デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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皆さん・・・お待たせ・・・しました。
最新話です・・・・・・どうぞ・・・




仕事、忙しすぎるよ·······三 (lll´Д`)


第五十八話

---トゥルルルルルルッ トゥルルルルルルッ

 

「ん?だれだ?」

 

ケープ・カナベラルにてオーバーヘブンが手に入り、ダンジョンでその力を存分に振るった日の翌日・・・・・俺がいつもの早朝ランニングから帰ってきて一休みしていると家に一本の電話がかかってきた。

ちなみに今は父さんも母さんも仕事でいないから、電話には俺が出るしかない状況だ。・・・全く、一体誰なんだか・・・

 

「(ガチャッ)はいもしもし、どちら様でしょう・・・」

『泰寛君!大変なの!はやてちゃん!はやてちゃんがっ!!』

「(キィ~~ンッ)・・・ぐぉあ~~ががが~~~~・・・ッ!」

 

ノソノソと鳴っている固定電話の方へと歩いていき、誰かと思って出てみると、相手は相当焦った様子のなのはだった!

そしてあんまりにも切羽詰っていたのか奴さんの大声で俺の左耳に大きなダメージががががっ!

 

「なのは!いきなり大声出すんじゃねえよ!!」

『ご、ごめん・・・ってそれどころじゃないの!!実は昨日、はやてちゃんが病院に運び込まれたって連絡があったの!』

「・・・はぁ?!」

 

左耳のダメージを考慮して受話器を右耳に当て直しながら話を聞いていると、謝罪の後に聞こえてきたなのはの只事じゃない報告に受話器を落としそうになりながら慌てて聞き返した。

 

「なんだと・・・?!どういうことだ?」

『うん・・・私もついさっき、クロノ君たちから教えてもらって初めて知ったんだけど 、昨日の夜中くらいにはやてちゃん、いきなりベッドから転げ落ちていて、ヴィータちゃんたちが駆けつけた時には既にものすごく苦しそうにして床に倒れてるのが見つかったそうなの。』

「マジでか・・・ちなみに今はどうなってるかわかるか?」

『うん・・・今は病院に運び込まれていろいろと検査を受けたらしくて、一応今のところはなんともないって言ってた・・・けど、なんだか私、とっても嫌な予感がする・・・』

「そうか・・・」

 

はぁ〜・・・恐れていた展開がようやく来てしまったんだな・・・

 

「とりあえず、病院の名前と場所はわかるか?」

『うん。名前は〇〇〇〇病院っていって、場所は・・・』

 

電話の横にあるメモ帳を開き、ボールペンを手に取って病院の名前、場所、病室のナンバーをメモしていく。

・・・・・・良く思い出してみるとこの場所って、前にはやてが話していたよく通ってるっていう病院の場所か。

 

「{カリカリカリ・・・タンッ!}わかった、この場所だな。一応後でお見舞いにでも行ってみるよ。伝えてくれてありがとうな。」

『うん・・・それじゃあまたね・・・』

 

プツンッ、という音とともになのはとの通話が切れた。俺は受話器を置き、溜息をつきながら倉庫の中からスマートフォンを取り出して矢島に連絡をする。

・・・呼び出し中にふと視線を受話器の画面に移してみると、着信履歴になのはの携帯電話の番号と知らない家の電話番号が交互に三回ずつ入っているのが目についた。なのは、知らない番号、なのは、知らない番号、なのは・・・て言う感じで、俺のいない間に大体三十分毎に家の電話にかかってきていたみたいだ。なのははまあいいけど、この番号って誰のだろうか?

 

『もしもし梶原か!?今とんでもないことになってるぞ、はやてが自宅で倒れたらしい!』

 

おっと、そんなことを考えている間に向こうと繋がったようだ。

 

「ああ、さっきなのはから連絡があった。結構やばくなってきたみたいだ・・・闇の書の調査の方はどうなってるんだ?この段階で解決策が少しでも見えてないとまずいぞ。」

『それについてはプレシアさんを中心にした解析班が今ものすごいスピードでやってくれてるよ。あいつらが捕まった後取らせてもらったデータのおかげで、かなりペースが上がってるらしい。 』

「ほうほう。」

『おまけに昨日の夕方頃、ユーノが無限書庫でかなり手がかりに近い本を幾つか見つけたらしくて、それに書いてある内容を元に後もうちょっとでなんとかなりそうってところまで解析が進んでいるらしい。予想では後一日か二日でどこをどうすればいいかの目処が立つそうだ。』

「そうか・・・なるべく急いでもらいたいもんだ。もうあまり時間が残っているとは思えねえ。」

 

いや、正直なところ今でも助けられる手段は問題なくあるけどな。昨日までなら穏便な解決方法なんぞは全く思い付かなかったが、今ならば最悪の場合はオーバーヘブンを使って、ヴォルケンリッター達を闇の書から独立させた後闇の書を完全に消し去るという手段が取れる・・・・・・予想出来る限りでは、あいつ等が警戒しているとそれをするチャンスを作るのが難しい事と、仮にやったとしたら本気で悲鳴を上げたくなるくらいの、相当な出血大サービスとなってしまうのが本当に悩ましいということだが。クソ、こんなことならリリカルなのはを全話ハードディスクに入れておけばよかった!そうすりゃどう動くべきかの参考にもなったはずなのに・・・!昔見た記憶を辿ろうにも途中で飽きて見なくなったせいでザ・ブックとかで思い出しても意味がないんだものなぁ・・・

矢島も同じ理由で記憶を探っても意味ねえしどうしたものか。

 

「・・・わかった。一応、また何かあったら連絡頼む。」

『勿論だ。じゃあ俺ちょっとアースラの方を手伝ってくるから、もう切るぞ。』

「おう。じゃあな。」

 

通話を切ってスマホをしまい込み、もう一度大きくため息をつく。全く面倒臭い。

 

「ハァ~~~~~~~~・・・・・とりあえず見舞いに行くか。一応どの程度かは自分の目でも見ておかねえと。」

 

一先ず服を再度着替え、リビングに置いていたお菓子やら牛乳やらを冷蔵庫に入れて、俺ははやてのいる病院へ向かうために玄関を開けて外に出ていった。

・・・・・見舞いの品は途中で何か買うか。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました。八神さんは5階の502号室です。」

「どうもありがとうございます。」

 

途中にあったスーパーで良さそうな蜜柑をいくつか購入して、いつものようにキックボードを駆使しながら一時間程かけて病院についた後は、受付で聞いたはやての病室へと滞り無く歩いていく。そしてさらに一、二分ほど時間をかけて、やっと俺ははやての病室の前に着いた。さて、奴さんの様子はどうだろうか・・・

 

---ガラガラガラッ

 

「あれ、泰寛君?」

「おう、こんにちわはやて。思ったより元気そうじゃねえの。」

 

なるべく静かに扉を開けて部屋の中を覗いてみると、今までベッドに座って本を読んでいたと思われるはやてがこちらに気付き、驚き半分嬉しさ半分といった様子で迎えてくれた。

症状が落ち着いたのかどうか知らないが随分とピンピンしてるなこいつ。いや、ひょっとしたら強がってるだけか?

 

「急にどうしたんや?お見舞いに来てくれたん?」

「まあそんなところだ。実はさっきなのはからはやてが倒れたって聞いてな・・・いや、本当に驚いたよ。今のところ調子はどうなの?」

「フフフ、なんともあらへんよ。病院の先生や皆にはここでゆっくりしてるように言われてもうたけど。」

「いやいや当たり前だろう。急に胸を抑えて気絶したんだろ?普通なら急性の心臓病とかを疑ってもおかしくはないだろうに。俺もこうして会うまではもうちょっと具合悪そうにしてるもんかと思ってたわ。」

「泰寛君も皆も大袈裟やなぁ。私はこのとおりピンピンしとるで?」

「みたいだな。(今の所は・・・) 」

 

見たところだいぶ危ないところまで来ているみたいだが・・・ま、まあ、取り敢えず今はまだなんとか保っているようで何よりだ。あとは早くあいつ等が闇の書をどうにかする方法を見つけるか闇の書とヴォルケンリッター達にオーバーヘブンを使ってしまえば終わりとなるが・・・やるにしてもどのタイミングで使うか見定めておかないとな。

 

「ところで泰寛君、今日学校はどうしたん?ひょっとしてサボり?」

「そんな訳ねえだろ。俺のところは今冬休み中なんだよ。」

 

無遅刻無欠席をどれだけ長く達成出来るか地味にチャレンジ中だからな、本当に滅多なことでもなきゃ休んだりしないわ・・・なんだろう、前にも同じことを言ったような言わなかったような・・・・

 

「なぁんや残念。てっきりズル休みしてまで来てくれたんかと思うたわ。」

「流石に危篤状態とかだったならそれもあり得るかもな・・・ところで途中で蜜柑買ってきたんだけど、これどこに置いておけばいいかな?」

「わぁ!美味しそうな蜜柑やな!ん〜〜〜、それじゃあそこの冷蔵庫に入れといてくれへん?」

「はいはい。」

 

はやてに示された通り冷蔵庫を開ける。

中に入っているメロンやらリンゴやらの、他の見舞いに来た奴から持って来られたと思わしき品物の存在に口元を綻ばせながら空いているところに蜜柑を入れる。

 

「じゃあ暇があったらチマチマ食べておいてくれ。」

「うん、ありがとうな泰寛君。」

「ああ、どういたしまして・・・ンン~~~、後どうするか?適当に何か駄弁る?」

「うん、ええよ。ほな何話そうか?」

「そうだな・・・あっ!そう言えば今朝テレビで面白そうな料理を発表してたぞ。イタリア料理で、イカスミ入りのリゾットなんだけど隠し味が以外でさ・・・」

「へぇー、イタリア料理か。聞かせて聞かせて。」

 

その後は特に大した事もなく、適当に世間話をして時間を過ごしていく。

 

 

 

「・・・おっと、もうこんな時間か。じゃあそろそろ俺は帰らせてもらうわ。元気でな。」

 

何だかんだでお昼を少し過ぎた頃、そろそろ話のネタが尽きてきたので、俺はそろそろお暇することにしてはやてに別れの挨拶をする。

 

「うん、泰寛君も元気でな。」

 

はやては楽しい時間が過ごせて満足したのか、とても楽しげに、そして少し寂しそうに返事を返した。俺はそのはやての姿を背に、病室の扉を開けてもう一度はやてに手を振った後病室から立ち去った。

 

(さ・て・と、とりあえずどうしたものか。矢島たちの成果を待つべきか、オーバーヘブンを使うべきか。)

 

矢島達に任せきりにするのなら、俺は本当に何もしなくていい。緊急の事態に備えて悠々自適な暮らしを続けていけばそれでいいからな。問題はまだ少し時間が掛かるからその間に何が起こるか注意し続けないといけないことだが。

もしくは、仮にオーバーヘブンを使うなら、今夜辺りにはやてをヴォルケンリッター共々あの異空間に送ってから有無を言わせず全員に叩き込まなくてはいけないだろう。そしてこの方法はエネルギーの消費は言うに及ばず、加えて現在アースラなどから彼らを監視している管理局の目を掻い潜りつつ慎重かつ大胆に行わなくてはならず、更に急になんの突拍子も無く問題が解決したことに対して周囲が絶対に不審に思っていろいろ調べかねないという幾つかのデメリットというか、不安要素というべきものが存在する。矢島によると、なんだかんだであいつ等は犯罪者として扱われていて今も常に監視の目がちゃんとあるらしいからな。おまけに、矢島達が前に戦った仮面をつけた二人組の魔導師の話もある。連中が今も尚どこかではやて達を見張っているかもしれないし、その辺りの注意も必要だ。

んーーー、悩む。どっちを選択するべきか・・・事件の早期解決は願ったり叶ったりだがいかんせんディスクの消費がな~。世界を滅亡させる程のロストロギアの修正なんて一体どれだけ持っていかれることやら・・・

 

---コツ、コツ、コツ、コツ・・・

 

「あ。」

「・・・ぬ?」

「あ、お前この間の・・・」

 

考え事をしながら歩いていると、いつの間にか一階と二階の間の階段の踊り場まで降りてきていた。そこで聞き覚えのある声を聞いてふと目線を上げると、通路の角を曲って、俺が降ろうとしている階段に足をかけているクロノと大きめのカバンを持っているシャマル、何かが入ったビニール袋を引っ提げたヴィータの姿があった。同じタイミングで向こうも俺の存在に気が付いたのか、今はお互いに顔を見合わせる形になっている。ちなみにシャマルとはこの間八神たちやなのは達と一緒に遊んだ時に顔合わせが済んでいて、向こうにははやての唯の友達として知られている。・・・それにしても、あいつ等もはやてのお見舞いか?まさかこのタイミングでこの組み合わせに会うことになるとは・・・まあとりあえず会ったんだから今は挨拶だな。

 

「えーっと、こんにちわシャマルさん、ヴィータさん、クロノ。」

 

まずは無難に三人に対して挨拶を行う。

 

「ああ、こんにちわ。」

「おう・・・じゃなくて、その、こんにちわ。」

「こんにちわ泰寛君。もしかしてはやてちゃんのお見舞いに来てくれたの?」

 

クロノはごく普通に、ヴィータは辿々しく、シャマルは柔らかさを感じさせる雰囲気で、それぞれ特に問題なく返事を返してくれた。

 

「ええ、まあそんなところです。今朝急に倒れたって友達から連絡があったのですから、一応様子を確認しておきたいと思いましてね・・・今のところ特に問題なさそうで少し安心しましたよ。これからどうなるかはわからないですから、まだまだ油断はできないですが。」

「そう・・・ありがとう、泰寛君。」

「いえいえ、友達の一大事ですからこれくらいはどうってことでもないです。」

 

俺の返答の途中、シャマルの返事とともに三人の表情に一瞬だが影が刺した気がした。

はやてに残された時間がほとんど無いことにかなり焦りを感じていることが、その様子から手に取るように見て分かる。

・・・こういう時、出来ればなにか気の利いた事を言いたいところだけど、表向きには俺関わってないようなもんだからなぁ・・・あぁ~~~、やだやだ。こういう時は本当に気まずいよ・・・・

 

「じゃあ僕この辺りで帰らせてもらいますね。あんまり引き留めとくのも悪いですし・・・三人ともお元気で。」

「え、ええ。またね。」

「ああ。気をつけるようにな。」

「・・・じゃあな。」

「あいよ。」

 

微妙な空気を払拭したかったのとこれ以上話すこともないため、三人に挨拶をして階段を再び降り始め・・・

 

「梶原。」

「?どした?」

「・・・いや、なんでもない。引き止めて済まなかった。」

「いや、まあいいけど・・・じゃあまた。」

 

明らかに何か聞きたげなクロノに一度引き留められたこと以外は特に無く、首を傾げながら俺はその場を離れた。さて、家に帰るまでに決断をしておかねえと・・・

 

side out

 

「・・・・・」

「?どうしたんだよ、クロノ?」

「ん、いや、なんでもない。僕達も早くはやての病室に行こうか。」

「ええ、そうね。」

 

ヴィータに呼び掛けられて気を取り直し、再びはやてのいる病室へと二人と共に歩いていく。

 

「クロノ君、あの子とは知り合いだったの?」

 

階段を登っている途中、ふとシャマルがクロノにそう問い掛ける。

 

「ああ、今年の五月にこっちに来た時に色々とあってね。彼とはその時に知り合ったよ。」

「今年の五月・・・ていうと、アタシらがはやてと暮らし始めるちょい前か。」

「そうなるな。」

「ふ〜ん・・・どんなふうに知り合ったの?」

「済まないがそれ以上はこんなところで話す訳にはいかない。機密事項も多いからな。」

「そう、分かったわ。」

 

(要するに管理局の機密に関わるレベルまで踏み込めるほどの人物ってことよね・・・はやてちゃんには悪いけど、一応あの子にも注意しておく必要があるかも。はぁ、なのはちゃんといい矢島君といい・・・この世界、見かけと中身が合わない子が多過ぎるんじゃないかしら?)

 

本人の与り知らないところで、予期せず警戒されている梶原であった。一方クロノも、頭の中で梶原について少し考え事をしていた・・・

 

(結局梶原は、今回のことにほとんど関わらなかったのか?こういう時、彼もなのは達のために何かしら協力をするものと思っていたが・・・いや、ひょっとしたらジュエルシードの事件のように僕達が知らないだけでとっくに関わっているのだろうか?)

 

クロノは矢島やなのは達の話、前のジュエルシードの事件で実際に当人と話してみた感じから自分の今までの人生経験に基づいて、梶原という人間を【面倒事や目立つ事を嫌うがやるべき事と出来る事はきっちり把握して慎重に動き、特に自分や親しい者の危機には率先して対処しようとする奴】と云う風に考えていた。矢島は梶原には今回の事件の事を伝えていないとは言っていたが、よもや梶原が現在の矢島やなのは達の事情を知らないとも思えない。事件がほぼ解決に向かっている状況で今更こういうことを考えても仕方がないとは思いつつも、さっきの泰寛の様子を見てクロノはその辺りのことが少しばかり気になっていたのだった。

 

「おい二人共、考え事はいいけどそろそろ病室につくぞ。」

「!うん、そうね。」

「ああ、済まないな。」

 

二人ともそれぞれで考え事をしているうちに病室前に着き、ヴィータに呼びかけられた二人ははっと気がついてヴィータとともに病室の扉を潜って中に入っていく。

病室では先程梶原が持ってきたであろう蜜柑の皮を剥がし、美味しそうに蜜柑を頬張っているはやての姿がそこにあった。ヴィータははやての元へと駆け寄り、心配そうに彼女に呼び掛ける。

 

「はやて!大丈夫か!」

「うん、この通り元気にしとるよ〜。クロノ君にシャマルも元気しとる?」

 

はやては微笑みながら自分の元気さをヴィータにアピールし、次にクロノ達に彼らの調子を尋ねる。

 

「やれやれ、それはこっちの台詞なんだがな・・・」

「フフフ。ええ、私達の方は今は問題ないわよ。」

 

クロノとシャマルはそれに苦笑しながら答える。

その後、シャマルとヴィータとはやてが幾つか雑談をした後てからクロノが咳払いをし、真剣な面持ちではやてに話し掛ける。

 

「はやて、今闇の書の解析はかなりのペースで進んでいる。今の調子ならばおそらく後2日もしない内に君の身体を治す方法が見つかるはずだ。まだ不安な状況は続くが、どうか諦めずに僕達を信じて待っていてほしい。」

「・・・そっか・・・うん、わかった。皆を信じて待っとるよ。」

 

クロノの真剣味に満ちた言葉を聞き、はやては首を縦に振ってそう答える。

 

「ありがとう・・・それでは僕はまだやらないといけないことがあるから僕はこれで失礼させてもらう。二人はまだここにいるか?」

「ああ、あたしははやてと一緒にいる。」

「私もここにいるわ。色々しないといけないこともあるし。」

 

ヴィータと、持ってきていた鞄を持ち上げながらそう言うシャマルにクロノは頷く。

 

「わかった。それじゃあ三人ともまた今度。」

「うん、またな〜。」

 

ベッドの上で手を振って見送るはやてや、自分の背中に視線を送るヴィータとシャマル達を背に、クロノは病室から出ていく。

 

「あ、そうや二人とも。さっき泰寛君が御見舞に持ってきてくれた蜜柑、まだあるんやけど二人も一緒に食べへん?」

「うん!食べる!」

「はやてちゃんが良ければ私も一つ・・・」

「はいはい、それじゃあちょっと待ってな〜〜。」

 

そう言いながらはやては、ベッドから身を乗り出して傍にある冷蔵庫から器用に蜜柑を取り出す。

 

「はい、どうぞ。」

「ありがとう。」

「ありがと、戴きまーす!」

 

それぞれ蜜柑を貰ったシャマル達はしばらくの間それを食べながら他愛ない話を楽しみ、ある程度時間が経ったらはやてが使い終わった服を回収したり、幾つかの身の回りの世話をしたり、はやてから自分がいない間の家事の分担をしっかり行うよう言われたりなどした後、互いが互いを心配することのないように笑顔で別れていった。

 

 

 

Side:梶原 泰寛

 

「うし、やっと決心が着いた。」

 

病院に行くときよりも少しだけ早く家に付き、俺は玄関の鍵穴に鍵を差し込み、鍵を開けながら呟いた。

 

「やっぱオーバーヘヴンを使おう。」

 

良く考えれば、はやてはもうかなり危ないところまで症状が進行しているのだ。そうなるとやはり、後一日か二日で解決策がわかる程度じゃあ友達の安全にしても俺や町の平穏にしても安心して任せて置く気にはなれない。切り札を切るのは抵抗があるが、それでより面倒な大事に至るようじゃ元も子もないってものだ。此処は手早く確実に事を終わらせる方が良い。そのほうが安心して明日を迎えて生きていける。

 

( 時間は、そうだな・・・ 母さん達が寝静まった後からスタートだ。ハーミット・パープルで八神家の面々の場所を念のために確認した後、オーバーヘブンで八神家と闇の書を一気に引き摺り込んで全員に拳を叩き込む!そして真実を上書きしてフィニッシュだ!)

 

となれば、早速今夜に備えておかねえとな。

今日の食事当番は母さんだから、風呂掃除と軽いイメージトレーニングをしたら時間まで仮眠を取っておくか・・・

 

そう考えながらリビングに行き、まずは風呂掃除から始めるべく洗面所へと俺は足を運んだ。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

部屋の時計はそろそろ十時半を刻もうとしている。

そんな真夜中、俺は両親がそれぞれ自分の寝床で寝入っていることを確認した後出かけるための支度を終えて玄関に立っている。仮眠を取ったおかげで眠気に関しては問題ない。

ちなみに服装はいつもの戦闘用とは少し違い、全身をすっぽり覆える大きさの真っ白いフード付きローブで全身を隠し、顔にはメタリカで作ったまん丸い除き穴が2つ空いているだけの簡単な仮面を被っている。

 

いつもの戦闘服は一度管理局に晒しちゃってるからね。些細だが一応向こうさんにバレないための工夫だ。丁度都合良く【目的不明な仮面をつけた二人組の魔導師】という恰好のスケープゴートがいるし、多分これで大丈夫なはず・・・だと思いたい。

 

(一応対象の場所はすべて確認済み。 問題無く決行できる。)

 

今、ヴォルケンリッター達は都合良く八神の家で全員寝ている。ひょっとしたら何人かはアースラとか別の空間、ひょっとしたらミッドチルダとか違う世界にいる事も考えられたけど、これならば俺の消費するスタンドパワーも少なくて済むだろう。全く違う世界に行こうとするとそれだけ消費するエネルギーも多いみたいだからな。

 

「さてと、それじゃあ行きますか。」

 

倉庫からオーバーヘブンのディスクを取り出し、頭に差込む。身体の内から溢れ出ようとするスタンドパワーの奔流を感じながら、俺は今一度あの世界へと飛んだ。

 

 

望む未来、到達したい未来へ征くために。

 

 

 


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