デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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大変お待たせしてすみませんでした。執筆に使っていたpcが故障してしまい、データのサルベージにかなり手間取っていた次第です。今回は元元書いてた分をスマホの方でいくつか手直ししたものを投稿しております。
それと実は私、これから社会人として活動していくためにさらに投稿ペースが落ちるかもしれません。
無論必ず完結はさせるつもりです。読者の皆さんには申し訳ありませんが、これから先長い目で見守っていただければこちらも幸いです。
それでは最新話、どうぞ。


第五十七話

===12月19日 AM9:00 海鳴市某公園内===

 

「クククククッ・・・・・漸くだ、漸くこの日がやって来たぞ・・・・!」

 

健全な一般人ならば誰もが既に起床し、一日の活力となる朝食を腹に納めてそれぞれの日常を開始しているであろうこの時間・・・・この俺梶原 泰寛は、これから起こるであろう一大イベントへと思いを馳せながら、自分をアメリカへ送り届けてくれる送り届けてくれる親友の到着を今か今かと心待にしていた。

12月19日・・・・・そう!まさにこの日なんだ!

ケネディ宇宙センターにおいてこの日の月は新月として夜の空に登り、俺の持つザ・ワールドに絶大な引力のパワーをもたらすはず。

そしてフロリダ半島と日本の経度の差から計算した結果、標準時間の時差は凡そ16時間20分。約束の9時20分に転移魔法で到着すれば現地時間は丁度17時になる。つまりこの時間からならば、無駄なく余裕をもって新月を迎えられるわけだ。

 

---ジワリ・・・

 

ハハハッ、やべぇな。楽しみと緊張で口角が上がる。額や手から尋常じゃなく汗が出てくる。いったいどんなスタンドが待ち受けているんだろうか。約束の時間はもう少し後になるが、内心アイツが早く来ないかと気が逸って仕方がない。

 

(早く来ぉ~い、早く来ぉ~い・・・・)

 

公園のベンチに座りながら心の中でそう唱えつつ、俺は予定時間まで待ち続ける。

 

 

 

 

「オィ~~ッス。」

 

「ぬ?おう!来てくれたか!」

 

そうこうしているうちに公園の時計が9時20分を指した、その直後に公園の出入り口から矢島が呑気な挨拶とともに姿を現した。

俺は挨拶を返しつつベンチから立ち上がって、歩いてくる矢島の元へと走っていき矢島の肩をがっしりと掴みながら催促する。

 

「よし!俺はいつでもOKだ!さっそく頼むわ!!さあさあさあ!」

「落ち着け!遠足前の小学生並みにワクワクし過ぎだ!ていうか笑顔が怖過ぎ!」

 

 

矢島は俺の両手を掴んで振り払い、軽く引きながらそう言う。

俺が言われた通り落ち着いたのを確認すると、矢島は一呼吸いれて呆れたような眼差しを向けながら話を進める。

 

 

「まったくこいつは・・・」

「いや、うん、悪かった。流石に燥ぎ過ぎたわ。」

「分かればよろしい。それじゃあさっそく始めるぞ。」

「おう、よろしく。」

 

俺がそう言うと矢島は一度大きく深呼吸した後、右腕にはまっている待機状態のデバイスを頭上に掲げた。

 

「GUNDAM、俺達二人を対象に認識遮断の結界を張れ。」

『Yes,sir.』

 

デバイスの返答と同時に蒼色の魔力光が収束し、その光がドーム状に広がって俺達とその半径一メートル以内を包み込む。

 

「続いて空間転移。俺達と結界を丸ごと転移対象として転移を開始しろ。」

 

『Yes,sir.』

 

---キィ―――――ンッ シュバッ

 

俺達の足元で魔方陣が発生し、そこから強い蒼色の魔力光が放たれて視界を埋め尽くしたかと思うと、急な浮遊感が生まれた。

そしてどこかに吹っ飛ばされるような感覚を覚えた直後・・・気が付けばどこぞで見たことがあるような、海岸の浜辺に俺は立っていた。

季節が季節なだけに、周囲は既に真っ暗のようだが。

 

「相変わらず羨ましい技術だな。俺だったらこんなに一瞬で遠くに行けねえや。」

 

これがあれば食べ歩き旅行の移動時間も大幅に短縮できるだろうに。

 

「デバイス頼りじゃなきゃ俺だってこんな距離跳べねえけどな。文明の利器様々ってね。」

「ははは・・・ありがとうな。」

「礼なら今度家にお菓子の差し入れでもしてくれ。家の仲魔たちが楽しみにしてっから。」

「了解だ。腕によりをかけて作ってこよう。」

「おう、頼むわ・・・・・・じゃあ明日になったら同じ場所で迎えに来るぞ。遅れんなよ。」

「へいへい。そっちも解析が忙しくてうっかり俺のこと忘れるなよ。」

「あ、それありそう。」

「おいコラ!」

 

そう言うと矢島は自分の魔法陣と魔力光に包まれ、強い閃光とともに海鳴市へと帰っていった。

それを見届け、俺は気を引き締めながらPCを取り出して地図アプリを開く。

 

「・・・・・・・・・思えば日本国外に出るなんて久しぶりだよな。もう何十年ぶりだったかな・・・」

 

現在地をGPSに近い機能で特定しつつ、俺はふとそんな感想を漏らす。

思えば前世は自分のスタンドの探究とネットサーフィン、ゲームなどの娯楽趣味が楽しくて国外に旅行なんてあんまりなかった気がする。そこそこ値も張るしね。

趣味で料理する時なども食材とかは高級品も国内で通販などを通して大概手に入っていたし・・・小学校の頃親戚の結婚式を祝いに家族でハワイに行ったのと、中学校の修学旅行で中国に行った時以来か・・・

思えばすごかったよなあれ。京都とか東京とか、メジャーな修学旅行先が書かれたアンケート用紙の一番下にポツンと一つ、【中国 6泊7日の旅】って書いてあったもの。

それ見つけた時、同じように見つけたクラスメイトと一緒に「スゲーッ!!」て言いながら腹抱えて笑ったわ。

そんでアンケートの結果は学年のほとんどが中国を選んだという始末。無論俺も迷いなく選んだね。だってそういう機会でもないと俺いかなそうだったもん。

いやぁ~、あんときはホント楽しかったわ。

 

「さてと、思い出に浸るのもほどほどにしてそろそろ行くか・・・」

 

フンフン、フンフン・・・・・・・なるほどなるほど。宇宙センターはあの崖の向こうか。

よし、早速向かうとしよう。あ、そうだ、俺米ドル持ってないし姿もちゃんと隠していかねえと。後あのザ・ワールドも装備していかねえと。

さっそく倉庫からあのザ・ワールドとアクトゥン・ベイビーのディスクを取り出し、先ずザ・ワールドを頭に差し込んでいく。

 

「{ズブズブ}ぐっ、があああああああああああああっ・・・!!」

 

ディスクが半分ほど頭に沈んだところで全身を凄まじいエネルギーの躍動が駆け巡り、思わず臓腑の底から絞り出したような呻き声が口から漏れ出し足元の砂場に膝をつく。

 

---ガクガクガクガクガクガクガクガクッ ビキッビキビキッビキッ ギシギシッ

 

「グギィ、ギギギッ、グガギッ、ギィッ・・・」

 

全身の筋肉が痙攣する。脈動の度に体の至る所がボコボコと音を立てて隆起しては戻る。体表が冷や汗が全身から止めど無く溢れ、額から脂汗が滲む。視界はブレ、自分の手が二重三重に重なっているように見える。

 

(ぐぉおぉぉおお・・・・・な、なんて、途方もない、エネルギー・・・!!これは・・・ぐ、あああああッ!)

 

膝立ちする余裕もなくなり、両手を砂場につく。

荒い呼吸の音が絶えず遠くから聞こえているように感じつつ、身体の内側から今にも溢れ出そうとしているナニカが暴走しない様に、顎と丹田に力を入れて意識を保ち続ける。

 

 

 

 

 

---ビキッビキビキッビキッ ギシギシッ ビクッビクッ・・・・・ビクッ・・・ビクン・・・

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・・・・・・・ハァ~~~~~~~~~~~~~~~・・・」

 

・・・いくらか時間が経過した後、ようやくディスクから流れてくるエネルギーを抑え切った。

呼吸を整えて膝立ちに戻り、両手についた砂を落として頭を撫でる。

何時の間にかディスクは完全に体の中に入っていたみたいだな。

やれやれ・・・原作のプッチがここに来た時もこんな感じだったのだろうか・・・

 

「ふぅ~~~~~~~~・・・よし、立てるな。」

 

足の裏を砂浜につけ、額から流れた汗が砂に吸い込まれていくのを見ながら立ち上がる。

・・・・・・ふと思ったが、抑え切れたのはいいけどぶっちゃけこれ以上ディスクを入れる余裕がねえや。どうしよう?

・・・一度宇宙センターの近くまで行ってザ・ワールドだけで潜り込めそうだったらこのまま行こう。無理なら一度外して潜入用のディスクに切り替えればいいだけだし。

一先ずそう結論付け、俺は倉庫からフルフェイスのマスクとロングコートを取り出して着替える。

そして俺を中心に、大きく波打った砂浜を踏みしめて宇宙センターの方へと向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・違う。」

 

・・・・・・・・時間が刻一刻と経ち、目的地との距離が縮まる毎に疲労感が色濃くなっていく中・・・・・ふと、道の途中で足が止まる。

宇宙センターはまだ先にあるはずなのに、なぜかこの先に言っても意味がないと心の内側から装備しているザ・ワールドが訴えているように感じる。

 

「・・・ザ・ワールド。」

 

ザ・ワールドは強い脈動の音を放ちながら出てきて傍に立った。その姿を横目で一瞬だけ見た後深呼吸して集中力を高める。

この予感が正しければ、向かうべき位置はここではなくこの辺りのどこかのはず。

 

「・・・・・・・・・向こうか?」

 

直感に従って左上を見る。何もない真っ暗な空間のはずだが・・・いや、分かるぞ。

いつも自分が使っている引力の奔流が、自分の持つそれよりも大きく強く渦巻いている間隔がかなり上の方から感じられる。

目指している物は間違いなくこの先にあるはずだ。

俺はザ・ワールドとともに空中へと浮かび上がり、その方向へと飛ぶ。

 

 

 

---ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!

 

「ぐぁ・・・!」

 

地上がだんだんと離れていく・・・そしてザ・ワールドの脈動がドンドン力強くなっていく。

更に大きな変革を迎えようとしているかのように、脈動の度にその姿にノイズの様なものが走っているように見える。

 

「はぁ~~~~落ち着け、この程度造作もない。この程度、俺は何時だって乗り越えてきたじゃあねえか。出来る、俺は出来るんだ・・・!」

 

もう地表から100メートルは離れていた。感じるぞ・・・もう少しだ、もう少しで位置が来る。

おそらく後十メートルほど進んだ先に・・・

後少し、後もう少しで位置が・・・位置が・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

---ピシィッ!

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

身体を何かが貫いた、そんな感覚とともに全身から力が溢れ出す!!

 

「来た!感じたぞ!この位置だ!!」

 

俺の全身に穴が開き、その穴から無数の光が止めど無く溢れ出して周囲を強く照らす。

それとともに、同じく重力のパワーに貫かれたザ・ワールドの姿が俺と同じように体の内側から光を放ちながら徐々に砕けて崩れていく。

俺はその光景を目にしながら身体から湧き上がる力の奔流に押し潰されぬよう、今ある意識を必死に繋ぎ止める。

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

そうしているうちに一際強い輝きが身体から溢れ、俺とその周囲を包み込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハッ!?」

 

自分の体から一際強いあの光が放たれた後なのだろうか・・・いつの間にか俺は直立して呆けていたようで、特になんのきっかけもなくふと意識が浮上した。

 

(どうなっている・・・あの後一体どうなって・・・いや待て!ここは一体どこなんだ!?)

 

未だに情報の処理が追いつかない頭を振りながら思考を纏めようとしていると、だんだんと自分と自分の周囲に広がる異常に気が付く。

さっきまで俺はケープ・カナベラルの上空にいた・・・そのはずなのに今立っている場所は違う。

周囲にあった筈の建物や人影、街の明かりやコンクリートの道路にケネディ宇宙センター、さらには土と雑草で満ちていた大地は見渡す限りの範囲から一切合財完全に消え失せ、代わりに俺の立つ場所を構成するのは水平線の彼方まで続く明鏡の様な底の見えない水面。

空では前世の中学一年まで住んでいた明かりに乏しい田舎の村の夜空・・・それが霞んで見えるほどに星が強く大きく輝いていた。このまま手を伸ばしてしまえば、容易く届いてしまうのではないのかと錯覚してしまうほど明確に。

普段ならそのまま見入り続けてしまうほど美しい光景だった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それ以上に、自分自身に訪れた変化に気がいかなければ。

 

「・・・俺は・・・いったいどうなっているんだ?この奥底から湧き上がる圧倒的なスタンドパワーは?」

 

自分の手の色に違和感を感じ、上半身に来ている服をその場で脱ぎ捨て、倉庫か鏡を取り出して自分の姿を確認する・・・・そこにあったのは、さっきまでと大きく変わってしまっている自分の姿だった。

額には金色のラインで星のような痣が描かれ、その一部から太い金色のラインが目を通過するように顎の下へと続いている。眼の下4センチ、大体上顎骨と頬骨の繋ぎ目と思われるでっぱりより少し中心によった所にはアライブの仮面から覗く目を模したデザインが一対ある。

更に普段の体力作りとトレーニングのおかげで年齢に見合わないほど鍛えられている身体は、髪と眼の黒い部分、顔のラインを除いて普通の人間では在り得ないほどに真っ白になっていた。

そして何よりも驚くべきは・・・身の内から湧き上がるこの圧倒的なスタンドパワー!!

 

この世の何者だろうと超越し、従え、平伏させ、支配する・・・世界を手にするという普通に考えればとてつもない所業すら、今の俺ならば数分と経たず容易く成し遂げられるとさえ思えてしまう、この圧倒的な高揚感と全能感ッ!!

 

 

「出て来い・・・!」

 

 

---ドォ――――――ンッ!!

 

 

心の趣くままにスタンドを表に出す。

 

現れたザ・ワールドの姿はサスペンダーのような装飾や頭部に繋がるチューブと背中のエネルギータンクの様なもの、その他肘当てや脛当て等の一部の装飾を除いて俺と同じように真っ白に変貌していた。

 

眼球は強膜の部分が光も通さないほど黒く、角膜の部分は皮膚と同じくらい白い。

 

そしてなによりも出したことで更に認識が確かなものとなったその放たれる威圧感・・・G・EレクイエムやD4Cラブトレイン、完成した聖なる遺体、馬に乗って放つACT4などは俺の中で間違いなく最高の力だったが・・・・・・だがこいつはそれ等全ての存在が霞んでしまうほど、ただひたすらに強大だ。

 

正に桁違い。担い手じゃなければ決して得体も底も知れなかったであろう力。

 

自然と背筋が震えてくる・・・これがザ・ワールドの極致。基本世界のDIOが届き得なかった天国のもう一つの姿。

 

これが・・・

 

ザ・ワールド・オーバーヘブン(天国に到達した世界)ッ!」

 

俺の新しい力ッ!俺が未来を掴む新しい手札の姿なんだッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ~~~し、見た目と迫力は十分に堪能した。」

 

新たなスタンドの姿と迫力を十分に見て堪能したところで、俺は足元に置いていた服を再度着直していく。もう脱いでる必要はねぇし。

 

(・・・しっかしまさかなぁーーー、もうひとつの天国の正体があのオーバーヘブンだったとはなぁーーー・・・感動的だ、まさかこの段階になってこいつを直にお目にかかれる日が来るなんてなぁーーー。)

 

【ジョジョの奇妙な冒険アイズオブヘブン】・・・そう、たしか最初にこのスタンドを見たのはあのゲームでのことだった。

ストーリーモードを進めていく内に現れた、あのDIOが到達したザ・ワールド・・・・それがこいつだった。

最初はそれはそれは驚かされたもんだ。

従来のザ・ワールドを凌ぐ圧倒的な性能、最強と謳われたレクイエムやact4を上回る文字通り底が見えないほどの桁外れのスタンドパワー、そしてあの能力・・・凡そ勝てる要素など微塵たりともあり得無いとしか思えないこいつとDIOをあんな風に撃破した時は、思わず声をあげて感動したな。後DIOはやっぱりDIOだった。

 

「・・・これでよし。さてと、これからどうしたもんか。」

 

着衣が終わり、次の行動について腕を組んで考える。堪能している間に時間が経ったせいか、ある程度だが扱い方も分かるようになってきたし、秘められた新たな能力もなんとなく感覚で理解できるようになってきた。

となると・・・次は実際にその真価を体感しておいた方がいいかな。やはり実際に使っておいて、その感覚をしっかり掴んでおくことは重要だ。

おそらくここと現実世界への行き来程度ならばディスクのエネルギーを使わなくても俺自身のスタンドパワーで余裕を持って行えるだろうが・・・ここはひとつ、思いっきり使ってみるとしよう。

 

「いや待て、確かいざという時の為に複製しておいた予備もあったよな。」

 

そう言えば万が一無くすようなことが起きた時の為にエルメェスのアレで複製しておいた奴がもう一枚あったはずだ。

 

折角だから新月の時が終わらないうちにあの位置に戻ってあれもオーバーヘブンに変えておくべきだろう。

 

「ザ・ワールド・オーバーヘブン!!」

 

まずは自分のスタンドパワーを使い、元の場所に戻るよう試みる。

すると能力の使用とともにオーバーヘブンにエネルギーが蓄積していき、それとともに空間にノイズと放電のようなものが走り出す。

 

---ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ

 

数秒後、充填が完了したエネルギーの解放とともに周囲のノイズと放電が一気に強くなり・・・・・・・・・次の瞬間、俺は宇宙センターから離れた場所にいた。

 

「・・・なるほどなるほど。こういう物なのか、この能力は・・・よし、じゃあまたやるか。」

 

ザ・ワールド・オーバーヘブンを頭から抜き取り、倉庫からオーバーヘブンにしていないザ・ワールドを取り出して頭に差し込む。

一度オーバーヘブンにしたおかげなのかもう大体慣れてきたな。

さてと、次は重力の位置だが・・・・・・

 

 

 

 

 

 

===キング・クリムゾンとボスの提供の下、位置の捜索からオーバーヘブン化までをカットいたします===

 

 

 

 

 

「これでよし。」

 

引力のパワーを受けられる場所がずれていたせいで若干時間がかかったが、二度目のオーバーヘブン化はあの奇妙な空間に行くことなく終了した。

二体目になるオーバーヘブンの姿も圧巻の一言に尽きたと言っておこう。

・・・さてと、いよいよ本格的に使ってみるとするか。何度か思いっきり使ってしまえば自ずと運用方法の細部を詰められるようになる。

 

---ブォオオオオオオオッ

 

「(近所の誰かが連絡でもしたのか?まああれだけ光っていれば当然か・・・)さっさとやるか。ザ・ワールド・オーバーヘブン!」

 

遠くの方から自動車の音が聞こえ始め、さすがにまずいかと思って今度はディスクに内蔵されたエネルギーを使って能力を発動する。

 

---ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ

 

俺の使ったスタンドパワーよりもさらに強力なエネルギーがザ・ワールドに収束し、空間にノイズと放電が走っていく。

そして長い溜めの後にスタンドパワーが解放されると周囲の空間が歪み・・・・・・次の瞬間、自分の家の前に俺は立っていた。

 

「・・・・・よし、もう何度か使っていればちゃんと掴めそうだな。」

 

隣に立つオーバーヘブンを見ながら頭の中で能力を使った感覚を反芻する。

後は一巡後の世界にでも潜って、アイテム集めをしながらゆっくり検証と練習に励むことにしよう。

 

「ま、その前に矢島に連絡をしておこう。」

 

PCを取り出し、俺は矢島のデバイスに向けて新しいスタンドの力で自力で家に帰ってこられたから帰りの迎えはいらなくなった旨を記してメールで送る。

・・・これでよし、次に誰も見ていないことを確認してから倉庫の中に入り、中からオーバーヘブンに鍵を持たせて家の壁を登り、自分の部屋がある窓の鍵をコッソリ開けて中に入る。

後はベッドの上に鍵をおいて・・・これで良し。倉庫を解除する。

 

「これでよし、後は潜る用意をして、それからダンジョンに入って検証スタートだ。」

 

まずはどれを持っていくか。オーバーヘブンの予備はもちろんのこと、空になってるエニグマの紙やアイテム破壊防止のためのディスク、後逃げ隠れするためのメタリカや戻ってくるためのディアボロのディスク、後食料品もいくつかと・・・これで良し。

 

準備が出来たところで何時ものようにDIOと寝ているプッチに話しかけ、俺はいつもの様にダンジョンへと潜っていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「フゥ―――――、こういうチート染みた能力を自分で使うのはやっぱり楽しいな。」

 

 

ダンジョンから戻ってきて荷物を整理し、倉庫のソファーで一服していた俺は、顔に笑顔を浮かべて自分の左手を開いたり握ったりしながら一人呟く。

ちゃんと慣れるまでに結局ディスクに内蔵してあるエネルギーの3分の2以上を費やしてしまって若干気落ちはしたものの、それ以上に俺の内心では圧倒的な力を振るう愉悦とこの能力をこれからどんなふうに使っていこうか考える楽しみに心が躍っていた。

フフフフフフ・・・・・・おっと、一応ダンジョンに潜ったことで把握できたことを話しておこうと思う。

ディスクから伝わってきた感覚で何となくわかっていた程度だったオーバーヘブンの真髄だが・・・それはやはり、言葉にするとすれば【真実の上書き】とでも言うべきものだった。

アイズオブヘブンのストーリーでラスボスに相応しい程の猛威を振るっていたこのスタンド・・・今のところは、俺かスタンドの手が触れている物や事象に対し、自分が望むことを真実として上書きして到達することが出来る、簡単に言うと現実改編能力がある。性質としてはゴールド・エクスペリエンス・レクイエムと全く正反対の能力と言えるだろう。

まだまだ練度が低く未熟だが、今の俺が使ったとしてもおそらくこいつは、その気になれば自身の即死以外の致命傷や現代では決して治せない難病、人の手では決して正せない様な欠陥や問題等も手で触れれば解決でき、死者蘇生や相手の存在を全ての並行世界から完全に抹消する事なども可能なはずだ。

・・・だがその自由度と強力さの代わりに、能力の発動には物によっては尋常ならざるエネルギー消費が求められ、干渉する事象や書き換える内容次第ではほぼ必ずと言っていいほどディスクに内蔵されているエネルギーを使うことになる。更にダンジョンの敵相手に試していてわかったが、一定以上の強い魂や抵抗力を持つ相手などは現状直接拳を叩き込んでスタンドパワーを送り込まなくてはならない。

そしてここからが最も重要だが・・・このスタンドディスク、エネルギーの補充方法がかなり特殊かつ高難度だ。

その方法とは、+99になるまで強化したディスクと一緒にディオの骨に入れること、もしくはこっちの世界でコミック系のアイテムとして落ちている【ジョジョベラー】を含むごく一部の本類をこのスタンドに対して使用することだ。

俺の知る限りこの二つの方法以外ではどうやってもエネルギーの補充が叶わなかった。さっき俺がディスクのエネルギー消費に気落ちしていた理由がまさにこれである。はっきり言って補充の方法がかなり難しいんだ、このディスク。

・・・・・・泣けるぜ、良い能力なのにおいそれと使えないなんて・・・・・全くパンティ集めが捗るぜ!(白目)

・・・・・まあいろいろあったが・・・結論。恐ろしく強力ではあるが、デメリットも相応に重い。正に長所と短所が表裏一体となっているスタンドと言えるだろう。

多分能力については、自分の力で賄えない範囲はそうそう使うこともあるまい。

 

「・・・・・・うし、また細かいことは後で考えるとするか。」

 

取り敢えず今日はもう一つの天国に達したスタンドを手にするという目標を達成した。

手の届く範囲で一番面倒だった冬休みの宿題もクラスメイト達と一緒に先生に強請って内容を教えてもらい、一週間前からちょくちょくやって今は粗方終わっちゃってるし・・・・・・まあまだ闇の書というでっかい案件がまだ残ってはいるものの、それ以外で余程のことが起きない限りこれから来年まで遊び放題だ。これから先暇はいくらでもあることだし、時間をかけてオーバーヘブンを体に馴染ませながら、どこまで出来るかゆっくり理解を深めていくことにしよう。

そのためにもさっさと闇の書の問題を片付けないと( -。-) =3ー

 

---グゥ~~~~~ッ

 

・・・思えばそろそろお昼時だし、休憩がてらリビングに行ってお母さんたちの手伝いをするとしよう。

今日の昼は何になるのかねぇ~・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・いや、ちょっと待てよ、こいつあれば今回の事件楽勝なんじゃあじゃねぇか?

 


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