デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録 作:enigma
この投稿が終わったら俺・・・こいつで遊び倒すんだ・・・!!
それでは長らくお待たせしました、最新話になります。どうぞ!
いつでも駆けつけられるようにバリアジャケットを装備した俺達は、現在現場にいる隊員の人達が強装結界で八神はやてと側にいる騎士(シャマルだったかな?)を閉じ込めるまではまだマンションで待機していた。
他の騎士たちはどうしたのかって?追跡していた隊員曰くページ集めに奔走しているらしいよ。
えっとあいつらがいるのは・・・市街地か。あ、あそこ知ってるスーパーだ。
「各中隊は主、および騎士たちを中心に強装結界を展開!」
『『『『『『『了解!』』』』』』』
リンディさんの指示に従って、ホログラム画像の向こうで返事をしている実動隊の人達は命じられた仕事を全うしに向かっていく。
そのいつにない緊迫したやり取りを見ながら、俺は自分に指示が来るまでの間、さっきのちょっとした疑問を解消すべくプレシアさんに聞きに行く。
「あの、プレシアさん。さっき説得がどうのこうのって言ってましたけどいったい誰の説得だったんですか?」
「二人のデバイスよ。前の騎士たちとの戦闘以来、整備班が整備しようとしたらどういうわけか自分たちにカートリッジシステムを付けろって言って聞かなくなったのよ。まあ今回は緊急事態だからって言って何とか無理矢理説得して整備してきたのだけれど。」
「へぇ・・・ん?でもカートリッジシステムってあれ、インテリジェントデバイスと相性最悪だった気がするんですけど・・・」
俺も似たような物を自分のデバイスに組み込んでいるからわかるが、あのシステムは強力な代わりに使用者とデバイスに大きな負担を強いる代物だ。ストレージデバイスやアームドデバイス等のある程度雑に扱うことを想定しているものならともかく、繊細なインテリジェントデバイスの場合はかなり複雑で入念な準備をしておかないとすぐにシステム系がいかれる。
何よりなのはとフェイトはまだまだ身体的に未熟だから、あれを使うとなれば倍プッシュでさらにつらいはずだ。
それらの問題をちゃんとクリアできるほどのものとなると、少なくとも短期間のやっつけでつけられるほど単純な物じゃないんだが・・・
「そうなんだけれどね・・・前の戦闘でどういうわけか、今のままじゃ力不足だって判断したみたいで・・・」
「ああ・・・確かに瞬間火力じゃ終始圧倒されてましたからね・・・」
なのははこの前の悪魔騒動のおかげか、レベルアップして魔力量が総合的に増えていたからまだどうにかなったがフェイトの場合は本当に押されっぱなしだったしな。
けど・・・あれよりもさらに強力になるのか。唯でさえ非殺傷云々に関わらずあの世まで吹っ飛ばされそうな砲撃や昇天必至級の電撃がさらにえげつない威力とエフェクトに・・・・・・あれ、おかしいな?顔から何かが垂れてきたぞ?
---チラッ
「今度こそ、ちゃんとお話ししてもらうんだから!」
ちょっと視線をずらすと、少し離れたところでユーノ達と話し込んでいた件の少女。
なんとなく釘を刺そうと思い、俺は彼女に近寄っていく。
「なのは・・・」
「?どうしたのケイイチ君?」
「いやね、張り切るのは構わねえけどバインドからのスターライトブレイカーとか明らかにヤバイのはNGな。」
「えっ」
「「「「え?」」」」
不思議そうな表情と疑問符を返されてしまった。
あらやだこの御嬢さん本気で使う気だったよ。ちょっと、その不思議そうな顔止めなさいって!あんなトラウマメイカーそう簡単に使っちゃだめだから!
「??どういうこと?」
「姉さん、生きてるうちには知らなくていいことっていうのもあるんだよ・・・」ガタガタガタガタ
「ちょ、ちょっと大丈夫なのフェイト!なんかマナーモードの携帯電話みたいに震えてるけど!」
「そこまでにしておいてやれ、アリシア・・・・・人間生きていれば忘れたいことの一つや二つもあるもんだ・・・」
「ケイイチ君それどういう意味なの!?た、確かにちょっとあれだったかもだけど・・・・・・フェイトちゃんと全力でぶつかり合いたかっただけだよ!?」
「え、ええ~~・・・」
「なんでそこで露骨に引くの~~!!私変じゃないよね皆!」
「いやぁ~、うん、えっと・・・」
「ま、まああの時はお互い言って止まる様なものでもなかったし・・・」
「そう、ね・・・仕方のないことだった・・・わね?一人の人間に向けるようなものじゃないのは断言できるけど・・・」
「私は知らないからノーコメントかな。」
局員たちからの報告に集中していて話を聞いていないクロノやリンディさん、多分あれのことは知らないのであろうアリシアはともかく、他の事情を知る連中はその様子を見てそれぞれ顔を引き攣らせ、視線を泳がせながら答えていく。
尚順番はアルフ、ユーノ、プレシアの順だ。
「う~~~~~~~~、フェ、フェイトちゃん・・・」
「わ、私はなのはと友達になれてよかったと思ってるよ?」
「なおスターライトブレイカーについては一言も触れていない模様。」
「あ、あははは・・・」
「むむむ・・・!」
なにがムムムだ・・・ん?リンディさんの方は一区切りついたみたいだな。
「準備が整いました。プレシア女史は彼らを転移魔法で結界内に送って下さい。」
「わかったわ。みんな、其処に集まって。」
「は、はい!」
なのははまだ若干納得がいっていない様だったが、いよいよ自分の出番となって気持ちを即座に切り替えたようだ。
全員の表情が引き締まり、俺達はプレシアさんの指示に従って集まる。
「転送開始!」
プレシアさんのその言葉とともに視界が光に包まれ、俺達はお馴染みの浮遊感を感じた。
所は変わり、ここはとある市街地・・・リンディの指揮のもと構築された結界の内部では、病院からの帰り道でいきなり異様な事態に叩き込まれ混乱しきっている八神はやてと、指輪型のデバイス【クラールヴィント】を構えて彼女を守るシャマル、そして彼女たちを逃がすまいと囲んでいる数十名の隊員たちの姿があった。
「シャ、シャマル。この人たちいったいなんや・・・?」
「分からない・・・とりあえず落ち着いてはやてちゃん。今皆もこっちに駆けつけてきてくれてるから・・・」
突然の周囲の変化と緊迫した武装隊員たちに囲まれ怯えているはやてを励ますシャマル。しかし彼女も内心ではかなりの焦りを感じていた。
今まで隠し通せていたはずの自分たちの生活が、どういうわけかばれていたからだ。
(どうして私達のことがばれたの!?はやてちゃんの周辺には目がいかないように注意して立ち回っていたのに・・・・・・)
まさかそんなことに関係なく自分たちを探し当てる者が近辺にいたなどとは夢にも思うまい。
(・・・とりあえず今はそれを気にしても仕方がないわ。今シグナム達が真っ直ぐこっちに向かって来てくれている。私は皆が来るまではやてちゃんを死守するだけよ!)
考えても仕方がないと思考を無理やりにでも切り替え、シャマルは周囲の局員たちの一挙一動に気を配って何が来ても対応できるように構えを続ける。
---カッ!!
「わっ!!今度はなんや?!」
(!これは転移魔法!?今度はなにが来るの!?)
彼女たちの上空で強い魔力による光と空間の歪みが発生し、主と騎士は目を顰めながらその方向へと目を向ける。
そして光が収まると同時に現れた存在・・・転送されてきた矢島達を見た瞬間、シャマルは事態がより一層まずいことになったのを感じ取った。
「え?誰やあの子ら。何か一人えらい際どいかっこしとるな・・・てかあれストライクフリーダムやん!見てシャマル!現実で見たの初めてやわぁ!・・・あれ?けどよく見るとなんか頭身がおかしいなぁ?」
『皆本当に早く来て!!私一人じゃ無理!!』
主が見当違いなことを言ってはしゃいでいるのを他所に、彼女は仲間の騎士たちへと全力で念話を送り、一刻も早く仲間たちが駆けつけてくれることを切に願った。
転移完了直後、俺達は結界の張られた市街地の上へと放り出されていた。
全員が飛行魔法を使ってその場にとどまり視線を下に落とすと、周辺で一番高いビルの上でなぜかはしゃいでいる八神はやてと滝のような汗をかきながら彼女を守るように立っているシャマル、そして俺達の到着とともに彼女たちの周りを離れて退却していく管理局員たちがいた。
「いよっ!この前は世話になったな。」
「わ!しゃべったであれ!・・・あれ?ていうかシャマル、あれと知り合いなん?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
出来るだけ明るく挨拶を図っては見るが、シャマルはだんまりを決めたままだ。というかそこの少女、『アレ』ってなんだ『アレ』って・・・!
・・・まあ仕方がない。これについては後でじっくりお話をするとして、とりあえず今はさっさと話を進めて行こう。他の騎士どもが駆けつけてきたら手間が増えかねないからな。
「・・・・・・」スッ
「ん?」
そんなことを考えていた矢先、フェイトとなのはが俺達の前に出て、とても真剣な表情でまずはフェイトが話を切り出した。
「私達は、貴方達と戦いに来たわけじゃない。まずは話を聞かせて。」
「え?話?なんの?」
八神が不思議そうに聞き返すと、なのはが続けて話をしていく。
「私達、貴方達がなんで闇の書の完成を・・・」
---キィ――ンッ
「ふぇ?どうしたん・・・シャ・・・マ・・・・・・」カクンッ
「・・・え!?」
次の瞬間、なのはを含めた全員が目を見張った。
シャマルが八神に向けて魔法を使い、八神を瞬時に眠らせたのだ。
「ごめんなさい、はやてちゃん。少しの間だけ眠っていて。」
シャマルは力が抜けて身体が前に倒れそうになる八神を押さえ、彼女を優しく車椅子に座り直させる。
「あの、なんでその子を眠らせたんですか?」
「・・・・・・・・・・・・」
なのはの問いかけに再びだんまりを決め込むシャマル。
どうしたもんかと考えていると、クロノから指向性の念話が送られてきた。
『矢島、今のをどう見る?』
『少なくとも現状での闇の書のページ集めはあの騎士たちの独断である可能性が微レ存。』
なのはが闇の書の完成と言いかけた辺りであの対応・・・・・・梶原の情報通り、こいつら八神には何も教えず秘密にページ集めをしていた可能性が高い。
『・・・・・・なるほど、可能性としてはありだな。もっともあれが何かの作戦であることも考えられるが。』
『あーありそうだな。今までのことが実は騎士たちが悪いんだと見せかけて本当の本当は主の故意だった的な。』
もっとも俺はその辺の事情もとっくに聞いてるからその線が無いことは知ってるけどね。
『それ以前に、彼女に自分の意志があるということが驚きではあるが・・・まあそのあたりは彼らから後でじっくり聞き出すとしよう。取り敢えず問題は・・・』
『早急な主の確保・・・だな。他の騎士どもは多分主を説得すればどうとでもなる。』
『それもあるがさっきエイミィ達からこっちにかなりのスピードで他の騎士たちが集結しようとしていると連絡があった。やるなら早めにやった方がいいだろう。』
『まじかよ!ならさっさとやらないとな・・・!』
やれやれ、予定じゃあの子を説得していくはずだったんだが現状気絶させられちゃってるしなぁ・・・まあいい、こっちの方がよっぽど手っ取り早い!!
「フンッ!」ドゥンッ!
「な!?」
「「ケイイチ(君)!?」
なのはやフェイトの叫びを振り切り、ライフルを持っていない左手を腰にマウントしてあるビームサーベルに伸ばしながら一気に急加速してシャマル達との距離を詰める。
「クラールヴィント!」
『Jawohl・・・』
「遅い!!」
向こうは咄嗟に障壁を張ろうとしていたが間に合わず、俺はビームサーベルを抜きながら八神に当たらない角度から余裕を持ってシャマルに斬りかかる。
「きゃっ!・・・あ!しまった!」
間に合わないと悟ったのかシャマルは体を捻りながら後ろに飛んでビームサーベルを躱した。
しかし躱してからそれが悪手と気付いたのか彼女はやってしまったと言わんばかりの表情になった。
「そこをどいて!」
「させない!スティンガーブレイド!」
「くっ!?」
はやてを取り戻すために魔法を使おうとしたシャマルだったが、クロノがスティンガーブレイドを放って牽制することで阻害される。
「この、邪魔しないで!」
シャマルは5つほどの魔力弾を出し、クロノへと向けて放つ。
「生憎だがそういうわけにはいかないんだよ!」
対するクロノもスティンガーブレイドを同じ数だけ作り出し、洗練された動きで不規則に向かってくる魔力弾を撃ち落とした。
「くっ!」
撃ち落とされた本人は歯噛みしながら、再度魔力弾をクロノに撃ち出す。が、それも当然の如くクロノに落とされ、彼女の表情から感じられる焦りはさらに増していく。
「まだまだ!(やっぱり私じゃ力不足だわ。とてもじゃないけど全員を相手にするのは無理がある・・・!)」
何とか隙を見て八神を奪還しようとするシャマル。それを絶妙なタイミングで魔力弾を放って牽制するクロノ。
お互い一歩も引かない、目の離せないような駆け引きを繰り広げていた。
さらに、ユーノもサポートに入ろうと何やら呪文を唱え始めている。
これは勝負あったな。
(・・・よし、この内に八神を確保してとっとと離脱しよう。)
一先ずあいつはクロノに任せて俺は車椅子で寝ている八神の方へと向き、近寄っていく。
(これでひとまず一件落着。後は専門に任せて終わりだ。)
そう考えながら、俺は八神を車椅子ごと持ち上げようと手を出した。
『アプリ【百太郎】発動。ショートワープ開始。』
「は?ちょっと・・・」ヒュンッ
正に八神に触ろうとしたその時、GUNDAMが突然音声案内をしたと思ったら内蔵バッテリーを使って短距離転移を行いやがった。
訳が分からずに一先ず周囲を確認すると、今自分がいるビルの左隣にあるビルに八神はやての姿と・・・何故か俺がいた辺りにいくつもの藍色の輝きを放つバインドが浮かんでいた。
「ちょ!?なにこれ!?」
「バインド!?そんな、いったいどこから!?」
「くぅ、硬い・・・!」
「この~~~!外れろ―――!!」
ふと視線を上げてみると、どういうわけかなのは、ユーノ、フェイト、アルフ、おまけにシャマルと戦っていたクロノまでが同じ色のバインドによって動きを封じられていた。シャマルの方はユーノのバインドに捕まっていて身動きが取れなくなっているが、あのままならじきに自力で脱出するだろう。
(
状況に納得はいったがさらに疑問が出来た。この百太郎は梶原と相談した中で出てきたアイデアを元に作ってみた、悪魔召喚プログラム用の追加アプリの一つで、害意のある奇襲や不意打ちに反応して自動でショートワープを行い回避するというものだ。
つまりあのシャマル以外で俺達を襲おうとした者が、しかも結界を壊すことなくほとんど素通りに近い形で侵入してきた者がいるわけで・・・
『ショートワープ開始。』
「ああもうッ!!」
こっちの思考を遮る様にまたしてもショートワープが起動し、さっきいた位置から二十メートルほど上空に移った。
「チッ」
ワープ直後、センサーがさっきの自分の位置で誰かが舌打ちするような音を捕え、即座に自分のいた所を見る。
そこには何と、仮面をつけた白服の男が仁王立ちで俺の方を見ていた。あいつか!!
「なにもんだテメェ!!」
頭部装甲越しに睨みつけて俺は仮面の男に怒鳴りつける。
だが相手はそれを無視して、バインドを解き終わってはやての元へ駆けつけるシャマルの方へと跳んでいく。
『リンディさん!これいったいどうなってる!?』
『今調べているところよ!エイミィ!』
『分かりません!こっちのサーチャーには何の反応も・・・なんで、どうして・・・』
「・・・どうなってんだよ・・・いや、今はそれどころじゃないな!」
奴が何者なのかという疑問は残るが、今はそれどころじゃない!シャマルが闇の書と思わしき本を空中で開き、何か強力な魔法を使おうとしている。このままだとあいつらを取り逃がすかもしれない!
「ケイイチ!奴らを止めてくれ!」
バインドの破壊に手間取っているクロノは、間に合わないと感じてか焦りを感じさせる声でそう言ってきた。
言われるまでもねえ!
「(シミュレーション能力解放、近未来予知開始!)待ちやがれテメェらァッ!!」
八神が側にいる以上下手な遠距離攻撃は危険と判断し、今度は両手にビームサーベルを握りながら距離を詰めていく。
「邪魔をするな。」ザッ
案の定仮面の男が前に出てきて、真っ直ぐ向かってくる俺を迎え撃とうとする。
「テメェがな!!」
「!?」
俺はビームサーベルを眼前に交差し、さらに加速して仮面の男へと躊躇なく振う。
---ガキィーンッ!!
「くっ!?」
「つぅっ!」
俺の振うビームサーベルと、奴の強化された右ストレートが激しい音を立てて交差し、互いにその反動で苦悶の声を漏らす。
前の一件で身体能力が上がっているはずなのに、バリアジャケットのパワーアシストが無かったらサーベルを落としそうになった。コイツ、強い!
「シッ!」
「ッ!」
男が拳を引くのに合わせて俺もサーベルの力を抜き、すぐにお互い身を引くと、次は男の方から強力なラッシュを放ってきた。
俺は未来予知で先読みすることでそれを躱し、いなし、時にカウンターを狙いながら対処していく。
「おおおおおお!!」
「フッ!ハッ!セイッ!」
ジャブを右手のサーベルで払い、反対の手のサーベルで突き、相手が回避しながら放つ裏拳を腕のシールド発生装置が作り出すバリアで滑らせるように流しながらその反動を利用して回し蹴りを放つ!
「フンッ」ガシッ
「ところがギッチョン!!」ジャキンッ
「チッ!」バッ
回し蹴りを受け止め、肘打ちで膝を破壊しようとする男の胸に腰のレールガンを突きつけ発射する。
だが男は銃口を突きつけた段階で足を離し、すでに回避行動を行っていたため太腿を多少抉る程度の当たり方で済んでしまった。
---キィ――――――ッ!!
「!まずい!」
ふと目を向けてみれば、闇の書にかなりの魔力が収束されている。これ以上あれの放置は危険だと考え、ハイパードラグーンを翼から分離して発射口をシャマルと闇の書に向ける。
八神には覆うようにシールドを張られている、これなら少々の手加減はいらないな。
「させるか!」
「うるせえ引っ込んでろ!」
---ガチガチガチガチンッ ドォンッ!!
「ぐあああ!?」
「きゃあああ!!」
読み通り距離を詰めて拳を振おうとする仮面の男へと身体を向け、カートリッジを消費しながら狙いが定まったドラグーンのビーム砲とともに腹部のカリドゥス複相ビーム砲を放つ。ほとんどノータイムで、しかも近距離で放たれたビームに男は直撃してそのまま背後のビルへと派手に突っ込む。シャマルの方はさっき見たバインドと同じ色のプロテクションが何層にも張られてハイパードラグーンのビームと一瞬拮抗するがそれもあっという間に破壊され、その破壊の余波を受けて10メートルは吹き飛んでいった。
(よし、狙い通り魔法も中断されている。今の内に八神を確保する・・・!チッ、またか!)
『ショートワープ開始。』
数秒前に見えた予知通りあの藍色のバインドが俺を拘束しようとし、それに反応した百太郎の機能でショートワープが行われる。
そして今度は運良く、八神から五メートルほどの位置に出られた。
・・・にしても妙だな。今のバインド、奴のぶっ飛んでいったビルとは違う方向からきやがった。あいつ他にも仲間がいるのか?
まあいい、大体拘束するまでのスピードは分かって来たしさすがに予知を行っていれば捕まる前に切り払える。後さすがに何度もワープさせられるのは鬱陶しいから百太郎は切っておこう。
最低でも石の中とかに転移しない様に設定してあるが、基本的に出るところはランダムだからなぁこれ・・・一々場所確認させられるのはきついでござる。
「さて、よいしょっと!」バキンッ
ドラグーンを戻しながら八神の元に近寄り、ビームサーベルでシールドを切り払って彼女を確保する。
ついでにシャマルと闇の書をバインドで雁字搦めにして動きを完全に封じておいた。
よかった、もう少し手間取ってたらおかわりまでに間に合わなくなるところだったぜ・・・
「く・・・」
「良くやった!ケイイチ!」
悔しそうに倒れながら呻くシャマル。それを横目で見ていると、ようやくバインドから抜け出してきたクロノが申し訳なさそうにしながらこちらに駆けつけてきた。
丁度良い所に来てくれた。予知で見えたが、後二十秒ほどであいつらが結界に入ってくるからその前にこいつにはここを離脱してもらおう。
「クロノ、お前今すぐこいつらを連れてリンディさん達の所に転移しとけ。ここは俺とあいつらで押さえる。」
「何?大丈夫・・・いや、わかった。ここは任せたぞ。」
「おう、行ってこい。」
バインドを操作してシャマルを引き寄せ、クロノが八神の側に寄り転移魔法を使う。
---バシュンッ
「でぁッ!!」バシュバシュッ
それを妨害するためかバインドが俺とクロノを捕えようと出現し、俺はそれをすぐさま切り払う。
クロノはそれに驚いた顔を見せながら、無事に転移を完了させその場から消えていった。
「さてと・・・」
---バキィンッ!!
「来たか。」
なのはたちがようやくバインドを外し終えると同時に、結界の天辺に亀裂が走って外から残りの騎士達が揃って来訪した。
・・・・・・そしてさらに、さっきビルに突っ込んでいった仮面の男の生命反応がいつの間にやらレーダーの中から消えている。
物理ダメージが無い上に一本分はドラグーンの出力上げに使ったとはいえ、カートリッジ三本分使用したカリドゥスを真面に食らったのだからそうそう簡単に動けるとは思えないが・・・やっぱり仲間がいるのか?
まあいい、今は消えた奴等は放っておく。まずはこっちだ。なんか滅茶苦茶鋭い眼で睨まれてるけどこれ絶対第二ラウンド入りそうだな、特にあの赤毛ロリ咬みつかんばかりの勢いだし間違いなく入るよな?
「・・・あの!」
「おい、テメェ等・・・」
「え?」
なのはが話しかけようとするのを遮り、ヴィータ?が尋常じゃないほどのドスが効いた声をかけてきた。
訳が分からず聞き返したなのは。しかし相手はそれにお構いなく続けていく。
「ここにいたアタシらの主と仲間をどうした?さっきまでここにいたんだろ、え?」
「ああ、いたな。ちょっとトラブルが起きたもんだから少し場所を移動してもらったが。」
気圧されて言葉が出ない他の連中に代わって俺が代わりに質問に答える。
すると乗り込んできた三人はショックを受けた様な表情を浮かべた後、本人たちにしか聞こえないくらいの声で何かを言い始める。
えっと、マイクの集音能力を上げて・・・
「そうか・・・一足遅かったということか・・・そうか・・・」
「くそ…くそ・・・ッ!!もうちょっと、もうちょっと速く駆けつけていれば・・・!!」
「何が・・・何が騎士だ・・・!何が守護獣だ・・・!!己の主一人守ることさえ出来ない、こんな、こんな醜態を晒しておいて、何が・・・・・!!」
あ、駄目だこりゃ。尋常じゃないくらい切羽詰った声が聞こえてくる。
おまけにデバイスの持ち手や握り締めた拳から聞こえてはいけない音が聞こえてきてる。【ミシミシ】とか、もう聞くからにやばい感じしかしねぇ・・・
よし、もう速いとこ次のカートリッジの用意しよう。それしかないよ多分。
---キラッ
「・・・ん~?」
今あいつらの後ろでなにか・・・てそんなこと気にしてられねぇ!連中の殺気が!スカウターがあったら振りきれてボンッ!しそうなくらいどんどん膨れ上がってる!!
「あ、あの!私たち、貴方達とお話を」
(ちょ、なのはさぁ―――ん!?!こんな状況でそんなこと言ったら・・・)
「うるせぇ!!人の大事な主を攫っておいて何が話だ!!ふざけたこと言ってんじゃねぇッ!!」
「「「「ッ!?」」」」
ヴィータの腹の底から響いてくるような怒声が、装甲を通して体の芯までビリビリと響いてくる。
正真正銘の殺意が篭った本気の怒りがいやというほどに俺達の身に叩きつけられ、思わず萎縮してしまった。ヤバァイ、かなり怖い!
「シグナム!ザフィーラ!とっととこいつらをぶちのめして二人を助けに行くぞ!!」
「ヴィータ・・・ああ、そうだな・・・!!」
「そうだな・・・こんな様になっても、まだ俺達に出来る事はある!!」
ザフィーラと思わしき浅黒犬耳マッチョマンの言葉を皮切りに、他の二人のデバイスからカートリッジが排出された。
それを見て、俺たち全員が構えを取った。
「お前たちの目的が何かは知らない・・・だがどんな理由があるにせよ、我等の主に手を出したことだけは容認できない!!」
「絶対に許さねえ!必ずぶっ潰してやるッ!!」
「我等の大事なお方と仲間、返してもらうぞ!!」
「来るぞ!気を付けろ!」
三人がそれぞれの武器を構え、一斉に襲い掛かってきた。
俺達もそれぞれの武器を構え、奴等を迎撃しようと身構える。
来い・・・返り討ちにしてやる・・・!!
『ラ~~リホ~~~~♪』
「え・・・・・」
「く・・・・・」
「なん・・・・・だ・・・」
---フラァ・・・
「・・・ん?」
後もう少しで互いの攻撃圏内に入りそうな辺りで、急に騎士たちの動きがおかしくなる。
なんか頭を押さえてめちゃくちゃフラフラし始めたんだけど・・・いったいどうしたアイツら・・・
「こん・・・な・・・なん、で・・・・・・」
「いし・・・きが・・・」
「ま・・・て・・・まだ・・・・・ま、だ・・・・・・」
何とか意識を保とうと必死にこらえようとしている。
すると集音器を通して、どこからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。
『・・・なるほど、さすが騎士の名を誇りにしてるだけあるな。大した精神力だ・・・まさかこれに抗えるなんてな。もう少し強くやるか?』
声がそう言い切った直後、ギリギリで保っていた騎士たちの意識が一気に途絶え、下にあるビルのコンクリートに向かってゆっくりと頭から落ちていった。
「・・・ハッ!?フェイトちゃん!」
「う、うん!行くよアルフ!」
「わ、わかった!」
落ちていく彼らを見てようやく意識が状況に追いついてきたらしいなのははフェイトに呼びかけ、そのフェイトはアルフに呼びかけ、彼らの元へと飛んで行ってしまった。
俺はその様子を見ながら・・・・・・・・・・・・・・ふと、自分の腕の装甲に映り込んでる奴に溜め息を吐きながらぼやいた。
「もうちょっと早く来いよこの野郎。」
『文句は終業時間に行ってくれ。』
なんだそりゃ。