モノ。」
「まさにそれである!」
最終話を見終わった俺と矢島は、お互いに感動を口にし合う。
ちなみに俺は∀もXも両方好きだが、強いて言うならX派だ!!あの独特のデザインと全身ビーム兵器という仕様、あの謎の多さ・・・正にロマン!!
「・・・やっぱり途中から見るものじゃないわね、こういうストーリー物は・・・」
「「残当。」」
「ざ、ざんとう?」
「あぁ~、わからんか。ネットスラングで『残念ながら当然』ていう言葉の略称なんだよ。」
「なるほどね。」
俺の説明にアリサは納得がいったように頷く。
俺達はその後、テレビを消してお菓子の始末を行う。
「・・・あ、ところで梶原。明後日辺り翠屋に来れるか?」
「経費がお前持ちならおk。」
「無茶言うなし。大体元々はなのはが言い出しっぺで、塾で今日来れないから俺が代わりに誘う予定だったんですがねぇ?」
「なら経費はなのは持ちだな。」
「なるほど、なら当日はいっぱい食べないと(ゲス顔)」
「ははは(イイ笑顔)」
「そこは景気よく自分が奢るくらいはしないの?」
「「自分らお子様なんで。」」
「え。」
「「え?」」
「見た目通りのお子様だろう俺達。」
「せやせや。」
「一度鏡で見直してくると良いんじゃないかしら貴方達。」
解せぬ。まあ金自体は年の割に馬鹿みたいに持ってるから奢ってもなんの問題もねえけど・・・明後日か。確か日曜日だったよな・・・まあ予定はないからいいとして・・・
「で、なんで明後日なんだ?遊びの誘いってだけなら誰かの家でもいいよな?」
「知らね、なんかサプライズイベントだのどうだの言ってはいたけどな。」
「サプライズねぇ・・・ま、いいや。予定ねえし一応OKで。時間はいつよ?」
「お昼辺りに来てくれればOKだ。」
「それ、私も一緒に行っていい?」
「問題ねえよ。翠屋の場所は分かるか?」
「そこは大丈夫よ、私もあそこに行ったことあるし。」
「なら問題ねえか・・・じゃあ明後日は学校が終わったら翠屋に集合ってことで。」
「おk。」
「分かったわ。」
矢島とアリサが返事を返し、この話はまとまった。にしてもサプライズってなんなんだろう・・・
「ところで梶原、実はアニメの影響受けてターンタイプの機能をデバイスに組み込みたくなってきたんだが。具体的にはナノスキンとかシステム∀と月光蝶システムとか。」
「少なくとも国内じゃ絶対使わせねえ。」
「国内どころか大陸の砂漠か太平洋の真ん中でも使用許可出せるかどうか怪しいわね。」
「ショボーン(´・ω・`)」
黒歴史の再現とか冗談じゃない。コイツのことだからたぶんマジで黒歴史を再現できるレベルの物を用意するに違いない・・・
「い、いや待て。完成した暁には祝儀として1/1スケールターンXの設計図もプレゼントするから・・・」
「なに!?い、いやでも・・・」
「今ならなんと!助手をしてくれるならオリジナルターンXのバージョンと∀も含めて贈呈するキャンペーンも!!」
「全力でサポートしよう!!なんでも言ってくれッ!!いやむしろ言ってくださいお願いしますッ!!!」
「わかったから落ち着きなさい。」
ロマンには勝てなかったよ・・・
===翌日深夜===
「あぁ~~~~、今日も遊んだ遊んだっと・・・」
さぁてそろそろ寝ないと。子供の内から夜更かしする奴は背が伸びないからな。
「おやすみなさぁ~~~い・・・・・・・・・・・・・・・・・・zzzzz・・・zzzzz・・・zzzzz・・・」
---トゥルルルルル!! トゥルルルルル!! トゥルルルルル!!
「ンァ?誰だこんな時間に・・・・・・て矢島しかいねえよな、これにかけてくるの・・・・・」
折角気持ちよく寝ついていたというのに、机の上に置いてあったスマホのコール音で目が覚めてしまった。寝起きでイライラとしつつも、布団から出て呼び出しに応じた。
「{ピッ}ハイモシモシ?」
『{ザザザッ}梶原か!』
「んだよ矢島。こちとら折角気持ちよく寝てるところに・・・」
---ザッ ドォンッ ザザザッ ガキィンッ ドンドンッ!!
「・・・てかなんかそっち煩いしノイズが酷いんだけど、何やってんのお前?」
鬱陶しいノイズと何かが炸裂するような音を訝しげに感じながら改めて聞くと、何やら慌てたような矢島の声が聞こえてくる。
『{ザザザッ}いやちょっといま変な奴らに{ザザッ}襲われて、うお!?{ガキンッ}フェイト{ザザザッ}一緒に駆けつけたおかげでなのはは無事なんだけど、あぶな!』
「おい、ホントに今何やって{ブツンッ}・・・切れちまった。なんか節々でフェイトとなのはの名前が聞こえてきてたよな・・・結構唯ならない感じだったが・・・どうする?さすがに今外に出るとなると怒られかねないしなぁ・・・大体今あいつどこにいるんだよ。」
とりあえず場所の確認のために、ペイズリー・パークを装備してスマホに場所の地図と道程を出させる。
「これは・・・なのはの家の近くのビル群?」
事情は分からないが、念には念を入れて出かける用意を整える。
「良くわからねえけどただ事じゃないのは確からしいし、一応駆けつけてみるか。」
倉庫から靴を取り出し、窓を開けて俺は屋根の上に足を踏み出した。
---ピピピッ ピピピッ
「ああ?今度はメール?」
スタンドを出して移動しようとした瞬間、今度はメール用の着信音がスマホから鳴り出す。
俺は画面を起ち上げ、矢島から送られてきたメールを確認する。
【さっきは急に電話してすまんかった。さっきのことについてなんだけど、一応こっちでカタはついた。明日追って話すからとりあえず今晩は家に帰ってそのまま寝といてくれ。
じゃあな(・ω・)ノシ
ps.ルシファーが天界の天使長だったって話、あれ聖書を翻訳した人のミスだったらしいよ。】
「・・・・・・・・」
知っとるよ。ネットで間違い指摘してるサイトいくつも見たし。というかあれ原本からしてかなり怪しかっただろ・・・てか本当に結局なんだったんだよ。
(・・・・・・もういい、明日説明するらしいしさっさと寝直そう。馬鹿らしくなってきた。)
靴を脱いで、窓から部屋に戻って寝巻に着替え直し、俺は再度布団に倒れた。