デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録 作:enigma
Side:梶原 泰寛
「ふぅ~~、今日はつっかれた・・・」
門限が近づいてきたところで皆に別れを告げ、俺はいったんアリサを家に送ってから帰宅し、現在自分のベッドに突っ伏していた。
ちなみに帰る前にフェイト達から住所を聞いていたから、これで次遊びに行くときはテスタロッサ家も行先に加えられるだろう。
「泰寛~、料理はもう少しかかるから先にお風呂に入ってきなさ~い。」
「あいよ~、今行くわ。」
母さんの声に返事をして、俺は着替えとバスタオルを揃えて風呂場へと向かう。
「{ガチャッ}ただいま~。お、泰寛か。」
「あ、父さんおかえり。後仕事お疲れ様。」
「ああ、ありがとう。」
洗面所に入ろうとした直前に父さんが帰宅し、俺達はお互いに挨拶を交わす。
「今から風呂か?」
「そうだよ。よかったら先に入る?」
「ははは、ありがとう。けどさすがに少し休んでからにしたいから先に入っておいてくれ。」
「あいよ。それじゃあまた後で。」
「ああ、また後でな。」
リビングに向かう父さんを見送り、俺は洗面所で服を脱いでから風呂場に入っていく。
そして体と頭を一通り洗ってから、ちょうどいい温度になっている湯船の湯に肩まで浸かった。
「ふぅ~~~~・・・」
(・・・・・・・・・・・・さてと、取り敢えずあの連中に関してはどうするかなぁ・・・ここらで一つ決め手をそろえていきたいところだが・・・)
湯船につかってから二十秒ほど余韻に浸った後、俺は矢島達を襲った例の奴等について考える。
例の如く手持ちの情報収集用のスタンドを使って手に入った情報を纏めると・・・まず連中の正体は、とある魔導書の防衛プログラムの一種。魔導書の名前は【闇の書】、ジュエルシードの様に地球外の世界で大昔に造られた道具で、その機能の本懐は様々な世界の魔法を記録し、収拾すること。そのために違う世界へと転移し、其処で主の素質を持つ者と同意の有無は関係なく勝手に契約し、そのものを主とすること。
防衛プログラムはそれぞれが自分の意志を持ち合わせていて、名前はピンクのポニーテールがシグナム、赤毛のゴスロリがヴィータ、矢島の写真にはなかったが金髪の女性がシャマル、犬耳と尻尾のマッチョがザフィーラという名前である。
そして現在は【八神 はやて】という俺やなのはたちと同じ年齢の、一人暮らしをしている少女が彼女らの主として、現在海鳴市の八神の自宅にて生活中であること。
そしてここからが一番の悩みどころだが・・・どうも八神はやてという少女、闇の書の契約の影響でリンカーコアから魔力を吸われ続けているらしく、数年前から下肢の神経が麻痺していてこのまま病状が悪化すると命にもかかわってくるらしい。
そしてその影響は、防衛プログラムたちの考えだと闇の書のページを全て埋め、闇の書を完成させれば治るかもしれないとの事らしく、もともと闇の書を埋めるのに反対だった八神には黙ってプログラムたちはリンカーコアの鬼集をしているそうだ。
・・・・・・・・ちなみにこれは完全に余談だが、八神一家はザフィーラという奴を除いて界統(バカ)のストライクゾーンに入っていたみたいで、結構前から粘着されていたらしい。
調べ足りない所はままあるが、今俺の知っている内容は概ねこんなところだ。
・・・・・・・・本当にどうしようか(遠目)
いやね、調べた範囲だと今のところなのはたちを襲ったこと以外は特に問題はないのよね。
街でこいつらの被害に遭ったのも矢島達以外いないし、目的が目的なだけに、正直ジュエルシードや悪魔の発生に比べれば俺が張り切っていく必要はあんまりないというか・・・被害を受ける身じゃないから言えることなんだろうけど、今回は矢島達の手助けをする以外は、積極的に首を突っ込んでいくのがいろいろ躊躇われる。
もし本当に彼らのやり方で八神はやての病状が良くなるというのならそれを邪魔するのは気が引けるしな。矢島達(友達)を襲撃したのは無論許せんが、それも結局のところその辺の話をつけるのは本人たちだし。
「・・・・・・・・・・・・」
・・・まあ、今のところは矢島に連中の情報を流して、後は新たな情報や状況の変化に応じて動いていくことにしよう。矢島もなのはも前の事件で馬鹿みたいに強くなったし、フェイトもそこそこに強いし、よっぽどのことが無い限りは負けることはないだろう。協力要請があった場合は影から援護する方針で、よし、決まりだ。
「さてと、そろそろ上がるか。」
いろいろ考えているうちに体はしっかり温まった。
そろそろ飯も出来る頃だろうし、俺は湯船から上がって水気を落とし、洗面所へと戻る。
そして持ってきたバスタオルで体を拭き、持ってきた着替えを着る。
洗面所のドアを開けてリビングの方に近づいていくと、出来立てのご飯の良い匂いがしてきた。
今日のおかずはどうやら酢豚と青梗菜(ちんげんさい)のようだ。
「泰寛、ご飯は自分でよそってきなさいね。」
「了解ー。」
台所に行って戸棚からお茶碗を取り出し、しゃもじを持って炊飯器を開ける。
炊き立てのご飯の匂いがすっごくよくて、腹が減ってるのもあって出てくる涎の量が尋常じゃない。
涎を飲み込みながら濡らしたしゃもじでご飯を掬い、お茶碗に盛りつけてリビングへと向かう。
母さんたちは一足先にご飯を食べ始めていた。母さんの隣には、俺の分の皿もちゃんと用意してくれている。
「いっただっきまーす。」
「泰寛、今日はどこに遊びに行ってたんだ?」
「あれ、言ってなかったっけ?翠屋だよ。矢島やなのはと、後新しく増えてた友達と遊んでたんだ。」
「ほうほう。」
「お喋りもいいけど、ご飯は冷めないうちに食べないさいね。」
「はーい。」
「おかわり。」
「だから早いってば。」(ω^;)
その後は家族皆で今日会ったことを話し合いながら、楽しく食事を行っていった・・・
うんうん、やはり日常はこうでないと。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
===20:45l泰寛の自室===
「さぁて、そろそろ矢島に情報を流すか。」
飯を食い終わって歯磨きを終え、しばらくリビングでダラダラとした後、俺は自室に戻ってベッドに寝転びながらPCを手にとっていた。
PCの画面をタッチ操作し、メール画面を開いて文字を書き込んでいく。
内容は今わかってる連中の情報と、こいつらに関してなにか分かったことがあったらこっちにも情報を流して欲しいことの旨だ。
送る内容を全て空き終わり、転作してから送信ボタンを押して送信する。
これで良し。さてと、後は九時半くらいまでゲームでもしておくか。
---ピピピピッ ピピピピッ
「あれ、さっそく返事が来た。」
3○Sの電源を入れたところでPCからメールの着信音が鳴る。
PCを手に取り、俺はメールの内容を確認した。
【相変わらずのお前の手早さに脱帽ww∩(´∀`∩) あいつらまさかこっちの世界に住んでたとは・・・なんにせよこれでこっちから仕掛けることも可能になったってわけか。情報提供してくれてありがとう。あ、ついでに管理局の方もいろいろ調べてくれてて、闇の書?それが何かとんでもなくやばい代物だっていうのが今のところ解ってるらしい。詳しい話はまた後日聞くことになるから、こっちでもわかったことがあったらそっちに話を流しとくわ。それじゃあお休み(・ω・)ノシ】
「うわぁ、なんかますますキナ臭い話が出てきた・・・」
(やめてほしいよな、今回ばっかりは出る意味ないかと思ってたのに・・・まあいい、とりあえずいざって時の為の準備くらいはしておくか。)
メール内容を確認し終わった後二、三度スマブラの大乱闘をやり続け、時計が9時半ごろを示したところで部屋の電気を消してぐっすりと眠った。
side out
泰寛が寝静まった約一時間後・・・とあるビルの屋上に二人の女性と、一匹の青い獣の姿があった。
彼女らは眼下で未だに走り回る車や、道行く人々を眺めながら口を開く。
「ヴィータはそろそろか?」
「ええ、そろそろはやてちゃんもぐっすり寝てる頃だろうから・・・」
二人の女性が話し合う。
どうやら話の内容から、他に誰かを待ち合わせているようだ。
---ガチャッ
それから十数秒ほど経つと、屋上に出るための扉が開けられ、その向こうから鋭い目付きをした赤毛の少女が姿を現した。
「来たか。」
「うん。」
先にいた女性の内、ポニーテールの方が赤毛の少女と頷き合い、赤毛の少女は二人と一匹の傍に立つ。
「管理局の動きも本格化してくるだろうから、今までの様にはいかないわね。」
「少し遠出をすることになるな、これからはなるべく離れた世界での収拾をしよう。」
金髪の女性が物憂げにそう言い、ポニーテールの女性が遠出を提案すると、赤毛の少女が口を開いて質問をする。
「今、何ページまで来てるっけ?」
「ちょっと待って・・・・・・大体340ページってところね。」
「なに?何故そんなに増えている。昨日は・・・こういってはなんだが散々な結果だったはずだが・・・」
赤毛の少女の質問に金髪の女性が堪えると、青い獣がなぜか信じられないと言わんばかりに声を上げる。
赤毛の少女とポニーテールの女性も同様の態度だった。
「それなんだけどね・・・あの金髪の男の子の方の魔導師が私の後を追跡して来てたみたいで・・・その子の隙をついて蒐集したら200ページ以上埋まっちゃったのよ。」
「なんと・・・」
青い獣が驚きながら一言呟くと、赤毛の少女は気持ちを切り替えて話を続けて行く。
「どっちでもいいよ。何にしたって後半分まで来てるんだ。さっさと残りのページもズバッと埋めて完成させよう。早く完成させて・・・はやてとずっと静かに暮らすんだ・・・」
「・・・ああ、そうだな・・・」
「行くか、もうあまり時間もない。」
「ああ・・・」
ポニーテールの女性が頷くと、赤毛の少女、金髪の女性とともに懐からアクセサリーのようなものを取り出し・・・
「行くぞ!レヴァンティン!」
「導いて、クラールヴィント!」
「やるよ、グラーフアイゼン!」
それぞれがそう叫ぶと同時に彼女達三人の姿が光の膜に包まれ、数秒ほどしてそれぞれ個別の服を身に纏って再び姿を現した。
「全員くれぐれも気をつけてね。後例の魔導師たちに会ったら無理せず退くようにね。」
「ああ・・・途中から入って来たあの全身装甲の少年は特に恐ろしく強かった・・・シグナムの支援が無ければ逃げきれなかっただろう。」
「・・・認めたくはねえけど、あの白い奴にしたって不意打ちが決まらなかったら正直勝てたかどうかわからなかった。次からは向こうも警戒してくるだろうし、あんまり会いたくねえな。」
「そうね、よっぽどの事態じゃない限り会いたくはないわね。それじゃあ、夜明け時前にまたここに。」
「ヴィータ、あまり熱くなるなよ。」
「わぁーってるよ!」
守護騎士たちはそう言ってお互いに頷き合うと・・・跳躍魔法を使ってそれぞれ違う世界へと渡っていった。
自分たちの行いが主の安寧に繋がると信じて・・・
自分たちの向かう先に、幸福な未来が待っているのだと夢見て・・・
Side:矢島 敬一郎
===8:30l聖祥小学校===
「ハァ―い皆さん静かに。今日はなんと、このクラスに転校生がやってきました!」
本日のホームルームは、担任の先生が俺達の前でそう言ったことから始まった。
『転校生がやってきた。』
先制の放ったそのセリフにクラスメイト達は超えにこそ出さないものの、皆目を合わせたり驚いた表情をしたりと、色めきだってる様子が手にとるとうにわかった。
「フフフ♪」
「ニヤニヤ・・・」
ただし事情を知ってるメンバーは俺も含めてその様子を見ながらニヤニヤしてるけどな。
・・・・・・・・・ところでさっきから窓の外でちょろちょろ動いてるサーチャーは誰のだ?旨い具合に光学迷彩とステルス機能を使ってるみたいだが俺には丸わかりだぞ。十基位は飛んでるんじゃなかろうか。
「二人とも、入ってきてください。」
先生がそう言うと教室の扉が開かれて、思った通りフェイトとアリシアがそろって入室してきて、教壇の横に立ってみんなの方を向いた。(ついでにサーチャーの数も五基くらい増えた。)
二人とも程度の差はあるけれど、クラスメイト達の視線を一身に受けてそこそこ緊張しているようだ。
「あの・・・フェイト・テスタロッサと言います。皆さん、よろしくお願いします・・・」
「アリシア・テスタロッサだよ!フェイトとは双子のお姉ちゃんです!皆よろしくね!」
---パチパチパチパチッ
二人が自己紹介を終えると、どこからともなく拍手の音が聞こえ、皆もそれにつられて拍手をしていく。当然、俺も歓迎の意を込めて拍手を行う。
「それではフェイトちゃん、アリシアさんは空いている席に座って下さいね。」
先制の指示に従い、二人は自分の席へと移動していく・・・あ、フェイトとアリシアがこっちに手を振ってくれた。
「なおホームルームの方は以上で終了となります。すぐに授業を行いますから皆さんは机の上に必要な物を出して待っていてください。」
「ねえねえ!向こうの学校ってどんな感じ!?」
「あの、私、学校に入ってなくて・・・」
「え~~~っとね、いろいろあって・・・」
「二人とも日本語上手だね、どこで覚えたの?」
「前にいた所ってどんなところ?」
「異性で好きなタイプっている?」
「すごく良い匂いだお。」
「prprしたい・・・」
「えっと、あの、その・・・」
「あ、あの、皆出来れば落ち着いてほしいな~~~・・・」
「ははは、こりゃ大変だ。」
一時限目が終わったすぐ後、フェイトとアリシアは好奇心で目を輝かせたクラスメイトに一瞬にして囲まれて、このように尋常じゃないほどの質問攻めにあっていた。
俺、なのは、すずか、アリサは現在その様子を遠目で眺めている。
というか何人か紳士が混ざってないか、おい。
「フェイトちゃんもアリシアちゃんも人気者だね。」
「あ、あはは、でもこれはちょっと大変かも・・・」
「はぁ~~~、しょうがない・・・・・・{パンパン}はいはい!転入初日の入学生をそんなに皆でもみくちゃにしないの!」
苦笑いで眺めているとさすがに現状を見かねたのか、アリサが手を叩きながら皆を場を治めに行く。
そしてあっという間に皆を纏め上げ、一人一人順番に、確実に質問を処理していった。
やはりこういう時のアリサは頼もしいな。言うべきと思ったことをきっぱりと声を大にして言える奴だから良い具合に周りを纏めて行ける。
本人自身も努力家だし、この分なら前に語っていた将来の夢を叶えることも可能だと思う。
俺?俺は・・・前の人生では現実の二文字に押し潰されたな・・・・・
まあ今の人生でなら叶えるだけの力もあるし、趣味でいろんな道具やシステムを作りながらのんびり過ごしたいってのがいまんとこあるくらいだね。
「それじゃあ次は・・・」
「はいはい!」
「あの!僕も!」
「私も!」
「分かってるから!順番よ順番!」
「・・・・・・にしてもこりゃすぐには捌き切れねえな。」
「うん、多分次の休み時間に持ち越されるね。」
「二人とも、がんばってね。」
心の中で二人にエールを送りながら、俺達は見守り続ける。
---ドバァーンッ!
「ははははははは!待たせたな俺の嫁たち!」
「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」
(ああ、そう言えばあいつのことを完璧に忘れていた・・・)
ドアが勢いよく開かれるとともに響き渡ったその声に、今まで笑っていた生徒たちの大多数が静まり返って顔を顰めた。
「{キョロキョロ}ん?そこにいるのはフェイトとアリシア。そうか、今日は確かお前たちが入学する日だったな。」
そんなことは毛ほども気にせずに声の主・・・界統は教室内を見渡すとフェイトたちを視野に入れ、そんなことを言いながら周りの生徒たちを押しのけつつ二人に近づいてきた。
「えっと・・・あなた、誰?」
「いきなり何の用?」
あ、そう言えば二人はこいつと真面にあったことなかったのか。
「ふはは、この俺を前にしてその不敬な態度、本来なら極刑に処すところだが・・・お前たちは俺の伴侶だ。この程度の無礼は許してやろう。」
「・・・は?」
「????」
(痛い、あいかわらず発言が痛々しすぎる!)
相変わらずの超理論というか意味不明の発言に、フェイトとアリシアは言っている意味が全く理解できず頭を捻っていた。
「アンタ・・・ホント相変わらずね。ここまで成長ってもんが全く見られない奴は後にも先にもアンタくらいのものじゃないの?」
「ん?ああすまないなアリサ、お前にもかまってやりたいのはやまやまだが今日はこの二人といろいろ話すことがあるんだ。まあ許せ。」
「こ・い・つ・・・!」(^ω^#)ビキビキ
界統の鬱陶し異発言に、アリサの額にみるみる青筋が立っていく。
他のクラスメイト達は関わってもろくなことが無いと悟ったのか、そそくさと二人から離れた所へと避難していく。
(・・・ところで今何時だっけ?)
ふと時計を見てみると、あともう1,2分で次の授業が始まるという時間になっていた。
(マズイな。そろそろ次の授業も始まる・・・けどこいつ俺はおろか教師の話も聞かないことが多いからなぁ。アリサがブチ切れて機嫌悪くなるのも気分が良いもんじゃないし・・・単純にこのまま授業が滞っても困るし・・・しょうがない、いっちょやるか。)
コッソリと気配遮断の魔法を唱え、気配を極限まで薄くする。
そして・・・
「ふん!」キュッ
「ぐえ!?か・・・くか・・・・・!!」
静かに界統の背後に忍び寄り、一気に首に腕を掛けて締め落とす。
界統は何度か暴れたり腕を首から外そうとするが・・・この前の事件でレベルアップしまくったおかげかびくともせず、やがてピクリとも動かなくなった。
脈は触れてるか・・・よし、大丈夫だ。一度界統の首から腕を外し、唖然としているフェイトたちやクラスメイトを他所に未だ鼻息の荒いアリサに近づいて鎮めに行く。
「アリサ、一先ず落ち着け。コイツが人の話を聞かないのはいつものことだろ。ホラ、深呼吸深呼吸。」
「ぐぎぎぎ・・・・・・・・・スゥーーーーーーーーーハァーーーーーーーーー、スゥーーーーーーーーーハァーーーーーーーーー・・・・・・」
アリサは少しの間歯を食いしばった後・・・深呼吸を何度か繰り返し、ようやく落ち着いた。
「とりあえずこいつは元の教室に放り込んでおくぞ。このまま倒れたままじゃ邪魔以外の何物でもねえ。」
「そう、私も一緒に行っていいかしら?」
「え?いや「イイカシラ?」アッハイ。」
アリサの威圧感に押され、俺は界統を担いで教室を出る。
教室から出る際、皆から【よくやった!】というサインが送られ、俺はそれに親指を立てて返した。
・・・・・・・その後はアリサが界統を元々の教室に蹴り飛ばして入れ、アリサの晴れ晴れとした表情を恐々と見つつとっとと次の授業のために教室へと戻っていった。
===お昼頃===
「ふにゃ~~~~~、すっごく疲れた・・・フェイト、大丈夫?」
「え、うん、私は大丈夫かな。途中からアリサが間に入ってくれたから。」
「あははは、お疲れ様。」
「大変だったね二人とも。」
「ううん、そんな大したことじゃないよ。皆とってもいい子だし・・・」
「だってよアリサ。」
「そこで私に話を振った理由は何かしらケイイチ?」
「お、喧嘩か?」
「そこで反応するんかいアリシア。」
疲労の色が濃いフェイトとアリシアを労いながら、俺達はそれぞれ自分の弁当を食べていく。
結局みんなお昼休みまでの休み時間、暇さえあれば二人に質問ラッシュをお見舞いしていた。
しかもそれに加えて、休み時間の度にお約束の如く界統が復活してきて二人に独特(超好意的解釈)の口説きを行ってきたりしたせいで、二人の疲労速度はさらに加速したと言っても過言ではないだろう。
アリサのバックアップが無かったら多分フェイトもあっけなくダウンしていたに違いない。
「まあこれも転校生の宿命だ。お疲れさん。あとアリシアは純粋に体力面が足りないせいだと思うぞ。」
「仕方がないじゃん、つい最近まで寝たきりだったんだからさぁ・・・ていうかさっきからちょくちょく来るあのへんな奴なのの相手が一番疲れた。」
「「「あ、やっぱり?」」」
アリシアの最後の一言になのはとアリサとすずかがすぐさま同調する。
うん、わかるよ・・・鬱陶しいもんねあいつ・・・
「なんだったのかなぁ、あの人・・・」
「フェイト、昨日梶原が言った通り何かあったらすぐに相談するんだぞ。」
「そうよフェイト。あれに関わるのは虫唾が走るほど嫌だけど出来うる限り助けるからね!」
梶原には昨日言い過ぎだと言ってしまったが・・・うん、若干意味は違うけどやっぱりなんだかんだで注意はいるぜこれ。
「???うん、ありがとう。」
「あはは、ありがとうねー。」
アリサと共にかなり念入りにそう言ったものの、アリシアは兎も角今一つ理解が足りていない様子のフェイト。まあいい、これから嫌というほど理解する羽目になるだろうて・・・
『あ、そう言えばケイイチ。』
その後弁当を食べ続けていると、アリシアから突然念話で話しかけられる。
『ん?どうしたアリシア。わざわざ念話なんぞ使って。』
『いやね、クロノやエイミィさん達からケイイチに学校が終わったらアースラに来るよう伝えてくれないかって言われてるんだけど・・・』
『・・・もしかしてそれって、俺やなのは達を襲った奴等についてか?』
『うん、前に話し合った時はまだ確信が持てる状態じゃなかったから話してなかったけど、昨日の夜にやっと納得がいくところまで纏まったからそれを伝えたいらしいよ。』
そうかそうか、丁度良い。学校が終わったら早速聞きに行こうか。
『分かった、学校が終わったら即行で聞きに行くよ。』
『うん、それじゃあ話はそれだけだから。』
『おう、ありがとさん。』
「どうしたもよケイイチ、ボーっとしちゃって。」
「なんでもねえよ。」
「そう?」
アリサの指摘に答え、その後も楽しく皆で食事をしていった。
===放課後===
授業と帰りのホームルームが終わって、帰りのバスで皆と別れた後、俺は自分の部屋に荷物を置いてから普段着に着替えてアースラに行く準備を整える。
(そんじゃまあレッツゴー!・・・の前に、事前連絡くらいは入れておくか。さすがに急に押しかけるのもなんだしな。)
そう考え、俺は前に貰ったクロノの連絡先にデバイスで通信を入れる。
「あ、もしもしクロノ。」
『矢島か。もしかして時間が空いたのか?』
「まあね、今からそっちに行くけどOK?」
『ああ、こっちは構わないよ。僕は司令室にいるから、こっちにきたらそこまで来てくれ。』
「わかった。そんじゃあ今から行くから、また後でな。{ガチャッ}さてと、そろそろ行くか。」
さっさと用事を済ませて遊び倒そう、そう考えながら俺はGUNDAMを起動させ、転移魔法を発動させてアースラへと移動し、司令室のある方へと向かって歩いていく。
「{ウィーンッ}失礼しま―す。」
指令室に入ると、みんな忙しそうにコンソールを動かしながら働いている。そしてエイミィさんの近くで、クロノが何か話している姿があった。
俺はそこに近づいていきながら、二人に声をかけた。
「こんにちわ―お二人さん。」
「ん?ああ、いらっしゃいケイイチ。よく来てくれたね。」
「こんにちわケイイチ君。」
クロノとエイミィさんはこちらへと振り返り、笑いながら返事を返してくれた。
「それで、例の連中の新しい話が聞けるって聞いてきたんだけど・・・」
「ああ、エイミィ、画像を出してくれるか?」
「了解、ちょっと待ってね・・・」
早速本題を切り出すとエイミィさんがコンソールを操作し、空中に立体モニターとして画像をいくつか表示した。
そこには俺達を襲ったあの連中の画像と、連中の持っていた金色の十字の意匠が施された焦げ茶色の魔導書も表示されている。
「あの後いろいろ調べてわかった事だが・・・彼女たちの正体は大昔、古代ベルカと呼ばれる文明で作られた闇の書と呼ばれるロストロギアの防衛プログラムだ。」
クロノが画像を見ながら、俺に説明をしていく。
「ベルカ・・・前に言ってた戦闘に特化した魔法形態の話で聞いたな。で、これってどういう物なんだ?」
「それを今から説明する・・・これは魔力を蓄積するタイプのロストロギアで、魔導師の魔力と、魔導師の資質や魔力の根源であるリンカーコアを自らのエネルギー源として食って、そのページを増やしていくんだ。そして全ページである666ページが埋まると、この本は真の力を発揮する。次元干渉レベルの強大な力をね。」
「魔力を食う、か。それでなのはがピンポイントで狙われたわけか。まあ阻止したけど。」
「そうだな。それで、本体が破壊されるか所有者が死ぬと、この本は元の白紙に戻って別の世界で再生するんだ。様々な世界を渡り歩き、自らが作り出した守護者に守られ、魔力を食って永遠を生きる。破壊しても、何度でも再生する、停止させることのできない極めて危険な魔導書なんだ。」
(ここまでは一応梶原から聞いた通りだな・・・これだけなら俺が単身で八神?の所に凸して押さえる程度で済むんだが・・・・・・)
「一応危ないものだっていうのはよく理解できたけど・・・他にはないのか?」
俺がそう言うと、クロノはさらに重々しい表情になりながら説明を続けて行く。
「・・・あの魔導書は、文字通り破壊しかもたらさない代物なんだ。完成すれば必ず暴走し、その世界や周辺の世界に甚大な被害をもたらして、魔力が尽きればまたどこかの世界に転生して同じことを繰り返してしまう。完成しない場合も主の魔力を全て吸い出し、それを転生用のエネルギーとしてどこかの世界に消えてしまう。完成しようとしまいと、あの魔導書は悲劇しか生まないんだ。」
「・・・・・・マジで?」
「うん。気持ちは分かるけど、本当のことらしいよ。」
うげぇ、話の流れ的にまさかとは思ったけどそんなやばい代物だったとはな・・・これは近日中にこいつらに匿名で情報を流さないと本気でヤバいわ。
でもどうやって流すか、こういうのはかなり信憑性を持たせないとならないし・・・八神はやてが闇の書を持ってるところを遠隔から撮影すればいいか?そんで写真を添付して適当なサーバーを経由して流しちまえば・・・よし、多分いけるな。
とりあえずあとで梶原にもこのことを伝えておこう。表立っては動かないだろうがあいつのことだから間違いなく上手くいくように流れを運んでくれるはずだ。
「それで今回の私達の仕事は、この闇の書が完成される前に闇の書を停止させることなんだよ。」
「ああ、あれが完成してしまうまでに、なんとしても守護騎士たちを全て捕まえ、そこからさらに主を引きずり出さなくてはならない。」
「・・・なのはたちにはその話はもう通してるのか?」
「勿論だ。フェイトたちはうちの嘱託魔導師だから言わずもがなだが、なのはも自分から協力を申し出てくれた。君はなぜか昨日、翠屋以降全く連絡が取れなくなったらしいが・・・」
・・・昨日は開発室で寝落ちしてたからな・・・集中するために外部との連絡も切ってたからそれはしょうがねえか。
「俺も出来る範囲で協力させてもらっていいか?一市民としてこんなもん放置してられねえよ。ぶっちゃけ俺も標的に入ってるだろうし。」
「そうか・・・・・・・・・それじゃあ、これから宜しく頼む。」
「こちらこそよろしく。」
その後はいろいろと注意事項などを説明された後、しばらくは通常の生活を送るようにと通達され、俺は自宅へと返された。
さてと、まずは梶原に事の報告をしておくか。