デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録 作:enigma
===9:03l梶原家、泰寛の自室===
「おはよう・・・」
翌日、俺はいつもより少し遅い時間に起きて、ショボショボとしている瞼の端を擦りながらリビングに行った。
リビングには母さんがいる。父さんは仕事かな?
「あら、おはよう泰寛。今日はちょっと遅かったわね。」
「ハハハ、ちょぉ~っと昨日は上手く寝付けなくてさ・・・」
「そうなの?珍しいわね。あ、おかずとサラダはラップしてレンジの中に入れてるから、ご飯とお味噌汁をよそって持ってくると良いわ。」
「あいよ。」
キッチンに行って先にご飯と味噌汁を用意し、レンジの中のおかずを取り出す。
(今日は鶏の腿肉の塩胡椒焼きか。サラダはミニトマトとレタス、千切りキャベツに細切りの人参を盛り付けたよく見るタイプだな。ドレッシングは・・・今日はゴマダレにするか。)
ご飯の入った皿をお盆に乗せ、一気にリビングの机に持っていく。
「いただきまーす。{ハムッ モグモグ}うん、おいしい。」
準備が出来た所で箸を持って挨拶をし、テレビから流れてくるニュースをBGMにおかず、サラダ、ご飯の順に、たまに味噌汁を間に挟みながら順序良く食べていく。
(さてと、今日は翠屋に行く予定なんだが・・・何の連絡もない以上行くべきか・・・)
一応、集合はお昼という話だった。それまでに何もなければ、とりあえず予定通り翠屋にいくことにしよう。
「御馳走様―。」
食べ終わった後の食器を重ね、流しに持って行って洗ってから時間を確認する。
(今は・・・9時30分か。よし、11時半までは自室でアニメでも見ていよう。見る内容は・・・∀とターンXの戦闘シーンだけ見た後でジョジョの第一部から見れる限り見ていく方針で決まりだな。)
俺は自室に戻り、倉庫から29インチの薄型テレビを取り出して勉強机の上に置いて電源プラグをコンセントに差し込む。
「ターンXのシャイニングフィンガーはかっこいいよなぁ・・・・・・あれ、待てよ?Gガンダム式の奴なら俺でも・・・いや、これはさすがに拘りがあるから無しで。」
シャイニングフィンガーもゴッドフィンガーもやろうとすれば多分出来ないことはないが、波紋法はあくまでも波紋疾走(オーバードライブ)というからこそ意味がある。大体流派東方不敗は天然自然の力を吸収して使うもので波紋法とはチョイ違うはずだし。
「さぁ~て馬鹿なこと考えてないでさっさと見よ。」
USBケーブルを使ってテレビに神様謹製のPCを接続し、中に纏めているファイルの中から∀ガンダムのファイルを選択して、その中のいくつかの話をテレビで再生するよう設定した。
「準備よし!それじゃあスター{ピピピピピッピピピピ}いいタイミングで何だよ一体・・・」
決定ボタンを押そうとしたら、メールの着信音で中断されてしまった。
発信元は当然矢島・・・というかこれで連絡できる先って矢島と博士のとこ以外今のところ登録してないんだよな。やろうと思えばタダでどこにでも発信できるけど。
取り敢えずテレビをいったん消して、メールを開いて中身を確認する。
【おはよう梶原、とりあえず直に話すのも面倒なんで昨日起きたことについて下に纏めとく。
昨晩突然、なのはと正体不明の強力な魔力反応があって現場に駆け付けたところ、広域に渡って術式の不明な結界が張られていた。中からなのはの魔力が感知出来たから『トランザム!!ライザァアアアアアアアッ!!!』して結界をぶっ壊して侵入すると、結界内でものっすごく嫌そうな顔をしたなのはとゲートボールのハンマーみたいなデバイス持った赤いゴシックロリータ(写真①)、そして何故か界統の奴がいた。
取り敢えずこっちに気が付いたゴシックロリータの睨みと界統の平常運転(宝具の爆撃もあったが全弾大外れ)を無視して傷ついたなのはと合流。その後ロリータの攻撃を軽く打ち落としながら『ねえどんな気持ち?自慢の攻撃軽く落とされて今どんな気持ち?』ってやってると、なぜか駆けつけてくれたフェイト、アリシア、ユーノ、アルフと遭遇し、フェイトたちがロリータの説得に出動(なお界統が邪魔に入って一気にカオス化)。俺は仲魔を召喚してユーノの代わりに怪我したなのはの警護に回る。
その後、なんとかロリータを追い詰めたフェイト達に片刃の剣とピンクのポニーテールが特徴の甲冑みたいなのを着込んだ女(写真②)が強襲。直後に界統とアルフを謎の犬耳つけた銀髪マッチョの男(写真③)が強襲し、そこそこ危ない状況に陥った。さすがにこれはやばいなと思ってその場に結界装置を置き、警護をユーノと仲魔に任せて俺も参戦した。後は数の有利で押して相手方を退却させるに至った。全員ほぼ軽傷のみで済んでいる。
以上、ざっとこんなもんだ。】
「そんなことがあったのかよ・・・あ、襲ってきた連中ってこいつらか。」
この街いろいろ問題起き過ぎだろ、と内心溜め息を吐きながら説明の下にあるファイルを開くと、番号ごとに一枚ずつ鮮明な写真が表示される。
まったく、また余計な事件が起こりやがって・・・・・・ん?まだ続きがあるな。
【後翠屋の件だけど、なのはたち曰くテスタロッサ一家の地球への引っ越し祝いとして俺達御呼ばれしてたみたいだ。目論見が思わぬ形で外れてなのはがしょげてる姿にワロタw
ああ、後ひょっとしたら一時間くらい時間がずれ込むかもしれない。悪いけどそっちのアリサにも伝えといてくれ。それじゃあまた翠屋で遭おう。】
「へぇ、あいつら引っ越してくるのか・・・」
てっきり遊びに来た所を運悪く、ていう展開だと思ったけど・・・へぇ、そうかそうか。また賑やかになるな。
ま、とりあえずそれはおいといて・・・・・・人の友達に手を出すとは、この写真の奴等めちゃ許せませんなぁ~~!
「取り敢えず出かけるまでにこいつらのこと調べておくか・・・やれやれ、折角準備したのにいやなもんだなぁ・・・」
ぶちぶちと文句を言いながら、テレビを片付けて俺は庭に出た。
えっと、アンダー・ワールドとペイズリー・パークとハーミット・パープルはどこにやったっけ・・・
「母さん、いってきます。」
「ええ、いってらっしゃい。お土産よろしくね?」
「この母ちゃっかりしてらっしゃる・・・!!」
いろいろやってる間にとうとう時間が来て、母さんに出かける挨拶をしてから俺はキックボードに乗って翠屋へと向かった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
一応・・・ね、調べるには調べてみたけどね、いやぁ・・・・・・・・割と事情が重かったみたいよこいつら・・・
時間の関係上掘り下げ足りない部分は少しあったが・・・それにしてもこれ妨害するのがかなり躊躇われるんだけど。
いやまあなのはたちを襲撃したことは絶対OK出せねえけどな。大体なのはたちの意志無視してるし下手したら大事になってたかもしれないんだしね。
「とりあえず矢島経由でなのはたちには話を通しておくか・・・・ん?」
翠屋の前でこっちに手を振っている人影が見える・・・あれアリサか?というかどっちのアリサだあれ・・・ローウェルか?バニンクスか?・・・・あ、やっぱローウェルの方だ。
「こんにちわ泰寛。」
「おう、こんにちわ。他の連中はまだいないのか?」
キックボードをアリサの近くで止め、お互いに挨拶を交わしてから確認を取りに行く。
「ええ、まだ来て無いみたいよ。」
「そうか・・・矢島から連絡があったんだけど、みんなの到着がもしかしたらずれ込むかもしれないって言ってたんだ。」
「そうなの?」
「ああ。いつ来るか分からないし、一足先に中で待ってないか?」
「そうね、それじゃあ御先に休憩させてもらいましょう。」
「ああ、俺はこれを片つけてくるから先に入っててくれ。」
「分かったわ。」
アリサが納得したところで、俺は人目につかない所に移動してから倉庫にキックボードを片つける。
そして翠屋に入り、アリサが取っておいてくれた席に対面するように座る。
「何にする?私は適当に選ぶけれど・・・」
「俺も腹に溜まりそうなのを適度に選ぶわ。」
お品書きをアリサとともに眺めながら、俺はベーコンサラダとオムライスと、唐揚げとポテトの盛り合わせを選ぶ。
「店員さんを呼んでもいい?」
「どうぞどうぞ。」
アリサが注文用のスイッチを押す。
するとカウンターの向こうから、なのはのお母さんこと高町 桃子さんが現れて注文を取りに来た。
「いらっしゃいませ・・・あら、泰寛君にアリサちゃん?今日は珍しい組み合わせね。」
「え?」
「いつもはすずかちゃんかなのはか、矢島君たちと一緒に来るのに。何かあったの?」
「え、あ、あの・・・」
桃子さんの親しげな態度に、アリサが珍しく困惑し始める。
思った通りというかなんというか、向こうのアリサと勘違いされてるな。
「桃子さん、この子はアリサ・ローウェルという名前の子で、バニンクスの方とは別人です。あなたの知るアリサじゃありませんよ。」
「え?・・・あ、あら本当。そう言えばどことなく髪や目の色が違うわね。」
アリサをマジマジと見つめながら、桃子さんは驚愕する。
アリサは疑問に思っているのか、俺に聞いてきた。
「どういうことなの?」
「矢島の方の仲良い友達に、名前が同じで外見もポケモンの色違いレベルでお前とそっくりな奴がいるんだよ。この人はその子と間違えてお前さんに話しかけたってわけだ。」
「そうだったの・・・というかそこまで似てるの?」
「髪の色変えてカラーコンタクト入れたらじっくり見ても見分けがつかなくなるくらいにはな。ねえ桃子さん?」
「そうね、私も全然気が付かなかったわ・・・けどよく見たら雰囲気は何となく違うわね。」
「そのもう一人のアリサってどんな子なんですか?」
「そうね・・・とっても元気で明るい子よ。ちょっと気が強すぎる時もあるらしいけど、思いやり深くていい子ね。」
いやあの、矢島の話と実際にあった時の感想を合わせると俺の中ではツンデレのテンプレートみたいな奴という判決しか出なかったんだが・・・いやよそう、俺の勝手な考えで皆を混乱させるわけにはいかない・・・
「取り敢えず桃子さん、続きは注文取ってからにしましょうか。」
「それもそうね。それじゃあ二人とも、注文は何にする?」
「私はペペロンチーノで。」
「俺はこれとコレとコレで。」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
桃子さんは注文を書き終わり、カウンターの奥へと行った。
「話し合いながら待ちましょうか。」
「そうだな。」
その後料理が来るまでと来てからしばらく、俺はアリサと話し合うことになった。
お互いの日頃の学校やプライベートでの生活、再会するまでに俺達が携わった事件、年一回の頻度で行っている美味いもの巡りの旅など・・・時に笑い、時にしんみりと、そして時にお互いの嫌な思い出を振り返ったりなどしながら、俺達は時間が経つのを忘れて話に花を咲かせていった。
「・・・・それでな、なのはの奴からかってたら恭也さんが眼だけ笑ってない表情で背後から音もなく現れて・・・」
「それは怖いわね・・・」
---カランカラァ~ン
「こんにちわ~。」
「ん?・・・あ、矢島。」
「え?あ、本当だわ。やっと来たのね。」
色々と話し込んでいるうちに見せ述べるとともに聞き覚えのある声が聞こえ、視線をその方向に移すと、矢島がなのはたちを引き連れて店に入ってきていた。
「あ、あの子が私のそっくりさん?」
アリサ(ローウェル)はアリサ(バニンクス)の顔を見て、驚きを隠せないといった感じでそう言う。
「そういうこと。な?そっくりだろ。」
「ええ、ちょっと驚いちゃったわ・・・本当にこんなに自分と似てる人がいるなんて世の中不思議よね・・・」
「まったくだ・・・」
そして・・・
---カランカラァ~ン
「お、あいつらも入って来た・・・・・・んん~~~~?」
すずかたちの後ろからプレシア、アリシア、フェイトの三人と、なぜかリンディさんが一緒に店へと入ってきて桃子さん達に挨拶をしていた。
プレシア達はまだわかる。時期的に裁判が終了してこっちに遊びに来ただけだろうから・・・けどなんでリンディさん?
「ウ―ッス梶原。」
「オイ―ッス矢島。」
そんなことを考えていると矢島達がこっちに気が付き、まずは矢島とお互いに挨拶を交わす。
「久しぶり泰寛、元気に・・・え!?」
続いてなのはたちもこちらに気が付いてこっちに振り返り・・・挨拶をしようとした瞬間、アリサ(ローウェル)の顔を見たアリサ(バニンクス)が驚愕した。
そりゃそうだろうなぁ、自分とうり二つの奴が目の前にいるんだもの。ドッペルゲンガーにでも会ったような気分なんだろうな。
「どうしたのアリサちゃん・・・え?!アリサちゃんが二人!?」
「え?なになに・・・ふぇえええ!?なにこれ、どういうこと!?」
それにつられてなのはとすずかがこっちに顔を向け、これまた二人の顔を見比べながら驚きの声を上げる。
そしてアリサ(バニンクス)は咬みつかんばかりの勢いで詰め寄ってきて来た。
「ちょ、ちょっと!この子だれなのよ!私とすごくそっくりじゃない!」
「うるせぇなぁ~~、店の中で大声で叫ぶなんてマナーがなってねえよアリサさん。」
「う!?ぐぬぬ・・・」
痛い所を突かれたように唸る彼女を放置し、俺は後から寄ってきている矢島、なのは、すずか、フェイト、アリシアの五人に視線を向けた。
中でもフェイトが俺を発見した途端、すごく嬉しそうな表情になったのが印象深かった。
「皆久しぶり、元気してた?」
「あ、うん、もちろんだよ・・・」
「久しぶりだね、泰寛君・・・」
なのはとすずかは唖然とした表情で二人のアリサを見比べながらも、俺に返事を返してくれる。
なお矢島は三人の様子を見ながら後ろでにやにやと笑っていた。コイツさてはワザと教えてなかったな?
「泰寛君久しぶり―!元気にしてた!?ていうかどういう状況なのコレ!?」
「ね、姉さん、お店の中であんまり騒いじゃだめだよ・・・あ、久しぶり泰寛、元気だった?」
どうしたものかと考えているとアリシアが矢島の後ろから元気よく顔を出し、興味深そうに聞いてくる。
フェイトは若干オロオロとしながらアリシアを諌め、俺の方を向くと花が咲いたようにとても可愛らしい笑顔で挨拶をしてくれた。
癒されるなぁ・・・
「ねえ、話に花を咲かせてるところ悪いんだけどいい加減この子のこと教えてくれない?」
「その件に関しては後ろでにやついてる奴に聞いてくれ。たぶんわざと教えてなかっただろうし。」
「ちょ、おま!」
「へぇ、そうだったの?それじゃあゆっくり聞かせてもらおうじゃない・・・」
「なにそれこわい。」
苦笑いを浮かべながら、矢島はアリサ(バニンクス)に引きずられて別の席へと連行されていった。なに、こいつが説明してなかったのが悪いのだ。
「えっと何の話だったっけ・・・そうそう、俺が元気かって話か。まあちょっと面倒臭いこともままあったけどこの通り元気元気。」
「そっか・・・よかった。」
「うんうん、よかったよかった!{ボソボソ}なのはからビデオレターで聞いたんだけど、大変だったみたいだね。」
「え?」
アリシアが俺の隣に座り、周りに聞こえないように言った一言に俺は首を傾げた。
するとフェイトも神妙な表情で、こちらに顔を寄せてきた。
(・・・何か積もる話もあるみたいだし、私はこっちに回ろうかしら。)
ちなみにアリサ(ローウェル)は何か気をきかせてくれたのか、いまだ困惑状態のなのはとすずかに話しかけに行ったようだ。
それを確認したアリシアとフェイトは、小声で俺の疑問に答え始める。
「え?って、この街で起きかけてた次元犯罪を解決したんでしょ?なのはが、泰寛や敬一が事前に動いてくれてたから本格的に大事が起きる前に防げたって言ってたよ。」
「あ~~~、そう言えばそんなこともあったなぁ・・・」
何かと思えばその話かよ。あの便器に吐き出されたタンカスにも劣るゴミのせいでやりたくもない苦労とストレスを感じざるを得なかったからなぁ・・・
ホント、あの事件は心底胸糞悪かった・・・!!
「凄く心配してたんだよ?なのはにも言ってあったんだけど、二か月前くらい前から地球を中心にいろんな次元世界の大都市で高レベルの異相空間の形成と強力な魔法生物が暴れ回る事件があったの。私と母さんは裁判で刑を軽くするための条件として一年間嘱託魔導師として勤務することになって・・・・・その事件の解決に駆り出されたことがあったんだけど・・・・・・」
「ああ~うん、その顔見て大体察せたわ。」
悔しさと悲しさと怒りがごちゃ混ぜになったかのようなフェイトの表情を見て、現地で何があったのかが容易に理解できてしまった。
あの下種アマ本当に害しかふりまいて無かったのな。おまけに全く懲りてなかったみたいだし、二度と目覚められない様にして本当に正解だったわ。
「本当に・・・酷い有様だったんだよ。本当に酷い所は母さんたちに止められて又聞きでしか知らなったけど・・・・・・なのはの連絡が来る前は、もしかしたらなのはたちやこの街も巻き込まれてるんじゃないかって・・・本当に・・・」
「お、おう。ありがとうな・・・・・・ところでフェイト、アルフは今どうしてるんだ?」
さすがにそろそろ重い空気に耐えられなくなってきて話題転換を図ることにした。
欝?シリアス?そんなもの誰が得をするんですかね・・・
「アルフ?アルフなら外で待ってもらってるよ。さすがに店内にペットを入れる訳にはいかないから。」
「なるほど、それもそうか・・・あ、そうそう、久々にここのシュークリーム食べない?アリシアもどうだ?ここのデザートはかなりうまいぞ?」
「え!本当!?フェイト!一緒に頼もうよ!」
「うん。そうだね。それじゃあ頼みにいこっか。」
二人にメニューを見せながらそういうと、アリシアが目を輝かせてフェイトに提案し、フェイトもそれに応じてアリシアとともに渡したメニューを見る。
ふと、ここで視線を移してみると・・・
「・・・という訳で、別にその子とは見た目がそっくりなだけで接点らしい接点はないわよ。」
「へぇ、そうだったんだ。それにしてもびっくりしたなぁ~。」
「本当だよ、最初見た時アリサちゃんのドッペルゲンガーなんじゃないかって思っちゃったもん。」
「私も正直そう思ったわ、世の中って不思議よね・・・」
「私も店員の人にバニンクスちゃんと間違われて驚いたものよ・・・まさかこんなに自分と似てる人がいるとは思わなかったもの・・・」
「もういっそのことダブルアリサの芸名でコンビを組んでもいいんでないかな?」
「「誰が組むか!」」
「なんて息ぴったりなんだ、これはもう組むしかなイテェ!?やめてくださいアリサさん!暴力反対!」
「・・・本当に見分けがつかないよね・・・」
「うん、ちょっとおめかしされたら絶対見分け付かない自信があるよ・・・」
他のお子様メンバーはどうやら、近くの空席について互いに話をしていたみたいだ。
見たところ、向こうは向こうでちゃんと交流を深めている。アリサ(ローウェル)の奴元々友達が少ないと嘆いていたしな、皆いい奴ばっかりだからすぐに仲良くなってるし、これでそんな悩みも一気に解消されることだろう。
うんうん、善きかな善きかな。
他の様子が確認できたところで、視線をフェイトたちに戻してみる。
「えっとね、コレとコレと、あとコレも・・・」
「ね、姉さん、そんなにいっぱい食べられるの?お腹壊しちゃうよ?」
「フッ、フェイト。そんなあなたに良いことを教えてあげる・・・【甘いものは別腹】ということを!」
「至言だな。」
「そ、そうなのかな・・・」
「二人とも好きなだけ注文していいからね?泰寛君もよかったら奢ってあげるわよ。」
「あ、どうも。というかお久しぶりですねプレシアさんにリンディさん。御挨拶は終わったんですか?」
二人とも桃子さんと士郎さんとの挨拶を終えたらしく、いつの間にやら俺達のいる席の近くまで来ていた。
「ええ、ちょうどさっきね。大変なことがあったらしいけど、そっちの方は大丈夫かしら?」
「ええまあ。こうして遊びに来れる程度には。安全の確保もほぼ完璧に終わってますし。」
「ええ、それは私も知ってるわ。前になのはさんから連絡があったし、ちょっと手を回すのに時間がかかったけどその辺の調査も終えたもの。あなたたち、本当にこっちの就職も考えてくれないかしら?」
「絶対にNO。」
リンディさん返事に俺は自分の顔が引きつるのを感じながら拒否する。
すると今度はプレシアさんが質問をしてくる。
「あ、そうそう泰寛君。良かったらあなたの家の場所教えてくれない?後で挨拶に行きたいのだけれど。」
「・・・それはやめといたほうがいいと思いますよ。いきなりよくわからない他人が「私の娘がお世話になりました」って言いに来て家の親が混乱する構図以外見えないんで。」
「え?私達のこと家族に話してないの?」
「そ、そうなの?」
「ぜぇんぜん。ぶっちゃけ皆生活基盤は向こうのままかと思ってたし、偶に遊びに来る程度かと思ってたからもっともらしい言い訳考えるのも面倒だったし、だからまったくのノータッチ。」
「「「「え、えぇ~・・・」」」」
アリシアが不思議そうに、フェイトが何やら悲しげに聞いてきたのに対してそう返すと、なぜかリンディさんを含めて不満の声が上がる。
いやまあ、そのまま伝えるだけなら別に問題はないけどね、それはそれで話す内容がアウトだ。
うちの親はあくまでも地球での普通の社会人、こんな世間の裏側を知ったからと言って話す必要は・・・・・・いや、うん、最終的に話さざるを得なかったけど、あれだって話した内容は本当に骨組の部分と結果のみ、ギリギリ理解が得られる程度だし、俺がスタンドを使えることだって、この世界にある高機能性遺伝子障害病と言う病気とすり替えて話してただけだ。
それで理解が得られたんだから細かく話す必要性はゼロ、全くのゼロ!言ったからと言って何の意味もない!はいこの話題は終了ね。
だからフェイト=サン!今すぐその捨てられた子犬のような瞳はやめるんだ!!別に悪くないのに罪悪感がががががががが
---カランカラァ~~ン
「ん?」
フェイトの目の輝きによくわからない罪悪感を感じていると、脇に平たい箱を二つ抱えた美形の男が店に入ってきて、俺達のいる席まで近づいてきた。
「プレシア女史、リンディさん、例の物が用意できましたよ。」
「ありがとう、二人に渡してちょうだい。」
プレシアさんがそう言うと、男はアリシアとフェイトに向きなおって脇に抱えた箱を差し出す。
「フェイトちゃんにアリシアちゃんだね?こちらをどうぞ。」
「あ、はい・・・どうも・・・」
二人が箱を受け取ると、男はプレシア達に「それじゃあ私はこれで。」と言って店を出て行った。
「なになに?何が入ってるのお母さん?」
「ふふふ、それは開けてみてからのお楽しみよ。」
「なになに?どうしたの?」
「どうしたのその箱?」
別の席で話していた矢島、なのは、すずか、アリサたちがさっきの様子を見たのか、こっちに寄ってきてフェイトたちの持っている箱に注目していた。
「・・・とりあえず中身を見てみたら?」
「う、うん・・・{カパッ}え、これって・・・」
「なにかなぁ~、なにかなぁ~{カパッ}わぁ、可愛い服だ!」
俺がそう促すとフェイトとアリシアはそれぞれ小箱を開ける。
中に入っていたのはどっかで見たことのある白い制服だった。というか・・・
「あ、これうちの制服じゃねえの?なのはたちが着てる奴と同じ・・・」
「あ、本当だ。これうちの制服だよ。」
「ていうことは・・・私達これから皆の学校に通えるの!?」
矢島とアリサ(バニンクス)がそう言うとアリシアは期待の篭った眼差しをプレシアに向けて言う。フェイトもかなり嬉しそうな表情になってプレシアを見ている。
「フフフ・・・ええ、そうよ。実はこっちに来る前にリンディさんに頼んで転校手続きを済ませておいたの。週明けからなのはちゃんたちのクラスメイトよ♪」
「わぁーい!やったー!お母さん大好き!」
「ありがとう、母さん。」
「!ええ、喜んでくれてよかったわ。」
「素敵よ。きっと二人に良く似合うわ♪」
「良かったわねフェイトちゃん、アリシアちゃん。」
「う、うん。ありがとうなのは、リンディさん。」
アリシアに抱き着かれ、フェイトから礼を言われたプレシアが鼻を抑えながら二人に返事をし、なのはたちはフェイトが自分のクラスメイトになることをすごく喜んでいた。
・・・プレシアの手の隙間から漏れ出ている赤い液体について言及するのはきっと野暮なのだろう。
「・・・・・・」チラッチラッ
「ん?」
フェイトが何やらこちらをチラ見している。俺からも何か一言欲しいのだろうか・・・よし、ここはひとつ先達として良いアドバイスをしてやろうじゃないか。
「困ったこととか性質の悪い奴に絡まれたりしたらちゃんと仲良い奴等に相談しろよ。周りに迷惑かけたくないとか一時の恥のために塞ぎ込むと大抵碌なことにならんからな。」
「違う・・・!お前のだけなんか違う・・・!!」
「アンタ・・・そこはもっとこう、他になにかあるでしょう。」
「悪いね説教臭くて。何分経験者なもんだからさ。」
「さらっと重いこと言うなし。」
「そう言われるとなんか分かっちゃうから何とも言えないわね・・・」
「あ、あはは・・・」
何故だろう、皆から微妙な視線を向けられる。
いやいやいやいや、全国のいじめられっこの何割が相談するという勇気を踏み出せないまま悲惨な目に遭ってるか分かってるのかおめえ等は。
結構大事なんだぞ!特にフェイトみたいなおどおどした奴は特に!
「まあこいつの暗い経験談は兎も角安心して来い、ウチはそういうのいないから。」
「甘いな矢島、どんな良い所にだって反吐が出るような奴の一人や二人は紛れ込んでいるもので・・・」
「分かった!もう十分に分かったからちょっと静かにしてろ、な!」
「泰寛君・・・嫌なことがあったなら遠慮なく相談してね?私も力になるから・・・」
「解せぬ。」
矢島に止められ、なのはに慰められ、仕方が無くその場は退いておくことにした。
そしてその後は門限が来るまで、俺達は翠屋で談笑しながら過ごしていった・・・
「あ!」
「?どうしたのすずかちゃん。」
「ううん、ちょっとね・・・」
「なによ、その嫌なものを思い出した、みたいな顔して・・・」
「あぁ~~、うん、実はね・・・今日は界統君、ちょっかい出してこなかったなぁって思って・・・」
「・・・そう言えばそうね、何時もならこんな機会あいつが見逃すはずないのに・・・」
「別にいいじゃん?結果的に俺達今日は楽しめた訳だし。」
「にゃはは、ま、まあそれもそうだよね・・・」
「まあそうよね、良く考えればいない方がいい奴だし。」
「(たまたま外で遭った時に幻術をかけておいたからな…少なくとも今日一日は絶対来ねえよ。)じゃあ俺そろそろ帰るから。またな。」
「「「うん、またね。」」」
「くそぉっ!!いつになったらおれは翠屋にたどりつけるんだぁ――――――!!!」
街のどこかで、そんなことを叫んで周りから奇異の目で見られる子供がいたとかいなかったとか・・・